3/29/2016

筋肥大トレの推奨ボリューム

The Influence of Frequency, Intensity, Volume and Mode of Strength Training on Whole Muscle Cross-Sectional Area in Humans

ストレングストレーニングの筋肥大への影響を調べたレビュー論文。強度、頻度、ボリューム、モダリティ(コンセントリック、エキセントリック、アイソメトリック、アイソキネティック等)といったトレーニングの要素をどう調整すると、より良い筋肥大効果を引き出せるのかを調べている。

このレビュー論文で分析対象となった論文の大部分が筋トレ未経験者や初心者を被験者としているので、トレーニング歴のある人にそのまま当てはまるわけではないことに注意。

分析対象の筋肉は大腿四頭筋と上腕二頭筋。

長いので結論をサクッと書くと、普通のフリーウェイトトレーニングでは、一回のセッションあたり合計30-60レップのトレーニングボリュームが筋肥大を最適化するようだ。合計30-60レップというのは、トレーニングを複数セット行い合計のレップ数がこのレンジに収まるようにするという意味。例えば8レップを5セット行うと合計40レップ。

頻度は各部位週に2,3回。

強度は70-85% 1RM。だいたい6RM~12RMで複数セットを行うとこの合計レップ数を達成できる。5RM以下でも十分なボリュームを行えば同等の筋肥大は起こるが、時間効率と怪我のリスクを考えると、筋肥大目的のトレーニングで5RM以下のセットが大部分を占めるのは非効率的だと思われる。5RM以下を1セット程度行うことで神経系の適応を引き出し、メインとなる6RM~12RMのセットでより強度の高いトレーニングを行えるようにするのは良い。

[書籍] The Muscle and Strength Pyramid では、一回のセッションあたり合計40-70レップが推奨されている。この本で推奨ボリュームの根拠として示されているのが今回の論文なんだけど、この論文では被験者が主に未経験者・初心者だったことを考慮して、トレーニング歴のある人向けに多めのボリュームを推奨していると思われる。おそらく著者自身の経験やコーチとしての実地経験も根拠になっているだろう。上級者になるほどボリュームは増やす必要がある。

推奨レンジに上限があるのは、ボリュームが多すぎても筋肥大効果が低下するから。間違えるなら、多すぎて間違えるよりも少なすぎて間違える方がコストが低いので、最初は少なめのボリュームで毎回のトレーニングを元気よく行えるようにし、伸び悩んだらボリュームを少し増やしてみる、というアプローチが良いだろう。


以下はプログラムの組み方の個人的なお薦め。といっても優秀な人が書いていることを適当に組み合わせただけ。

・鍛えたい部位ごとに、2種目か3種目行う。
・部位ごとに多角的に補完的に鍛えるようにする。
・コンパウンド種目は6-12RMのレンジの下の方、アイソレート種目はレンジの上の方。

例えば胸だったら、ベンチプレス6-8RMを数セット、インクラインベンチプレス8-12RMを数セット、合計40-70レップ。クロースグリップベンチプレスを数セット追加で上腕三頭筋も目標ボリューム達成。

下半身だったら、スクワット数セットにフロントスクワットやレッグプレスやルーマニアンデッドリフトを数セット。合計40-70レップ。スクワットで下半身の後ろ側に負荷がかかりやすい人は、フロントスクワットやレッグプレスで腿の前側を補完的に鍛える。スクワットで腿の前側に負荷がかかりやすい人は、ルーマニアンデッドリフトで下半身の後ろ側を補完的に鍛えると良い。


関連記事:
筋肥大トレの挙上テンポ

筋肥大トレのインターバル

3/23/2016

[書籍] The Muscle and Strength Pyramid(肉体改造のピラミッド)

 


・The Muscle and Strength Nutrition Pyramid
・The Muscle and Strength Training Pyramid


購入はこちらから。栄養とトレーニングについてそれぞれ一冊ずつ。
http://muscleandstrengthpyramids.com/


エビデンスベースでトレーニングと栄養について総合的に書かれていて、優先順位と重み付けも明確にしている。素晴らしい本だと思う。

Lyle McDonaldも推薦(Muscle and Strength Pyramids by Eric Helms – Book Review)。Alan Aragonは序文を書いている。

ピラミッドは、優先順位と重み付けを表している。1が土台となる要素で、より優先順位が高く、より重みも増す。ピラミッドの上の方は、高いレベルを目指すアスリートがさらに上積みするために使うもので、初級者やレクリエーションでトレーニングを行う人にとっては重要度は低い。

栄養
1.エネルギーバランス
2.マクロ栄養素と繊維質
3.ミクロ栄養素と水分補給
4.栄養摂取タイミングと頻度
5.サプリメント

トレーニング
1.継続(Adherence)
2.ボリューム、強度、頻度
3.進歩のペース・プログラムの組み方
3.エクササイズ種目の選択
4.休憩時間
5.挙上テンポ

アスリートでなくても、何が重要ではないか知るのは、リターンの小さいことにリソースを使わないようにするという点で役に立つ。リソース(時間、労力、お金など)は限られているから、リターンの大きい土台に使うと効率良く結果を出せる。フィットネス雑誌の記事にあるようなサプリメントや○○セット法トレーニングなどの些末なことに労力を使ってしまうと、空回りしてしまい効果が出ない。

想定読者は、週4-6回ゴールドジムのようなフリーウェイトを扱えるジムに通い、本気で身体作りを行う、またボディビルのコンテスト出場やパワーリフティングの大会出場を目指すような人。現時点でのレベルは初級者でも良いが、ガッツリやる気のある人向け。あとフォームが身についていて、筋肉にしっかりと負荷をかけられることが前提。ただ、週2-3回のジム通いでそこそこ良い身体になりたいという人にとっても十分に役に立つ内容だと思う。

筋トレやダイエットについてネット検索するとトレーニング面も栄養面も変な記事ばかり出てくるし、メディアなんかも無駄に労力とお金がかかる方法が宣伝されてたりするし、この本ほどコア層向けじゃなくて良いから、ライト層向けのまともで安価な日本語本があれば良いのになと思う。


※2021年9月追記

最近、このページのアクセスがあるので、どうしたのかなと思ったら翻訳本が発売されたようですね。

現時点の評価を追記しておきます。

今読んでも良い内容だと思いますが、2016年時点でこの本がエポックメイキングだったのは、

・エビデンスベースで書かれている。
・トレーニングと栄養に関して広範囲のトピックがまとまっている。
・優先順位がピラミッド型でわかりやすく書かれている。

ことでした。これを1冊(形は2冊ですが)で実現した本はそれまで存在しませんでした。

2021年時点だと、エビデンスについては新たな研究が出てきているトピックもあり、広範囲をカバーする本は他にも出てきています。したがって、本の内容は今見ても良いものだと思いますが、価格もそれなりにしますし、今は他にも選択肢があります。出版元のアスリートボディさんの記事を見ると、内容はエビデンスに合わせてアップデートされていないと思います。

飢餓モード対策:チートデイ vs. リフィード
「これまでにリフィードの効果に特化した研究は行われていませんが、減量中にカロリー消費量が落ちてしまうのを和らげるという狙いはダイエット休みと共通しています。」

→2020年にリフィードの研究が出ています。

関連記事:リフィードの研究

それと、私は海外の文献漁りをLyle McDonaldから入ったので、彼の書いているものを基準にしてしまうのですが、「The Muscle and Strength Pyramid 」は栄養分野についてはそれほど強くないという印象です(トレーニング分野は強いと思います)。ただ、Lyle McDonaldは栄養方面最強で個人的にはとても尊敬していますが、著書は文章が長くて読みづらく、1冊あたりのカバー範囲が狭い(そのぶん異常に深い)ので、マニア以外におすすめするのは気が引けます。


自分の本を宣伝するための長い前フリみたいになってしまいましたが・・・2016年に書いた「この本ほどコア層向けじゃなくて良いから、ライト層向けのまともで安価な日本語本があれば良いのにな」という思いは、2020年に自分で本を書くことで実現しました。目次のところを見てもらえばわかりますが、栄養の項目については「The Muscle and Strength Pyramid 」よりもカバー範囲が広く詳しい内容にしています。リフィードやリーンゲインズの最新研究の結果も踏まえて書いています。

電子書籍「ボディメイクガイド」リリース!

3/08/2016

筋肥大トレの挙上テンポ

How Fast Should You Lift to Maximize Muscle Growth?

Brad Schoenfeld のブログから。

筋肥大を目的とする場合、どれくらいの速さで挙上すべきか。限界に近い重量ならゆっくりとしか挙げられないが、それ以外ならゆっくり挙げるか素早く挙げるかの選択肢がある。

最近メタアナリシス研究を行ったのでその研究についてかいつまむと

1レップ(挙げ下ろし)2-6秒では筋肥大に差は無し。10秒以上かけると筋肥大の効果は低下。

既存研究の不足のため断定的なことは言えないが、推奨は挙上(コンセントリック)に3秒以上かけないこと。これ以上の時間をかけると、筋繊維をフル動員するだけの負荷を扱えなくなる。下ろし(エキセントリック)も3秒以上かけず、ウェイトをコントロールしながら下ろす。

Schoenfeldの感覚だと、挙上は1-2秒、筋肉の動きを心に描きながらウェイトを十分にコントロールして挙上すると良いようだ。

3/07/2016

筋肥大トレのインターバル

What is the Ideal Rest Interval for Muscle Growth? Implications from Our Recent Study

Brad Schoenfeld のブログから。

セット間の休憩時間をどうするか。よく推奨されるのは、ストレングス目的の場合は長めのインターバル(3~5分)で、筋肥大目的の場合は1分程度の短めのインターバル。短めのインターバルが筋肥大に良いとする根拠はアナボリックホルモンの上昇が筋肥大に効果的と考えられているから。

これについて実験してみましたとのこと。

8-12RMをインターバル1分と3分で行った場合の1RMと筋肥大への効果を比較

結果は、3分インターバルグループのほうが1RMが向上、筋肥大も3分インターバルの方が増大している傾向があった。筋肥大についても3分インターバルのほうが良い結果が出た理由は、おそらくは1分インターバルグループはトータルのトレーニングボリューム(レップ数×重量)が低下したからだろう。トレーニングボリュームと筋肥大には相関関係がある(オーバートレーニングにならない限りは)。インターバルが短いと2セット目以降のトレーニングボリュームが犠牲になる。

1分では短すぎるなら、何分のインターバルが良いのだろうか。以前の研究によると2分のインターバルで筋肥大を妨げないトレーニングを行えたという結果が出ている。またインターバルは固定ではなく種目によって変えても良い。

推奨は、大筋群のコンパウンド種目(スクワットなど)は長めのインターバルを取る。単関節種目(アームカールなど)は回復が早いので、短めのインターバルで行うことで、メタボリックストレスとボリュームの両方を筋肉に与えることができる。トレーニングの順番は、コンパウンド種目を先にやり、短めのインターバルのトレーニングがコンパウンド種目に影響を与えないようにする。


関連記事:
成長ホルモンと筋肥大