9/28/2016

プランクのやり方

腰椎を少し曲げ、骨盤を後傾させる。 大腿四頭筋に力を入れて膝をロックし、臀筋に力を入れて骨盤の後傾を維持するとやりやすい。





こうすることで、

・身体が石橋と同じアーチ状になるので、背骨にかかる負荷が分散し腰を傷めにくい。

・腹直筋が短縮した状態になるので腹直筋に力を入れやすい。背骨ニュートラルの状態は腹直筋が伸びているので力を入れにくい。





参考サイト:
Anti-Ab Training
https://www.t-nation.com/training/anti-ab-training

The RKC Plank
https://bretcontreras.com/the-rkc-plank/

9/24/2016

デッドリフトにおける広背筋の重要性


参考サイト

Cueing Lat Activation For a Deadlift, or pretty much anything that needs lats
http://deansomerset.com/cueing-lat-activation-deadlift-pretty-much-anything-needs-lats/

Cueing Lat Activation For a Deadlift, or pretty much anything that needs lats
http://deansomerset.com/the-most-important-low-back-muscle/

The Importance of the Lats in the Deadlift
http://strengtheory.com/lats-in-the-deadlift/


★基礎知識
- 背骨の伸展(extension)は、背中を反らす方向の動き
- 背中の屈曲(flexion)は、背中を丸める方向の動き


★広背筋のデッドリフトへの寄与

大きく分けて2つ

◇胸椎の負荷を減らし上背部の姿勢を保ちやすくする

腕を下半身の方に引き寄せ、肩甲骨を下半身の方向に押し込むことで、荷重点を股関節方向にわずかに移動させ、股関節にかかる曲げモーメントを少し減らし、胸椎にかかる曲げモーメントを大幅に減らすことが出来る。


肩甲骨を下半身の方向に押し込む動き(専門用語だと肩甲骨の下制)を意識しにくい場合は、立った状態で胸を上にクイッと上げる動きをすると良い。同時に頭をやや後ろに動かすとやりやすい。


ちなみに他のトレーニング種目でも、体幹に強い負荷がかかる種目は大体この姿勢で行う。懸垂やローイングもこの姿勢の方が広背筋に刺激が入りやすい。胸を張るのではなくて、胸を上にクイッと。

ではなぜ肩甲骨を下制し、腕を引き寄せると、胸椎の負荷が減るかというと・・・

デッドリフト時の背中は片持ち梁だと考えられる。荷重点はバーベルと上半身の合成重心の真上(バーベルが十分に重ければバーベルの位置と近似)。重力は垂直方向にかかるので、荷重点からの水平距離(モーメントアーム)と、バーベル+上半身の重さ(荷重)の積が曲げモーメントになる。荷重点から離れるほど(デッドリフトの場合は股関節に近づくほど)、曲げモーメントは大きくなる。

strengtheoryの例を使うと、肩甲骨を下制し腕を引き寄せることで荷重点を1インチ股関節に近づけた場合、股関節(重りを持ち上げるのに動かす関節)は荷重点から遠いので、例えば水平距離が20インチ→19インチになると曲げモーメントは5%減る。一方で、胸椎は荷重点から近いので例えば5インチ→4インチになると曲げモーメントは20%も減る。上の図では赤の矢印がbeforeで、緑の矢印が1インチ股関節に近づけたafter。

このため上背部の姿勢をキープしやすく、また股関節が重りに打ち勝つのに必要な力も少しだが小さくなるので、デッドリフトを効率的に行うことができる。

このメカニズムから、バーよりも肩が前に出て、腕が鉛直にならない方がデッドリフトは効率的になるのだが、バーベルが重たいとこの腕の角度をキープするのに広背筋はかなりの力が必要になる。従って高重量のデッドリフトでは腕はほぼ鉛直になる。

トップレベルになると上背部を意図的に曲げるフォームになることもあるみたいで、これも力学的にどう有利になるのか解説されているけど、技術的な難しさと怪我のリスクを考えると、趣味でトレーニングする人はあまり真似しない方が良いと思う。


◇腰椎の伸展をサポートし下背部の姿勢を保つ

広背筋は背骨の中の方から下の方や肩甲骨にくっついていて、もう片方は上腕骨にくっついている。これだけ大きい筋肉なので、下背部のS字姿勢を保つのに重要な働きをする。下の画像はWikipediaから。




★広背筋の収縮を意識する方法

背中を壁にベタッとつけ、息を吐きながら手のひらで壁を強く押す。下背部のアーチを作らずベタッと壁につける。


ストレートアームのプルダウンの動き



★広背筋に効かせやすいトレーニング

パラレルグリップでのプルダウン。股関節を伸ばした状態で、背中を伸ばし、臀筋(尻)に力をいれながらやると良い。座った状態(股関節が曲がった状態)でのラットプルダウンは広背筋を使うのが難しい。

個人的に広背筋に負荷をかけやすい種目は、デッドリフトとナローパラレルグリップでの懸垂なので、これはよくわかる。



☆コメント

Greg Nuckols(strengtheory)が言うには、「広背筋は(脊柱起立筋と違って)複数の椎骨にまたがってつながっているわけではないから、脊柱の伸展方向の力はほぼなく、また広背筋は上部胸椎にはつながっていないから胸椎の伸展には関わらない」とのことだけど・・・

私が考えるには、下背部は腰椎がS字を維持している限りは、広背筋の収縮で下背部には伸展方向の力が働き、バーベルによる曲げモーメントに抵抗するのでは。



ただし下背部が丸まると伸展の力は働かなくなり、逆にやや屈曲方向の力が働くのでは。広背筋がストレッチされて力を入れにくいが、水泳のスタートのときのように背中を丸めて広背筋に力を入れてみるとそうなると思う。

自分で背中を丸めたり伸ばしたりした状態で広背筋に力を入れて試してみたけど、たぶんこれで合ってるかと。脊椎がS字のときは広背筋の収縮で下背部を面でサポートできる感じ。脊柱起立筋だけだと線でサポートする感じになる。

なのでDean Somersetの言うとおり、広背筋は下背部に伸展方向の力を加え下背部の姿勢を保つのに非常に重要な働きをすると思う。

上背部は、肩甲骨を下制することで鎖骨を引っ張り胸椎の伸展を保つのに寄与するのではないだろうか。ただこの力は弱いかも。モーメントアーム短縮による曲げモーメントの削減の方が大きそう。

9/17/2016

女性の糖質制限

てんかん患者の治療にケトジェニックダイエット(厳格な糖質制限食)が使われていて、てんかん患者を対象とした研究が結構ある。どれも1日の炭水化物摂取量が100gを大幅に下回る食生活にしている。

個人差はあるがケトジェニックダイエットはてんかんの発作の抑制に効果的なのだけど、副作用がいくつかあって、これは疾患の無い人がケトジェニックダイエットを行った場合にも起こると思われる。特に女性は高い確率で月経異常になるので注意が必要。


◇The Ketogenic Diet: Adolescents Can Do It, Too
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.1528-1157.2003.57002.x/full

被験者:てんかん患者の思春期の男女。開始時点の平均年齢は約14歳。

45%(9名)の女性に月経異常が起こった。うち6名が無月経、3名が思春期の遅れ。9名のうち4名が体重減少(残り5名は体重減少していない)。1名は月経を起こすためにホルモン治療を受けた。8名はケトジェニックダイエットの終了後は月経は正常に戻った。1名はケトジェニックダイエット終了後に月経過多になった。


◇The Ketogenic Diet for Intractable  Epilepsy in Adults: Preliminary Results
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1528-1157.1999.tb01589.x/pdf

被験者:男性2名 女性9名。年齢19-45歳。

女性9名全員が月経異常になった。男女11名中5名が体重減少したが、カロリーを増やすことでこれに対処した(それ以降は体重減少無し)。ケトジェニックダイエットの終了後は全員が月経は正常に戻った。


◇Long-term use of the ketogenic diet in the treatment of epilepsy
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-8749.2006.tb01269.x/pdf

ケトジェニックダイエットは、他には便秘や骨が脆くなることや腎結石になりやすいといった副作用がある。



★コメント
女性は体重を維持するだけのカロリーを摂取していても、厳格な糖質制限食を行うと非常に高い確率で月経異常になる。

厳格な糖質制限食では、身体は飢餓時に発動する緊急システムを使うことになる(詳しくは関連記事の[書籍] The Ketogenic Diet を参考)。健康の維持にはある程度のストレスが必要なので、たまにケトジェニックダイエットやファスティングをするのは健康に良いかもしれない。また極度に低い体脂肪率にするために、炭水化物の摂取をサイクルさせ一時的にケトーシスを起こすダイエットは、数ヶ月といった短い間ならそれほど問題にはならないだろう。だけど飢餓時の緊急システムをずっと使い続けるのは、健康に良いとは思えない。

個人的には、厳格な糖質制限食は、特定の疾患を持つ人以外には勧めません。体重を維持するだけのカロリーを摂取する場合でもそうです。最低でも1日100-150gの炭水化物を摂取した方が良い。

1日100-150gの炭水化物の摂取を糖質制限と呼ぶ人も見かけるけど、例えば1日1500kcalのダイエットをするとして、炭水化物125g(500kcal)、タンパク質100g(400kcal)、残りの600kcalを脂質で摂取するとしたら、これは糖質制限ではなくて単なるバランス型ダイエットになる。

炭水化物でも脂質でも摂り過ぎて体内で余剰が出れば、健康に害を及ぼす。バランスの取れた食生活をして、適度に運動をするのが最も健康に良いだろう。

糖質制限は、頭を使わずに摂取カロリーを抑えつつタンパク質の摂取量を確保できるので、その点は優れていると思う。ダイエットで重要なのは摂取カロリーが消費カロリーを下回るようにし、タンパク質を十分に摂ること。でも糖質制限で痩せると考える人は、体重の増減のメカニズムを間違って理解するケースが大半だろうから(糖質でインスリンが出るから太る云々)、壁にぶつかるとどうしようもなくなる。またダイエットの際はウェイトトレーニングを行うと筋肉を維持増強できるので、ウェイトトレーニングは出来るならやったほうが良い。ウェイトトレーニングを行うには炭水化物を摂取した方が楽だし効果的。

減量の効果の観点からは、厳格な糖質制限食は男性なら体脂肪率10%程度、女性なら17%程度を下回ってさらに減量したい場合には意味があると思うけど、それ以上の体脂肪率の人がやってもバランス型ダイエットに比べて効果的かというと恐らく意味がない。



関連記事:
[書籍] The Ketogenic Diet

炭水化物の摂取をサイクルさせるダイエット

9/14/2016

健康な骨と心臓血管のための食生活ガイドライン

Nutritional strategies for skeletal and cardiovascular health: hard bones, soft arteries, rather than vice versa
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4809188/

2016年の論文。先にまとめを書いて、その後に詳しく書いていきます。

★先にまとめ
カルシウムはサプリメントよりも食事から摂取する。特に骨を含む食品を多く食べると良い。骨を含む食品とは、例えばイワシや鮭(もちろん骨ごと)、鶏の軟骨、ブロス(骨のスープ)など。一般的なカルシウムサプリメントは心臓血管系に悪影響が出る可能性がある。

乳製品もカルシウム摂取に良いが、牛乳の飲み過ぎは乳糖不耐症やガラクトースの過剰摂取による悪影響の可能性があるので、牛乳の飲み過ぎは避け、チーズやヨーグルトを優先的に食べると良い。

十分な量の動物性タンパク質を摂取し、1日にカルシウム約1000mgを摂取することを目指す。カルシウム摂取量は多すぎても健康にネガティブな影響がある。

果物と野菜の摂取を増やす。体内システムをアルカリ化し骨の健康を保つ効果が期待される。またナトリウムの摂取量が多く、カリウムの摂取量が少ないと、心臓血管系の疾患リスクが上がるので、この面でも果物や野菜を積極的に食べるのは効果的。種子類や豆類も良いだろう。

ビタミンDも重要。日光にあたるか食品やサプリメントで摂取する。

ビタミンK1・K2も骨と血管の健康に良いと考えられる。色の濃い葉物野菜や種子類、納豆やチーズやカード(凝乳)などの発酵食品にビタミンKが豊富に含まれるので、これらの食べ物の摂取を増やすと良いだろう。


★骨と心臓血管の疾患
- 50歳以降、閉経後の女性は年に0.7-2%の骨量が減少し、男性は0.5-0.7%の骨量が減少する。45歳から75歳の間に、平均で女性は30%の骨量を失い、男性は15%を失う。
- 骨密度の低下と心臓血管系の疾患リスクの上昇は強く相関している。例えば骨粗相症の人は冠動脈疾患のリスクが高く、逆もまた然り。


★牛乳をカルシウムの主な摂取源とする場合のリスク
- 乳糖不耐症の人はあまり乳糖を摂取できない。
- 牛乳の摂取量がいくつかの疾患、具体的には白内障や卵巣がん、前立腺がん、パーキンソン病、タイプ1糖尿病と相関することが疫学調査で示されることがある。
- また乳糖は体内でグルコースとガラクトースに分解され、ガラクトースが炎症と酸化を増加させるという研究もある。
- 安全を期するなら、牛乳をたくさん飲んでカルシウムを摂取しようとするのは避け、乳製品はヨーグルトやチーズを主に食べるのが良いだろう


★ベジタリアン食の骨への影響
- 多くの植物や穀物や豆類に含まれるシュウ酸やフィチン酸がカルシウムの吸収を阻害する。
- ヴィーガンは骨折リスクが高いことがいくつかの研究で示されている。カルシウムの摂取量が少ないことと、吸収率が低いことが影響していると考えられる。


★カリウムとナトリウム
- 植物や加工度が低い食品にはカリウムが多く含まれている傾向がある。加工度の高い食品にはナトリウムが多く含まれている傾向がある。
- ナトリウムを多く摂取すると心臓血管系の疾患のリスクが上がる。
- 心臓血管を健康に保つには、野菜や果物や豆類やナッツなどカリウムの豊富な食品を多く食べ、味の濃い加工度が高い食品は控えめにするのが良い。


★ビタミンK
- 骨の強度を増すことで、骨を健康にするのに役立つと考えられている。
- 血管の石灰化は心臓血管疾患の予測因子。ビタミンKの摂取で血管の石灰化を防ぐことができると考えられる。
- ビタミンKは、色の濃い葉物野菜や種子類、納豆やチーズやカード(凝乳)などの発酵食品に多く含まれている。


★カルシウムサプリメントの問題点
- 一般的なカルシウムサプリメントは、炭酸カルシウムやクエン酸カルシウム。リン酸塩の吸収を阻害することで、骨が脆くなるのを防ぐと考えられるが、これまでの研究だと骨折リスクの低下について強いエビデンスが出ているわけではない。
- カルシウムサプリメントの摂取は心筋梗塞リスクと相関すると報告する研究もある。
- 血清カルシウム濃度の上昇は、頸動脈のプラークの厚み、動脈と大動脈の石灰化、そして心筋梗塞の発症と相関するという研究がある。500-1000mgのカルシウムサプリメントの摂取後に血清カルシウム濃度が一時的に上昇することが観察されている。
- 対照的に、食事からカルシウムを摂取した場合のカルシウム濃度の上昇はずっと小さい。
- カルシウムサプリメントと心臓血管疾患を結びつける他のメカニズムとしては、冠動脈の石灰化、血管拡張の阻害、動脈の硬化の増大、血液凝固の亢進。


★骨を食べる利点
- 骨に含まれるカルシウムはカルシウム・ハイドロキシアパタイトで、非常に効果的に骨を形成する。
- またカルシウムとともにマグネシウム、リン、ストロンチウム、亜鉛、鉄、銅、コラーゲン、アミノグリカン、オステオカルシンなどを摂取でき、頑強な骨の形成をサポートする。
- イワシや鮭(もちろん骨ごと)、鶏の軟骨、ブロス(骨のスープ)など動物の骨を積極的に食べ、カルシウムを摂取すると良いだろう。
- サプリメントで摂取するなら、一般的な水溶性のカルシウム塩ではなくて、ハイドロキシアパタイトのが良いだろう。カルシウム・ハイドロキシアパタイトとビタミンDの投与で骨の厚みが大きく増したという研究がある。


☆コメント
一般的なカルシウムサプリメントが骨を強くするか微妙な感じで、心臓血管系の疾患リスクを上げるネガティブな効果があるというのが新たな発見だった。栄養なんてサプリで摂ればいいだろうという人間の浅知恵を嘲笑うかのような人体のメカニズム。こういう例はよくあって、たいていは健康のためには肉や魚や野菜や果物や豆類や種子類や乳製品などをバランスよく食べ、加工度の高い食品を食べ過ぎず、適度に運動しましょうという常識的で平凡なガイドラインになる。食物繊維やフィトケミカルなどの効果がわかってきたのも最近だし、今後も同じようにホールフードに含まれる栄養について新たな発見があることでしょう。長期的な健康を考えるなら、食事に対してこのようなアプローチ方法は危険だと思う(栄養失調よりはマシだが)。

ヨーグルトなら牛乳の飲み過ぎによるデメリットが無いみたいに書かれているけど・・・ヨーグルトは乳糖がだいぶ残っている。まあ牛乳をがぶ飲みするのは簡単でも、ヨーグルトを大量摂取するのはかなり頑張らないと難しいので、ヨーグルトを優先的に食べればガラクトースの過剰摂取は避けられると思う。牛乳も毎日1リットルとか飲まない限りは問題ないでしょう。こういう研究を知ると、特定の食品を少しでも食べると身体に毒になる、という考え方をしてしまう人がいるけど、そういうのは病的になるので止めたほうが良いでしょう。チーズについては、カルシウムは豊富だけどカロリーと塩分の摂り過ぎに注意が必要。カッテージチーズは脂質少ないけどカルシウムも少ない。

骨の摂取には、骨ごと食べられる魚の缶詰が便利だと思う。イワシや鮭や鯖の缶詰。安いし、オメガ3脂肪酸も豊富に含まれるし、タンパク質も摂取できる。すばらしい栄養価とコストパフォーマンス。小魚も良いと思う。

それとウェイトトレーニングが骨密度を高めるのはよく知られているので、骨の健康のためにはウェイトトレーニングも行うとなお良い。心臓血管系にはたしか有酸素運動が効果的(うろ覚え)。



関連記事:
カルシウム・乳製品が体組成変化に与える影響

高タンパク食の健康への影響(骨への影響について記述あり)

9/08/2016

筋肥大トレのピリオダイゼーション

前回の記事(プラトー打破とピリオダイゼーション)の続き。

筋肥大目的のトレーニングにピリオダイゼーションを取り入れるメリットを書いていきます。


★同じ内容のトレーニングを続けるデメリット
種目やレップレンジが同じトレーニングを続けると・・・
- メンタル面: 飽きる。意欲的にトレーニングに取り組めるかどうかは、トレーニングの効果に影響する。
- フィジカル面: レップレンジごとに筋肉に入る刺激と適応する組織が変わってくると考えられるので、筋肥大を最大化したいなら、低レップ(1-5レップ)も中レップ(6-12レップ)も高レップ(15レップ以上)もやった方が良い。


★レップレンジへの身体適応
筋肥大をもたらす主な三つの刺激は、
- メカニカルテンション
- 代謝ストレス
- ダメージ

メカニカルテンションは低レップと中レップで良い刺激が入る。代謝ストレスは中レップと高レップで良い刺激が入る。

ダメージはエキセントリック動作でよく起こるとされてる。特に不慣れな動作で起こりやすい。ダメージにフォーカスする場合は、コンセントリックの1RM超えの負荷をかけてエキセントリック動作をやると効くと思われるが、負荷が大きいので長期間続けられるトレーニングではなく、リターンがどれだけあるかもわからない。個人的には、通常の挙げて下ろすトレーニングでエキセントリック動作を丁寧にやれば十分だと思う。

筋肥大の要素は、
- 筋原線維の肥大: 収縮して力を発揮する組織が太くなる。
- 筋形質の肥大: 毛細血管やミトコンドリアやグリコーゲン貯蔵量などの増加。高レップで筋形質の肥大が起こりやすいだろう。


★トレーニングへのフィードバック効果
高レップで代謝ストレスへの耐性を上げる事で、中レップでこなせるレップ数が上がる。また低レップで高強度トレに慣れることで、中レップでより強度の高いトレーニングを行える。従って、低レップも高レップもやることで、より質の高いトレーニングをこなすことが出来る。


★レップレンジ毎のトレーニング方法
- 低レップはコンパウンド推奨。アイソレートの低レップは怪我のリスクが高い。
- 中レップはコンパウンドでもアイソレートでも良い。
- 高レップはアイソレート推奨。コンパウンドの高レップは心肺機能やスタビライザーがボトルネックになりメインターゲットとなる大筋群を追い込みにくい。

一回のセッション中のトレーニングの順番は、低レップ→中レップ→高レップにする。


★筋肥大関連の身体能力のピラミッド
ストレングス(筋力)と筋肥大(筋量)とワークキャパシティはピラミッドの関係になっている。
土台がワークキャパシティ。ワークキャパシティとは、トレーニングセッションでどれだけトレーニングをこなせるか、次のトレーニングセッションまでにどれ だけ回復できるか。身体の適応はこなせるトレーニングの質と量が上限になる。そして回復が追いつかないと継続的にトレーニングをこなせない。

回復力はワークキャパシティの拡大で向上するが、栄養と睡眠を十分に確保することも重要。またトレーニング以外のストレス、例えば仕事やプライベートなどのストレスもワークキャパシティに影響する。ストレスがキツイときはワークキャパシティが縮小していると考え、トレーニングを全体的に軽くしたり、特定の筋肉や種目にター ゲットを絞って他は維持程度に軽くトレーニングし、トータルのトレーニング量を抑えた方が良いだろう。

トレーニングへの適応として筋肥大が起こる。基本的には、筋肉が太いほど強い力を出せる。

神経系とフォームの効率性を高めることで、太くした筋肉から強い力を引き出せる。神経系の適応とフォーム改善が上限に達したら、より強い力を発揮するにはより筋肥大しないといけない。


★筋肥大トレーニングのイメージ化

筋肥大トレーニングの内容を台形のイメージで考える。横幅がボリュームで、縦方向は上が高強度トレーニング、下が低強度トレーニング。

例えば中レップはバランス型なのでこのような台形。


低レップはこんな形





トレーニングを続けると、ワークキャパシティと筋肥大とストレングスがトレーニング内容に適応する。


初心者は中レップのみのトレーニングでも良いだろう。これで問題なく伸びていくし、この段階ではフォームを身につけることが最も重要なので、中レップが向いている。

5×5(5セット×5レップ)のようなボリュームが少ない低レップトレーニングは、ある程度続けると伸び悩む。



そうしたら、中レップと高レップを中心としボリュームを増やしたトレーニング内容にすると良いだろう。こうすることでワークキャパシティと筋肥大の土台を大きくすることが出来る。


前述したように筋肥大目的のトレーニングでは、全てのレップレンジのトレーニングを行うのが良いと考えられるが、長期的に均した時に中レップのトレーニングボリュームが最も多くなるのが良いだろう。中レップはメカニカルテンションと代謝ストレスのバランスが良く、怪我のリスクが低く、疲労も溜まりにくい。


★ピリオダイゼーションの例
ある程度トレーニングに慣れてきたら、期間を分けて特定のレップレンジにフォーカスすると良いだろう。

数ヶ月を一区切り、1-3週間を各レンジにフォーカスしたトレーニングを行う。

例えば、各週のトレーニングボリュームの振り分けを以下のようにする。
1週目: 中レップ4割、高レップ6割
2週目: 低レップ2割、中レップ6割、高レップ2割
3週目: 低レップ4割、中レップ4割、高レップ2割
4週目: デロード

トレーニングの強度とボリュームを下げるデロードの週を定期的に入れると良い。例えば3週ハードトレーニング続けたら1週デロード。デロードは疲れを抜いて体力を回復させる以外にも、トレーニングへの感受性を回復させる効果があるとされている。

各部位を週に複数回トレーニングするなら、トレーニング日ごとにレップレンジを変えるDUP(Daily Undulating Periodization )という方法もある。具体例は以下の記事で紹介した研究が参考になる。

関連記事:レップ数を変化させるトレーニングの筋肥大効果


その他関連記事:
筋肥大トレの変数調整

筋肥大のメカニズム