7/13/2014

減量ペースの違いによる体組成変化と運動パフォーマンス変化









Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21558571

ここで全文PDFをダウンロードできる。



遅い減量と速い減量をするグループに分けて、減量ペースの違いが体組成と運動パフォーマンスに与える影響を調べている。2011年の論文。先に結果を書くと、ゆっくり減量した方が除脂肪体重と運動パフォーマンスに有利。


★2つの目標減量ペース
遅い減量:週あたり体重の0.7%ずつ減らしていくようカロリー制限をする。体重70kgだったら毎週0.5kg。
速い減量:週あたり体重の1.4%ずつ減らしていくようカロリー制限をする。体重70kgだったら毎週1kg。


★被験者
年齢:18-35歳
運動歴:エリートアスリート
人種:ノルウェー人
人数:男性11人、女性13人

被験者の競技種目はフットボール、バレーボール、クロスカントリースキー、柔道、柔術、テコンドー、ウォータースキー、モトクロス、自転車、陸上、キックボクシング、体操、アルペンスキー、スキージャンプ、フリースタイルダンス、スケート、バイアスロン、アイスホッケー。

被験者の詳しい身体データはTable 1に。


★食事
- 体組織1gあたり7kcalのエネルギーに相当すると仮定して、目標減量ペースから一日あたりのカロリー不足量を算出。
- 一日あたりの摂取量は、カロリーの25%をタンパク質、55%を炭水化物、20%を脂質。詳しいマクロ栄養素の配分はTable 2に。
- タンパク質摂取量は1.2-1.8g/kg
- 食事回数は、軽食も含めて一日5-7回。
- ミルクプロテインと炭水化物の含まれたドリンクをトレーニング後30分以内に摂取。
- サプリメントについては、クレアチンの摂取を禁止。マルチビタミンとタラの肝油(必須脂肪酸)が処方された。


★トレーニング
- 実験は各アスリートのオフシーズンに行われた。
- トレーニングは、週4回のストレングストレーニング。それに加えて各競技種目の専門トレーニングが平均週15時間程度。
- ストレングストレーニングの内容は、二分割で各部位週に2回トレーニング。メイン種目とアイソレートされたサブ種目を実施。
- 脚のメイン種目はクリーン、スクワット、ハックスクワット、デッドリフト。
- 上半身のメイン種目はベンチプレス、ベンチプル(bench pull)、ローイング、懸垂、ショルダープレス、体幹種目。
- セット数・レップ数: トータル12週間の場合、最初の4週間が3セット・8-12レップ、次の4週間が4セット・6-12レップ・次の4週間が5セット・6-10レップ。減量ペースが速くて実験期間が短い場合はそれぞれ期間を短縮。


★測定
- 体組成測定方法: DEXA
- 運動パフォーマンス測定: 40m走、垂直跳び(countermovement jump)、1RM(ベンチプレス、ベンチプル、スクワット)


★結果
<実験期間>
遅い減量: 8.5±2.2週
速い減量: 5.3±0.9週

<1日のカロリー不足量>
遅い減量: 19%±2%
速い減量: 30%±4%

<体組成変化>
・体重減少
遅い減量: 5.6%±0.8%(週平均0.7%±0.4%)
速い減量: 5.5%±0.7%(週平均1.0%±0.4%)

・体脂肪量減少
遅い減量: 31%±3%
速い減量: 21%±0%

・除脂肪体重変化
遅い減量: +2.1%±0.4%
速い減量: -0.2%±0.7%

・男女別の除脂肪体重変化(遅い減量グループと速い減量グループを合わせたデータ)
女性: +1.8%±0.4%
男性: 0.0%±0.7%

・男性の除脂肪体重変化
遅い減量: +1.7%±0.4%
速い減量: -2.0%±1.0%

<体組成変化の詳細>
- 遅い減量での除脂肪体重の増加は、主に上半身の除脂肪体重増加(+3.1%±0.8%)によってもたらされた。これは、一般的に上半身の方がレジスタンストレーニングに対しての反応が良い、さらにアスリートの場合は下半身はすでに十分鍛えられていて伸びしろがあまりない、といった理由によるものであろう。
- 女性の方が除脂肪体重が増加。体脂肪率が高めなことが影響しているのかもしれない。

<運動パフォーマンス>
Figure 2の通り。遅い減量の方が良い結果だが、遅い減量の方が実験期間が長いのでトレーニング期間も長い。測定種目全体の1RMを週あたりの変化で見ると、1.4%±0.7%と1.3%±0.5%でほぼ同じ結果になっている。

<目標達成について>
減量ペースの目標は週あたりの体重減0.7%と1.4%だが、達成できなかった人もいた。遅い減量では3人が、速い減量では5人が目標レンジから外れた。今回のデータには、達成できなかった人たちのデータも含まれている。達成できなかった人たちのデータを除外しても、結果に有意な違いはなかった。



☆感想☆
- サンプルサイズは小さいけど、ゆっくり減量した方が除脂肪体重と運動パフォーマンスに有利という結果が出ている。
- 実際の減量ペースの目安としては、体脂肪率15-20%程度の男性の場合、週に体重が1%以上減る減量ペースだと、レジスタンストレーニングを行っていても除脂肪体重に悪影響が出るリスクが高い。この実験は被験者が運動歴があって通常の体脂肪率なので、ボディメイクを続けている人にとって参考になると思う。
- 一般的に、体脂肪率が高いほうが減量時に除脂肪体重を維持・増加しやすく、体脂肪が減少しやすい。また、運動歴が少ない方が、減量時にレジスタンストレーニングを取りいれた場合に除脂肪体重の維持・増加が行いやすい。
- この実験でのタンパク質摂取量はそれほど多くないので、減量ペースが速くてもタンパク質の摂取量を2-3g/kgに増やせばある程度は除脂肪体重の減少を抑えられるかもしれない。
- 論文中で引用されている2004年のUmeda他(弘前大学)の実験では、被験者は38名の柔道選手、期間20日、減量ペース1.2kg/週、ストレングストレーニングは2時間/週、という実験条件で、減少した体重の61%が体脂肪、残りが除脂肪体重という結果になったとのこと。無料で読めないので私は中身は読んでないけど、減量ペースが速い、ストレングストレーニングのボリュームが少ないといった点が、除脂肪体重の減少につながってる可能性がある。


関連記事:
減量時のタンパク質摂取量による体組成変化の違い

0 件のコメント:

コメントを投稿