プッシュ・プレスと、ロウ・プルのトレーニグバランスをどうすれば良いか。
動画:EricCressey.com: Should You "Balance" Pushes and Pulls?
https://www.youtube.com/watch?v=t9XKZRIIazc
この動画で Eric Cressey が言っているように、必要なトレーニグはその人のコンディションによって様々で、画一的な処方箋があるわけではない。
だが、ウェイトトレーニングを熱心にやっている人がバランスを取るにはどうしたら良いか、基本的な考え方は提示できると思う。
★懸垂ではベンチプレスとのバランスは取れない
単純に考えても、腕を前に動かす動作とバランスを取るには、腕を後ろに動かす動作(水平方向に引く動作)をするのが良い。腕を下に動かす動作である懸垂を行っても、ベンチプレスとバランスは取れない。
バランスのとり方についてもっと詳しく見ていく。ベンチプレスの動作を、肩関節と肩甲骨の動きに分けて考えると、
・肩甲骨:寄せる
・肩関節:腕を前に出す(水平方向に押す)
従って、ベンチプレスの拮抗動作は、
・肩甲骨:開く
・肩関節:腕を後ろに引く(水平方向に引く)
肩甲骨を開くのと同時に腕を引くのは非常にやりにくいし、日常生活やスポーツに役立つ動作とも思えない。従って、ベンチプレスを熱心に行う人が、ベンチプレスの動作とバランスを取るトレーニングをするのなら、
a) 肩甲骨を開く動作を伴うトレーニグ
b) 腕を後ろに引くトレーニグ
の2種類に分けて、トレーニグを行うのが良いだろう。
肩甲骨を開く動作を伴うトレーニグは、以下の関連記事に具体的なエクササイズ例が載っている。
関連記事:前鋸筋の動員
片腕ランドマインプレスがベンチプレスとバランスが取れる動作というのは変な感じがするかもしれないが、肩甲骨の動きを考えてみると、開くと寄せるで対になっている。一般的なウェイトトレーニングのプログラムは、「肩甲骨を開く動作」が欠如しているので、肩甲骨を開く動作を伴うエクササイズを積極的に取り入れることで肩関節の健康を保ちやすくなるだろう。
腕を後ろに引くトレーニグは、一般的なロウ種目で良いだろう。シーテッドローやpendlay rowなど。詳しくは以下の記事を参考に。
関連記事:ロウ・プルのやり方
★本格的なウェイトトレーニングで起こりやすい肩周りの偏り
BIG3+懸垂といった本格的なウェイトトレーニングで起こりやすい肩周りの偏り(骨の位置のズレと筋力のアンバランス)についても書いておく。
BIG3と懸垂での肩甲骨の動きに着目すると、
・ベンチプレス → 肩甲骨は寄せる(内転)。下方向(下制)に固定するケースも多い。
・バックスクワット → 肩甲骨は寄せる(内転)。下方向(下制)に固定。
・デッドリフト → 肩甲骨は下方向(下制)に固定。
・懸垂 → 肩甲骨は下方回旋。
BIG3と懸垂を熱心に行うと、肩甲骨が下方向に強く押し付けられることが続き、その結果肩甲骨がスムーズに動かなくなりやすい。ウェイトトレーニングに熱心で、なで肩になっている人は、この症状になっている可能性が高い。
高重量でのバーベルトレーニングを行う必要がない場合は、バックスクワットの代わりにゴブレットスクワット、ベンチプレスの代わりに腕立て伏せを行うと、肩周りの偏りが緩和される。トレーニング初心者の中高年にBIG3をやらせているパーソナルトレーナーをよく見かけるけど、あれはやめたほうが良いと思う。
★肩甲骨の下方向への偏りへの対処法
まずは肩周りのストレッチをしっかり行う。特に広背筋のストレッチ。
関連記事:肩周りのストレッチ
バランスを取るためのエクササイズは、肩甲骨の上方回旋で使われる筋肉を鍛える。上方回旋でどのような筋肉が使われるかは、以下の記事を参考に。
関連記事:ショルダープレス
ショルダープレスで上方回旋の動作を鍛えようとすると、三角筋など強い筋肉ばかり使って、肩甲骨周りの細かい筋肉を鍛えにくい。また既に肩関節の機能に問題が生じている場合はショルダープレスをきちんと行えず、肩関節の怪我のリスクが高まる。以下に紹介するようなエクササイズを行い、上方回旋の動作を鍛えると良い。
動画:ShoulderPerformance.com: Prone 1-arm Trap Raise
https://www.youtube.com/watch?v=3fK93Ul0da8
動画:EricCressey.com: Troubleshooting the Prone 1-arm Trap Raise
https://www.youtube.com/watch?v=jzRpo0mv328
僧帽筋下部を鍛えるエクササイズ。注意点は、腰を反らない、顎を引く、肩甲骨は前傾しない、腕だけを上げるのではなくて肩甲骨を動かすことを意識、広背筋や三角筋後部や僧帽筋上部から力を抜くことを意識する。
動画:EricCressey.com: Wall Slides with Overhead Shrug
https://www.youtube.com/watch?v=e5-rB6bYBr8
動画:EricCressey.com: Forearm WallSlides at 135 Degrees
https://www.youtube.com/watch?v=W4h4DuUxaQs
★上腕骨の内旋
懸垂では広背筋が鍛えられるが、広背筋は上腕骨を内旋させる働きがある。大胸筋も上腕骨を内旋させる働きがある。大胸筋と広背筋が強いと、上腕骨が内旋(つまり巻き肩)の状態になりやすい。ローテーターカフのトレーニグで外旋動作を鍛えろ、とよく言われるのはこのため。内旋動作を行うローテーターカフが弱っている場合もあるので、その場合は内旋のローテーターカフも鍛える。広背筋や大胸筋では内旋を行うといっても肩関節を安定させるのは難しいので、内旋を行うローテーターカフを鍛えて肩関節を安定させる。
関連記事:ローテーターカフの強化