1. 継続性
ダイエットで最も重要なことは、消費カロリーが摂取カロリーを上回る状態を続けることである。不足した分のカロリーが、主に体脂肪と骨格筋を分解・燃焼することで賄われ、体重が減っていく。
特定の栄養素を食事から抜く、特定の食品群のみ食べるといったダイエットはカロリー収支をマイナスにしやすく、実行もしやすいので継続性に優れている。ただ、効率性や健康面で問題があるケースもあるし、特定の栄養素を抜いたから痩せるという間違った因果関係で理解すると、いずれは訪れる停滞期で行き詰まる。個人的には、ゆるくやるならこれらのダイエット方法は有用だと思うけど、イモ類や果物の摂取も禁止する厳格な糖質制限や原理主義的なマクロビオティックやパレオダイエットなどは、特定の疾患を持つ人以外が行うのは病的だと思う。下手すると摂食障害にもなるのであまり良い印象を持っていない。食事のおおまかな方針としては役に立つ方法も多いが、そうすると結局は、「加工度・精製度の低い食品(ホールフード)を中心にバランス良く食べ、カロリーオーバーしない食生活が健康によい」というごく当たり前の食事方針に収束する。
空腹感の抑制についての研究は、個人差と主観が入ってくるため興味が持てずあまり読んだことはないけど、一般的にはタンパク質の摂取量を増やすと空腹感が抑えられやすい傾向があるようだ。個人的には、カゼインを含むものを食べる、低カロリーで旨味成分のあるものを食べるといった方法が空腹感を抑えるのに効果を感じている。カゼインは卵やチーズ、脂質をカットしたい場合はカッテージチーズやカゼインプロテインパウダー(ミセラーカゼインがお薦め)。旨味成分のある食品は出汁の効いたスープや、パルミジャーノ等の熟成チーズを少量。
2. 効率性
そのダイエット方法が依拠する理論は生理学的に正しいのか、無駄な努力をせず効率的に結果を出せるか。例えば、糖質制限&ハードな筋トレで短期間で結果を出すことを謳うパーソナルトレーニング系のやり方は、グリコーゲン不足で無駄に苦しく筋肉も維持しにくいので、あまり効率的とは言えない。トレーニング歴のない体脂肪率の高い人なら筋肉減少は起こりにくく、ろくに食べずにハードなトレーニングを行えばカロリー収支のマイナスが大きくなるので体重は短期間で減るとは思うけど、その間はかなり辛いだろうし長期的な体重コントロールの方法を身につけるのも難しいだろう。そしてパワー系アスリートにこんなやり方をさせるのはマズイ(よく春先になるとプロ野球選手がこういった方法でダイエットしたというニュースが出てくる)。
3. 健康面
サラダのみ食べていてもジャンクフードのみ食べていても、カロリー収支がマイナスなら体重は減っていく。でもこういったダイエット方法は健康には良くないだろう。
健康によいダイエット方法の基本は以下の通り。
・タンパク質の摂取量を増やし、炭水化物と脂質の摂取をほどほどにする。
・加工度・精製度の低い食品を中心に、多品目をバランス良く食べる。
・ジャンクフードやお菓子やアルコールはほどほどに。カロリーコントロール出来るなら何を食べても良いが、これらの食品は微量栄養素が乏しいので食事の大半を占めるような食べ方はNG。大雑把な目安としては、摂取カロリーの1~2割まではこれらの食品を食べても問題ないと思う(私はお菓子もビールも好きです)。
・たいていのものは適度に食べれば問題は無く、食べ過ぎれば当然身体には毒となる。All or Nothing で考えない方が良い。
・筋肉量の維持のためにウェイトトレーニングを行う。健康面への効用もある(詳細は失念)。
・標準以上の体脂肪率の人にとっては有酸素運動は消費カロリーを増やす効果のみで優先的に体脂肪を減らす効果は無いが、ウェイトトレーニングとは異なる健康面への効用(たしか循環器系への効用)があるので、疲れを溜めない程度にやると良い。
8/30/2015
8/19/2015
栄養素の貯蔵と引き出し
★マクロ栄養素
多量に消費される栄養素。ビタミン・ミネラルなどはミクロ栄養素。
・炭水化物
・脂質
・タンパク質
・(アルコール)
★主なエネルギーの貯蔵場所
・炭水化物:肝臓と骨格筋にグリコーゲンとして貯蔵される。個人差があるが肝臓に50g程度、骨格筋に350-450g程度。カーボローディングを行えばもっと貯蔵できるが、最大限貯蔵しても一日の必要エネルギーに満たない程度。
・脂質:体脂肪。ほぼ無制限にエネルギー貯蔵でき、数ヶ月分の必要エネルギーを蓄えることも可能。
・タンパク質:筋肉や臓器。10-15kgくらい。身体機能の構成要素でもありエネルギー貯蔵場所でもある。分解してエネルギーを取り出すことはできるが、通常はエネルギーの貯蔵・引き出し場所としては用いられない。
・アルコール:身体には貯蔵できない。
★摂取栄養素が活動エネルギーに使われる優先順序
身体の貯蔵容量に対しての摂取量が大きいほど、優先的にエネルギーとして使われる。
貯蔵余地があまりない栄養素が入ってきたら、それは優先的に使われる。炭水化物は摂取量に対して貯蔵容量が小さいので優先的に燃焼されエネルギー利用される。タンパク質はその次。脂質はエネルギー利用の優先順序が低い。
タンパク質、炭水化物、脂質を含む通常の食事たくさん食べると、炭水化物、タンパク質が優先的にエネルギー利用され、あまったエネルギー分の脂質が体脂肪として貯蔵される。
炭水化物やタンパク質からも脂質を合成して体脂肪として蓄えることは出来るが、変換によりエネルギーの一部が失われる。飢餓との戦いで進化してきた人間の身体は、エネルギーを無駄遣いするようなことは避けるので、通常は炭水化物から脂質はあまり合成されない。グリコーゲン貯蔵を高水準にし、さらに炭水化物を大量摂取すれば脂質合成が活発に行われるようになる。アルコールは貯蔵できないので、最優先で代謝される。
★カロリー収支の原則
(カロリー収支) = (摂取カロリー) - (消費カロリー)
カロリー収支がプラスなら、余ったカロリーが身体に貯蔵される。
細かいことを言うと、食べたものの一部は消化吸収されずにウンコとして排泄されるし、糖尿病のように消化吸収された栄養素が利用されずに尿から排泄されるケースもあるが、簡便のため摂取カロリーを身体が利用するエネルギーとする。
お金の収入と支出のバランスと同じで、収入が支出を上回れば、余った分が貯蓄として増えていく。お金はいつ収入があっても、分割または一括して収入があっても、紙幣や小銭などどのような形であっても、トータルの収支バランスの結果が貯蓄の増減を決める。カロリー収支も同様で、食べる時間帯や一日の食事回数がどうであっても、エネルギーの形が脂質でも炭水化物でも、トータルのカロリー収支のバランスの結果が体重の増減を決める。
筋肉を例えるなら・・・自動車などの耐久財かな。生活を便利にするものだが、維持コストがかかる。貯蓄(体脂肪)が少なくなってくると、換金され支出に回される。
従って、夜食べると太るとか、食事回数を増やすと太りにくいだとか、食べる順ダイエットとか、GI値とか、MCT(※1)とかは体重増減の観点からはナンセンス。トータル収支がプラスなら余ったエネルギーが貯蔵され体重は増えるし、マイナスなら蓄えたエネルギーが引き出され体重が減る。ウェイトトレーニング無しの減量では、体脂肪と筋肉の両方が減少する。
※1:中鎖脂肪酸。通常の脂質よりも優先的に代謝される。厳密には、MCTは他の脂質よりも食事誘発性熱産生が大きいので、身体が利用できるエネルギーが同質量の他の脂質よりも少なくなり太りにくいとは言える。
ダイエットの時の食事は、タンパク質多めで、残りのカロリーを炭水化物と脂質からそれぞれほどほど摂取するのが良い。炭水化物が少なすぎるとレプチンレベルが低下し消費エネルギーの減少をもたらす。また、筋グリコーゲンレベルが低いと強度の高いウェイトトレーニングが行えず、筋グリコーゲンレベルが低いままだと筋肉が分解されやすくなり、筋肉の維持が困難になる。脂質(飽和脂肪酸)の摂取量が少なすぎるとテストステロンレベルが低下する。従って、炭水化物が少なすぎても脂質が少なすぎても、なるべく体脂肪を減らし筋肉を維持するという観点では非効率なダイエットになる。
食事回数は1日3回なら特に気にしなくて良い。1日1回だと絶食時に筋肉の分解→糖新生によるエネルギー供給が起きやすくなり、その分体脂肪が減少しにくくなる。1日2回の食事は、消化に時間のかかるタンパク質を意識して摂取し身体へのアミノ酸供給が維持されるようにすればOKだけど、考えるのが面倒な場合は1日3回食べましょう。
いわゆる飢餓モードは3-4日間絶食すればなるが、1食抜いたくらいではならない。食事量を少なくした後に一気に食べると、減っていたグリコーゲンと水分が回復し体重が大幅に増える。でもこれは体脂肪が何kgも増えたわけではない。体脂肪の増減と、グリコーゲン+水分の増減を区別することが重要。
★体脂肪の分解
通常の体脂肪率の人の身体においては、体脂肪の分解はボトルネックにならない。体脂肪の分解と貯蔵は日々行われている。時間当たりの消費エネルギーを考えれば、食後はエネルギー収支プラスで脂肪貯蔵と炭水化物貯蔵と筋肉合成(タンパク質貯蔵)が行われ、食間にはエネルギー収支マイナスになり貯蔵からの引き出し(分解・燃焼)が行われる。
体脂肪率が10%台前半(※2)になってくると、定期預金のように分解されにくい頑固な脂肪の問題が出てくる。これに対処するにはテクニックが必要になる。
※2:男性の場合。女性は+7%程度して考える
貯蓄がわずかしかないのにフェラーリや自家用ジェットを所有するような人は常識的な価値観からすると気違いじみているが、わずかな体脂肪で大量の筋肉を保有しようとするのはこれと似た行為であり、飢餓を避けようとする身体から見れば気違いじみている。そのためどうにかしてそれを避けようと、体脂肪率が低くなればなるほど、支出(エネルギー消費)を減らし、貯蓄(体脂肪)を守り増やし、筋肉を優先的にエネルギー源にしようとする。これに抵抗するには、ウェイトトレーニングで筋肉に負荷を与えこの組織をなるべく残すよう身体に指示する、分解されにくい頑固な脂肪を分解するような食事とトレーニングを行う、トレーニング(もしくは薬物)により摂取カロリーが脂肪ではなく筋肉になるべく回されるようにする、といった方法で減量を行う必要がある。
運動歴の無い体脂肪率の高い人は、貯蓄が豊富にあり車を持ってない人に例えられる。このような人は、トレーニングにより体脂肪減と筋肉増を同時に行うことができる。
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