10/29/2014

カルシウム・乳製品が体組成変化に与える影響

Role of calcium and dairy products in energy partitioning and weight management1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/79/5/907S.long

カルシウム・乳製品の摂取が体組成変化に与える影響についての論文。2004年の論文だけど総括的に書かれていて良いです。以下抄訳。


★カルシウム・乳製品を十分に摂取すると
オーバーカロリー時: 体脂肪の増加を抑える。
アンダーカロリー時: 脂肪分解の増加と代謝の維持に寄与する。

★想定メカニズム(効果が発揮される経路は他にもあると思われる)
細胞間のカルシウムイオンが、脂肪細胞の脂質代謝に関わる。細胞間カルシウムイオンの増加は脂肪合成を促進し脂肪分解を抑制する。低カルシウムの食事に反応して増加したカルシトリオールは、脂肪細胞のカルシウムイオンの増加を刺激し、脂肪蓄積を促進する。

★マウス実験
乳製品によるカルシウム摂取は、サプリメントによるカルシウム摂取よりも、体脂肪増加抑制と体脂肪減少の効果が高い。

★ヒト対象の疫学調査
老若男女問わずカルシウム・乳製品の摂取量と肥満度合いが逆相関することが多数報告されている。つまりカルシウム・乳製品を多く摂取する人ほど、肥満しない傾向がある。

★ヒト対象の介入研究
- 肥満の大人が対象の介入研究では、減量の際にサプリメントのカルシウムを摂取することで減量効果が高まった。乳製品を摂取した場合だとさらに減量効果が高まった。
- 乳製品の摂取量は3サービングで、一日トータルのカルシウム摂取量は1100-1300mg程度(サービングの量がよくわからないけど、食品成分表で各食品のカルシウム含有量を調べて摂取量を考えれば良いと思う)。
- カルシウム・乳製品摂取グループは、胴体部分の体脂肪減少の割合が高かった。
- 除脂肪体重は乳製品摂取が多いほうが維持された。
- 維持カロリーでの実験では体重変動なしでの体脂肪減少(体脂肪量-5.4%)という結果が出た。

★サプリメントと乳製品の効果の違い
カルシウムサプリメントよりも乳製品でのカルシウム摂取の方が減量効果が高いのは、おそらくアンジオテンシン変換酵素阻害剤といった生物活性化合物やホエイに含まれる豊富なBCAAが、カルシウムと相乗効果を発揮するためであろう。

★カルシウム・乳製品摂取が肥満対策になる理由
何かを厳しく制限する食生活は長期間続けにくい。現状にプラスアルファする食生活の方が続けやすく成功しやすい。例えばすでにある事例として、高血圧への対処としてナトリウムを制限する食生活は続けにくいが、フルーツや野菜や乳製品を積極的に摂取する食生活は続けやすく成功しやすいことがわかっている。これと同様に肥満対策では、カロリーを制限するダイエットは続けにくいが、カルシウムを積極的に摂取するダイエットが肥満問題への対策となるのならそれはとても有用な方法となるだろう。



☆コメント☆
成人は1日1000-1300mg程度のカルシウム摂取を目指せば良いのではないでしょうか。海外のRDAだとカルシウムの摂取量はそれくらいだし、介入研究でもそのくらいの摂取量で効果が出ている。たぶん必要量が満たされたら、それ以上摂取しても効果がさらに高まるわけではないだろうから、過剰摂取は良くないと思う。

介入研究の結果を見ると乳製品摂取はボディメイクにとって良いことだらけに見える。ただ、研究対象は肥満者なのが気になる。しかもアメリカの肥満者なので、日本人の感覚からすると尋常じゃないレベルの肥満だろう。従ってそれほど太って無い人が減量する時にどれだけ効果があるのかは不明です。

乳製品はカロリーがそれなりにあるので減量時には扱いが難しい。カッテージチーズはタンパク質量とカロリー面では優秀なのだけど、カルシウム含有量が少ない。

プロテインパウダーのカルシウム含有量はどうかというと、手元のオプティマム製品の成分表では、1スクープで1日の必要量を摂取できる割合がホエイが10%(100mgくらい?)、ミセラーカゼインが40%(400mgくらい?)と書いてある。

その時点で許容できるカロリーを考えて、牛乳、ヨーグルト、低脂肪乳、チーズ、プロテインパウダーなどを適宜組み合わせ、カルシウムを十分摂取できるよう調整すれば良いと思う。加工度が低い方が生物活性化合物の点では優れているだろう。

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