自然派志向でメラトニンは使いたくないという方に。
(1)Nutrition Strategies to Promote Sleep in Elite Athletes: A Scoping Review
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12567717/
エリートアスリートにおける睡眠促進のための栄養戦略という論文を中心に記事を書いています。この論文では、被験者がエリートアスリートの研究に絞ってレビューしています。運動をハードにしている人に参考になると思います。
食品において、睡眠サポートの効果が期待されるメカニズムは、メラトニンが食品に含まれる、もしくは食品に含まれるトリプトファンやセロトニンからメラトニンが合成されて睡眠を促す、というものが多いです。
トリプトファンやメラトニンが含まれる食品で実験したら偶然に効果が出ただけの可能性もあります。特に、プラシーボとの比較ではなく、これまでの生活と、その食品を摂取した生活との比較だと、生活条件が変わったことから効果が出た可能性があります。
各食品・栄養素の睡眠サポート効果の期待度を、大中小の3段階に分けて書いていきます。
効果の期待度 大
<キウイフルーツ>
エリートアスリートが就寝1時間前にキウイフルーツを2個食べるのを4週間続けたら、睡眠の質と量が改善されたという研究があります。ただ、プラシーボとの比較ではなくて、これまでの普段の生活と、キウイフルーツを摂取するようになった生活との比較なので、実験に参加することにより生活が変わった可能性もあります。
(2)The Impact of Kiwifruit Consumption on the Sleep and Recovery of Elite Athletes
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10220871/
キウイフルーツには、メラトニン [24 µg/g]が含まれているとのことです。他には抗酸化物質と葉酸が含まれていて、これらが炎症を抑制したり不眠症を改善したりする可能性があります。24 µg/gだと、2個(約200g)のキウイフルーツにはメラトニンが4.8mg含まれることになりますが・・・・本当ですかね。これだとメラトニンサプリメント並の量になり、この量のメラトニンサプリメントを摂取すると1時間後にはかなり怠さと眠気を感じます。でも、キウイフルーツを食べてもそのような怠さと眠気は感じません。
[24 µg/g]という数値は上の(2)の論文に出てきて、その根拠が以下の論文となっているのですが、中身が読めないので確認できません。
(3)Chronic insomnia
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22265700/
メラトニン以外でキウイフルーツの摂取が睡眠サポートにつながるメカニズムの候補としては、以下のようなものが挙げられています。
1. キウイフルーツにはフェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、グルタミン酸、そしてセロトニン [5.8 µg/g] が含まれています。これらは体内でさらに代謝され、ドーパミン系・セロトニン系・GABA系の神経化学物質を生成します。これらの神経化学物質は、睡眠と覚醒のサイクルの調節に重要な役割を果たしています。
2. グリーンキウイフルーツにはアクチニジンという酵素が含まれています。この酵素は、アクチニジンを含まないキウイフルーツと比較して、成人において血中アミノ酸濃度のピークをより早く上昇させることが示されています。そのため、神経化学物質へと代謝される生体利用可能なアミノ酸の濃度を高める可能性があります。
3. キウイフルーツは生体アミン系の反応を増強することによって睡眠を改善する可能性があります。このことは生体外(試験管内)の研究で示されています。
被験者がアスリートではない研究でも、夕食時に生、もしくは乾燥キウイフルーツの粉末(皮含む)を食べることで睡眠の質が改善された研究があります。いずれも生キウイフルーツ2個分の量です。これは水(コントロール)と比較しています。
(4)Acute effects of fresh versus dried Hayward green kiwifruit on sleep quality, mood, and sleep-related urinary metabolites in healthy young men with good and poor sleep quality
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10043399/
不眠症の学生を被験者にして、キウイフルーツと梨(コントロール)を比較した研究では、主観的な睡眠の質と日中機能についてはキウイ優位でした。客観的な睡眠指標では、キウイと梨では有意差は無し。
(5)The effects of kiwi fruit consumption in students with chronic insomnia symptoms: a randomized controlled trial
https://link.springer.com/article/10.1007/s41105-017-0095-9
<タートチェリージュース>
48時間でタートチェリージュース30mlを5回飲んだら、睡眠が改善されたという研究があります。タートチェリーは他の果物と比べてアントシアニンやフィトケミカルを比較的多く含み、抗酸化作用および抗炎症作用があります。
(6)Effects of Short-Term Intake of Montmorency Tart Cherry Juice on Sleep Quality after Intermittent Exercise in Elite Female Field Hockey Players: A Randomized Controlled Trial
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9408103/
タートチェリージュースの摂取は、運動によって引き起こされる筋肉損傷後の指標(クレアチンキナーゼなど)のレベル改善に良い影響を与えることが示されていて、激しい運動後の疲労回復を促進する可能性があります。
(7)Influence of tart cherry juice on indices of recovery following marathon running
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19883392/
(8)The Effects of Montmorency Tart Cherry Concentrate Supplementation on Recovery Following Prolonged, Intermittent Exercise
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4963917/
タートチェリーは、メラトニンとトリプトファンを含んでいます。メラトニンの含有量を調べると、[2.1–13.5 ng/g]という数値が出てきます。
(9)The Effect of Tart Cherry on Sleep Quality and Sleep Disorders: A Systematic Review
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12438961/
タートチェリーの摂取で睡眠指標が改善されたという研究もいくつかあります。
(10)Effects of a Tart Cherry Juice Beverage on the Sleep of Older Adults with Insomnia: A Pilot Study
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3133468/
(11)Effect of tart cherry juice (Prunus cerasus) on melatonin levels and enhanced sleep quality
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22038497/
<牛乳と乳製品(女性のみ)>
日本のオリンピック選手を対象とした研究では、牛乳と乳製品の消費頻度が高い(週5回以上)女性アスリートは、主観的な睡眠の質が良いという研究があります(相関)。男性アスリートでは相関が見られませんでした。
(12)Association of Frequency of Milk or Dairy Product Consumption with Subjective Sleep Quality during Training Periods in Japanese Elite Athletes: A Cross-Sectional Study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31061287/
アスリートではない人を対象とした大規模調査でも、高頻度(一日一回以上)で牛乳を飲む女性は、低頻度(週1未満)の女性よりも不眠症のリスクが低いことが示されています。
(13)The association between milk and dairy products intake and insomnia symptoms among Japanese adults in community-based cohort
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39319405/
想定されるメカニズムは、ミルクタンパク質に含まれるトリプトファン(→セロトニン→メラトニン)です。
効果の期待度 中
<タンパク質とトリプトファン>
理屈の上では、トリプトファンが豊富なタンパク質を摂取することで、トリプトファン→セロトニン→メラトニンの合成が増えて睡眠にプラスになるはずですが、トリプトファンに着目した研究では効果はあまり出ていません。
普段の睡眠が足りていたり、十分にタンパク質を摂取している場合は、上乗せ効果が出ないのかもしれません。また、トリプトファンの脳への輸送は他のアミノ酸と競合するため、タンパク質を多く摂取してもそれだけトリプトファンが脳に多く送り込まれてメラトニン合成が増えるわけではない可能性があります。
(14)Evening Whey Protein Intake, Rich in Tryptophan, and Sleep in Elite Male Australian Rules Football Players on Training and Nontraining Days
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34875624/
<α-ラクトアルブミン(女性のみ)>
α-ラクトアルブミンは、主に牛乳の乳清(ホエー)に含まれる主要なタンパク質で、トリプトファンを豊富に含みます。
女性ラグビー選手を被験者とした研究では、入眠潜時を短くする効果がありました。
(15)The effect of α-lactalbumin consumption on sleep quality and quantity in female rugby union athletes: a field-based study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37077794/
就寝前のα-ラクトアルブミン摂取は、睡眠に効果なしという研究もあります。
(16)Presleep α-Lactalbumin Consumption Does Not Improve Sleep Quality or Time-Trial Performance in Cyclists
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32698123/
<プロバイオティクス(男性のみ)>
プロバイオティクスとプラシーボの比較で、プロバイオティクスグループは筋肉痛と脚の重さが軽減されたという研究があります。筋肉痛が軽減されると、睡眠が改善される可能性があります。
(17)Probiotic supplementation elicits favourable changes in muscle soreness and sleep quality in rugby players
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32847731/
腸内細菌叢(腸内フローラ)は、セロトニン、GABA、メラトニンといった神経伝達物質を調節することで、睡眠の質に影響を与える可能性があります。
非アスリートを対象とした研究でも、プロバイオティクスの摂取で睡眠が改善したという研究があります。
(18)Daily intake of Lactobacillus gasseri CP2305 improves mental, physical, and sleep quality among Japanese medical students enrolled in a cadaver dissection course
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1756464617300543?via%3Dihub
想定メカニズムからすると、プロバイオティクスが睡眠改善に効果があるとしても、それは即効性のものではなくて、長期間に渡って摂取することが必要だと考えられます。
<亜鉛、鉄、ビタミンB6、B12、マグネシウム(特に女性)>
これらの微量栄養素は、メラトニンの合成に関わったり、体内の睡眠機構で重要な役割を果たします。月経のある女性は鉄や亜鉛が不足しやすいため、これらの微量栄養素を積極的に摂取していくと良いでしょう。
<夕食のタイミング>
夕食から就寝までの時間が空きすぎると、トータルの睡眠時間が短くなります。
夕食から就寝までの時間が短すぎると、中途覚醒が増えます。
<総摂取カロリー>
摂取カロリーが足りないと、睡眠の質と量が低下する恐れがあります。
効果の期待度 不明(あまり期待できなそう)
<就寝前の炭水化物摂取>
理屈の上では、高GIの炭水化物を摂取することでインスリン分泌を増やし、トリプトファンの競合となるアミノ酸が筋肉に取り込まれることで血中の競合アミノ酸が減り、脳へのトリプトファンの輸送量が増え、睡眠をサポートするはずです。しかし、炭水化物の摂取による睡眠への影響は一貫していません。
まとめ
効果の期待度と入手のしやすさからすると、夕食から就寝前の時間にキウイフルーツを食べるのがおすすめですね。
近所のスーパーでキウイフルーツを探してみたら、ジョージア産のものが安く売られていました。他にはアメリカ産のものもありました。キウイフルーツといえばニュージーランドのイメージだったので意外でした。
食事については、摂取カロリーが多すぎても少なすぎても睡眠に悪影響が出るリスクがあります。夕食の時間帯は、普通のタイミング(就寝の3-4時間前)が良さそうです。普通の量を、普通に食べていれば良いでしょう。微量栄養素が不足しないように気をつけたいです。
今回の記事の内容は、睡眠改善効果があるとされる食品や栄養素を評価するというよりも、効果があるのか判断が難しいものを見極める際に活用するのが適しています。
たとえば、期待度の高いキウイフルーツやタートチェリージュースであっても、睡眠薬のような強い作用があるわけではありません。さらに、期待度が中程度以下の栄養素については、機能性食品やサプリメントとして販売されているものもありますが、実際のところ、その効果は限定的である可能性が高いと考えられます。
もし本当に強い効果があるのであれば、「運転前には摂取しないでください」といった注意書きが付されるはずです。この点からも、これらの食品や栄養素の作用は穏やかなものにとどまると考えるのが自然でしょう。
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