★前鋸筋の基礎知識
前鋸筋の主な働きは、
・肩甲骨の外転:肩甲骨を開いて前に突き出す動き。
・肩甲骨の上方回旋:ショルダープレスなどで腕を上に挙げる時に必要となる肩甲骨の動き。以下の動画での肩甲骨の動き。
動画:Scapulohumeral Rhythm
https://www.youtube.com/watch?v=rpzBGlOEW4E
広背筋の使いすぎなどで肩甲骨が下制の位置に張り付いてあまり動かなくなっている場合、腕を上に挙げたり(ショルダープレスの動き)、腕を前に出したり(腕立て伏せの動き)するときに、上腕骨の動きに肩甲骨がついていかず、ボールとソケットがずれて、肩関節に痛みや違和感が出やすくなる。
本格的なウェイトトレーニングプログラムは、一般的にはBIG3や懸垂を中心として構成される。
しかし懸垂では広背筋が強く使われ、BIG3はどの種目も肩甲骨を下制の位置に固定しやすく、またベンチプレスは肩甲骨を固定したまま上腕のみを前に動かすため、BIG3や懸垂といった本格的なウェイトトレーニングを熱心にやればやるほど、プッシュ・プレス動作での上腕と肩甲骨の連動が失われやすくなる。
また菱形筋が過度に緊張して固く縮こまっていると、肩甲骨が寄って少し上がった状態になり、この場合も腕を上げたり前に出したりといった動作で、肩甲骨と上腕骨が連動しにくくなる。
そのため健康な肩関節の機能を保つには、肩甲骨周りのストレッチを行いつつ、前鋸筋に刺激を入れ、肩甲骨の突き出し・上方回旋を行う種目を積極的に取り入れるのが良い。
段階としては、
1) 肩甲骨がパッシブに動くようにする。
広背筋、菱形筋を中心として肩周りのストレッチを行う。
関連記事:肩周りのストレッチ
2) 肩甲骨をアクティブに動かせるようにする。
前鋸筋に刺激をいれて肩甲骨がプッシュ・プレス動作でよく動くようにする。
3) 上腕と肩甲骨の連動を脳に覚え込ませる。
前鋸筋を動員するプッシュ・プレス動作を繰り返し行い、上腕と肩甲骨が正常に連動して動くようにする。
★前鋸筋のエクササイズの基本
前鋸筋は腕を前に出して90度以上に挙げたポジションで負荷をかけると動員されやすい。
前鋸筋は意識して力をいれるのが難しい。肘を押し出すイメージで行うと前鋸筋が動員されやすい。手を押し出すイメージだと三角筋前部が動員されやすくなると思う。
いずれのエクササイズも臀筋に力を入れ、体幹を安定させ、腕を上げる時に腰が反って頭が前に出ないように気をつける。
★前鋸筋のエクササイズ例
上の方のエクササイズが前鋸筋にアイソレートで刺激を入れるエクササイズ、下の方のエクササイズが前鋸筋を動員する肩周りの複合動作。全てやる必要はないけど、順序としては上から下へ順にステップアップしていくと良いと思う。
動画:EricCressey.com: Short Plank with Reach Across and Under
https://www.youtube.com/watch?v=CuB2KC289r0
前鋸筋のアクティベーションと胸椎のローテーション。
動画:EricCressey.com: Bear Crawl Variations
https://www.youtube.com/watch?v=SJHw2nLEdL0
腕を前方向に90度以上に挙げたポジションで行う。三角筋前部のみで負荷を受け止めないよう注意する。
動画:Serratus Anterior Activation: Reach, Round, & Rotate
https://www.youtube.com/watch?v=hyfb9x7VJWE
肘を伸ばすのではなく、肘を前に押し出すイメージで、肩甲骨がしっかり動くことを意識する。胸椎はフラットにならず少し丸める。
動画:EricCressey.com: Serratus Wall Slides with J-Band
https://www.youtube.com/watch?v=gKxerg7TESQ
上のエクササイズの動きをゴムバンドで行う。
動画:Arm Care Lesson 24: Core positioning impacts scapular movement.
https://www.youtube.com/watch?v=o1eAv96wfdg
腕を前方向に90度以上に挙げたポジションでヨガプッシュアップ。
動画:EricCressey.com: Coaching the Landmine Press
https://www.youtube.com/watch?v=jCfcGei-NqM
片腕ランドマインプレス。やり方のコツは、腰を反らず体幹を安定、脇は締めず少し開ける、腕を引く際に身体より後ろに腕がいかない、腕を伸ばしたときに身体を前に倒す、三角筋前部のみで持ち上げず肩周り全体でプレス、首を前に突き出さず顎を引く。
このエクササイズは、ゴムバンドでやるのも良いと思う。ゴムバンドは自宅でもできるメリットがある。
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