2/23/2026

メラトニンサプリメントの効果 睡眠サポートとエルゴジェニックエイド

メラトニンサプリメントについての現状のエビデンスと、個人的な使用感を書いた記事です。メラトニンサプリメントの使用を推奨しているわけではありませんので、なにかあっても自己責任でお願いいたします。


メラトニンとは

メラトニンは、脳の松果体から夜間に分泌される睡眠ホルモンで、体内時計(サーカディアンリズム)を調整し、深部体温を下げて自然な眠りを誘う作用があります。

内因性メラトニンの分泌は、通常、就寝の約2時間前から上昇を開始し、深夜2時から4時の間にピークに達した後、起床に向けて急速に低下していきます。

メラトニンの合成は、アミノ酸であるトリプトファンからセロトニンを経て行われ、その分泌は視床下部の視交叉上核(SCN)によって厳密に制御されています。SCNは網膜からの光情報を受け取り、周囲が暗くなると松果体へ信号を送ってメラトニンの放出を促進し、光に曝露されるとその分泌を抑制します。

腸管粘膜でもメラトニンが作られます。これは周囲の明暗の環境とは関係がありません。食事と関係していて、腸内細菌叢にも影響を及ぼすようです。

メラトニンは体内時計の調整にとどまらず、強い抗酸化作用や抗炎症作用を持ちます。そのためアンチエイジング、免疫力向上の効果が期待されていて、運動パフォーマンス面では疲労の軽減効果があるのではないかと考えられています。



加齢によるメラトニン分泌量の低下


中高年になってくると、松果体からのメラトニンの分泌量が低下してきます。そのため眠りが浅くなったり、夜中に何度も目が覚めたりします。




(1)Is Melatonin the “Next Vitamin D”?: A Review of Emerging Science, Clinical Uses, Safety, and Dietary Supplements
https://www.mdpi.com/2072-6643/14/19/3934



メラトニンサプリメント

体内で生成されるメラトニンの量は、一晩で0.1-0.9mg程度です。市販されているメラトニンサプリメントは3mgや5mgの容量が多く、体内で生成される量を大きく超えています。1mg以下の容量のメラトニンは特許を取られているため、ほとんどのメーカーはそれ以上の容量で売っているようです。

メラトニンサプリメントは、日本国内では市販されていません。メラトニンサプリメントを手に入れたい場合は、iHerbで個人輸入をするのが最も手軽です。



メラトニンサプリメントの睡眠サポート効果

睡眠障害の有無や年齢、投与タイミングによっても異なりますが、メタアナリシスでは、メラトニンサプリメントには入眠を早めて、睡眠時間を長くする効果が示されています。


(2)Optimizing the Time and Dose of Melatonin as a Sleep-Promoting Drug: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials and Dose−Response Meta-Analysis
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jpi.12985


メラトニンサプリメントの投与量

上のメタアナリシスだと、4mg付近が効果のピークです。4mgは体内の生成量を大きく超える容量のため、まずは1mg程度から試すのが安全です。



メラトニンサプリメントの投与タイミング

経口投与後にメラトニンの血中濃度がピークに達するまでの時間を調べた研究では、速放性メラトニンで平均約50分、徐放性メラトニンで約167分という数値が出ています。ただ、血中濃度の変化は投与量によっても変わってきます。徐放性のメラトニンサプリメントは、「二層構造」や「タイムリリース」といった文言が書かれて、価格が少し上がります。何も書かれていなければ、速放性です。

投与タイミングは、一般的には就寝の30-60分前ですが、上のメタアナリシスだと推奨の投与タイミングが就寝の3時間前となっています。

メラトニンサプリメントを使用した体感だと、飲んでから1時間くらいで結構だるくなってくるので、3時間前には飲みたくないかなと個人的には思います。覚醒レベルが低下すると、夜に出来る活動に制約が出てきます(たとえば寝る前に読書をしたくても眠くて読めなくなるとか)。

メタアナリシスでは、不眠症患者は投与タイミングを早めにすると入眠がスムーズになると書かれているので、不眠症患者ではない人は1時間前くらいの投与で良いかもしれません。就寝直前の投与だと睡眠リズムが後ズレするリスクがあるので、就寝直前は止めたほうが良いでしょう。

個人的なおすすめは、就寝1時間前付近で試してみて、良い眠りと良い目覚めが得られるか反応を見ながら調整していくことです。



メラトニンサプリメントが睡眠サポートとして効果を発揮する状況


<睡眠に問題がある>
・不眠症
・睡眠の質に不満がある


<不規則な睡眠スケジュール>
・時差ボケ
・交代制勤務(夜勤のある仕事)


<中高年になり眠りが浅くなった>
中年 (40-50代)の睡眠の特徴は、入眠はスムーズですが、早朝に目覚めやすいことです。

中年の不眠症患者に速放性メラトニン3mgを投与することで、早朝の目覚めが30分改善したという研究があります。

(3)Efficacy of melatonin for sleep disturbance in middle-aged primary insomnia: a double-blind, randomised clinical trial 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33157425/

この研究は速放性ですが、理屈の上では、「入眠に問題はなく、早朝に起きしてしまう中年」のケースでは、速放性よりも徐放性のメラトニンのほうが、夜間に血中メラトニン濃度が持続するため良いかもしれません。


60代以降はさらにメラトニンの分泌量が低下してきます。

高齢者はメラトニンの血中濃度が上がりやすいため、2mg以下の投与が推奨されています。

ただ、高齢者の場合は、メラトニンの鎮静効果で、ふらついて転倒することによる骨折リスクの上昇があります。これは睡眠薬でも同様です。身体能力が低下してくる高齢者は、自己判断で飲まず、まずは医師に相談するのが良いでしょう。

(4)Should Melatonin Be Used as a Sleeping Aid for Elderly People?
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6699865/

(5)Melatonin, hypnotics and their association with fracture: a matched cohort study 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27496941/



メラトニンサプリメントを使用する前に行うこと

サプリメントに頼る前に、まずは睡眠に適した環境と行動を整えることが重要です。

<睡眠衛生>
・寝る前は、薄暗くて静かな環境で落ち着いて過ごす。
・夕方以降にカフェインや大量のアルコールを摂取しない。
・寝る直前に大量に飲み食いしない。
・室温は暑すぎず寒すぎず。

<不眠症に対する認知行動療法>
・刺激統制法: 「寝室は眠る場所」という意識を取り戻す(寝る時以外は布団に入らない)。
・睡眠制限法: 布団にいる時間を制限し、睡眠効率を上げる。
・認知再構成: 「眠らなければ」という強迫観念や睡眠に関する不安・誤解を修正する。

メラトニンサプリメントにはそれなりに効果はありますが、専門家は手放しでのメラトニンサプリメントの使用は推奨していません。


メラトニンサプリメントの副作用

メラトニンは、従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系やZ薬)と比較して副作用が少なく、乱用や依存のリスクが低い安全な代替選択肢とされています。また、メラトニンをサプリメントとして長期間摂取しても、体内の自然な分泌能力を奪いません。

ただ、高用量・長期間の使用で感受性が低下する可能性は指摘されています。

(6)DO MELATONIN SUPPLEMENTS STOP ENDOGENOUS PRODUCTION?
https://www.phytomelatonin.org/endogenous-production


メラトニンの主な副作用は、頭痛、めまい、日中の眠気です。その他の稀な副作用として、悪夢や鮮明な夢、吐き気、一過性の気分の落ち込みが挙げられます。

メラトニンは、血液を薄くする作用、血糖降下作用、血圧降下作用、抗けいれん作用、鎮静作用、抗うつ作用、免疫抑制作用を有する医薬品、栄養素、またはハーブと相互作用したり、それらの影響を受けたりする可能性があります。

(7)Adverse events associated with oral administration of melatonin: A critical systematic review of clinical evidence
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0965229918309373


2025年にアメリカ心臓協会(AHA)で発表された大規模な追跡研究(5年間、約13万人対象)では、メラトニンの長期使用(1年以上)に関する新たなリスクが提示されました。

不眠症でメラトニンを1年以上服用しているグループは、非服用グループと比較して心不全の診断リスクが89%高く、心不全による入院リスクは3.5倍でした。この研究は観察研究であり、メラトニンそのものが原因か、あるいは重度の不眠症や併存疾患(うつ病、不安症)が原因であるかは特定されていません。

(8)Abstract 4371606: Effect of Long-term Melatonin Supplementation on Incidence of Heart Failure in Patients with Insomnia
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circ.152.suppl_3.4371606



エルゴジェニックエイドとしてのメラトニンサプリメント

近年は、メラトニンの持つ抗酸化作用・抗炎症作用から、エルゴジェニックエイドとしての研究も行われています。

抗酸化作用で疲労を抑えられる可能性から、日中にメラトニンを投与してから運動パフォーマンスを測定した研究があります。しかし、これらの研究では運動パフォーマンスを向上させる効果は示されていません。

前日の夜にメラトニンを飲んでから寝て、翌朝に運動パフォーマンスを測定する研究では、運動パフォーマンスが向上したとする研究が複数あります。運動パフォーマンスについては、持久力と瞬発力を測定している研究が多いです。また、主観的な疲労感が低減されたという研究も複数あります。

前夜にメラトニンを投与した研究については、睡眠の質と量が高まることで運動パフォーマンスが向上したと考えられます。前日の夜にハードな運動をしたケースでは、メラトニンの抗酸化作用・抗炎症作用で疲労が軽減された可能性もあります。

実用面だと、夕方以降に激しい運動をすると睡眠に悪影響が出ることがあるので、メラトニンを投与することで睡眠の質と量を高めて、回復を促進できる可能性があります。また、抗酸化作用・抗炎症作用で疲労を軽減できる可能性もあります。


関連記事:夕方以降の運動による睡眠への影響 


以下は、メラトニンをエルゴジェニックエイドとして使用した研究の例です。

<効果あり>

(9)Melatonin Supplementation Enhances Next-Day High-Intensity Exercise Performance and Recovery in Trained Males: A Placebo-Controlled Crossover Study
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12197174/
被験者:若いアスリート 12人
メラトニン 6mg
前夜21:30にメラトニンorプラシーボ
22時就寝
朝7時起床
7:30朝食
9-10時に運動パフォーマンス測定
運動:5mシャトルラン 5m間隔を30秒間ひたすらダッシュで往復し距離を測定 これを6回 インターバル35秒
結果は、睡眠の量と質は、メラトニンとプラシーボで変わらない。
5mシャトルランは、メラトニングループは回を追うごとの距離の落ち込みが大幅に抑えられた。運動前夜のメラトニン摂取は持久力アップに効果。
主観的な回復度合いは、運動前後から72時間後まで全てのタイミングでメラトニングループのほうが高かった。
筋肉痛は、メラトニングループのほうが低かった


(10)Melatonin ingestion after exhaustive late-evening exercise attenuate muscle damage, oxidative stress, and inflammation during intense short term effort in the following day in teenage athletes 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31790604/
ティーンエイジャーのアスリート。
スプリントテスト(35m×6本、10秒インターバル)
20時までにスプリントテスト→10mgメラトニンorプラシーボを飲んでから寝る→翌朝7時半に同じスプリントテスト
翌朝のスプリントテストはメラトニングループのほうがパフォーマンスが高かった。


(11)Melatonin ingestion after exhaustive late-evening exercise improves sleep quality and quantity, and short-term performances in teenage athletes 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29846091/
ティーンエイジャーのアスリート。平均15.4歳
ヨーヨーテスト(ヨーヨー間欠性回復力テスト) シグナル音に合わせて20m往復→10秒ジョグ 
20時ヨーヨーテスト→メラトニン10mgorプラシーボを飲んでから寝る→翌朝に反応時間や注意力のテスト、ジャンプ力、ヨーヨーテスト、握力テスト、5段跳びテストを実施。
睡眠の質と量はメラトニングループのほうが良かった。
反応時間、ヨーヨーテスト、5段跳びテストはメラトニングループのほうがパフォーマンスが高かった。
主観的疲労感と筋肉痛はメラトニングループのほうが低かった。


(12)Nocturnal Melatonin Ingestion Improves Soccer Players' Short-Term Maximal Performances on the Following Day
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38329497/
若いサッカープレイヤー。平均22.9歳。
8mgのメラトニンorプラシーボを飲んで寝る→翌朝に認知テストと運動テスト
反応時間、握力、スクワットジャンプ、無酸素性運動能力(ウィンゲートテスト)はメラトニングループのほうがパフォーマンスが高かった。主観的疲労感はメラトニングループのほうが低かった。



<効果なし>

(13)Effects of resistance exercise session after oral ingestion of melatonin on physiological and performance responses of adult men 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16506061/
6mgのメラトニンorプラシーボ→60分後から80分間の筋トレ
筋トレの前後にジャンプ力と、ベンチプレスとスクワットの1RMを測定。
メラトニンとプラシーボでパフォーマンスに差なし。


(14)Effects of melatonin ingestion on physical performance and biochemical responses following exhaustive running exercise in soccer players
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8919877/
若いサッカープレイヤー 平均17.5歳
17時にテスト
6mgメラトニンorプラシーボ摂取→30分後に運動テスト(最大酸素摂取量速度で限界まで走る)
パフォーマンスに差なし。


(15)Are there hangover-effects on physical performance when melatonin is ingested by athletes before nocturnal sleep? 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11354528/
夜に5mgメラトニンorプラシーボ飲んでから寝る→翌朝に握力と自転車漕ぎテスト
パフォーマンスに差なし


(16)Consumption of a 5-mg Melatonin Supplement Does Not Affect 32.2-km Cycling Time Trial Performance 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28557857/
5mgメラトニンorプラシーボ→15分後から長距離自転車漕ぎ
パフォーマンスに差無し。



<メタアナリシス>

(17)Timing-Dependent Effects of Melatonin Supplementation on Exercise Performance and Exercise-Induced Muscle Damage: A Systematic Review and Meta-Analysis
https://www.frontiersin.org/journals/nutrition/articles/10.3389/fnut.2026.1742464/abstract

運動実施のタイミングから6時間以上前に摂取すると効果が出やすい(つまり寝る前にメラトニンを摂取して、翌日に運動する)
高用量(6-10mg)の方が効果が高い。
持久力をやや向上。
瞬発力を僅かに向上。
運動による筋肉のダメージを軽減。



メラトニンサプリメント使用についての個人的な見解


<睡眠サポートとして恒常的に使用する場合>
私自身は、夜中にトイレに2回起きるの日常になっていて、睡眠の質に不満があるため、以前よりメラトニンを摂取していますが、自己判断で飲んでいます。他人に勧めるかというと、責任を持てないので勧めません。「睡眠に不満がある場合は、まずは医師に相談しましょう」という一般論を書いておきます。

メラトニンは、依存性や耐性はほぼ無いため、気軽にトライは出来ます。高齢者の方は、ふらつき転倒による骨折リスクがあるので気軽にトライしないほうが良いです。心不全リスクについては、不眠症状の重い人ほどメラトニン使用率が高かったことによる疑似相関ではないかと現時点では考えていますが、私は既に使用している身なので、現状を肯定するバイアスがあります。


<エルゴジェニックエイドとしてピンポイントで使用する場合>
ハードな運動をして、翌日にもまたハードな運動をする必要がある場合は、その夜に高用量(6-10mg)のメラトニンを飲むと翌日のパフォーマンスが上がりやすいです。

夕方以降にハードな運動をすると交感神経が優位になり眠りにくくなるので、メラトニンで入眠をサポートするのは有りだと思います。

研究だと高用量で効果が出ていますが、翌朝のダルさに個人差があるので、3mgくらいから試してみるのが良いかもしれません。


<運動によるダメージの軽減>
メラトニンの抗酸化作用・抗炎症作用により、運動後の筋肉損傷の指標であるクレアチンキナーゼ(CK)レベルの減少が示された研究があります。血液指標には効果が無かったとする研究もあります。

長時間のハードな運動を行い、10mgといった高用量を飲めば、ダメージ軽減の効果が出やすくなるかもしれませんが、メラトニンにはそこまで強力な効果はないと思われます。むしろ、体感ではっきりわかるほどに筋肉のダメージが軽減されるほうが怖いです。強力な効果のある薬物は気軽に飲めません。また、抗炎症作用が強すぎても、適応に悪影響が出ます(筋肉のダメージは、その後の適応に必要なプロセスです)。

体感ベースの回復度合いは、ぐっすり眠れるかのほうが重要だと思われます。


<アンチエイジングとしての効果>
アンチエイジング方面は、動物実験と生体外の研究が主ですが、おそらく効果は有りそうな雰囲気です。ただ、アントシアニン、ルテイン、カロテンといったフィトケミカルも強力な抗酸化作用を持ち、アンチエイジング効果が期待できるため、野菜と果物を意識して食べるほうが重要だと思います。植物性メラトニンのほうが、合成メラトニンよりも抗酸化作用が強いという研究がありますが、植物性メラトニンに含まれるフィトケミカルが要因のようです。あとは、アンチエイジングに重要なのは運動ですね。


<メラトニンサプリメントの個人的な使用感>
私は、以前からナウフーズの3mgの速放性メラトニンを寝る前に飲んでいます(iHerbで購入)。でもまあ夜中に1,2回トイレに起きます。入眠はスムーズになります。夜中の起きる回数を減らすには、室温管理と、水分摂取量のコントロールのほうが重要な感じがします。



2錠(6mg)飲むと、ダルさと眠気で翌朝の目覚めが悪いです。1時間くらいすれば普段通りの覚醒度になるため、日中への悪影響はないと思われます。研究でも、メラトニン摂取による翌日の認知能力・運動能力への悪影響は無いと結論づけられています。

今回、メラトニンサプリメントについて調べてみて、徐放性5mgのものを数回試してみましたが、今のところは速放性3mgとあまり変わりませんでした。継続使用で効果が高まることもあるようなので、引き続き使ってみます。

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