6/28/2025

膝屈曲角度の違いによる大腿四頭筋の筋肥大効果

新しい研究が出てきたのでアップデートします。結論としては、レッグプレスやスクワットならば、膝屈曲角度90-100度くらいで大腿四頭筋の筋肥大は最大化されると思われます。(ここでの膝屈曲角度は、膝を伸ばしきった状態が0度で、そこから何度曲げていくか)


新しい研究の概要


(1)Knee flexion range of motion does not influence muscle hypertrophy of the quadriceps femoris during leg press training in resistance-trained individuals
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02640414.2025.2481534



被験者:トレーニング歴(平均7.2年)有り 23名 若い男女 平均年齢20代

種目:レッグプレス 各セット限界まで

グループ分け(被験者内でのグループ分け、左右の脚をそれぞれのグループに)
- 膝屈曲角度100度
- 膝屈曲角度MAX(平均154度) ボトム付近では踵は浮いても良い

トップポジションでは、両グループとも屈曲角度5度で止める。

期間:8週間

トレーニング内容:
8-12RM 4セット(1週目のみ3セット)
頻度は週2回
テンポ コンセントリック最速 エキセントリック2秒

食事:
摂取カロリーを増やして、タンパク質を1.6g/体重kg/day摂るように指示。トレーニング歴有りなので、体重を増やさないと筋肥大しにくい。

測定:
超音波で大腿四頭筋の厚みを測定(複数箇所)


結果:
両グループとも筋肥大したが、筋肥大効果は同等だった。



トレーニングボリューム(重量×レップ数×セット数)は、膝屈曲角度MAXのほうが小さかった。屈曲MAXだと扱える重量が下がるので、ボリュームも小さくなるが、筋肥大効果は同等。



被験者の平均体重変化は、80.6kg→82.9kg。


膝屈曲角度と大腿四頭筋の筋肥大についての過去の研究


以下の3つの研究は、いずれも被験者はトレーニング歴無し。


(2)Effect of range of motion in heavy load squatting on muscle and tendon adaptations 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23604798/

膝屈曲角度 60度 vs 120度 スクワット
→120度のほうが筋肥大した。


(3)Impact of Range of Motion During Ecologically Valid Resistance Training Protocols on Muscle Size, Subcutaneous Fat, and Strength
https://journals.lww.com/nsca-jscr/fulltext/2014/01000/impact_of_range_of_motion_during_ecologically.32.aspx

膝屈曲角度 50度 vs 90度 スクワット、レッグプレス、ニーエクステンションなど様々な大腿四頭筋種目
→90度のほうが筋肥大した。


(4)Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31230110/

膝屈曲角度 90度 vs 140度 スクワット
→大腿四頭筋の筋肥大効果は同等。


膝屈折角度と大腿四頭筋の筋肥大

これまでの研究結果をまとめると、膝屈曲角度が50度や60度だと、それよりも大きい屈曲角度よりも筋肥大効果が劣りますが、90-100度まで曲げれば大腿四頭筋の筋肥大は最大化されそうです。


(1)の論文では、レッグプレスで屈曲角度MAXだと踵が浮くので不安定になり力が入りにくく、筋肥大効果が妨げられた可能性があると書かれています。他の部位の研究だと、ストレッチを効かせたほうが筋肥大効果が高まるものが多いので、なぜ大腿四頭筋では屈曲MAXにしても筋肥大効果が高まらなかったのか?という疑問に対しての仮説です。

この点については、ハックスクワットだと、踵を浮かせずに膝屈曲角度MAXが可能なので、種目をハックスクワットにして膝屈曲角度を変えて実験すれば、はっきりするでしょう。

ただ、自分で踵浮き屈曲角度MAXレッグプレスを試した印象では、それほど不安定ではなく、ちゃんと力は入る感じです。股関節が屈曲している状態では、膝を限界まで曲げても大腿四頭筋のストレッチ感は無いので、レッグプレスやスクワットならば膝を90-100度まで曲げれば大腿四頭筋の筋肥大については最大化されるだろうと個人的には考えます。

二関節筋である大腿直筋については、股関節を伸ばした状態で膝を限界まで曲げるとストレッチ感があるので、股関節を伸ばした状態で固定して、膝を限界まで屈曲できる種目ならば、屈曲MAXで筋肥大効果が高まるかもしれません(例えばシッシースクワットですかね)。



他の部位の動作範囲の違いによる筋肥大効果の研究

他の部位では、筋肉をストレッチさせたほうが筋肥大効果が高まるという研究が多いです。


・上腕三頭筋

関連記事:上腕三頭筋の筋肥大効果を調べた研究(オーバーヘッドvsプッシュダウン) 

オーバーヘッドで上腕三頭筋長頭をストレッチさせたほうが筋肥大した。


・ハムストリングス

(5)Greater Hamstrings Muscle Hypertrophy but Similar Damage Protection after Training at Long versus Short Muscle Lengths
https://www.researchgate.net/publication/344445943_Greater_Hamstrings_Muscle_Hypertrophy_but_Similar_Damage_Protection_after_Training_at_Long_versus_Short_Muscle_Lengths
シーテッドレッグカールとライイングレッグカールを比較。ハムストリングスの二関節筋部分は、シーテッドレッグカールではある程度伸ばされた状態でトレーニングされ、ライイングレッグカールではある程度短縮された状態でトレーニングされる。

二関節筋はシーテッドレッグカールのほうが筋肥大していて、単関節筋は両グループで同じだった。


・腓腹筋

(6)Greater Gastrocnemius Muscle Hypertrophy After Partial Range of Motion Training Performed at Long Muscle Lengths 
https://journals.lww.com/nsca-jscr/fulltext/2023/09000/greater_gastrocnemius_muscle_hypertrophy_after.3.aspx
カーフレイズで、ボトムパーシャル、トップパーシャル、フルレンジを比較。トップパーシャルとフルレンジよりも、ストレッチされたポジションでのボトムパーシャルのほうが大幅に筋肥大した。



関連記事:パーシャルとフルレンジの筋肥大効果の比較 


6 件のコメント:

  1. いつも興味深く拝見しております。
    グロインペイン症候群になり、ワイドスタンスもしくは深い股関節屈曲のスクワットやレッグプレスができない状況です。
    そのため、ナロースタンスかつ膝屈曲90度程度のレッグプレスを行っている者です。

    今回の研究は、膝屈曲90度程度であれば、深い屈曲のレッグプレスと同等の大腿部の筋肥大が可能と解釈でき、安心しました。

    この研究からは読み取れない点について、個人的な見解をお聞きしたいです。膝屈曲90度と比べ膝屈曲最大の方が優位なのは、大臀筋の筋肥大なのでしょうか?それとも他の部位?あるいはどの部位についても筋肥大には差は無い?

    ご意見をお聞かせ頂きたく、よろしくお願いします

    返信削除
  2. コメントありがとうございます。グロインペイン症候群は、筋トレと日常生活に支障が出るので大変ですね。


    大腿四頭筋以外については、スクワットで膝を深く曲げた(140度)ほうが、膝を90度曲げたスクワットよりも内転筋と大殿筋がより肥大した、という研究があります。記事中だと、以下の研究です。


    (4)Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31230110/

    膝屈曲角度 90度 vs 140度 スクワット
    →大腿四頭筋の筋肥大効果は同等。



    ただ、膝屈曲90度程度でも、スクワットなら尻を後ろに出して大殿筋の負荷を上げる、レッグプレスなら足を上方に置いて踵寄りの重心で踏み込むことで大殿筋の負荷を上げることができるので、工夫次第で大殿筋は鍛えられると思います。内転筋は、グロインペイン症候群なら、あまり負荷をかけないほうが良いかと思います。


    筋トレが原因のグロインペイン症候群なら、骨盤の前傾を防ぐ(腸腰筋や大腿直筋や広背筋のストレッチ、ドローインなどで下腹部を鍛える)、内転筋をストレッチする、ヒップスラストで大殿筋を鍛えて、スクワット動作やその他日常動作において大殿筋で負荷を受けられるようにすると、股関節前側の詰まりを解消してグロインペイン症候群になりにくくなると思います。すでにご存知のことかもしれませんが、参考になれば幸いです。

    返信削除
    返信
    1. ご返信ありがとうございます!

      ブルガリアンスクワットで軽い肉離れのような痛みを感じていたのですが「柔軟性不足」と考え、ストレッチを念入りに行う&可動域狭めるという対応をしながら継続したところ、1ヶ月程度で限界が来ました。発症から8ヶ月経ち、やっと日常生活での伊丹は無くなりました。トレーニングではまだ痛みが出ることがありますが。。。

      元々が反り腰なので、グロインペインになりやすい姿勢なのかもしれません。

      本サイトや著書に反り腰対策を書いてくださっているので、それも拝見しながら、少しずつ治していければなと思います。

      削除
    2. 返信ありがとうございます。

      股関節周りは、無理にグイグイと伸ばすと、関節包が緩んでしまいます。その結果、大腿骨頭と骨盤のソケット部分のハマりが緩んで不安定になり、股関節のインピンジメントや痛みが起こりやすくなります。

      股関節周りのストレッチでは、

      ・股関節をグリグリと強く動かさず、筋肉にフォーカスしてストレッチをする。

      ・内転筋と大殿筋はじんわりとゆっくりストレッチする。

      ・股関節の伸展ストレッチ(大腿直筋、腸腰筋)は、あまり強く伸ばしすぎないようにする。

      ・大腿直筋はマッサージガンで緩めるのも効果的(立った状態で腿上げをするとピクピクする筋肉が大腿直筋です)。

      といった点を意識すると、股関節が不安定になりにくいと思います。

      また、大腿骨頭を骨盤のソケット部分にしっかりハメ込んで股関節を安定させるのに、大殿筋が非常に重要な役割を持ちます。筋トレ動作でも、日常生活での歩行や階段上りでも、「尻」に負荷を乗せることを意識していくと、股関節を痛めにくくなります。

      削除
    3. ご返信ありがとうございます。いつも知識の広さと深さに感服しております。

      股関節周り、難しいですよね。以前にグイグイやって関節包か大転子か辺りに違和感を感じ、やり方を改めました。ネットでよく見る「大腰筋の伸ばし方」みたいなのは、ストレッチ感は強いものの怪我のリスクもあるというものが多いですね。情報の取捨選択が重要だと感じています。そういう意味では貴サイトは信頼感が置けると感じています。

      股関節の安定には大臀筋が重要なのですね。スクワットで深くしゃがめないしナローデッドリフトもボトムで鼠径部や股関節の詰まりを感じるので、内転筋に負担をかけずにナローレッグプレスを足を上の方に置くなどして大臀筋を意識してみます。

      削除
    4. 大臀筋のトレーニングは、ヒップスラストもおすすめです。

      ・ある程度筋肉が伸ばされた状態で筋肉に負荷をかける(スクワットレッグプレス、デッドリフト)

      ・筋肉が短縮されたポジションで負荷をかける(ヒップスラスト、ヒップリフト)

      両方行うと、関節が安定しやすいです。


      他には、バンドスクワットや犬のオシッコポーズで、股関節の外旋・外転も鍛えると、内転筋由来の股関節の詰まりを防ぎやすいです。

      犬のオシッコポーズは、ドッグピー(ピラティス)みたい動作です。体幹と骨盤を固定して、股関節のみ動かします。
      https://www.instagram.com/reel/DIY8xr0y25k/

      力の入れ方に慣れてきたら、グルグル回すのでも良いと思います。
      https://youtu.be/qJOgO3A0gbc?t=42

      削除