Intermittent energy restriction improves weight loss efficiency in obese men: the MATADOR study
https://www.nature.com/articles/ijo2017206
★被験者
肥満の男性
BMI30–45
25-54歳
★ダイエット方法
2グループに分けて比較
a) カロリーカット継続グループ(CON) 19名
カロリーカットを16週間継続する。
b) カロリーカットと維持カロリー交互グループ(INT) 17名
カロリーカットを2週間、その次に維持カロリーを2週間、その次にカロリーカットを2週間・・・というダイエットを続ける。カロリーカット2週間×8回、維持カロリー2週間×7回。合計30週。
両グループともにダイエット前の4週間の調整期間(体重変動を見て維持カロリーを調整)と、ダイエット後の8週間の維持カロリー期間がある。
カロリーカット期間はどちらのグループも合計で16週間になる。一日あたりのカロリーカットの程度も同じなので、両グループともトータルで同じカロリーカット量のダイエットを行った。違いは維持カロリーの期間を挟むか挟まないか。
★摂取カロリー
カロリーカット期間は維持カロリーの67%を摂取する(33%のカロリーカット)。ダイエットが進むと安静時代謝が低下するので、それに合わせて摂取カロリーを調整する。安静時代謝はカロリーカット期間が4週間に達するごとに測定する。
★食事提供方法
大部分は研究者側で支給。追加の食べ物を研究者と相談の上で被験者が選択して摂取。
★マクロ栄養素
計画では、タンパク質15-20%、脂質25-30%、炭水化物50-60%。
★運動
特に言及されていない
★結果
グループごとの体重変化。交互グループ(INT)の方が体重が大きく減った。横軸の週数はカロリーカットを実施した週数で、継続グループ(CON)はカロリーカットを実施した週数イコール経過週数だけど、交互グループ(INT)は維持カロリー期間が挟まるので実際に経過した週数は約2倍になる。
交互グループのカロリーカット期間(ER)と維持カロリー期間(EB)における体重変化。維持カロリー期間では、カロリー調整が上手くいき体重変化が抑えられていることがわかる。
グループごとの除脂肪体重変動。両グループとも除脂肪体重の減少は抑えられている。
グループごとの体脂肪量変動。
両グループの安静時代謝の推移。両グループともダイエットが進むにつれて安静時代謝が低下している
除脂肪体重と体脂肪量の変化を考慮した安静時代謝。エネルギーを消費する体組織が減ればそのぶん安静時代謝も低下するが、体組織の減少以上に安静時代謝が低下する(つまり省エネ体質になる)ことがある。このグラフではそれを判断できる。結果は、交互グループ(INT)の方が除脂肪体重と体脂肪量の変化を考慮した安静時代謝の低下は小さくなっていて、リバウンドしにくいダイエットになっている。
ダイエット実験の終了後も含めた体重変化。交互グループ(INT)の方が体重のリバウンドが抑えられている。安静時代謝の低下が緩やかだったことが寄与していると考えられる。またダイエット中に維持カロリー期間を挟むことでメンタル面でのダイエット疲れが軽減されダイエット終了後の暴食が避けられたり、ダイエット終了後に維持カロリーの食生活に戻す時にどれくらい食べれば良いか経験済みで体重を維持しやすいといった要因もあると考えられる。
★コメント
カロリーカットと維持カロリーを交互に繰り返すダイエット方法の方が良い結果が出た。体重の減り方も、安静時代謝の低下も、ダイエット実験終了後のリバウンドも、どれもはっきり良い結果が出ている。
注意点としては、ダイエットにかけた期間に大きな差があるのであまりフェアな比較とは言えないこと。継続グループでも一日あたりのカロリーカットの幅を緩くして30週かけて減量すれば、安静時代謝の落ち込みは緩やかになるかもしれない。
ただそれでも交互グループのカロリーカット8週時点(14週経過)と継続グループの16週時点の体重減少量がほぼ同じで、維持カロリーを挟んでも同じ期間で同じくらい体重を減らせるという結果が出ている。
実践を考える場合も、維持カロリー期間でメンタル面での息抜きを入れていくと長期間のダイエットを続けやすいだろう。
★ダイエット休憩の実践
ダイエット中にカロリーカットを一旦中断して、摂取カロリーを増やすことをダイエット休憩と言う。(休憩は break を訳してるのだけど、日本語だとなかなか良い単語が見つからない)
ダイエット休憩の期間の長さは、2週間でかなり効果が出ている。論文では維持カロリー1-2週間で代謝低下が回復するかもと書かれているが、レファレンス先の論文の内容が関係なさそうで1週間という数字を出した根拠がよくわからない。
ボディメイクで減量を行う際は、カロリーカット4週間-6週間ごとに1-2週間の維持カロリー期間を入れるのが良いと思う。2週間ごとに維持カロリー期間を2週間入れると、減量完了まで時間がかかりすぎる。1週間では十分に回復しないかもしれないが、そこは時間効率との兼ね合い。
継続グループと交互グループの体重減少ペースの差は、4週間だと小さいけど8週間になると大きくなる。この研究の被験者はかなりの肥満なので、普通体型の人が減量する場合は8週間よりも前に体重減少ペースが低下するだろう。
個人的な経験でも8週間続けてのカロリーカットはメンタル的にもキツイし、体重が減らなくなってくるのでキツイ。目標の体重減少量が小さく(目安としては水分変動除いて体重5%以内の減量)、8週間程度で減量完了予定なら、維持カロリー期間無しでも良さそうだけど、目標の体重減少量が大きく長期的に減量を続けるなら、4週間-6週間のカロリーカットを続けたら1-2週間の維持カロリー期間を入れるのが良いと思う。
気をつけることは、ダイエット休憩中に好き放題に食べず、維持カロリーを守ること。他にもダイエット休憩を挟むダイエット方法の研究はいくつかあるけど、それらの研究では食事がコントロールされてなくて、ダイエット休憩をいれるダイエット方法の優位性があまり示されていない。この研究のようにカロリー管理をきちんすれば、ダイエット休憩が効果を上げると考えられる。
★管理された維持カロリー
筋トレを日常的に行っている人だと、減量中はグリコーゲンと水分が減っていて、リフィードではそれが一気に回復するので、維持カロリーであっても体重が2,3kg増えることも普通に起こる。
筋トレでグリコーゲンが枯渇している人なら、リフィード開始後1,2回の食事は炭水化物中心にオーバーカロリーしてもグリコーゲン補充に回されるので良いだろう。慎重に行うなら、減量前の維持カロリーから10%程度引いたカロリーをコンスタントに摂取するのが良いと思う。摂取しているカロリーが維持カロリーかどうかは、体重測定と過去の経験から判断するのが良いだろう。ダイエット休憩の開始後1,2日で体重が一気に増えて、その後体重変動が安定するならだいたい維持カロリーになっている。摂取カロリーが維持カロリーに満たないと代謝回復の効果が出にくいので、恐れずしっかり食べたほうが良い。
★ついでの雑感
ダイエット休憩については、Lyle McDonald の A Guide to Flexible Dieting という2005年の書籍に詳しく書かれている。Lyle McDonald の古い書籍は、今となっては古くなった研究の不完全なデータを使い、ある程度の推測で埋め合わせながらに書かれているのだけど、最近のより良い研究でその主旨の正しさが証明されるケースが見受けられて凄いなと思う。彼の凄さはマニアックに論文を漁っていることだけではなくて、ビッグピクチャーの把握の仕方。
エビデンスベースで栄養やトレーニングを語る人は増えてきているけど、これらの分野は研究がまだまだ不完全で、ビッグピクチャーの把握や経験などによる隙間の埋め合わせが不可欠で、その辺の能力差がエビデンスを上手く扱えるかどうかの差になるのだと思う。
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