12/11/2025

バーをしならせてからのデッドリフトの踏み込み(上級者向け技術)

上級者向けのデッドリフトの踏み込み技術の記事です。筋トレ効果を高めるための技術ではなく、デッドリフト1RMを向上させるための技術です。

踏み込みの基本技術は以下の記事で解説しています。この技術が出来た上で、バーをしならせて高い位置から踏み込む方法の解説をします。

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踏み込みポジションを、床から少し高い位置にイメージします。ボトムからバーベルの重さをガッツリ受け止めて挙上するのではなく、少し高い位置からなるべく楽して挙上したいです。

踏み込みポジションに入る際に、胸の位置を高くしながら広背筋を絞って、体幹・尻・下半身にギューッとテンションをかけます。身体の緩みが取れます。この時点でバーがしなります。そして、そのしなったポジションから最大出力で踏み込みます。個人的には、弓を引き絞ってから、一気に力を開放するイメージです。

緩みを取った時点ではバーベルのプレートは接地したままですが、バーがしなることで握った位置が少し上に移動します。それにより、踏み込みの際の股関節の関節角度が浅くなり、股関節とバーの水平距離が近くなり、上半身が起きることで体幹の負担も軽くなります。


パワーリフティングの競技用の硬いバーだと、160kgあたりからしなり始める感じです。普通のジムに置いてある柔らかめのバーだと120kgくらいでしなり始めます。重量が上がるほどしなりが大きくなり、より高い位置から踏み込みやすくなります。

床引き1RMと、RDLの推定1RMの差が小さい人、例えば床引き1RMが180kgで、RDL140kg×8レップとかできる人は、踏み込みを強化することでデッドリフト1RMが伸びます。


実際のパワーリフティング選手の踏み込み動作を紹介していきます。選手によって予備動作のパターンはいくつかありますが、共通しているのは、胸を高くしながら広背筋を絞って体幹から尻・下半身にテンションをかけることでバーがしなり、スタートポジションが少し高くなって、その高い位置から浅い関節角度で最大出力の踏み込みが始まることです。

以下は、いずれも2段目の画像で緩みをとってバーをしならせて、3段目の画像で踏み込んでいます。3段目の画像では表情が険しくなったり首筋に血管が浮いたりしていて、3段目の画像の時点で全力を出しているのがわかると思います(2段目の時点ではバーはしなるが全力ではない)。


<尻を上げてから尻を入れて挙上>
尻を入れながら緩みを取ります。

動画:Heather Connor vs Tiffany Chapon | 47kg IPF Worlds 2025
https://youtu.be/_bAs7NZFiEQ?t=289





動画:The Most Dominant Female Ever: Amanda Lawrence Sheffield 2025 Recap
https://youtu.be/hy-W-M2V7dg?t=560





動画:The COMEBACK of Taylor Atwood | 876KG Total | -83kg Class
https://youtu.be/LQqE--r9a6E?t=475




<予備動作は広背筋の絞りのみ>
現時点でナチュラル最強のデッドリフター。まだ20歳。

動画:Nonso Chinye 988KG TOTAL and DEADLIFT RECORD
https://youtu.be/HzmXUwvamUs?t=415






<何回か踏み込んでから挙上>

動画:904KG as a -83 | Joe Borenstein BREAKS the WORLD RECORD
https://youtu.be/hioJwsauIRI?t=456




一番上のTiffany Chapon選手(試技162.5kg)は小柄で、有利な位置から引けます。

2番目のAmanda Lawrence選手(試技255kg)と3番目のTaylor Atwood選手(試技342.5kg)は、デッドリフトにそこまで有利ではない骨格バランス。

4番目のNonso Chinye選手(試技415.5kg)と5番目のJoe Borenstein選手(試技377.5kg)は、デッドリフト向きの骨格バランス。

試技の重量は、バーのしなり具合の目安にしてください。


バーをしならせてから踏み込む練習は、床引きデッドリフトを60%1RM~80%1RMで、1レップごとにリセットしながら技術練習をするのが良いと思います。重量設定が軽すぎると、身体にテンションがかからないうちにバーベルが浮いてしまいます。逆に重すぎると疲労が溜まりやすいです。

自分の骨格バランスとフォームに近い選手の映像を繰り返し見て、動きをイメージするのも効果的です。人間にはミラーニューロンがあるので、トップ選手のフォームを見てイメージすることで自分のフォームも良くなります。どのタイミングで緩みを取り、バーがしなっているか、どのタイミングで強く踏み込んでいるか、映像を細かく観察し、自分の身体が体験しているかのようにイメージします。再生速度を遅くするとわかりやすいです。


今後いくつか上級者向けのデッドリフトの記事を書く予定です。デッドリフトの基本技術については以下の書籍を参考にしてください。

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