11/13/2021

腰痛対策シリーズ2回目:腰痛を防ぐストレッチやトレーニング

前回の続きです。

腰痛対策シリーズ1回目:腰痛の概略


今回は、腰痛対策(というかほぼ姿勢対策)のストレッチ等とトレーニングについて書いていきます。

ネットで検索すると腰痛対策のストレッチや体幹トレーニングがたくさん出てきますが、それらを闇雲にやるのではなく、現状を分析し、適切な種目を選んで実施していくのが重要です。分析→戦略→戦術の順ですね。

1. 現状分析
骨の配置と筋肉の状態がどうなっているか分析します。固く縮んでいる筋肉と、弱くて伸びている筋肉を洗い出しますが、解剖学的に個別の筋肉の状態を理解しようとするよりも、各関節の伸展や屈曲といった動作の方向で考えたほうが実践面では楽です。この記事では簡略化のために、猫背や反り腰といったパターンごとに振り分けをしてみていきます。パターンに沿わないケースもありますし、矢状面以外での問題もありますが、パターンごとに振り分けすることで対策を絞りやすくなります。

2. 戦略の決定
部位ごとに緩める筋肉、鍛える筋肉を決めて、それにフィットするストレッチや筋トレ種目を選んでいきます。弱って伸びている筋肉をストレッチでさらに伸ばしたりすると状況が悪化するので、戦略は非常に大事です。どんなに種目のやり方(戦術面)が上手くても、種目の選択(戦略面)が間違っていたら、良い結果は得られません。

3. 戦術の実行
選んだ種目を実施していきます。正確なテクニックで実施する必要があり、また同じ種目でも目的によってやり方を変える場合があります。例えば、プランクをやるなら呼吸はどうするか、息を吐ききってドローインの状態でやる? 息を入れて腹圧かけた状態でやる? それとも意識的に体幹は固めずに自然に呼吸をしながら? etc.

腰痛ストレッチや体幹トレーニングの種目については、ネットで検索すればいくつも出てきます。分析と戦略がしっかりしていれば、種目の選択と実施は正しく行えます。逆に分析と戦略が欠如していると、多すぎる情報に混乱したり、適切な種目を行えずに良い結果が得られなかったりします。

これから腰回りや骨盤周りといった各部位の各状況ごとにストレッチ方法や筋トレ種目の例を書いていきますが、その方法や種目が最高に良いから書いているわけではなくて、戦略にフィットする種目を適当に見繕って書いています。やりやすい種目やりにくい種目には個人差があるので、戦略を理解した上で、自分にあった種目を選択していくと良いでしょう。





腰に良いこと・悪いこと

基礎知識として、腰に良いことと悪いことを。


<良いこと>

・負荷をかけずに腰椎を曲げ伸ばしをする

キャット・キャメルは腰に良いです。腰が張りやすい場合は、こまめにやるのをおすすめします。他の関節もだいたいそうですが、負荷のない状態や非常に低い負荷で、可動域を大きく使って動かすのは関節の健康に良いです。関節は動かさないと固まってしまいます。Motion is Lotionと言われますね。


腰椎をねじるのは、負荷無しでもやめたほうがいいと思います。腰椎の回旋方向の可動域は全体(椎骨5個)で5-15°あるので少しは動くと思いますが、自分で腰椎が捻れたのがわかるほど動かそうとすると腰を痛めると思います(腰椎が5°回旋してる状態を普通は認識できない)。

側屈は腰椎も胸椎と同程度に可動域があるみたいなので、負荷無しで動かしたほうが良さそうです。例えば、四つん這いになって尻を横に振るとか(キャットキャメルの横方向)。

こちらのサイトに背骨の可動域について詳しく書かれています。

参考サイト:脊柱の可動域まとめ|胸椎と腰椎の関係性を中心に説明。


・ニュートラルポジションで腰椎に負荷をかける
身体への負荷が足りないと、骨も筋肉も衰えます。ある程度の負荷をかけて運動をしたほうが健康に良いです。

デッドリフトやスクワットといった背骨の長軸方向に強い負荷がかかる場合は、腰椎をニュートラルポジションに保つのが必須です。

プランクやデッドバグは骨盤後傾で腰椎をフラット気味にしたほうがやりやすいです。これらの種目では背骨への負荷は小さいのでニュートラルポジションから少し外れても問題はないです。



<悪いこと>

・ニュートラルポジションから大きく外れた状態で強い負荷をかける。
例えば、腰を反った状態(ニュートラルの湾曲よりもさらに伸展させた状態)でのデッドリフト、バックエクステンションなどは腰に悪いです。


・同じ姿勢を続ける

ニュートラルポジションであっても、ずっと同じ姿勢を続けるのは腰に良くないです。同じ姿勢での立ちっぱなし、座りっぱなしは避けて、こまめに姿勢を変えたほうが良いです。

・悪い姿勢

猫背・反り腰など悪い姿勢での生活では、ニュートラルポジションから大きく外れた状態で継続的な負荷がかかっているので、腰に少しずつダメージが加わります。また、悪い姿勢で重たいものを持ち上げたりすると腰に大きな負担がかかります。



部位の分解

首周り(頚椎)、肩周りと胸周り(胸椎、肋骨、肩甲骨)、腹回りと腰回り(腰椎)、尻周り(骨盤)に分解して、アラインメント異常への対処を行います。前後方向(矢状面)中心に見ていきます。横方向(前額面)や回転方向(水平面)でのアラインメント異常もありますが、ここでは矢状面を中心に扱います。



固く縮んでいる筋肉をほぐして伸ばす

ストレッチ、フォームローラー、マッサージなどを用いて、固く縮んでいる筋肉を緩めて伸ばしていきます。


<首>

首(頚椎)は軽く反っている(前湾している)のがニュートラルの状態です。図では、前湾が失われて頚椎が真っ直ぐになっているのが曲がり(ストレートネック)、前湾がさらに伸展して過度に反っているのが反りとしています。


下の論文だと、猫背、フラットバック、スウェイバックの頚椎は、上部が伸展(反り)、下部が屈曲(曲がり)と書かれています。腰椎と胸椎も上部下部で伸展と屈曲が違ってくるみたいです。ただ、一般的には上の図のような姿勢パターンだと思うので、ここでは単純化してパターン分けします。

Posture Alignment and the Surrounding Musculature
https://cardinalscholar.bsu.edu/bitstream/handle/123456789/202092/2019MoffettBrittany-combined.pdf


◆頚椎が曲がり(反りが失われてる)
頚椎の反りが失われて、頚椎がまっすぐになっているのがストレートネックです。いわゆるスマホ首。

スウェイバック姿勢のように上半身の重心が後ろ側にズレていると、重力に対してバランスを取るためと、視野を確保するために(首がそのままだと斜め上に視線が向くため)、頭を前に出すのでストレートネックになりやすいです。また、うつむいてスマホを見過ぎることでもなりやすいです。

ストレートネックだと首の前側・横側が固く縮んでいるので、そこをほぐして伸ばしていきます。

動画:【スマホ首の治し方】胸鎖乳突筋と斜角筋が短い人はストレートネック&首こりは治らない!?最強のストレッチ&マッサージを初公開!
https://www.youtube.com/watch?v=BXwYkQK3nU8



◆頚椎が過度に反り
猫背で上半身の重心が前気味だと、バランスを取るためと視野を確保するため(首がそのままだと斜め下に視線が向くため)、首を反って頭を起こします。椅子に座って猫背になって、前のめりでパソコンの画面を凝視する姿勢をイメージしてみるとわかりやすいです。

この場合は、首の後ろ側が固く縮んでいるのでそこをほぐして伸ばしていきます。

動画:【首こり・首痛】首が痛い・首全体が硬い人向け!揺らすだけの簡単3点ほぐしマッサージ講座
https://www.youtube.com/watch?v=RfRdRK8DqwI


あとは顎を引く練習など。やりすぎてもニュートラルの反りが失われて悪影響が出るので、顎を引くのはやりすぎないように。




<肩と胸周り>

胸椎は軽く曲がっている(後弯)のがニュートラルの状態です。曲がりすぎていると猫背です。逆に軍人の直立姿勢みたいに、曲がりが失われている姿勢もあります。



◆胸椎曲がり(猫背)
猫背の場合、大胸筋、小胸筋、腹直筋の上の方が固く縮んでいます。まずは、フォームローラーで胸椎を伸ばします。


胸の筋肉はお祈りストレッチなどで普通に伸ばせばOK。


頭の後ろに重り持って、良い姿勢で深呼吸するのも良いと思います。呼吸は肋骨の動きに深く関わるので、息を大きく吸って吐くことは重要です。


お腹上部のストレッチについては、マッケンジー体操やコブラのポーズ(ヨガ)といった伏臥上体反らしみたいな動きは腰を痛めやすいので、やらないほうがいいと思います。腰椎を伸ばさず胸椎だけ伸ばせればいいですが、うまくいかずに胸椎が伸びずに腰椎のほうが伸びることになりやすいです。多くの場合、腰椎が動きやすく、胸椎が固くて動かないので、背骨を伸ばすと腰椎が動きやすいです。


捻り方向のストレッチも同様ですね。背骨を捻ると、胸椎が固いと腰椎が捻れてしまいます。胸椎はモビリティがあったほうがいいので、胸椎のストレッチはやったほうが良いのですが、腰椎が動かないような他の方法で胸椎を動かすようにしたほうがいいです。


下の動画に出てくるストレッチをやらないほうがいいというのには、元腰痛持ちとして同意します。

動画:絶対にやってはいけない腰痛ストレッチTOP5 ”福山市の整体院 一心 ISSHIN “
https://www.youtube.com/watch?v=G0rg_NB_iWg


お腹上部については、ボールを使ったお腹ほぐしが良いと思います。へそ付近からその上あたりをボールを使って押していきます(みぞおちは苦しいので避ける)。メディシンボールが使えない場合は、100円ショップに売っている同じくらいの大きさの柔らかい子供向けのボールでもいいと思います。


動画:その日の疲労をしっかり回復するための寝る前ルーティン
https://youtu.be/60gXqCHHxe0?t=117

それと猫背の人は、クランチなど胸椎を曲げて腹直筋の上側を鍛える種目を避けたほうが良いですね。猫背が悪化します。クランチは反り腰の対策にもならないので、姿勢改善目的では、あまりやらないほうがいい種目です。腹直筋の見た目を良くしたい場合は、効果的だと思います。


◆胸椎反り
このケースの人は趣味の筋トレだとあまりいないかもしれませんが、胸椎が反っている場合は、脊柱起立筋群、菱形筋、広背筋あたりが固く縮んでいるので伸ばしていきます。


動画:菱形筋のストレッチ
https://www.youtube.com/watch?v=mHd32fZ5NGE


菱形筋は、テニスボールを2つ繋げてセルフマッサージも出来ます。肩甲骨の間にテニスボールを当てて仰向けに寝て菱形筋に当ててほぐします。

【筋膜リリース】テニスボールで簡単にできる「マッサージボール作り」
https://www.youtube.com/watch?v=P8Xy1U24Vy4


あとは広背筋のストレッチ。下のやり方だと同時に胸椎の捻りもストレッチできて効率的です。腰椎は捻らないように注意します。


動画:セルフストレッチ ~広背筋~
https://www.youtube.com/watch?v=x7rY0rmVuY4


<腹と腰回り>

腰椎は軽く反っている(前湾)のがニュートラルの状態です。



◆腰椎が反り(反り腰)
腰が反っている場合は、ベリーリフトが効果的です。腰の筋肉のストレッチだけでなく、横隔膜、腹横筋、下腹部の筋肉のアクティベート、肩甲骨の外転、胸郭のポジション修正なども同時にできます。


仰向けになって膝を抱えて丸まって腰を伸ばすのはやらないほうがいいです。私はこれをやると腰の調子が悪くなります。腰は反らすのも曲げるのも、腕の力などを使って外部からの力でストレッチするのは止めたほうがいいです。前屈で腰を丸めて伸ばすのも腰に悪い感じです。


動画:絶対にやってはいけない腰痛ストレッチTOP5 ”福山市の整体院 一心 ISSHIN “
https://www.youtube.com/watch?v=G0rg_NB_iWg


広背筋も固くなりやすいのでストレッチします。


動画:セルフストレッチ ~広背筋~
https://www.youtube.com/watch?v=x7rY0rmVuY4


長時間の立ちっぱなしの後や、デッドリフトなど背中に負担のかかるトレーニングをやって背中が張っているときは、フォームローラーで下背部の両脇から肋骨の後ろを潰すようにコロコロやるのも効きます。胸椎伸ばしのフォームローラーと同じように仰向けになって背中にフォームローラーを当てて、身体を斜めに傾けて、フォームローラーを押し当てていきます。当てる箇所は、脊柱起立筋群の外側から広背筋あたり。筋肉は潰すように押して、肋骨は少し押し込みます。体幹の前側にはある程度力を入れて腰が反らないようにしながら、体幹の後ろ側は脱力して行います。


下背部の真ん中、腰椎があるところにフォームローラーを乗せるのはNGです。腰を痛めます。ほぐすのは脇腹の後ろ辺りから肋骨の後ろあたりです。張って反り気味になっている背中のイメージは「アジの開き」で、これを丸めていく感じです。



◆曲がり腰
腰が丸まっている場合は、ボールを使って、へそ付近から下腹部あたりをほぐしていきます。



あとはキャットキャメルで腰椎を曲げ伸ばしすると良いと思います。




<尻周り>

骨盤が前傾か後傾か。



◆骨盤前傾
骨盤前傾だと股関節屈筋が固く縮んでいるので、腸腰筋と大腿直筋をストレッチしていきます。スクワットなど大腿四頭筋種目をやると大腿直筋が固くなりやすいので、脚のトレーニングを熱心にやる人は大腿直筋ターゲットのストレッチを重点的にやると良いでしょう。デスクワークで座りっぱなしだと腸腰筋が固く縮みやすいので、腸腰筋ターゲットのストレッチを重点的にやると良いと思います。いずれも臀筋と下腹部に力を入れて骨盤を後傾状態でロックしながらやると伸ばしやすいです。

股関節の筋肉は固いので、うまくやらないと腰椎が動きやすくなります。股関節を動かしたいのに腰椎が動いて困るときは、ドローインの要領で下腹部を締めるとだいたい上手くいきます。

固い床の上でやるときは、タオルなどクッションになるものを敷いてやると膝が痛くならないです(私はニースリーブを敷いてやっています)。




◆骨盤後傾
骨盤後傾だと殿筋群やハムストリングスが固く縮んでいるので、ほぐして伸ばしていきます。臀筋とハムストリングスは、フォームローラーも効果的です。殿筋群は下・上・横と立体的にほぐします。

動画 How to massage your hip with a foam roller
https://www.youtube.com/watch?v=asMUioK5jLo


動画:How to loosen the back of the thigh with a foam roller
https://www.youtube.com/watch?v=kUJHf3luQMQ


◆スウェイバック姿勢
骨盤後傾対策のフォームローラー・ストレッチに加えて、大腿四頭筋やふくらはぎの筋肉が張っているのでほぐしておきます。

動画:TRIGGERPOINT™ コア フォームローラー® を使った太もも前側の筋膜リリース方法
https://www.youtube.com/watch?v=kVcLBRiW1EM



腰痛対策には、股関節のモビリティは非常に重要です。どの姿勢タイプの人も、股関節は伸展・屈曲以外に、外転・内転、外旋・内旋のストレッチもやったほうがいいです。股関節は全方向へのモビリティが必要です。普段から運動している人は、ウォームアップに股関節のモビリティドリルを入れておくと良いでしょう。

関連記事:股関節のストレッチ・ウォームアップ



ニュートラルの姿勢の見つけかた

固い筋肉を一通り緩めたら、ニュートラルの姿勢を見つけてみます。

まずは、椅子に座ります。座面は平らで固いほうがいいです。膝と股関節を90°にして、上半身まっすぐで、頭が上に引っ張られてる感じで背筋を伸ばす(背中を反らせるのではなくて、上に伸びる感じ)。骨盤を前傾・後傾させてみて、腰などの筋肉に無駄な力が入らず、頭の位置が最も高くなる骨盤の位置がニュートラルです。まずは、この骨盤と上半身のポジションを覚えます。

次に立ち上がり、まっすぐ立ちます。今度も同じように姿勢維持に無駄な力を使わず、頭が上に引っ張られるようにして、最も頭の位置が高くなる立ち方を探します。足、スネ、ふともも、骨盤、腹部、胸部、首、頭の骨が、縦にまっすぐ積まれているイメージです。姿勢が傾くと、倒れないように無駄な力が筋肉に入ります。リラックスして縦にまっすぐ骨を積む感じです。足裏の重心は、くるぶしの下かその少し前くらいになると思います。リラックスして骨を積んで立てないなら、まだ固いところがあって姿勢が歪んでいます。

普段の日常生活や、筋トレするとき(ニュートラルポジションが要求される種目)では、この姿勢を維持できるように意識していくと良いでしょう。




呼吸と腹圧をコントロールできるようにする

運動不足の人でも、運動している人でも、横隔膜を使った深い呼吸が出来ないケースが多いので、まずは呼吸と腹圧コントロールの練習をしています。

基本はドローイン系から。呼吸に重要な横隔膜や腹横筋などの筋肉を使えるようにし、同時に背骨、胸郭、骨盤の位置を修正します。




(1) 床に仰向けに寝て、膝と股関節を90度に曲げます。足をベンチなどに乗せるか、足裏を壁に付けるかします。

(2) 両膝の間に直径20cm程度のボールやフォームローラーなど、適当なものを挟みます。手近な物が無い場合は、両腕を前に出して両手で握りこぶしを作り、それを挟むのでも良いでしょう。

(3) 踵を下方向に軽く押して、お尻(臀筋)と太ももの裏(ハムストリングス)と内股(内転筋)に軽く力を入れ、尾てい骨を少し浮かせます。骨盤が後傾し、腰椎が平らになって、腰の部分がぺったり床につくようにします。首には力を入れません。柔軟性の問題で首がつらい場合は、後頭部の下に折り畳んだタオルなどを置くと良いでしょう。腕は力を入れず、適当な位置に置いておきます。

(4) 鼻から息を吸って、口から息を深く吐き出します。息を吸う時は、肋骨の下端やみぞおちのあたりが膨らむように吸い込みます。吸い込む息の量の目安は、限界の75%程度です。吐き出す際は限界まで吐き切ります。3-4秒かけて吸い込んで、5-8秒かけて吐き出して、息を吐ききった状態で2-3秒止めます。これを4-5回繰り返します。

(5) お腹の前側の腹直筋だけでなく、脇腹の腹斜筋のあたりも収縮し、肋骨が締まればうまくできています。鏡や窓ガラスに顔を近づけて、「はー」と息を吐きかけて曇らせる時のイメージで息を吐くと感覚をつかみやすいです。クランチのように上半身を丸めないようにします。

(6) 息を吸って吐く動作に慣れてきたら、今度は肋骨を締めた状態をキープしながら、鼻からある程度息を吸って肺に空気を入れます。この時、息を止めたまま全力で叫ぼうとすると(実際には声は出しません)、腹圧が高まる感覚をつかみやすいです。この腹圧を高めた状態で息を止め、上の歯と下の歯を合わせて、舌を口蓋(口の中の上の部分)にベタッと押し付けると、体幹を非常に強く固めることができます。スクワットやデッドリフトなどで重たい重量を扱う時は、このやり方で体幹を強く固めると良いでしょう。


腹圧や体幹については関連記事に詳しく書いてあります。

関連記事:筋トレでの腹圧の高め方・体幹の固め方




弱い筋肉を鍛える

各部位に分けて、弱い筋肉を鍛えていきます。


<首>

首の筋トレは・・・縮んでいる筋肉を伸ばしたら、あとは頭が前後に傾かないようにバランスを取っていれば普通の生活には事足りるので、首の筋トレはしなくて良いかなと思います。もし首の筋トレをするなら、アイソメトリックが良いでしょう。首の筋トレをして気分が悪くなるようなら即中止しましょう。(首は繊細なので、個人的にはあまりいじりたくないです)



<肩周り・胸>


◆胸椎曲がり(猫背)

下腹部に力を入れ、腰を反らないようにして背伸びをします。

動画:背伸びの運動
https://www.youtube.com/watch?v=VkdV10szxT0


猫背だと肩甲骨が開いているので、肩甲骨を寄せるエクササイズをします。猫背に加えて巻き肩だと肩関節が内旋しているので、外旋を鍛えるエクササイズも効果的です。いずれも腰を反ったりしないよう、良い姿勢をキープしながら。腰が反りそうになったらドローインの要領で息を吐いて、肋骨を締めて下腹部に力を入れると体幹が安定します。

動画:"No Money" Exercise for Upper Back & Shoulders
https://www.youtube.com/watch?v=HSRfN8xksZ0



動画:【THAT'S トレーニング】インバーテッド・ロウ
https://www.youtube.com/watch?v=9a-7pn0ahHM


動画:High Pulley Face-Pull
https://www.youtube.com/watch?v=d470bJ4BBrg


関連記事:怪我をしにくいロウ・プルのやり方



◆胸椎反り
胸椎のニュートラルの曲がりを維持した状態で、肩甲骨を外転させて腕を遠くに伸ばすリーチ動作を含む種目が効果的です。例えば、片手ランドマインプレスです。ケーブルマシンやゴムバンドでも類似した動きができます。片手種目だと胸椎の回旋も行えるので、胸椎のモビリティトレーニングにもなります。




<腹回り・腰回り>


◆反り腰
背骨ニュートラルにしながら、お腹の下や横の方の筋肉を鍛えます。まずはプランクが良いでしょう。プランクの呼吸は、目的に合わせて変えます。


殿筋群に力を入れながら、息を吐ききって腹直筋下部と腹斜筋に力を入れてドローイン状態でプランクをすると、骨のポジションを把握し、お腹側の姿勢維持筋肉の収縮感覚を正しく得て、姿勢維持筋肉を鍛えるのに効果的です。反り腰の人は下腹部の筋肉が弱い(筋力も筋持久力も弱い)ので、まずはドローイン状態でプランクをやっていくと良いと思います。

お腹に息を入れてから息を止めて、スクワットやデッドリフト的な腹圧をかけながらプランクをすると、スクワットやデッドリフトで良い姿勢で腹圧をかける練習になります。ドローイン状態でのプランクに慣れたら、腹圧をかけたプランクもやっていくと良いでしょう。

姿勢を維持できるだけの最小限の力しか入れず、楽に呼吸をしながら長めの時間プランクを続けると、呼吸をしながら体幹を安定させる練習になります。日常生活や動きのあるスポーツだと、呼吸をしながら状況に応じて最小限の力で体幹を安定させ続ける必要があるのでそれの練習です。慣れたら、片手や片脚を浮かせたりすると負荷に変化をつけられるので実戦的になっていきます。体幹のコントロール能力が低下している人は、変動する負荷に対して、呼吸を続けながら体幹を安定させるのが苦手になっているので、こういったトレーニングが効果的です。


◆曲がり腰
背骨ニュートラルにしながら、背中側の姿勢維持筋肉を鍛えます。楽に呼吸を続けながら、バードドッグが効果的です。動作が難しい場合は、手と足を伸ばしきらず少しだけ浮かせたり、足だけ、もしくは手だけ伸ばしたりして難易度を調整します。

動画:長友佑都の朝トレ「バードドッグ」/モーサテStyle
https://www.youtube.com/watch?v=q9Jy4qR0Yr0


バードドッグは、McGill Big3 として体幹トレで重要視されることがあります。運動不足で体幹コントロール能力不足の人には効果的ですが、普段運動している人にとっては負荷が軽すぎてあまり意味が無いと思います。

他のMcGill Big3は、サイドプランクとカールアップですが、どの体幹トレでも、「実施する人にとって筋肉と脳にトレーニング効果のある種目なのか?」を考えないといけないです。

McGill氏が背骨研究の権威だからと体幹トレはこれをやればOKみたいなことを言っている人を見かけることもありますが、McGill氏の著書では、リハビリ目的や初心者向けのトレーニングとしてバードドッグ、サイドプランク、カールアップは紹介されています。

私は、バードドッグは試してみて簡単に出来たのでそれ以降やっていません。カールアップはあまり意味を感じなかったのでやってないです。サイドプランクは、普通のプランクと合わせてやっています。

関連記事:腰痛について4~推奨エクササイズ~(Low Back Disorders)


<尻周り>

◆骨盤前傾

臀筋の働きが鈍っているので、ヒップリフトやヒップスラストが効果的です。両脚で高重量をやろうとすると腰を反りやすくなって反り腰が悪化するので、重量は軽めにしましょう。どうしても腰が反りやすい場合は、片脚ずつやると反りにくくなります。



◆骨盤後傾
股関節屈筋が緩んで伸びているので、股関節屈筋を鍛えます。腰を丸めないように、片脚ずつ腿上げ動作をすると良いでしょう。腰が丸まりやすい場合は、ドローイン状態でやると腰が丸まりにくいです。スウェイバック姿勢も同様に、骨盤の前方シフトで股関節が過伸展しているので、股関節を屈曲させる筋肉を鍛えると良いです。

動画 腿上げ運動の効果、正しいフォームとは?腸腰筋、中臀筋、姿勢を鍛える筋トレ法
https://www.youtube.com/watch?v=uSjKTUKBicY




体幹を適切な強さで固めて様々な動きをする

体幹トレーニングの目的は、様々な状況で体幹を安定させられるようにすること。

床から物を持ち上げる時、リラックスして歩いている時、ランニングしている時、バスケやサッカーで急激な切り返し動作をする時、重たいバーベルを担いでスクワットをする時・・・人間が生きていく上で様々な状況があり、それぞれ適切な体幹の使い方は違ってきます。スクワットは準備をして意識的に体幹を固める余裕がありますが、多くの状況では体幹のことを考えて身体を動かしたりしないので、状況に応じて無意識に体幹の筋肉が働く必要があります(無意識といっても脳が指令を出しています)。


体幹への負荷の強さと、負荷のかかる時間の長さから状況を3パターンに分けると、

1) 軽い負荷がかかり続ける状況で、呼吸をしながら体幹を維持する。例えば歩いたり、一定速度で軽くランニングしたり。呼吸をするということは横隔膜が上下に動いているということなので、腹圧をコントロールするのが難しいです(スクワットなどで高い腹圧をかける時は呼吸を止めて横隔膜を収縮させて腹腔を押し下げた状態で固定します)。歩いたり走ったりしているときに無駄に疲れないよう、最小限の労力で、負荷の変化に対して体幹を安定させるコントロール能力が要求されます。

実際に負荷がかかるより少し前から固める必要があるので、無意識に予備的に筋肉が働いています(手足が動くよりも少し前に腹横筋が収縮しているという話を聞いたことがある人もいるかもしれません)。例えば道を歩いていて、小さな段差に気付かずに足を踏み外すと、腰にガツンと負荷がきますが、あれが体幹が予備的に対応出来てなかった状況です。


2) ジャンプや切り返しなど瞬間的に体幹に強い負荷がかかる場合は、一時的に呼吸を止めて高い腹圧をかけます。


3) スクワットやデッドリフトなど、数秒間非常に強い負荷が体幹にかかる場合は、数秒間呼吸を止めて意識的に腹圧を高めます。


他の要素としては、同時に腕や脚は動くか、体幹にはどの方向で負荷がかかるか(矢状面、前額面、水平面)といったものもあります。

このように状況によって体幹の使い方は変わってきます。目的にあった体幹トレーニングを行うには、日常生活での動作や、自分がやっているスポーツと筋トレ種目の動作においての、

●各関節の動き

●呼吸・腹圧

●体幹への負荷(負荷の方向、負荷の強さ、負荷のかかる時間、一定か波があるか)

を抽出して、それらの要素を含んだ体幹トレーニングをすると効果的です。


体幹トレーニングの具体例として、いくつかの種目とその考え方を書いていきます。


◆体幹・お腹側


腰が反らないように腰椎フラットで固定しながら、肩関節と股関節を動かします。両脚同時に股関節を曲げ伸ばしすると、よほど体幹が強くない限りは腰が反るので、片脚ずつ曲げ伸ばししたほうがいいです。

股関節を動かしながら腰椎が動かないようにするのは、スクワットやデッドリフトで腰がクネクネと反ったり曲がったりしないようにする練習。

肩関節を曲げ伸ばしするのは、オーバーヘッドプレス系で腰が反らないようにする練習。バックスクワットで背中が反らないようにする練習にもなります。

最初は息を吐ききってやったほうが、体幹が安定しやすいです。慣れてきたら、お腹に息を入れて思いっきり腹圧をかけながらデッドバグをやると、スクワットやデッドリフトでの体幹の安定を鍛えるトレーニングになります。重りを持ちながらやると、負荷を上げられます。






◆体幹・背中側
背中の矢状面の体幹トレーニングは、デッドリフトが効果的です。腰痛防止目的の場合は、ダンベルを床に縦に置いて持ち上げるのがおすすめです。日常生活で床から何か物を持ち上げるときに、腰を痛めないようにする練習になります。


筋肉のコンディションが良ければ(固くない、緩んでない)、前側と後ろ側の筋力バランスはあまり気にしなくて大丈夫です。普通は腹筋群よりも脊柱起立筋群のほうが強いですが、コンディションを整えていれば問題は起きないです。

重たいバーベルでデッドリフトをガンガンやるから腹筋ローラーで腹筋群もバキバキにしないとバランスが取れなくなる・・・なんてことはないです。ただ、プランクやデッドバグなど最低限の体幹前側のトレーニングはしたほうがいいと思います。私は体幹前側のトレーニングをさぼると姿勢が崩れやすくなって腰の調子が怪しくなってきます。


前額面や水平面の負荷を加えたかったら、片手にウェイトを持っておこなう種目が良いでしょう。例えば、スーツケース・キャリーや、スーツケース・デッドリフトです。片手に重りを持って体幹を安定させながら、歩いたり、デッドリフトをしたりします。

動画:Suitcase Carry - Great Exercise for Low Back Back & Strengthening the Hips!
https://www.youtube.com/watch?v=6gXYfAChWz0


動画:Kettlebell Suitcase Deadlift
https://www.youtube.com/watch?v=eUjU3YBHe-Y


片手でのベントロウにリーチ動作を組み合わせた種目も良いトレーニングになります。下背部の安定性、胸椎の回旋、ロウ動作を同時にトレーニングできます。

動画:Single Arm Bent Over KB Row With Opposite Reach - THIRSTgym.com
https://www.youtube.com/watch?v=4ziABo-ilrk


動きの中で瞬間的に体幹を強く固める練習だと、ケトルベルスイングが良いと思います。

動画:How to do KETTLEBELL SWING (Use Your Hips!) Ft. Cory Schlesinger
https://www.youtube.com/watch?v=Buz6gaVzVZs




筋力や動作のバランスを調整しながら良いコンディションを維持していく

普段の生活での姿勢や、トレーニングのやり方によって、固く張りやすい筋肉や使われにくい筋肉が出てきます。種目の組み合わせを考えたり、就寝前などトレーニング以外でのケアに気をつけたりすることで、良いコンディションを維持していきます。

人よってコンディションの維持方法は違ってきますが、例として私が個人的に気をつけていることを書きますと、

・股関節のモビリティの維持
ジムに行く前に股関節のウォームアップとストレッチをする。ジムに行かない日も、一日一回は同じウォームアップとストレッチの動作をやっておく。

関連記事:股関節のストレッチ・ウォームアップ


・スクワットとデッドリフトの影響への対策

背中が張ってくるので、ベリーリフトやフォームローラーで背中コロコロなど、反り腰のところに書いた背中のケアをする。

大腿直筋が固くなって股関節が屈曲方向に引っ張られやすいので、大腿直筋のストレッチを重点的にをする。あとヒップスラストで臀筋を鍛えておく。


・ベンチプレスの影響への対策
放っておくと猫背になりやすいので、大胸筋のストレッチをする、あとは、水平方向と頭上へのロウ種目をやる。ロウ種目は腕と肩甲骨を連動させて大きく動かすことを意識して、低重量・高レップでおこなう。

懸垂・プルダウン系をやりすぎない。広背筋を使いすぎると広背筋が固く縮んで姿勢が悪くなりやすいですし、肩が押し下げられて肩関節や腰が窮屈になったりするので。


・腹直筋の見た目トレーニング
腹直筋の見た目を鍛えるためのクランチや腹筋ローラーは特にやっていません。やらない理由は、やるのが面倒なのと、現状で上手くいってる姿勢バランスを崩したくないからです。

体幹前側のトレーニング種目は、デッドバグ、プランク、たまにベアクロールで、各1セットを疲れるまでやっています。これで体幹の強さには困ることはなく、姿勢バランスも良好な状態を保てているので、当面はこんな感じでやっていくつもりです。


・その他
仙腸関節は、いじらない。以前、実験的に仙腸関節をいじりまわしてたら緩みすぎたみたいで、腰が痛くなりました。現状で仙腸関節に問題がなければ、仙腸関節関連のストレッチ(仙骨割りなど)はやらないほうが良いと思います。


続き 3回目:スクワットとデッドリフトでの腰痛のトラブルシューティング

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