10/23/2025

アイソメトリックトレーニングの筋肥大効果

Stronger By Scienceのメルマガネタです。アイソメトリックトレーニングでも、ちゃんとやれば普通の筋トレと同等に筋肥大する、という内容です。留意点がいくつかあり、それらについては記事の最後に書いています。

ちなみに筋力については、トレーニング方法が測定方法に近ければ伸びやすいです。アイソメトリックでトレーニングすればアイソメトリックの筋力が伸びやすいですし、アイソトニックでトレーニングすればアイソトニックの筋力が伸びやすいです。


前提知識として、各トレーニングモダリティの定義を書いておきます。

・アイソメトリック(等尺性筋収縮)
筋肉の長さを変えずに筋力を発揮する。

・アイソトニック(等張性筋収縮)
筋肉が一定の抵抗に対して伸縮運動を行う。いわゆる普通の筋トレ。

・アイソキネティック(等速性筋収縮)
筋肉が動く速さを一定に保ったまま筋力を発揮する。特殊なマシンが必要。


9/27/2025

膝周りを強化するレッグエクステンションのやり方(膝痛対策)

膝痛対策になる、膝周りを強化するレッグエクステンションのやり方を紹介します。


まず初めに、膝痛対策の基本ポイントを書いておきます。大腿四頭筋だけ鍛えても問題は解決せず、膝痛には全体を見渡した総合的なアプローチが必要です。


★尻の筋肉に負荷を分散させる
日常生活やスクワットでは、膝と股関節に負荷を分散させることが大切です。ただ、股関節に負荷を分散させる場合も、尻の筋肉をうまく使えないと、関節そのものに負担がかかり、股関節を痛めやすくなります。

たとえば、長時間のウォーキングで尻の筋肉で着地の衝撃を受けず、股関節にダイレクトに衝撃が伝わるような歩き方をすると、股関節が変形性関節症になりやすいです。スクワットでも、尻の筋肉で負荷を受けずに股関節に頼りすぎると、鼠径部の痛みにつながることがあります。


★膝はまっすぐ曲げ伸ばしする
膝関節に傾きやねじれの力を加えないようにします。スクワットの動作で膝が内側に入るのはNGパターンです。膝は常にまっすぐ曲げ伸ばしすることが大切です。


★大腿四頭筋を強化する

膝関節の安定には、大腿四頭筋の筋力は重要です。変形性膝関節症は、体重が軽く膝への負担が少ないはずの女性に多く見られます。その一因として、大腿四頭筋の筋力不足が挙げられています。

「スクワットで膝が痛い……。じゃあ膝を前に出さず、お尻を思い切り後ろに引くか」というやり方をする人もいますが、これでは膝の問題は解決しませんし、股関節の屈曲が深すぎて鼠径部が痛くなったり、上体が大きく前に傾いて腰に負担がかかったりします。逆にスパルタ作戦で膝を前に出し、大腿四頭筋を無理に鍛えようとすれば、かえって膝の痛みを悪化させることにもつながります。

9/18/2025

フィットネス競技の各部門の選手の部位別セット数を調べた研究

Quantification of weekly strength-training volume per muscle group in competitive physique athletes
https://www.frontiersin.org/journals/sports-and-active-living/articles/10.3389/fspor.2025.1536360/full#B3

フィットネス競技の各部門の選手にアンケートを取り、部位ごとのセット数をオフシーズンとコンテスト前に分けて調べています。有酸素運動についても調べていますが、あまり面白くないので割愛します(コンテスト前になると有酸素運動がやや増えるといった普通の結果)。

各部門の競技選手が、各部位に対してどのくらいのボリューム(週間セット数)をこなしているのか、水準感がわかって興味深いです。全体的な傾向として、(当然と言えば当然ですが)その部門で重視される部位のセット数が多いです。回答数が少ない部門は個人差の影響が大きく、部門全体のトレーニング傾向を反映していない可能性があります。



<調査方法>
オンラインアンケート
調査期間は2020年4月から12月


<回答のあった部門>


選手の参加している競技団体
• International Federation of Body Building and Fitness – São Paulo (IFBB SP): 1 athlete
• São Paulo Fisiculturismo e Fitness (SPFF): 19 athletes
• National Physique Committee PRO LEAGUE (NPC): 85 athletes
• International Federation of BodyBuilding and Fitness ELITE PRO (IFBB ELITE PRO): 39 athletes
• National Amateur Bodybuilders’ Association (NABBA): 1 athlete
• World Beauty Fitness & Fashion (WBFF): 2 athletes
• World Beauty Fitness & Fashion Professional (WBFF PRO): 1 athlete
• World Fitness Federation (WFF): 1 athlete
• Other affiliations: 5 athletes

PEDs使用の有無について調べてみましたが、NPCはIFBBプロの下部組織なのでPEDs前提ですかね。IFBBエリートプロは薬物禁止を掲げているけど、出場選手の仕上がりを見ると怪しい・・・という声が。

8/23/2025

重量の漸進的過負荷とレップ数の漸進的過負荷を比較した研究

個人差に関する研究で面白いです。多くの初心者向けトレーニングプログラムは、重量を漸進的過負荷していきますが、この研究からは、重量を漸進的過負荷したほうが筋肥大しやすい人もいれば、レップ数を漸進的過負荷したほうが筋肥大しやすい人もいることがわかります。

Individual muscle hypertrophy response is affected by the overload progression model and is associated with changes in satellite cell content
https://www.fisiologiadelejercicio.com/wp-content/uploads/2025/06/Individual-muscle-hypertrophy-response-is-affected.pdf

被験者:若い男女 37名 過去半年間のトレーニング歴無し

種目:片脚レッグエクステンション

被験者の脚を片方ずつどちらかのプロトコルに振り分け
- LOADprog:9-12RMのレンジ内で重量を漸進的過負荷 4セット
- REPSprog:全セット限界まで 重量は初期設定の80%1RMで据え置き レップ数の漸進的過負荷 4セット 

期間:10週間

インターバル:セット間90秒、プロトコル間2分(片脚4セット→もう片方の脚4セット)

測定:外側広筋の厚み(超音波)、外側広筋の筋肉組織採取

頻度:週2-3回

7/25/2025

夕方以降の運動による睡眠への影響

(1)Dose-response relationship between evening exercise and sleep
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12000559/

夕方以降の運動が睡眠に与える影響について調べた研究です。

トレーニングからの回復には、食べることと寝ることが最も重要です。トレーニングが睡眠に悪影響を与えてしまうと、回復が阻害される可能性があります。


結論としては、寝る直前に激しい運動をすると、睡眠に悪影響が出ます。

夕方以降の運動では

・軽い運動なら寝る2時間前までに終わらせる

・激しい運動なら寝る4時間前までに終わらせる

と、睡眠に悪影響が出にくくなります。

7/05/2025

筋肉の伸長ポジションと短縮ポジションで負荷をかける

関節の安定性のためには、

・筋肉の「伸長ポジション」で強い負荷がかかる種目

・筋肉の「短縮ポジション」で強い負荷がかかる種目

両方ともやったほうが良いと、最近考えています。


「筋肉が伸長されたポジションで強い負荷がかかる種目のほうが筋肥大効果が高い」というのが、今の科学界のトレンドですが、伸長されたポジションでのトレーニングばかりやると、関節がゆるくなりやすい感じがします。特に、ストレッチを効かせようとすると、器用な人だと意図的に関節を緩めて可動域を広げようとします。

短縮ポジションでもトレーニングすることで、関節がハマって安定しやすくなる感じがします。

具体的には、

<股関節(ハムケツ)>
・伸長ポジション:スクワット、レッグプレス、デッドリフト系の種目 
・短縮ポジション:ヒップスラスト、ヒップリフト、ライイングレッグカール(ハム二関節筋)

<膝関節(大腿四頭筋)>
・伸長ポジション:スクワット、レッグプレス系の種目 
・短縮ポジション:レッグエクステンション

<肘関節(上腕三頭筋)>
・伸長ポジション:フレンチプレス系の種目 
・短縮ポジション:プッシュダウン系の種目


短縮ポジションで負荷をかける種目では、以下のポイントを意識するといい感じになると思います。

・トップポジションで筋肉を絞り上げるように収縮させる。

・重量は軽め、最低でも10レップはできる重量で行う。重いと、トップポジションで絞り上げられない。

・コンセントリックは最速にしない。軽めで最速だと、慣性でトップ付近での負荷が抜ける。伸長ポジションで負荷をかける種目は、コンセントリック最速を意識するとボトム付近(伸長ポジション)での負荷が上がるから良いけど、短縮ポジションで負荷をかける種目はトップ付近で負荷が抜けないようにしたい。

・関節は過伸展しないようにする。伸ばしきりから数度前で止めて絞り上げるのが良いかも。

6/28/2025

膝屈曲角度の違いによる大腿四頭筋の筋肥大効果

新しい研究が出てきたのでアップデートします。結論としては、レッグプレスやスクワットならば、膝屈曲角度90-100度くらいで大腿四頭筋の筋肥大は最大化されると思われます。(ここでの膝屈曲角度は、膝を伸ばしきった状態が0度で、そこから何度曲げていくか)


新しい研究の概要


(1)Knee flexion range of motion does not influence muscle hypertrophy of the quadriceps femoris during leg press training in resistance-trained individuals
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02640414.2025.2481534



被験者:トレーニング歴(平均7.2年)有り 23名 若い男女 平均年齢20代

種目:レッグプレス 各セット限界まで

グループ分け(被験者内でのグループ分け、左右の脚をそれぞれのグループに)
- 膝屈曲角度100度
- 膝屈曲角度MAX(平均154度) ボトム付近では踵は浮いても良い

トップポジションでは、両グループとも屈曲角度5度で止める。

期間:8週間

トレーニング内容:
8-12RM 4セット(1週目のみ3セット)
頻度は週2回
テンポ コンセントリック最速 エキセントリック2秒

食事:
摂取カロリーを増やして、タンパク質を1.6g/体重kg/day摂るように指示。トレーニング歴有りなので、体重を増やさないと筋肥大しにくい。

測定:
超音波で大腿四頭筋の厚みを測定(複数箇所)


結果:
両グループとも筋肥大したが、筋肥大効果は同等だった。



トレーニングボリューム(重量×レップ数×セット数)は、膝屈曲角度MAXのほうが小さかった。屈曲MAXだと扱える重量が下がるので、ボリュームも小さくなるが、筋肥大効果は同等。



被験者の平均体重変化は、80.6kg→82.9kg。

6/06/2025

【朗報】クレアチンを飲んでもハゲない

耳にしたことがある人もいると思いますが、クレアチンを摂取すると男性型脱毛症(AGA)になる、AGAの症状が進行する(つまり髪が薄くなる)という説があります。

この説が流布されるようになったきっかけは、クレアチンの摂取によるジヒドロテストステロン(DHT)の増加が2009年の研究(1)で報告されたことです。DHTは、AGAに深く関わる男性ホルモンです。ただ、その後は、クレアチン摂取によるDHTの増加を報告する研究はありませんでした。

最近、クレアチンとAGAの関係を直接調べる研究(4)がようやく行われました。この研究では、クレアチン摂取によるテストステロンやDHTへの影響、そして頭髪の状態を調べていて、クレアチン摂取グループとプラシーボグループとでは、各ホルモン、および頭髪の状態に有意差は無い、という結果になっています。


結論を書くと、クレアチンの摂取はAGAに影響を与えないと考えられます。男性トレーニーの皆さん安心してください。


以下は、論文についての解説です。

5/24/2025

カフェインガムのスクワット・ベンチプレス1RM向上効果

最近、研究が増えてきているカフェインガムについての記事です。カフェインの運動パフォーマンス向上効果は、以前から様々な分野で確かめられています。ただ、それらの研究で用いられているのはカフェイン錠剤です。

チューイングガムの形態でカフェインを摂取すると、吸収経路が錠剤とは異なることから、カフェインの副作用を抑えられます。また、運動のタイミングに血中カフェイン濃度のピークを合わせやすいため、パワー・ストレングス系競技でパフォーマンスを上げやすくなる可能性があります。

5/15/2025

スクワットのテンポが筋力、筋肥大、瞬発力に与える影響

スクワットのテンポをどのように設定すれば良いのか。

論文を5つ紹介してから、最後に目的別のまとめを書いてあります。