12/19/2020

怪我をしにくいベンチプレスのやり方

怪我をしにくいベンチプレスのやり方について、いくつかポイントを書いていきます。 

 

1. 肩甲骨の位置

肩甲骨は可動範囲の下限まで下げます。それから、下げた状態をキープしながら寄せます。肩甲骨の下げ(下制)と寄せ(内転)だったら、下げを優先したほうが良いです。下制が緩むと肩の怪我をしやすくなります。

肩甲骨を最も寄せられるのは、肩甲骨を少し上に上げた位置ですが、その位置で寄せると脇が開いて肩を怪我しやすくなると思います。まず下げてから、できる範囲で寄せるイメージで肩甲骨を動かすと良いでしょう。


 

2. バーの握り方

バーをわしづかみにするのではなくて、掌底にバーを当てて握るようにします。掌底打ちをした時に、手首がグキッとならない場所にバーを乗せます。

バーを握った時の手首の角度は、一般的には手首と親指が直線上にあるくらいがやりやすいです。拳を握り込んでグーパンチをする時の手首の角度だと、手首を立てすぎです。


バーをわしづかみして、指でバーを握り込むと、脇が開いて、三角筋や僧帽筋上部に無駄な力が入って怪我をしやすくなります。肩に力を入れて腕力で押すようなフォームは怪我リスクが高いです。バスケのチェストパスのイメージでバーを押すと肩に優しいです。


握る手幅は狭めのほうが肩の負担が小さいです。私はリーチ(ウィングスパン)が190cmくらいですが、81cmのグリップマークに薬指を当てて握っています。


3. 手と前腕での負荷の受け方

手首を立て過ぎず、返しすぎず、前腕の軸方向に力がかかるようにします。バーのおおよそ真下に肘がくるようにします。

手の左右方向で見た場合も、掌底の真ん中あたりで負荷を受けたいです。親指側で受けると親指の付け根が痛くなることがあります。ガングリオンという格好いい名前のコリコリができることもあります(経験あり)。小指側で負荷を受けると、TFCC(三角線維軟骨複合体)を痛めることがあります(経験あり)。TFCCは治るのに時間がかかるのでかなり辛いです。


4. 肺の空気の量

空気はたくさんいれます。肩が上がらないように肩甲骨を下げたまま、空気を吸い込みます。胸は上には膨らませず、前後に膨らますイメージです。

後ろ側(上背部)を膨らませないほうが肩甲骨が寄ると思いますが、前側(胸)だけでなく上背部も膨らませたほうが肩周りが安定すると思います。空気を大きく吸い込み、胸を張って肩甲骨を寄せて、横のアーチを作ります。


5. 背中のアーチ(縦のアーチ)

ベンチに背中をべったりつけて寝るよりも、適度に背中のアーチを作ったほうが、肩関節の可動域が制限されて肩を怪我しにくくなります。アーチは高いほうがより重たいバーベルを持ち上げられるようになりますが、可動域が狭くなりすぎると筋肥大効果が低下します。

趣味の筋トレなら、腰椎をなるべく反らない小さいアーチでベンチプレスをするのが良いでしょう。アーチを作る時は肩甲骨を起こすイメージで胸椎を反ると安定すると思います。
胸椎を伸展する必要があるので、猫背の人はフォームローラーなどを使い胸椎の可動域を広げるエクササイズをやっていく必要があります。

動画:Thoracic Extension Fix | Movement Fix Monday | Week 8 | Dr. Ryan DeBell
https://www.youtube.com/watch?v=H-r_wOZS6-k


胸の厚みがあまりない、胸椎を反るのが難しい、腕が長い、といった人は、バーを胸まで下ろすと肩関節に負荷がかかりすぎることがあります。そのような場合はバーにスクワットパッドを巻くなどして、可動域を制限すると良いでしょう。


6. バーを下ろす位置と脇の角度

バーを下ろす位置は乳首とみぞおちの間あたりで、バーをおろした時の脇の角度が45-60°程度になるフォームが肩に優しいです。

7. バーの軌道と踏ん張り

バーの軌道は直線斜め方向がやりやすいと思います。力学的には、挙上前半でバーを頭側に斜めに動かして肩の屈曲モーメントを小さくしてから、挙上後半に垂直に挙げると有利になります。1RMに近い重量だとバーの動きが遅いので、重量目的の場合はこうすると良いでしょう。ただ、普段の筋トレでのレップ数・重量だと1RMよりもバーの動きが速いので、この軌道だと慣性でバーが頭方向に行き過ぎそうになり、やりにくいと思います。趣味の筋トレなら、シンプルに直線斜め方向のイメージで挙上するのが良いでしょう。


肩甲骨を起こして、体幹前側、臀筋群、大腿四頭筋に力を入れてバーベルの重さを押し返す感じにすると、背中のアーチを保ちやすいと思います。体幹前側と殿筋群に力を入れると腰の反りを抑制できるので、腰を痛めにくくなります。私は腰のあたりの脊柱起立筋にはあまり意識をして力をいれないです(背中が攣りそうになるので)。


8. コンディショニング

あとは、肩周りのストレッチとウォームアップでコンディションを整え、プッシュ・プルのバランスを考えたトレーニングメニューにしていくと、肩の怪我のリスクを小さくできます。肩周りの調整は、ベンチに寝転がって特定の小さな筋肉をアイソレートしていじるよりも、肩周り全体の正常なアラインメント、適切な可動域、大きい筋肉と小さい筋肉の連動、筋力バランスを、実践的な動きの中で獲得していくほうが上手くいくと思います。私は肩がけっこうポンコツで色々と試しましたが、アイソレート的なアプローチは個人的にはほとんど効果がなかったです。


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