9/13/2024

筋トレのウォームアップセットの強度設定についての研究

低強度と高強度のウォームアップセットでは、どちらがメインセットのパフォーマンスが上がるのかを比較した研究を見ていきます。(stronger by scienceのメルマガにあったネタです)


(1)High-load and low-volume warm-up increases performance in a resistance training session
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1360859224004017

被験者:若い男性 トレーニング経験有り

種目:ベンチプレス、インクラインレッグプレス、ワイドグリップラットプルダウン

ウォームアップの種類
(a)15レップ×1@40%10RM(10RMの重量の40%の重量で15レップ)
(b)10レップ×1@60%10RM(10RMの重量の60%の重量で10レップ)
(c)5レップ×1@80%10RM(10RMの重量の80%の重量で5レップ)

手順:ウォームアップ→2分休憩→測定

測定:10RMの重量で限界まで行う 2分インターバルで3セット トータルボリュームを測定


<結果>
合計ボリューム(総レップ数×重量)は、5レップ×1@80%10RMのウォームアップが最も大きかった。






(2)The Role of Specific Warm-up during Bench Press and Squat Exercises: A Novel Approach
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7558980/?ck_subscriber_id=699589358

被験者:若い男性 トレーニング経験有り

種目:スクワットとベンチプレス(いずれもスミスマシン)

ウォームアップの種類(80%1RMをトレーニング重量とする)
(a)6レップ×1セット@40%トレーニング重量→1分インターバル→6レップ×1セット@80%トレーニング重量
(b)6レップ×1セット@40%トレーニング重量
(c)6レップ×1セット@80%トレーニング重量

手順:ウォームアップ→3分休憩→測定

測定:6レップ×3セット@80%1RM セット間インターバル3分 限界セットではなく挙上速度などを測定(最速での挙上を指示)


<結果>
平均挙上速度については、スクワットの1セット目は(a)40%+80%ウォームアップが高い。2,3セット目は(b)の80%ウォームアップが高い。80%ウォームアップは、1セット目はそこまで速度が高くないので、ウォームアップが1セットだけだとスクワットの場合は温まりきらないのかもしれない。40%ウォームアップは1セット目から3セット目まで挙上速度が遅く、ウォームアップが不十分だったと考えられる。


ベンチプレスは、3種類のウォームアップで平均挙上速度に差は無かった。スクワットと違ってウォームアップの種類で差が出なかったのは、使われる筋肉の量、動作の複雑性が影響しているのかもしれない(スクワットのほうが多くの筋肉が使われるし、スミスマシンを使った筋トレ的なベンチプレスは単純な動き)。最高挙上速度に達するまでの時間は、(a)40%+80%が、(c)40%に比べると短かった(よく温まっていたと考えられる)




(3)Effect of warm-up protocols using lower and higher loads on multiple-set back squat volume-load
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11243969/

被験者:若い男性 トレーニング経験有り

種目:スクワット(スミスマシン) 

ウォームアップの種類と手順
最初に全員が 8レップ×1セット@45%1RM(コンセントリックとエキセントリックそれぞれ2秒のテンポ)を実施。2分休んでから、
(a)3レップ×1セット@90%1RM(最速挙上)→10分インターバル→スクワット限界セット測定 
(b)6レップ×1セット@45%1RM(最速挙上)→10分インターバル→スクワット限界セット測定 
(c)スクワット限界セット測定

測定:75%1RMの重量で限界まで行う 90秒インターバルで3セット トータルボリュームを測定


<結果>
有意差は無かったが、合計レップ数と合計ボリューム(重量×総レップ数)は、(a)の高強度ウォームアップが最も多かった。「90%1RMという高強度のウォームアップをいきなり行うのは怪我リスクがあるので、低強度で最速挙上のウォームアップで高い効果が得られるなら怪我リスクが低くて良いのでは?」という流れで研究を行っているのですが、最速挙上でも低強度だと効果はあまり高く無さそうです。




コメント

低強度よりも高強度のウォームアップのほうが、メインセットのパフォーマンスが高まるという結果になっています。体感でも、ウォームアップでメインセットに近い重量を持たずにメインセットを開始すると、筋肉が十分疲れる前に動かなくなってしまいレップ数が少なくなる現象が起きるので、経験則とも一致する結果です。

研究だと、スミスマシンを使って、ウォームアップが1セットか2セットの研究デザインが多いですが、実際の運用だと、フリーウェイト(BIG3)はフォームを確認しながら、数セットかけてウォームアップをしていったほうがいいと思います。最後のウォームアップセットが、メインセットの重量の80%~100%になるのを目安にすると良いでしょう。時間がなくてウォームアップセットを少なくしたい場合は、高強度のウォームアップセットを優先すると良いですね。

(2)の研究で、ベンチプレスよりもスクワットのほうがウォームアップによる差が出ているのが興味深いです。個人的な感覚では、ベンチプレスのウォームアップはバーの軌道とフォームを意識、スクワットのウォームアップはレップ数多めで身体の温めを意識(アセンディングセットも良い)、デッドリフトはスクワットやレッグプレスで身体を温めてから低レップで神経系を意識(トップシングルをやってからメインセットも良い)、でやっていくとメインセットがいい感じになります。

それと、経験則でのBIG3のウォームアップの考え方は、

・強度が低めだったらウォームアップセット数は少なくてOKで、強度が高かったらウォームアップセット数は増やします。例えば、メインセットが60%1RMだったら、20%1RM→40%1RMとかでいいですが、メインセットが90%1RMだったら40%1RM→60%1RM→75%1RM→85%1RMみたいな感じになります。

・絶対重量が重くなるほどウォームアップセット数は多くなります。どちらもメインセットが60%~70%1RM程度の強度として、メインセットが100kgなら60kg→80kgでいいと思いますが、メインセットが200kgなら、60kg→100kg→140kg→180kgみたいなウォームアップが良いでしょう。

マシンは、フリーウェイトの後に補助種目としてやるなら、ウォームアップセットなしか、やっても1セットでいいと思います。1種目目にマシンなら、ウォームアップは1セット~3セットくらいですね(3セットは、いきなり高負荷だと関節を痛めそうな場合。レッグプレスとか)。

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