The Mind-Muscle Connection: A Key to Maximizing Growth?
http://www.lookgreatnaked.com/blog/the-mind-muscle-connection-a-key-to-maximizing-growth/
Differential effects of attentional focus strategies during long-term resistance training
https://www.researchgate.net/publication/323740477_Differential_effects_of_attentional_focus_strategies_during_long-term_resistance_training
鍛えたい筋肉を意識し、しっかり力を入れて負荷を感じながら筋トレすることで筋肥大効果が高まるのかどうかという研究。
筋トレ時の意識の仕方と筋肉の活動レベルを調べた研究はいくつかあって、低重量・中重量(80%1RM程度までの重量)なら個別の筋肉に力を入れることを意識することでその筋肉の活動レベルが高まるという結果が出ていた。しかし、長期的にその方法でトレーニングを続けると筋肥大に有利かどうかという研究はなかった。それを調べた初の研究。
ちなみに高重量だと、個別の筋肉に力を入れることを意識する余裕はなくなって、必要な筋肉全てに効率的に力を入れて全力で持ち上げることになる。
★動作時の意識の仕方(前提知識)
英語だと external/internal focus や cue なんだけど、ちょうどよい日本語が思いつかないので、とりあえず外部意識・内部意識と書いておきます。
外部意識:動作の結果、外部環境に及ぼす効果や結果をイメージする。
内部意識:自分の身体がどのように動くかを意識する。
外部意識はスポーツのパフォーマンス向上に有利なことがこれまでの研究でわかっている。自分の身体の関節や筋肉を意識しながら動くよりも、外部に意識を向けた方が結果として効率的に身体が動くようになる。
★被験者
若い男性。トレーニング経験無し。30名(完走27名)。
※自分なりの筋トレのやり方が身についていると、筋トレ時の意識の仕方を研究者側の指示通り行わないかもしれないので、トレーニング経験無しの人を被験者にしたとのこと。
★グループ分け
筋トレ時の意識の仕方によって2グループに分ける
・内部意識グループ→「筋肉を搾り上げろ!」と指示
・外部意識グループ→「重りを持ち上げろ!」と指示
★トレーニング種目
・バーベルアームカール
・レッグエクステンション
各種目4セット/8-12レップを限界まで/セット間インターバル2分
★トレーニング期間・頻度
8週間・週3日
★食事
被験者は各自これまで通りの食生活を続ける。サプリメントは研究者側から支給されたもの以外は摂取禁止。
支給サプリメント:トレーニング日にホエイプロテイン(たんぱく質25g含有)を支給。被験者はトレーニング直後にこれを摂取。
★測定項目
・体組成:インピーダンス式体組成計
・筋肥大:上腕二頭筋と大腿四頭筋(大腿直筋と外側広筋)の厚みを超音波画像診断装置で測定。
・ストレングス:肘の屈曲と膝の伸展のアイソメトリックでの最大収縮力を測定。
★実験結果
・体組成
グループ間で有意差無し。
・筋肥大
上腕二頭筋のみグループ間で有意差ありで、内部意識グループの方が筋肉の厚みの増加率が約2倍になった(+12.4% vs +6.9%)。大腿四頭筋についてはグループ間で有意差無しだが、小さい効果量で外部意識グループが優位。
・ストレングス
グループ間で有意差無し。膝の伸展は小さい効果量で外部意識グループが優位。肘の屈曲は中程度の効果量で内部意識グループが優位。
★考察
筋肥大とストレングスの結果を効果量も含めて総合的に見ると、アームカール(肘の屈曲)は内部意識グループがはっきりと良い結果で、レッグエクステンション(膝の伸展)は外部意識グループがわずかに良い結果。
内部意識グループ参加者からは、アームカールは指示通り筋肉に力を入れやすいけど、レッグエクステンションは入れにくいとのコメントが聞かれた。一般的に腕は細かい作業が得意で、脚は筋肉群にまとめて力を入れて大きなパワーを発揮するのが得意なので、腕の方が個別の筋肉を意識して力を入れやすいのかもしれない。もしくは屈曲と伸展の違いで、脚もレッグカールだったら内部意識で力を入れやすいかもしれない。または、レッグエクステンションで絞り上げるように力を入れると、私の経験では内側広筋の活動が高まる感じがするので、測定箇所の大腿直筋と外側広筋には影響が出ていない可能性もある。
★コメント
絞り上げるように筋肉に力を入れてトレーニングを続けると、筋肥大が高まることが期待される。トレーニング次第では腕以外の筋肉も、内部意識で上手く絞り上げるように力を入れられるようになる可能性があるので、筋肥大を目指したい場合はトライしてみるのが良いだろう。
注意点としては、内部意識と筋肥大の関係を示す研究は、この研究しかまだ行われていないこと。信頼性の高い研究だと思うが、繰り返し再現されることで確度が高まる。
それと全ての筋トレ種目でこのやり方が効果を発揮するわけではなくて、現状では単関節種目の中レップ(8-12レップ程度)で個別の筋肉に力を入れることを意識しつつ筋トレすると筋肥大が高まると考えられる。
競技パフォーマンスの観点からは、個別の筋肉をアイソレートして力を入れる癖をつけると、身体全体の運動パフォーマンスが低下する恐れがあるので注意したい。BIG3のパフォーマンスを上げたい場合も外部意識でトレーニングを行う方が良いだろう。