12/12/2020

リフィードでの筋グリコーゲン回復に適した炭水化物

減量時に摂取する炭水化物について、体感ベースで「玄米や蕎麦だと筋グリコーゲンがあまり回復している感じがしない」という話を聞くので調べてみました。(この話は以前から気になっていたのですが検索しても研究が見つからなくて、最近たまたま見つけたのでまとめます)


1. GI値と筋グリコーゲン

長時間の激しい運動で筋グリコーゲンを枯渇させたあとに高GIと低GIの炭水化物を摂取した研究(1)があります。この研究では、運動後24時間経過時点での筋グリコーゲンレベルは、高GI食品を食べたグループのほうがより多く回復しました。

この研究での食事内容は以下の通りです。

低GI:押しオート麦のおかゆ、スキムミルク、サワー種のパン、トマト、パスタ、焼いた豆、マーガリン、パーボイルドライス、茹でたレンズ豆、トマトソース、コーディアル(果汁が含まれた甘い飲料)

高GI:コーンフレーク、牛乳、スキムミルク、全粒粉パン、トマト、マッシュポテト、トマトソース、Polycose(消化吸収の良いグルコースポリマー)、コーディアル

マクロ栄養素と食物繊維の量は両グループ同じで、炭水化物730g、脂質50g、タンパク質145g、食物繊維75gを、24時間・4回の食事で摂取しています。

運動直後と24時間経過時点での筋グリコーゲンレベル(mmol/kg wet weight)の変化は、高GIグループのほうが大きくなりました。

低GI:34.9→106.4(⊿71.5)
高GI:26.3→132.4(⊿106.1)




筋グリコーゲンレベルの測定は、筋肉から微細な肉片を採取してそれに含まれるグリコーゲンの量を調べるのですが、筋肉組織が水分を含んだままの状態でのグリコーゲンの量を調べる方法と、筋肉組織が乾燥した状態で調べる方法があります。水分を含んだ組織で計測した場合の単位が「mmol/kg wet weight」、乾燥した組織で計測した場合の単位が「mmol/kg dry weight」です。乾燥した状態の数値を水分を含んだ状態の数値と比較したい場合は、水分を含んだ状態でのグリコーゲンレベルを4.325倍します。

筋グリコーゲンレベルの目安は、食事量が十分でグリコーゲン貯蔵が満たされていると150 mmol/kg wet weight程度です。70 mmol/kg wet weightを下回ると筋肉のパワー出力が低下してきます。

高GIと低GIの食事の筋グリコーゲンへの影響を調べた研究はもう一つあって、その研究(2)では運動の3時間前に食事を摂り、運動直前の筋グリコーゲンを測定しています。この研究での食事内容は以下の通りです。

低GI:ブランフレーク、スキムミルク、桃の缶詰、りんご、りんごジュース

高GI:コーンフレーク、スキムミルク、精白パン、ラズベリージャム、エナジードリンク

結果は高GIグループのほうが、食事から運動直前の3時間で筋グリコーゲンレベルが上昇しました。低GIグループは有意差無しです。この研究での単位は mmol/kg dry weight です。

低GIグループの食事はおそらく果糖の割合が高いので、その面からも筋グリコーゲンの回復に不利な感じがしますが、運動で筋グリコーゲンを枯渇させなくても高GI食のほうが筋グリコーゲンの回復に有利という結果になっています。

高GI食で筋グリコーゲンが回復しやすくなる理由としては、インスリンと血糖のレベルが高くなることで、筋肉にグルコースが送り込まれやすくなり、グリコーゲンがより回復する可能性が挙げられます。他にもなにかメカニズムがあるのかもしれませんが、論文をいくつか読んでみて現時点で推測されているのはこの経路のみでした。

以下のグラフは、(1)の研究でのグルコースとインスリンの比較です。運動直後の1回目の食事以外は、グルコースもインスリンも高GIのほうが高い傾向です(筋グリコーゲンは24時間後しか計測していないのではっきりとはわかりませんが、このグラフを見ると運動直後は低GI食でも筋グリコーゲンが回復しやすいかもしれません)






2. デンプンの種類(アミロースとアミロペクチン)と筋グリコーゲン

デンプンは、たくさんのグルコース分子がつながったものですが、つながりかたの違いによってアミロースとアミロペクチンの二種類に分けられます。アミロースはグルコース分子が直線状につながっている直鎖型で、アミロペクチンは枝分かれしながらつながっている分岐鎖型です。


 

アミロペクチンの割合が高い食品は、モチモチ・ネバネバした食感になります。例えば、もち米はアミロペクチンの割合がほぼ100%です。うるち米(普通のお米)や小麦粉やじゃがいもは、品種や栽培地によって差がありますが、アミロース20%、アミロペクチン80%くらいです。

筋肉のグリコーゲンを枯渇させたあと、グルコース、マルトデキストリン、アミロペクチン100%、アミロース100%の4種類の炭水化物の摂取による筋グリコーゲン回復を比較した研究(3)では、アミロース100%よりもアミロペクチン100%のほうが筋グリコーゲンが回復しました。


アミロース100%というのは実際の食事としては非現実的ですが、アミロースとアミロペクチンの筋グリコーゲン回復を調べた人間対象の研究はおそらくこの研究しか無いと思います。動物実験では屠殺前の豚の研究(4)があり、アミロースとアミロペクチンの割合を変えた餌で実験しています。この豚対象の研究でも、アミロースの割合が高い餌のほうが筋グリコーゲンのレベルが低くなることが示唆されています(屠殺後の解糖系反応でpH低下が起こると肉の質が低下するので、それをどう抑制するかという視点での研究のようです)。

メカニズムの候補としてはGI値の話と同じで、アミロペクチンのほうが消化吸収が速いことにより、筋肉にグリコーゲンが蓄えられやすくなることが挙げられます。デンプンの消化酵素は、デンプンを端から順番に分解していくのですが、直鎖型のアミロースは端が両端の2箇所しかないので時間がかかり、分岐鎖型のアミロペクチンは端がたくさんあるので多数箇所で同時に分解されていき消化吸収が速くなります。


3. 食物繊維と筋グリコーゲン

食物繊維はエネルギーとして利用される場合は短鎖脂肪酸になるので、筋グリコーゲンの補充には貢献しないと思われます。また食物繊維の割合が高い炭水化物食品は低GI値の傾向があるので、その面からも筋グリコーゲンが補充されにくくなるでしょう。


4. 他に筋グリコーゲン回復に影響する要因

・炭水化物の摂取量が少ない場合は、炭水化物と一緒にタンパク質を摂取すると筋グリコーゲンが貯蔵されやすくなります。炭水化物の量が十分(1.0 g/体重kg/h以上のペースで摂取) なら、タンパク質を摂取してもしなくても筋グリコーゲンの回復は変わらないようです。

・炭水化物と一緒にクレアチンを摂取すると、筋グリコーゲンの貯蔵を増やせる可能性があります。

・筋肉のダメージはグリコーゲン回復を遅らせます。リフィード時は、高ボリュームのトレーニングや高重量でのエキセントリック動作のトレーニングは避けたほうが良いでしょう。

 

5. リフィードで摂取する炭水化物の種類によりカロリーの振り分けを改善できる可能性

維持カロリー以上食べていて、普通の筋トレの運動量ならば、筋グリコーゲンはそれほど減らず、24時間もあれば十分に回復するので、炭水化物の種類はあまり気にしなくても良いと思います。しかし減量時のリフィードではなるべく筋グリコーゲンを回復させたいので、炭水化物の種類を気にしたほうが良いでしょう。

減量時のリフィードで筋グリコーゲンをなるべく回復させたほうが良い理由は、

(a)筋グリコーゲンを回復させたほうが、トレーニングの質を上げたり、筋肉のエネルギーレベルを高めることで、筋肉の量を維持しやすくなります。

(b)筋肉にグリコーゲンを優先的に貯蔵することで、基礎代謝や日常生活での動作に使われるエネルギーに体脂肪が使われやすくなる可能性があります。


(b)がわかりにくいので説明していきます。減量時の理想は、摂取した炭水化物を筋グリコーゲンとして貯蔵し、そのカロリーを筋肉のために使って、基礎代謝や日常生活での動作に必要なカロリーはなるべく体脂肪を分解して賄うことです。

人体のカロリーの主な貯蔵場所は、肝臓のグリコーゲン、筋肉のグリコーゲン、体脂肪です。肝臓のグリコーゲンと体脂肪の貯蔵は出し入れにほぼ制約がなく、基礎代謝や日常生活の動作の要求量に合わせて適宜血液中に放出されます(ただし体脂肪率が極度に低くなると体脂肪からエネルギーを取り出すのが難しくなってきます)。一方で筋グリコーゲンは、いったん貯蔵すればその筋肉を動かすことにしか使われません。脳がグルコースを欲しがっても、筋グリコーゲンを分解して血液中にグルコースを放出したりはしません。

従って、摂取したカロリーを筋肉になるべく多く送り込めば、基礎代謝や日常動作で使われるカロリーには他の貯蔵分が使われやすくなり、体脂肪の分解燃焼が増える可能性があります。

 
 
 



6. リフィードで摂取する炭水化物の推奨

リフィードでは筋グリコーゲン回復を目指し、高GI、低アミロース、低繊維質の炭水化物を優先的に摂取すると良いでしょう。具体的には、白米、餅、うどん、精白パン、じゃがいもなどです。玄米、オートミール、そば、全粒粉パン、さつまいもなどは、筋グリコーゲン回復の観点からは効果的ではないと思われます。パスタとラーメン(中華麺)も意外とGI値が低いので、筋グリコーゲンの回復が白米などに比べると少し劣るかもしれません。

健康のためには食物繊維や微量栄養素の多い食品を食べたほうが良く、低GI食品のほうが食物繊維や微量栄養素が豊富なことが多いので、健康と筋グリコーゲン貯蔵効率との兼ね合いが難しいです。解決策としては、例えばリフィードの時は白米、餅、うどん、精白パン、じゃがいもなど高GI炭水化物食品で筋グリコーゲン貯蔵を優先し、それ以外のカロリーカット時の食事は食物繊維や微量栄養素の多い食品を優先的に食べるというサイクルでやっていくと、健康と筋肉のバランスが取りやすいかと思います。

他の考慮点としては、砂糖(フルクトース+グルコース)は、運動直後は筋グリコーゲンの回復に有用ですが、ある程度リフィードが進んだ後は、グルコースベースの炭水化物に筋グリコーゲンの回復が劣るようになります。甘いものをリフィードで食べたいなら運動直後が良いでしょう。


関連記事:

リフィードの研究



<参考文献>

(1)Muscle glycogen storage after prolonged exercise: effect of the glycemic index of carbohydrate feedings
https://www.researchgate.net/publication/14973731_Muscle_glycogen_storage_after_prolonged_exercise_Effect_of_the_glycemic_index_of_carbohydrate_feedings

(2)Ingestion of a high-glycemic index meal increases muscle glycogen storage at rest but augments its utilization during subsequent exercise
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/japplphysiol.01261.2004

(3)The influence of starch structure on glycogen resynthesis and subsequent cycling performance
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8858410/

(4)Effects of dietary starch types on early postmortem muscle energy metabolism in finishing pigs
https://www.researchgate.net/publication/318386218_Effects_of_dietary_starch_types_on_early_postmortem_muscle_energy_metabolism_in_finishing_pigs

(5)Fundamentals of glycogen metabolism for coaches and athletes
https://academic.oup.com/nutritionreviews/article/76/4/243/4851715

(6)充分に咀嚼することが食後耐糖能に及ぼす効果
https://www.doumyaku-c.jp/JAPF/reports/pdf/H14-40.pdf
筋グリコーゲンを測定しているわけではないですが、よく噛んだほうが血糖値がピークをつけてから低下するのが速いので、グルコースが速やかに貯蔵されそうです。

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