2/27/2014

シクリカル・ダイエット

自分の現在の知識でシクリカル・ダイエットについてまとめます。

シクリカル・ダイエット(カーボサイクル/サイクル・ダイエット)とは、数日から一週間程度といった短いサイクルでアナボリックフェーズとカタボリックフェーズを繰り返す方法。アナボリックフェーズでは、カーボ中心のリフィードとウェイトトレーニングを行うことで内分泌系・神経系の回復と筋肉量の維持増加を狙い、カタボリックフェーズでは低カロリー低カーボもしくはファスティングにより体脂肪の減少を狙う。この方法により、以下の成果を目指す。

・減量:筋肉をなるべく減らさないようにしながら、体脂肪を減らしていく。
・体組成組み換え:筋肉を少しずつ増やしながら、体脂肪を少しずつ減らしていく。
・増量:体脂肪の増加をなるべく抑えながら、筋肉を増やしていく。

具体的なプロトコルとしては、Lyle McDonald の The Ultimate Diet 2.0 や Martin Berkhan の Leangains が挙げられる。

オーソドックスな減量期(アンダーカロリーで体脂肪減らす)と増量期(オーバーカロリーで筋肉増やす)を数ヶ月スパンで繰り返すのに対して、このようなシクリカル・ダイエットを用いるメリットは、

・体脂肪率15%以上の人(女性の場合は+7%が基準)
- 減量目的・・・時間と手間がかかるだけで、特にメリットは無さそう。この体脂肪率なら、そこまでシビアにやらなくても、オーソドックスなダイエットで筋肉を残しながら体脂肪を減らせる。
- 体組成組み換え目的・・・増量減量に伴う体脂肪量の大幅な変動を避けられ、見た目や服のサイズの問題を回避できる。
- 増量目的・・・筋肥大速度は遅くなるが、体脂肪量の増加を抑えられ、見た目や健康にメリット。

・体脂肪率12-15%以下の人
- 減量目的・・・多くの人はこのくらいの体脂肪率から、筋肉量を維持しながらの減量が難しくなってくるので、シクリカル・ダイエットの手法を使うメリットがある。
- 体組成組み換え目的・・・低い体脂肪率でオーソドックスな減量と増量をすると、減量期に筋肉が減りやすく増量期に体脂肪が増えやすくなり、体組成組み換えの進捗が非効率になると思われる。シクリカル・ダイエットは、カテコールアミンの分泌、脂質の燃焼、alpha-2受容体抑制による頑固な脂肪の分解、骨格筋のインスリン感受性を高めてからのリフィードといったテクニックを用いることで、Calorie Partitioning(カロリーが体脂肪にいくか筋肉にいくかの問題)を改善しているので、低い体脂肪率でも体組成組み換えが効率的に行えることが期待される。
- 増量目的・・・筋肥大速度は遅くなるが、体脂肪量の増加を抑えられ、見た目や健康にメリット。


関連記事:
炭水化物の摂取をサイクルさせるダイエット 

2/26/2014

The Ultimate Diet 2.0 メモ

★Ultimate Diet 2.0(UD2.0)について
- アスリートやボディビルダーと違って、遺伝的に恵まれているわけでもなく、薬物も使わない人向けのプロトコル。遺伝的に恵まれていない人が、いかに筋肉を残しながら(できれば少し増やしながら)低い体脂肪率を実現するか。
- このプロトコルの対象は体脂肪率12-15%くらいの人(女性はこれに+7%くらいを基準として考える)。このくらいの体脂肪率までは、オーソドックスなダイエットで落とせる。このへんから下は、筋肉を残しながら体脂肪を落とすのが難しくなってくる。


★内分泌系と体脂肪の基礎知識
- インスリンは貯蔵ホルモン。エネルギーを貯蔵する。筋肉のインスリン感受性が高いと、糖質が筋肉に送り込まれやすい。体脂肪のインスリン感受性が高いと脂質が貯蔵されやすい。
- 体脂肪の分解。トリグリセリドとグリセロールにする。分解速度の鍵は hormone sensitive lipase (HSL).
- インスリン(炭水化物摂取でもタンパク質摂取でも出る)も、血中トリグリセリドもHSLの活動を抑制する。つまり何を食べても体脂肪の分解は抑制される。
- カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)がHSLを活性化する。正確にはcAMPがHSLの活動を決定、インスリンやカテコールアミンはcAMPに影響。
- インスリンとカテコールアミンのレベルが同時に上ったら(例えば運動中にカーボ摂取するとか)、インスリンの影響が勝つ(脂肪分解が抑制される)
- アドレナリンレセプター:alpha-2が脂肪分解抑制。beta-2が脂肪分解促進。 
- アンドロゲンと甲状腺ホルモンはbeta-2の感度を上げる
- 頑固な脂肪エリアは血行も良くないので、脂肪が分解されたとしてもそれを燃焼させる組織へなかなか運ばれず再合成されてしまう。
- ファスティングで脂肪細胞への血行がよくなる。ファスティングを続けると筋肉も落ちるので、低炭水化物・ケトジェニックダイエットでそれに近い状態にする。
- 甲状腺ホルモンレベルが高いと脂肪細胞への血行が良くなりやすい。
- エクササイズでも脂肪細胞への血行が良くなりやすい。
- 肝臓や筋肉に分解された脂肪が運ばれ燃焼される。肝臓・筋肉のグリコーゲンレベルが低いと燃焼されやすい。


★筋肥大の基礎知識
・主に二種類の筋肥大:筋原線維と筋小胞体
- 筋原線維の肥大→繊維のサイズとタンパク質量の増加。ホルモンなど様々な要因と、繊維への強いテンションが肥大を開始させるシグナルになる。
- 筋小胞体の肥大→繊維以外(グリコーゲン、水、ミネラルなど)のサイズと量の増加。高レップのトレーニングを続けると、毛細血管の密度やミトコンドリアの密度や他の筋収縮以外のサイズアップに貢献する要素が増加する。あまり顕著に肥大しない。

・普通は筋原線維の肥大を目的とする
- 筋原線維の肥大のプロセスは、高負荷のテンションが繊維にかかる(ダメージも付随)→細胞内の核がmRNAを生成→リボゾームに入り→リボゾームがアミノ酸を掴んで→それをくっつけて新たな収縮用タンパク質を作り出し→既存の筋繊維に統合する。
- 細胞のエネルギーレベルが低いと(グリコーゲンが枯渇していたりクレアチンリン酸のレベルが低かったり)、タンパク質合成はあまり起こらない。mRNAが続く時間は36時間程度。リボゾームの活動レベルが筋合成速度の鍵。アンドロゲンはリボゾームを活発にする。


★三種類のトレーニング
・Volume Training
- 高レップ・多セット・短インターバル(パンプトレーニングともいう)。
- 筋グリコーゲンを枯渇させる。普通の人(遺伝的に恵まれておらず、薬物も使用していない人)は、トレーニング後の栄養補給では、筋グリコーゲンの再充填が筋合成よりも優先され、筋合成が効率的に起こらない。だからUD2.0では、筋肉の成長を目的としてはこのトレーニングを行わない。
- このトレーニングの目的は以下の通り。
- グリコーゲン枯渇させてからのグリコーゲン超回復。
- グリコーゲンを枯渇させることで、脂肪の分解燃焼を促す。
- 乳酸レベルを上げて成長ホルモンの分泌を促す。成長ホルモンは脂肪分解に関わる。
- カテコールアミンなどのホルモン反応が脂肪分解を促す。
- カロリー消費が大きい。トレーニング後のカロリー消費は脂質の燃焼で賄われる割合が高い。
- いつも高負荷のトレーニングだと関節にダメージがたまる。高レップトレで関節に休息を与える。また血行や乳酸レベルの上昇が関節強化にも繋がる。
- UD2.0では低炭水化物・低カロリーのフェーズでこのトレーニングを行う(めちゃくちゃキツイとのこと)

・Tension training
- 6-12レップ インターバルは1.5-2分
- 基本は、重いウェイトを使って限界(付近)までやる。
- リスクは、怪我と神経系の疲労。
- 筋肉と神経系の疲労と回復のタイミング。神経系に大きな疲労が残ると、筋肉は次の刺激を受け入れられる状況になっても、神経系の回復に時間がかかってトレーニングできず非効率。
- UD2.0ではカーボロードスタートの際に行ってグリコーゲン超回復とリボゾーム増加を促して、パワートレーニングの効果を高める。

・Power training
- 3-5レップ 3-10セット 3-5分休憩
- ATP/クレアチンリン酸を主に使うので筋グリコーゲンをあまり消費しない。筋肥大に有利。
- UD2.0ではグリコーゲンを十分に充填した状態で行って筋肥大を目指す。


★体脂肪を減らすには。
- 低カーボでインスリンを抑える。カテコールアミンレベルが上がる。ウェイトトレーニングと有酸素運動でもカテコールアミンレベルが上がる。
- ファスティングか低カーボケ・トジェニックで脂肪細胞への血行が良くなる。有酸素運動でも良くなる。
- alpha-2 receptorsを抑制するにはどうするか。ヨヒンビンがその効果があるが・・・
- 血中の脂肪酸濃度を上げるとalpha-2 receptorsが抑制される。カーボをトータルカロリーの20%以下にすると、血中の脂肪酸濃度が上がる。ついでにエクササイズへのカテコールアミンの反応も上がる。
- 3-4日間、血中の脂肪酸へさらされるとalpha-2受容体が抑制される。低カーボをこのくらいの期間続けると良い。
- グリコーゲンを枯渇させることで、筋肉と肝臓での脂肪酸燃焼を促進。


★ケトーシスとは
- 脂肪酸燃焼が増えて肝臓がそれ以上エネルギーとして使えなくなると起こる。絶食、低カーボ、長時間の持久運動で起こる。脂肪酸が部分的に酸化され、余ったacetyl-CoAがケトンに転換される。ケトンの濃度がある一定レベルを越えると、身体がケトーシス状態であると言う。ケトーシスが起こり、血糖レベルが低いと、ケトンは多くの組織で優先的に燃料になる。
- 太ってる人なら、ケトーシスでエネルギーを賄うことでタンパク質(筋肉)分解を抑えられる。痩せている人は体脂肪分解が難しくなってくるので、ケトーシスでタンパク質分解を抑えるのは無理。
- ケトンは同量の脂質よりもややエネルギー効率が低い。変換ロス?
- 痩せている人にとっては、ケトーシスは脂肪燃焼を手早く行うことに伴う副作用と考えた方が良い。ケトーシス自体を目的とはしない。


★UD2.0を始めるにあたって
- 体脂肪を減らすフェーズでは筋肉の減少は避けられない。
- 週末に2-3日のリフィードを行う。グリコーゲン枯渇とテンショントレーニングで筋肉のインスリン感受性が高まっているので、摂取した炭水化物は筋グリコーゲンとして蓄えられる。内分泌系・神経系もある程度回復する。
- それまで別のダイエットをしていたら、UD2.0を始める前に2週間の維持期を入れる。
- 高炭水化物・低脂質のダイエットをしていたら、炭水化物と脂質を適度に摂る2週間の期間を挟む。
- UD2.0の実行は6-8週間以内にすること。続けたかったら2週間の維持期を入れる。


★UD2.0の具体的プロセス。一週間で一サイクル。
・月曜と火曜:低カーボの食事。高レップ短インターバルのトレーニング実施。
- 脂肪減少を最大にしたい場合は、維持カロリーの半分の摂取カロリーにする。ただし1200kcal/day以下にはしないこと。タンパク質と微量栄養素の摂取量が確保できない。
- カロリー不足を大きくしたい場合は、有酸素運動を行う。
- 体脂肪を増やさない筋肥大が目的の場合は、維持カロリーから10-25%減らす。
- 炭水化物の摂取は総カロリーの20%以下にすること。一日あたり65-70グラム程度以内。
- 除脂肪体重1ポンドあたり1-1.5gのタンパク質摂取。
- 残りのカロリーは脂質で調整。オメガ3脂肪酸は摂取すること。
- 筋分解が増えない程度までグリコーゲンを枯渇させる。各部位あたり10-12セット(種目を変えていろんな方向から筋肉を動かした方が良い)。60% 1RMの重量。15-20レップ。60-90秒インターバル。吐き気やめまいやバーン感が出るレベルまでやること。トレーニングを月曜火曜の二日に分ける(部位で分けても、全身のセット数半々で分けても良い)。

・水曜:月曜火曜と同じ低カーボの食事。ウェイトトレーニングはやらない。やりたければ有酸素運動を。

・木曜:(一日4食として)最初の3食は低カーボの食事。夜のトレーニングの30-60分前に25-30グラムの炭水化物と15グラムのホエイを摂取。
- テンショントレーニング各部位2-4セット、6-12レップ(70-85% 1RM)。二日後のパワートレーニングに支障が出ないように限界一歩手前まで。全身をトレーニングすることで、全身の筋肉にグリコーゲンを一気に送り込む。
- 強度の高いトレーニングと適切な炭水化物の摂取で、24時間以内にグリコーゲンを100%まで回復させられる。
- 正しくグリコーゲン枯渇させてたとして。除脂肪体重1kgあたり12-16グラムの炭水化物を木曜夜から金曜夜までに摂取。それと1ポンドあたり1グラムのタンパク質と、総カロリーの15%の脂質。合わせると総カロリーは維持カロリーの2倍くらいになる。グリコーゲンの再貯蔵に優先的に回されるため、脂肪貯蔵されにくく、グリコーゲン貯蔵中は脂肪燃焼が続きやすい。
- 筋グリコーゲン補充のために、フルクトースは大量に摂取しない。肝臓で代謝されるので。ただ50グラム程度(スクロースなら100グラム)摂取するとカーボロードが効果的になるようだ。
- グリコーゲン合成速度に上限があるだろうから、24時間で8-10回に分けて摂取。1000グラムを10回に分けると一回100グラム。
- 水も十分に飲むこと。1グラムのグリコーゲンあたり3-4グラムの水が蓄えられる。
- クレアチンを併用するのも効果的。
- カフェインは控える。

・金曜:木曜夜の続きで、夜までひたすら食べて休む。

・土曜:パワートレーニングの日
- トレーニングの2-3時間前にほどほどの炭水化物とタンパク質の食事。30分前に30グラムの炭水化物と15グラムのホエイを摂取。
- 各部位につき、3-6セット、3-6レップ。
- 2-4秒掛けて下ろして、全力で挙げる。
- 3-5分のインターバルを取る。
- この日のトータルの栄養摂取は、除脂肪体重1kgあたり4-5グラムの炭水化物、2gのタンパク質、40-50グラム程度の脂質。だいたい維持カロリーくらいになる。減量重視の場合は10-20%炭水化物減らす。

・日曜
- 筋肥大を重視する場合は維持カロリーくらい。
- 減量を進める場合は除脂肪体重1kgあたり2-3gの炭水化物。
- 朝のうちは複合炭水化物を食べても良い。午後は低GIの野菜中心。


★なるべく体脂肪を増やさず筋肥大をさせたい場合のUD2.0の応用
- 低カーボの日(月曜~木曜午前)は、維持カロリーかマイナス10-25%程度のカロリー摂取、炭水化物を100g以内にして、高レップのテンショントレーニングを行う(ボリュームトレーニングより重量をやや上げて、レップ数とセット数を減らす)。
- 週末のカーボロードとトレーニングは同じ。
- 土日は維持カロリーかプラス10%程度のカロリー摂取。


参考: The Ultimate Diet 2.0 / Lyle McDonald

2/24/2014

ベンチプレスの基本ポイント

・肩甲骨をしっかり寄せる。肩はなるべく固定し、肩でバーを前に押し出さない。
・バーを上げ下げする時はバーに焦点を合わさない。天井を見る。そうするとバーの軌道が安定する。
・サムレスグリップは絶対ダメ!
・バーの握り方は、手をやや内側に傾け、親指が横向きになるようにし、母指球の辺りでバーを受け止めて握りこむ。前腕の親指側の骨(橈骨)に荷重がかかるようにする。
・バーが胸に付く位置で前腕が垂直になる手幅で握る。
・上から見た時の胴体に対する上腕の角度(腋の開く角度)は45度~75度。
・広背筋を収縮させ胸を高く張る。バーの移動距離が短くなるし、肩関節の故障リスクが下がるし、上腕と胸の角度が狭まることで大胸筋と三角筋前部の長さが短くなり、より強い力を発揮できる。
・バーを下ろしてから上げる時は、胸に軽くタッチしてから一気に上げる。胸でバウンドさせない。
・バーを下ろしている時も一気に上げることをイメージし続ける。
・後頭部を強くベンチに押し付けない。首を痛める。後頭部の髪の毛がベンチに軽く触れるくらいのイメージ。
・脚と尻に力を入れ、上半身のアーチをキープする。
・尻はベンチから上げない。骨盤をベンチと並行くらいに。膝を曲げる角度は90度くらい。
・レップ開始の前に息をおもいっきり吸い込んで胸を高くする(ただし肩が上がらないように)。
・息継ぎは、腕を上げきったレップの間々に行う。バーを下ろして上げる間はアーチキープのために息は止める。
・ラックアップしてからレップ開始は、腕を伸ばしてバーを肩の真上でしっかり止めてから。レップ終了時も肩の真上に肘を伸ばしきるまで挙げて、それからラックに戻す。


参考: Starting Strength Basic Barbel Training 3rd Edition / Mark Rippetoe
(本の説明では図と写真が多く入っていてわかりやすいです。他にはスクワットプレスデッドリフトパワークリーンの解説があります。いずれまとめます)

 

関連記事:

怪我をしにくいベンチプレスのやり方

 

2/20/2014

糖質制限ダイエットについて

★糖質制限ダイエットのメリット
カロリー不足の状態ではタンパク質の必要摂取量が増加する。高タンパク高脂質の食品は多いけど、高タンパク高炭水化物の食品はほぼ無いため、糖質制限ダイエットは結果としてタンパク質の摂取量が確保しやすい。それと単品を抜けばいいので、栄養についての知識が無い人でも頭を使わず実行できる。

一食分のご飯(米)を抜くといったレベルでこのダイエットを行うなら、タンパク質の摂取量を確保し、カロリー収支をマイナスにするための手軽な手段としてお薦め出来る。

次に、厳しく糖質を制限したダイエットについて。炭水化物依存症みたいになっていて、少し炭水化物を摂取すると、食欲に歯止めが効かなくなる体質の人にも向いている。それと、体脂肪率一桁でさらに体脂肪を減らしたい人も、極度に低い体脂肪率だと体脂肪の分解がボトルネックになるので、体脂肪分解を促進するテクニックとして有効。

通常からぽっちゃり程度の体脂肪率の人で、炭水化物摂取に対して悪い反応が起きない人は、過度に炭水化物を制限せずそれなりに炭水化物を摂るダイエットにした方が良い。レプチンレベルの低下をなるべく抑えるのにも炭水化物を摂取したほうが良い


★糖質制限ダイエットに関する誤った認識
糖質は中性脂肪に合成されやすいというのは間違いで、人間においては、糖質から脂質への変換(DNL)は、糖質を過剰摂取してオーバーカロリーにしグリコーゲン貯蔵がだいぶ満たされてから、ようやく活発になる。通常は糖質は脂質よりも優先的に活動エネルギーとして使用され、あまった脂質が体脂肪として蓄えられる。(余剰エネルギーはグリコーゲンか体脂肪の形で蓄えられ、適宜取り出されてエネルギーになるので、普通は脂肪合成がどうとか気にする必要はない)

また、糖質を摂らなければ血糖値が上がらずインスリン分泌による体脂肪合成が起こらないというのも間違い。タンパク質摂取でもインスリンは分泌されるし、そもそも遊離脂肪酸とグリセロールから体脂肪合成を行うのはASPで、インスリンはLPLを活性化し、LPLが血中の脂質から遊離脂肪酸を取り出す役割を果たす。ちなみに脂質だけ摂取しても体脂肪は合成される。


★糖質制限ダイエットを始めるとすぐに体重が減る理由
グリコーゲンとそれに付随する水分が抜ける。それと腎臓の水分吸収に影響するインスリンのレベルの低下と、ケトン体の脱水効果によっても水分が抜ける。体重減少イコール体脂肪減少ではない。


★結局はカロリー収支の問題
減量の基本は、カロリー不足の状態を作り出すこと。糖質制限だろうが何だろうが、カロリー不足分のエネルギーが、体脂肪か除脂肪部分(主に筋肉)の分解燃焼により賄われ、(水分変動を除いての)体重が減っていく。なるべく筋肉を残したかったら、高タンパク質の食事とウェイトトレーニングを行う。ある程度の炭水化物を摂取して筋グリコーゲン補充した方が高負荷のウェイトトレーニングをやりやすい。


★補足
高炭水化物ダイエットに比べて糖質制限ダイエットの方が有利という研究があるかもしれないけど、そういうのを見かけたら、カロリー摂取量とタンパク質摂取量が同じ条件になっているか、食事内容が自己申告制ではなくコントロールされたものか、水分変動のことを考えているか、といった点をチェックしよう。


※ 文章中の糖質と炭水化物の使い分けに特に意味は無いです。世間では「糖質制限」という呼称が一般的なので、糖質制限ダイエットについて言及するときは糖質という表現を使いましたが、糖質と糖分を混同する人がいそうなのと、carbohydrateは炭水化物と訳すのが自然と思うので、なるべく炭水化物という表現を使おうとしたら、中途半端に混じった文章になりました。

2/19/2014

なぜダイエットをしてもリバウンドしやすいのか




参考: Why Is It So Easy To Regain Weight?
http://weightology.net/weightologyweekly/?page_id=415

エネルギー収支は、摂取エネルギーと消費エネルギーからなる。エネルギー収支がマイナスなら主に筋肉か体脂肪が分解燃焼されることで体重が減り、エネルギー収支がプラスなら主に筋肉か体脂肪が合成されることで体重が増える。

摂取エネルギーについては、人間の身体はとにかく飢餓を避けるようになっているので、体重が減ってくると食欲が増して摂取エネルギーを増やそうとする。ダイエットしても食欲が抑えられなくて食べ過ぎちゃう~(>_<)ということがよく起こる。これはシンプルな話。

今回の主題は、ダイエットをした場合の消費エネルギーの変化について。

減量をすると消費カロリーが低下する。身体が軽くなれば動くのに必要なエネルギーは減るし、筋肉と体脂肪の減少により基礎代謝量もそれなりに低下する(骨格筋1kgあたりの基礎代謝量は13kcal、体脂肪1kgあたりの基礎代謝量は4.5kcal)。ただ、現実にはそれ以上に消費エネルギーが低下する。それはなぜなのか調べたのが今回紹介する研究。


★基礎知識
トータルの消費エネルギーは以下のように分解できる。
・安静時エネルギー消費量
・活動時エネルギー消費量
 - 計画的なエクササイズによるもの。ジムにいったりランニングしたり。
 - Non-Exercise Activity Thermogenesis (NEAT)。計画的ではない身体活動。貧乏ゆすりとかウロウロしたりとか家事したりとか移動を目的としての歩行とか、エクササイズ以外の全ての活動。
・食事誘発性熱産生


★研究
・3種類の被験者
- 恒常的にその体重の人
- 10%以上体重を減らし、それを5-8週間保っている人
- 10%以上体重を減らし、それを1年以上保っている人

・実験方法
- 被験者は実験センターで生活し、安静時エネルギー消費量などを測定される。
- 食事は体重変動がないよう調整された流動食。
- エクササイズは無し。

・結果
- 体重を減らした人は1年以上経っても、恒常的に同じ体重の人に比べて消費カロリーが低い。
- 消費カロリーの低下は、主に活動時エネルギー消費量の低下によるものである。エクササイズはしていないので、NEATによるエネルギー消費量が低下していると思われる。
- 体重を減らした人は、無駄な動きをせずじっとしている傾向があるのだろう。また、減量により骨格筋動作のエネルギー効率が上がるという研究もあるので、動作自体のエネルギー消費量が低下していると思われる。
- 基礎代謝もそれなりに減っている。(体組成の違いによるエネルギー消費量の差異を調整してのデータなので、レプチンレベルの低下といった内分泌系の問題だと思う)


・対策
- 減量後に体重を維持するには、摂取カロリーを抑え意識的に運動するようにしよう。駅では階段を使う、ひと駅手前で降りて歩く、といった意識的なNEATの積み重ねも有効。
- いったん太ると、維持しやすい体脂肪率(セットポイント)が上方に変化して、減量した時に消費カロリーが低下してリバウンドしやすくなると思われる。1年以上減量状態を維持した人も消費カロリーが低下しているので、セットポイントを下方に変化させるのは困難な模様。まずは太らないようにしよう。


ちなみにレプチンを投与すると減量に伴う消費カロリーの低下をかなり抑えられる。ただ、レプチンは研究所外では手に入らない。

それとカロリーオーバーの状態にした時の体重増加を調べた研究もあって、これもNEATが関係しているという結果になっている。食べ過ぎても太りにくい人は、無意識のうちに無駄な動きが増えたりして余分なカロリーを消費している。

2/14/2014

情報の妥当性の判断ポイント

★ 健康とフィットネスについての私達の主な情報源
- 逸話、個別事例
- 伝統
- 権威のある人の発言
- 直感、本能
- 論理的理由付け(帰納、演繹)
- 科学的手法

科学的手法に基いて知識の正否を判断しよう。


★ 科学的手法の主なステップ
1. 観察、問いと目的の生成
2. 仮説の生成
3. 研究手順の具体的な手段や方法や実行の生成
4. データ・結果の生成
5. データ分析・解釈・議論・結論


★ 科学研究のタイプ
- 事例研究
- サーベイリサーチ
- 歴史リサーチ(昔の人の食生活とか)
- リサーチのサマライズ
- コホート研究
- 症例対照研究
- 無作為対照化試験

一般的に無作為対照化試験が最も厳格な研究デザインで、因果関係の切り分けに役立つ。


★ 実験研究の有効性のチェックポイント
・内部有効性
- 計測手段の正確性など(例えば体脂肪率の測定に伴う誤差)
- 比較グループ間での扱いの不均衡(例えば炭水化物+タンパク質を投与した群と炭水化物+タンパク質+ロイシンを投与した群を比較して後者のほうがタンパク質合成が高くなるというやり方。トータルのアミノ酸量が後者の方が多い)
- 被験者の途中脱落(長期のダイエット実験ではよくある)
- 統計的に有意かどうか(単なる偶然ではないか)

・外部有効性(実験結果が実世界へ適用できるかどうか)
- 被験者と社会で対象となる人々が同じような状況か。年齢、性別、健康状態、肥満状態、運動歴など。
- 投与量が現実的なレベルか(サプリの研究など)
- 対象となる運動の種類に適用できるか(グリコーゲンを急速に回復させるようなものは持久運動を行う人にとっては有効でもボディビルダーに役立つかどうかは疑問)
- 短期効果と長期効果(短期的に効果があるように見えても長期ではどうなのか。例えば低強度運動は高強度運動よりも運動中の脂肪燃焼割合は高いけど運動後の安静時にこれが逆転する)
- 研究での統計的重要さと実世界での利用(2年間で4.3kg減量する肥満薬は一日あたりだと6g弱の体脂肪しか減らない。40-50kcal相当)
- 資金提供源(企業が研究資金を出していると企業の製品に有利な結果が出やすい)
- 再現可能性(他の研究でも再現されたか)


参考: Alan Aragon / Girth Control

2/13/2014

ベンチプレスを強くする12のステップ

書いているのはパワーリフティングの人。ボディビルだとまた違ったフォーム。


1. 上腕三頭筋を鍛える
- クロースグリップのプレス動作で鍛えること。ベンチプレスは大胸筋の強さではない。

2. 肩甲骨を引きタイトに寄せる

3. 上背部と僧帽筋への圧力を維持する
- 足を踏ん張り身体をベンチに押し付ける。

4. バーを直線で押す
- 顎を引いて腋を開かず腹部の上か胸部の下の辺りにバーを下ろし直線で押し上げる。挙上距離が短くなるし肩関節への負担も軽くなる。

5. 腋を開かずバーは手首と肘の垂直線上に乗せる
- 腋が開くと力が入りにくい。

6. バーを胸部の下か腹部の上に下ろす

7. 腹いっぱいに息を吸い込み維持する
- マックス狙いと3レップ以下では息は吸い込んだまま。息継ぎは腹でする。胸で息をすると肩が動いてしまい安定性が低下する。

8. compensatory acceleration でトレーニングする。
- どんな重さでも最大の力で押すようにする。スティッキングポイントを通過しやすくなる。

9. バーベルを握りしめ、へし折るように

10. 週に1日、dynamic-effortトレーニングをする
- 45-60% 1RM の重さを最大速度で挙上する。握る位置を変えていくと効果的。

11. 週に1日、最大挙上のトレーニングをする。
- dynamic-effortの日から72時間後、90-100% 1RM で1-3レップ。最大挙上で同じ動作を3週間以上続けると逆効果になってくるので、手幅を変えたりして動作を変えていく。

12. ベンチと同じ動作平面で広背筋をトレーニングする。
- ローイング動作で広背筋をトレーニング。プルダウンは動作平面が違う。


Bench Press 600 Pounds A 12 Step Program
http://www.t-nation.com/free_online_article/sports_body_training_performance/bench_press_600_pounds_a_12_step_program

2/12/2014

大幅なカロリー制限と長時間の運動の組み合わせ

大幅なカロリー制限と長時間の運動の組み合わせはダイエットに逆効果になることがある。短期間で減量したい場合でも、大幅なカロリー制限のみか長時間の運動のみか、どちらかにすべき。

経験的に逆効果になる事例が多い。大幅なカロリー不足の状況で、週に6時間の有酸素運動をやったら代謝低下したという研究もある。

メカニズムの推測としては、恒常的なコルチゾールレベルの上昇によるレプチン感受性の低下で代謝低下しているのでは。また、強迫観念的なストレスを感じやすい人はコルチゾールレベルが高くなっている可能性があり、体重減らない!もっとやらなきゃ!で悪循環になりやすい。


Why Big Caloric Deficits and Lots of Activity Can Hurt Fat Loss
http://www.bodyrecomposition.com/fat-loss/why-big-caloric-deficits-and-lots-of-activity-can-hurt-fat-loss.html

2/09/2014

セット数によるトレーニング効果の違い



被験者:トレーニング経験者

方法: 週2回スクワット実施、1set、4set、8setで効果の違いを見る。各セット、限界まで行う。スクワット以外にも他の部位のトレーニングも行う。これは同じ内容。スクワットのみセット数を変更する。

8setが最も伸びが大きい。8setの3週間の伸びは顕著で、短期間に強化したい場合は多セットが良さそう。あと8setのみ、ピーキング期間後にも伸びている(疲労が抜けたためだろうか?)

個人差があるだろうが、多セットの方が効果が高い傾向。ただ多セットは時間と体力を消費し、消費した量に比例した効果が出るわけではない。
 
少セットと多セットへの反応は、個人差がある。自分がどのタイプかわからない場合は、少セットから始めて、伸びが悪かったら、多セットにしてみるのがお薦め。 


Strength and Neuromuscular Adaptation Following One, Four and Eight Sets of High Intensity Resistance Exercise in Trained Males – Research Review
http://www.bodyrecomposition.com/research-review/strength-and-neuromuscular-adaptation-following-one-four-and-eight-sets-of-high-intensity-resistance-exercise-in-trained-males-research-review.html

2/08/2014

筋肉についてのこれまでの研究を総括した論文

レファレンス集としても便利

Exercise training and protein metabolism: influences of contraction, protein intake, and sex-based differences
http://jap.physiology.org/content/106/5/1692.long