腰を丸めない、スネからバーを離さないといった基本的なフォームが出来ている前提で、コンベンショナルデッドリフトで怪我をしないコツを書いていきます。
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項目
<ウォームアップをしっかりやる>
その日の下半身種目の最初にデッドリフトをやる場合は、スクワットを軽く2,3セットやっておくと、踏み込みが安定し、身体が温まります(目安は40-70%1RMで5-8レップ程度)。バーベルをセットするのが面倒な場合や、パワーラックの使用時間に制限がある場合は、レッグプレスで代用も可能です。
<ハムストリングスに効かせない>
ハムストリングスに効かせようとすると、尻を大きく後ろに引いたり、骨盤を前傾させてハムストリングスを伸ばすことになるので、デッドリフトでハムストリングスに効かせる意識はあまり持たないほうが良いです。股関節の伸展のイメージとしては、足裏で床を掴んで、足裏と大殿筋(尻)をリンクさせて、大臀筋メインで股関節を伸展させます。ハムストリングスを使わないわけではないですが、重たいバーベルを持ちながら、ハムストリングスをストレッチさせて意識的に効かせたりするのはやらないほうが良いです。RDLでも同じです。スティッフレッグドデッドリフトは・・・種目自体があまりおすすめできません。
デッドリフトでハムストリングスが痛くなる場合は、尻を後ろに引きすぎか、骨盤が前傾しているか、大臀筋を使えていないか、膝が伸びるのが早くてスティッフレッグドデッドリフトに近くなっているかだと思います。いずれにしろハムストリングスの怪我や、股関節のインピンジメントリスクが高くなるので、大臀筋メインの意識で股関節を伸展したほうが良いです。大殿筋を使う感覚を掴むのには、ヒップスラストがおすすめです。
晒すようで申し訳ないのですが、ハムストリングスの怪我の動画です。
動画:(閲覧注意)事故!!170キロデッドリフト
https://www.youtube.com/watch?v=-yA7vL3otRU
フォームがスティッフレッグドデッドリフトに近くなっているのと、おそらく大臀筋があまり使えていないのとで、ハムストリングスに負担がかかりすぎたのだと思います。ハムストリングスの二関節筋の長さは、膝と股関節の屈曲角度の差で決まるので、膝があまり曲がっていない状態で股関節を深く曲げると、ハムストリングスが伸ばされすぎて怪我をしやすくなります。
こういったフォームの人は、ヒップスラストで大臀筋を使えるようにする、それとポーズドデッドリフトを練習して挙上序盤に脚と尻で負荷を受ける感覚を掴むようにすると怪我をしにくくなると思います。
<大臀筋の内側と上の方を意識的に固める>
大殿筋の内側と上の方をスタートポジションで意識的に固めると、体幹と骨盤を強く固めやすいです。たぶん仙腸関節が固まることで腰椎が安定するのだと思います。もしくは胸腰筋膜を通じて、体幹の筋肉が連動して固まるのかもしれません。詳しい仕組みはわからないです。
大臀筋の上の方は骨盤と腰を安定させるスタビライザーのイメージ、大臀筋の下の方は股関節伸展で動きを作るイメージで私はデッドリフトをやっています。
ヒップスラストのトップポジションでさらに押し込む動きをすると、大殿筋の内側と上側に力を入れる感覚を掴みやすいです。
デッドリフトとスクワットをやっていると、ヒップスラストは疲労面でメニューに組み込みにくい場合があると思います。大臀筋を使う感覚を得るのを目的として、軽めの重量で大臀筋をしっかり収縮することを意識しながら2セット程度やるだけでも効果的なので、是非ともやって欲しい種目です。
<肩甲骨を固定して尻に負荷を流す>
肩甲骨のポジションは下制なのですが、やや後傾の力も入れる感じで胸椎カーブ(下図の青線)の下側に肩甲骨を固定し、バーの重さを尻(大殿筋)に流します。イメージとしては胸椎カーブの上側と下側の間に分水嶺があって、下側に肩甲骨をアンカーすると、そのまま尻に負荷を流しやすくなります。肩甲骨が上にいって、胸椎カーブの上側にバーの重さが乗ると、そこから背中が曲がっていき腰にガツンと負荷が来ます。日常生活でかがむ時も、腰で支えようとせず、負荷を尻に流す身体の使い方をすると、腰を痛めにくくなります
<腰椎のあたりの脊柱起立筋に意識的には力を入れない>
脊柱起立筋に意識的に力を入れると腰が反ります。バックエクステンションの要領で力を入れるのはNGです。体幹を固めて踏み込んでいくと、脊柱起立筋は自動的に、受動的に固まります。また、脊柱起立筋に意識的に力を入れて腰を反ると、重りを支えて持ち上げる支点が腰になりやすいです。支点は股関節にしたいです。
意識的に固めるのは、大殿筋、肩甲骨(広背筋・僧帽筋下部)、体幹・腹圧です。
おそらくバックエクステンション的に腰を反る強さは、デッドリフトでは必要ないです。デッドリフト200kg以上挙がるパワーリフターと、趣味でトレーニングしている人が、アイソレートで腰を反る強さを測定した研究があるのですが、結果は腰を反る強さに差がないというものでした。
A
comparison of isolated lumbar extension strength in competitive and
non-competitive powerlifters, and recreationally trained males
https://www.researchgate.net/publication/325229427_A_comparison_of_isolated_lumbar_extension_strength_in_competitive_and_non-competitive_powerlifters_and_recreationally_trained_males
腰の伸展力と、デッドリフトで背骨ニュートラルを保つために必要な力の違いは、握力(コンセントリックで握り込む力)と把持力(外力に対してアイソメトリックでホールドし続ける力)の違いに似ているかもしれません。重たいバーベルを素手で持つのに握力はあまり必要ではなく、把持力が求められます。それと同じように背骨ニュートラルを保つには、外力に対してアイソメトリックで姿勢を保つ力が求められると考えられます。
<腕を少しでも長くする>
腕を長くすると、スタート時点の股関節の屈曲角度が浅くなる、股関節がバーに近づく、上半身が起きるといったメリットがあります。いずれも、腰や股関節の負担を減らせます。
骨の長さを変えることは出来ないので、いくつかの小技で胸椎とバーの距離を離していき、実質的な腕の長さを伸ばします。
腕が実質的に伸びます。
2. 肩甲骨を寄せない
下制を維持できるなら肩甲骨は開いて構わないです。そうしたほうが腕が伸びますし、もし無理に寄せても挙上が始まればバーベルの重さで引っ張られて肩甲骨の寄せは維持できません。ただ、最大限に肩甲骨を開いて腕を伸ばそうとして、肩甲骨が上にいくのはNGです。
3. 胸を張らない
胸を張って胸椎を伸展すると、腕が実質的に短くなります。また、胸椎伸展のポジションだと腹圧をかけにくくなります。胸椎はニュートラルが基本です(パワーリフティングの上級テクニックだと意図的に胸椎を丸めて腕を伸ばします)。
<腹圧を骨盤にぶつける>
横隔膜を押し下げて、腹圧を骨盤に押し込む感じにして体幹を固めます。少し胡散臭い言い方になりますが、丹田に力を入れて固める感じですね。腹圧については、関連記事に詳しく書いています。
関連記事:筋トレでの腹圧の高め方・体幹の固め方
関連記事:デッドリフト 腹圧のかけかた 体幹の固め方
<限界までやらない>
競技としてデッドリフトをやっているのでなければ、トレーニングでの重量は90%1RM程度を上限にするのが良いと思います。それ以上の重量だと背中が曲がりだして、怪我リスクが上がります。体感目安だと、3秒以上粘って挙上するような重量はハイリスクです。
5レップなどの普通のセットでは、最終レップが限界レップになる重量設定にはせず、限界まで1レップ以上余裕がある重量にするのが良いでしょう。
<足裏重心は踵寄り>
踵寄り重心だと大殿筋に負荷が乗りやすく、股関節の力をフルに発揮しやすいです。
関連記事:スクワットとデッドリフトのバーの軌道と足裏重心
<スネにぶつけることを恐れない>
スネにぶつけるのを恐れて腰が引けると、腰を痛めやすくなります。スネにぶつけやすい人は、デッドリフト用のスネガードを着用するのがベストです。
関連記事:デッドリフト時の脛の保護(脛当て)
フォームが良ければスネにぶつけることはない、と言うリフターもいますが、長身で大腿骨が長い人や、腕が短い人は、どうしても脚が邪魔くさくてぶつけやすいと思います。恥ずかしいことではないので、スネガードを着用して快適なデッドリフトライフを送りましょう。
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