コーヒーをよく飲む嫁が、こんな顔(´・_・`)して見つけてきた記事。
大ショック!1日3杯以上のコーヒーで「胸が小さくなる」と判明
http://www.men-joy.jp/archives/93505
元ネタの論文を見てみる。
Coffee intake and CYP1A2*1F genotype predict breast volume in young women: implications for breast cancer
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2579678/
ざっと論文内容を書くと、これはコーヒー摂取の乳癌リスクへの影響を調べる研究で、遺伝子型によりコーヒーの乳癌リスクへの影響が変わることを確かめている。乳癌リスクはおっぱいの容積と相関するので、この研究ではおっぱいの容積を測定している(マンモグラフィーの方が乳癌リスクを調べるのに向いているのだけど、調査対象が若い女性のためマンモグラフィーの実施が難しかったとのこと)
調査対象は、スウェーデンの若い女性で、乳癌リスクの高い家系。コーヒー1杯は約150ml。
特定の遺伝子型を持ち且つホルモン避妊を行っていない女性において、一日3杯以上のコーヒー摂取グループは3杯以下の摂取グループに比べて、おっぱいの容積が平均で16%ほど小さいという結果になった。これは、肥満していない女性において乳癌リスクはおっぱいの容積と相関し、特定の遺伝子型を持つ女性のみコーヒーの摂取が乳癌リスクを抑制するという既存の研究結果と一致する。ちなみにこの特定の遺伝子型を持つ割合は約50%。
というわけで、約50%の女性は、コーヒーをたくさん飲むとおっぱいが小さくなるようだ。だけど小さくなるということは、乳癌リスクが低下しているということなので喜ばしいことだと思う。それとこの研究での調査対象は乳癌リスクの高い家系の女性なので、乳癌リスクが高くない女性はこの研究の数字ほどおっぱいの容積に差が出ないんじゃないかな。
※追記
コーヒー摂取が乳癌リスクを抑制する遺伝子型(CYP1A2*1F C-allele)の人は、コーヒーを多く摂取すると非致死性心筋梗塞のリスクが高まるという研究もある。
Coffee, CYP1A2 genotype, and risk of myocardial infarction.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16522833
CYP1A2 の遺伝子型は遺伝子検査で調べられる。
おくすり体質検査
https://www.medibic.com/product/okusuri/service/02-1.html
12/27/2014
12/19/2014
[ボディメイク記録] 減量結果
前回の記録 7月4日
今回の記録 12月17日
★現状記録
筋グリコーゲンレベルは低め。直前のトレ履歴は、当日に上半身。
★身体計測
身長:180cm
体重:72.5kg(-7.7kg)
バスト:98cm(-4.0cm)
ウェスト:76cm(-7.0cm)
ヒップ:93cm(-2.0cm)
右上腕:30cm(-1.0cm)
左上腕:39cm(-1.0cm)
手首径:16cm
右大腿:56cm(-3.0cm)
左大腿:55cm(-3.0cm)
右カーフ:35.5cm(-0.5cm)
左カーフ:35.5cm(+0.5cm)
足首径:19cm
★主な種目のトレーニング重量
懸垂ワイド順手・・・5kg加重×7reps
ベンチプレス・・・70kg×4reps
ダンベルショルダープレス・・・20kg×8reps
デッドリフト・・・120kg×1reps
スクワット(スミスマシン)・・・80kg×5reps
レッグプレス・・・140kg×10reps
レッグカール・・・65kg×10reps
★トレーニング種目明細
セット数: メイン5セットくらい。最初に低レップやってその次に中レップ(Reverse Pyramid Training な感じ)。筋グリコーゲンが少ない状況で、テンションとボリュームの両方を確保するため。
メイン種目
- スクワット(週1回)
- デッドリフト(週1回)
- ベンチプレス(週2回)
- レッグプレス(週1回)
補助種目
- インクラインダンベルプレス
- インクラインベンチにうつ伏せになってラテラルレイズ
- インクラインベンチにうつ伏せになって上背部を使ってのダンベルローイング
- 懸垂(ワイド順手・ナローパラレル)
- ローイングマシン
- レッグカール
- カーフレイズ
- プレス
- ダンベルショルダープレス
- サイドレイズ
- キューバンプレス
- 腹筋マシン
- 台に肘を置いて身体を浮かせてのレッグレイズ
- アームカール
★減量プロセス
基本的に上半身を週2回、下半身を週2回。上半身は胸、肩、腕、懸垂で都合によっては週1回の週もあった。下半身は、スクワットの日と、デッドリフト+レッグプレスの日がそれぞれ週1回ずつ。
有酸素運動は、休みの日に早足で30分歩く程度。減量終盤に、トレーニング後や休みの日にエアロバイクを30分くらい漕ぐようにした(週3,4回程度)。
カロリー摂取の振り分け目安は以下の通り。あくまで目安なので厳密には出来ていない。
1. トレーニング日はトレーニング前後の食事で炭水化物摂取。トレーニング直前にホエイとスクロース(角砂糖をお湯で溶いたもの)とコーヒーを摂取。
2. トレーニングしない日は炭水化物カット。食事回数は一日3回。インスリンレベルが下がった状態をなるべく作る。カテゴリ的には、Targeted Ketogenic Dietのやりかた。
従って、1週間のサイクルはこんな感じ。
1日目:上半身トレ/維持カロリーくらい
2日目:下半身トレ/維持カロリーくらい
3日目:休み/500~1000kcalマイナス
4日目:休み/500~1000kcalマイナス
5日目:上半身トレor休み/維持カロリーくらいorアンダーカロリー
6日目:下半身トレ/維持カロリーくらい
7日目:休み/500~1000kcalマイナス
★食事内容
- タンパク質の摂取量は2-3g/体重1kg/日。動物性食品とプロテインパウダーのみ摂取量にカウント。植物性タンパク質はアミノ酸組成と人体への吸収率が低いのでカウントしていない。
- 脂質の摂取量はあまり把握していないけど、炭水化物カットの日は卵や魚や乳製品など高たんぱく質食品に付随する脂質を普通に摂取、トレーニング日は脂質を減らしなるべく炭水化物でカロリーを摂るようにした。
- 健康のため、野菜、果物、豆も摂取。炭水化物カットは米やパスタを食べない程度でシビアにはやらず、野菜や豆類はなるべく食べるようにした。
★雑感
- 炭水化物の摂取をサイクルさせたが、概ね毎日同じくらいのカロリー・マクロ栄養素を摂取して減量するよりもかなり楽だった。トレーニング面でもメンタル面でも。腹回りの頑固な脂肪も落ちやすい気がする。
- トレーニング重量が落ちた。グリコーゲンレベルを戻せばある程度は戻るだろうけど、やはり落ちたと思う。
- UD2.0のように高レップ・有酸素運動を取り入れ、トレーニング日の摂取カロリーを増やせば、体組成変化の面で有利なのだろうけど、ちょっと試した感じでは自分の体力レベルでは無理ですた。怪我のリスクも上がるし。
- 筋グリコーゲンを枯渇させる高レップトレーニングをやらなければ、数日間炭水化物カットしても筋グリコーゲンはある程度のレベルを維持できる。肝グリコーゲンは一日もすれば枯渇する。トレーニング日のトレーニング数時間前の食事で炭水化物を摂取するのは、肝グリコーゲンを補充し全身をアナボリックに傾けるため。筋グリコーゲンが枯渇していた場合は、数時間では筋グリコーゲンの補充が間に合わないので、炭水化物摂取からトレーニングまで時間を空ける必要がある。
★怪我
- 減量期終盤にエアロバイクで有酸素運動をやるようにしたら、膝の靭帯に疲労が溜まったのかレッグプレスで膝に痛みが出た。有酸素運動は種目を分散させ、関節の疲労に気をつけながらやるようにしたい。増量期での高レップトレーニングで少しは関節周りを強化できるかもしれないのでやってみよう。
- デッドリフトで軽く腰を痛めることが2,3回あった。グリコーゲン不足で体幹が突然ヘタる。1週間で回復する程度だったけどデッドリフトは減量期に組み入れるのが難しいなと思った。
★使用サプリメント
- マルチビタミン・ミネラル
- 新ビオフェルミンS、エビオス。便秘対策。これは効くと思う。
- 亜鉛。私は肉や貝類を食べないので亜鉛が不足しやすい。
★今後の予定
- 2週間程度の維持・休養期を入れる。その後たぶん軽く増量。スクワットを伸ばしたい。あと広背筋と三角筋を鍛えたい。目指せロナウド。
プライベートと仕事がバタバタしていて、なかなかブログが更新できない。
単にめんどくさがってるだけかもしれないけど(´・_・`)
最近はライル・マクドナルドの Protein Book を読みました。近いうちにタンパク質についての記事をいくつか書きたい。
10/29/2014
カルシウム・乳製品が体組成変化に与える影響
Role of calcium and dairy products in energy partitioning and weight management1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/79/5/907S.long
カルシウム・乳製品の摂取が体組成変化に与える影響についての論文。2004年の論文だけど総括的に書かれていて良いです。以下抄訳。
★カルシウム・乳製品を十分に摂取すると
オーバーカロリー時: 体脂肪の増加を抑える。
アンダーカロリー時: 脂肪分解の増加と代謝の維持に寄与する。
★想定メカニズム(効果が発揮される経路は他にもあると思われる)
細胞間のカルシウムイオンが、脂肪細胞の脂質代謝に関わる。細胞間カルシウムイオンの増加は脂肪合成を促進し脂肪分解を抑制する。低カルシウムの食事に反応して増加したカルシトリオールは、脂肪細胞のカルシウムイオンの増加を刺激し、脂肪蓄積を促進する。
★マウス実験
乳製品によるカルシウム摂取は、サプリメントによるカルシウム摂取よりも、体脂肪増加抑制と体脂肪減少の効果が高い。
★ヒト対象の疫学調査
老若男女問わずカルシウム・乳製品の摂取量と肥満度合いが逆相関することが多数報告されている。つまりカルシウム・乳製品を多く摂取する人ほど、肥満しない傾向がある。
★ヒト対象の介入研究
- 肥満の大人が対象の介入研究では、減量の際にサプリメントのカルシウムを摂取することで減量効果が高まった。乳製品を摂取した場合だとさらに減量効果が高まった。
- 乳製品の摂取量は3サービングで、一日トータルのカルシウム摂取量は1100-1300mg程度(サービングの量がよくわからないけど、食品成分表で各食品のカルシウム含有量を調べて摂取量を考えれば良いと思う)。
- カルシウム・乳製品摂取グループは、胴体部分の体脂肪減少の割合が高かった。
- 除脂肪体重は乳製品摂取が多いほうが維持された。
- 維持カロリーでの実験では体重変動なしでの体脂肪減少(体脂肪量-5.4%)という結果が出た。
★サプリメントと乳製品の効果の違い
カルシウムサプリメントよりも乳製品でのカルシウム摂取の方が減量効果が高いのは、おそらくアンジオテンシン変換酵素阻害剤といった生物活性化合物やホエイに含まれる豊富なBCAAが、カルシウムと相乗効果を発揮するためであろう。
★カルシウム・乳製品摂取が肥満対策になる理由
何かを厳しく制限する食生活は長期間続けにくい。現状にプラスアルファする食生活の方が続けやすく成功しやすい。例えばすでにある事例として、高血圧への対処としてナトリウムを制限する食生活は続けにくいが、フルーツや野菜や乳製品を積極的に摂取する食生活は続けやすく成功しやすいことがわかっている。これと同様に肥満対策では、カロリーを制限するダイエットは続けにくいが、カルシウムを積極的に摂取するダイエットが肥満問題への対策となるのならそれはとても有用な方法となるだろう。
☆コメント☆
成人は1日1000-1300mg程度のカルシウム摂取を目指せば良いのではないでしょうか。海外のRDAだとカルシウムの摂取量はそれくらいだし、介入研究でもそのくらいの摂取量で効果が出ている。たぶん必要量が満たされたら、それ以上摂取しても効果がさらに高まるわけではないだろうから、過剰摂取は良くないと思う。
介入研究の結果を見ると乳製品摂取はボディメイクにとって良いことだらけに見える。ただ、研究対象は肥満者なのが気になる。しかもアメリカの肥満者なので、日本人の感覚からすると尋常じゃないレベルの肥満だろう。従ってそれほど太って無い人が減量する時にどれだけ効果があるのかは不明です。
乳製品はカロリーがそれなりにあるので減量時には扱いが難しい。カッテージチーズはタンパク質量とカロリー面では優秀なのだけど、カルシウム含有量が少ない。
プロテインパウダーのカルシウム含有量はどうかというと、手元のオプティマム製品の成分表では、1スクープで1日の必要量を摂取できる割合がホエイが10%(100mgくらい?)、ミセラーカゼインが40%(400mgくらい?)と書いてある。
その時点で許容できるカロリーを考えて、牛乳、ヨーグルト、低脂肪乳、チーズ、プロテインパウダーなどを適宜組み合わせ、カルシウムを十分摂取できるよう調整すれば良いと思う。加工度が低い方が生物活性化合物の点では優れているだろう。
http://ajcn.nutrition.org/content/79/5/907S.long
カルシウム・乳製品の摂取が体組成変化に与える影響についての論文。2004年の論文だけど総括的に書かれていて良いです。以下抄訳。
★カルシウム・乳製品を十分に摂取すると
オーバーカロリー時: 体脂肪の増加を抑える。
アンダーカロリー時: 脂肪分解の増加と代謝の維持に寄与する。
★想定メカニズム(効果が発揮される経路は他にもあると思われる)
細胞間のカルシウムイオンが、脂肪細胞の脂質代謝に関わる。細胞間カルシウムイオンの増加は脂肪合成を促進し脂肪分解を抑制する。低カルシウムの食事に反応して増加したカルシトリオールは、脂肪細胞のカルシウムイオンの増加を刺激し、脂肪蓄積を促進する。
★マウス実験
乳製品によるカルシウム摂取は、サプリメントによるカルシウム摂取よりも、体脂肪増加抑制と体脂肪減少の効果が高い。
★ヒト対象の疫学調査
老若男女問わずカルシウム・乳製品の摂取量と肥満度合いが逆相関することが多数報告されている。つまりカルシウム・乳製品を多く摂取する人ほど、肥満しない傾向がある。
★ヒト対象の介入研究
- 肥満の大人が対象の介入研究では、減量の際にサプリメントのカルシウムを摂取することで減量効果が高まった。乳製品を摂取した場合だとさらに減量効果が高まった。
- 乳製品の摂取量は3サービングで、一日トータルのカルシウム摂取量は1100-1300mg程度(サービングの量がよくわからないけど、食品成分表で各食品のカルシウム含有量を調べて摂取量を考えれば良いと思う)。
- カルシウム・乳製品摂取グループは、胴体部分の体脂肪減少の割合が高かった。
- 除脂肪体重は乳製品摂取が多いほうが維持された。
- 維持カロリーでの実験では体重変動なしでの体脂肪減少(体脂肪量-5.4%)という結果が出た。
★サプリメントと乳製品の効果の違い
カルシウムサプリメントよりも乳製品でのカルシウム摂取の方が減量効果が高いのは、おそらくアンジオテンシン変換酵素阻害剤といった生物活性化合物やホエイに含まれる豊富なBCAAが、カルシウムと相乗効果を発揮するためであろう。
★カルシウム・乳製品摂取が肥満対策になる理由
何かを厳しく制限する食生活は長期間続けにくい。現状にプラスアルファする食生活の方が続けやすく成功しやすい。例えばすでにある事例として、高血圧への対処としてナトリウムを制限する食生活は続けにくいが、フルーツや野菜や乳製品を積極的に摂取する食生活は続けやすく成功しやすいことがわかっている。これと同様に肥満対策では、カロリーを制限するダイエットは続けにくいが、カルシウムを積極的に摂取するダイエットが肥満問題への対策となるのならそれはとても有用な方法となるだろう。
☆コメント☆
成人は1日1000-1300mg程度のカルシウム摂取を目指せば良いのではないでしょうか。海外のRDAだとカルシウムの摂取量はそれくらいだし、介入研究でもそのくらいの摂取量で効果が出ている。たぶん必要量が満たされたら、それ以上摂取しても効果がさらに高まるわけではないだろうから、過剰摂取は良くないと思う。
介入研究の結果を見ると乳製品摂取はボディメイクにとって良いことだらけに見える。ただ、研究対象は肥満者なのが気になる。しかもアメリカの肥満者なので、日本人の感覚からすると尋常じゃないレベルの肥満だろう。従ってそれほど太って無い人が減量する時にどれだけ効果があるのかは不明です。
乳製品はカロリーがそれなりにあるので減量時には扱いが難しい。カッテージチーズはタンパク質量とカロリー面では優秀なのだけど、カルシウム含有量が少ない。
プロテインパウダーのカルシウム含有量はどうかというと、手元のオプティマム製品の成分表では、1スクープで1日の必要量を摂取できる割合がホエイが10%(100mgくらい?)、ミセラーカゼインが40%(400mgくらい?)と書いてある。
その時点で許容できるカロリーを考えて、牛乳、ヨーグルト、低脂肪乳、チーズ、プロテインパウダーなどを適宜組み合わせ、カルシウムを十分摂取できるよう調整すれば良いと思う。加工度が低い方が生物活性化合物の点では優れているだろう。
10/24/2014
タンパク質の摂取タイミングの効果についてのメタ解析研究
The effect of protein timing on muscle strength and hypertrophy: a meta-analysis
http://www.jissn.com/content/10/1/53
タンパク質の摂取タイミングが筋力向上と筋肥大にどのような影響を与えるのか、既存の複数の研究結果をメタ解析した論文。私は統計学について無知なためここで用いられている手法を理解できているわけではないが、Alan Albert Aragon も Brad Jon Schoenfeld も現場知識があって誠実に科学研究を行う信頼できる研究者だと思うので、以下抄訳してみる。
★今回の論文で解析対象とした研究
- 実験群はレジスタンストレーニング実施の前後1時間以内に6g以上の必須アミノ酸(or相当のタンパク質)を摂取し、対照群は前後2時間以内にタンパク質を摂取しなかった研究。
- レジスタンストレーニングプロトコルを少なくとも6週間継続した研究。
★結果
共変量をコントロールしなかった単純な解析では、タンパク質摂取タイミングは筋肥大に有意差ありで、筋力に有意差無しという結果になった。筋肥大への影響量は、小さい~中程度といったレベル。しかし、共変量をコントロールした解析ではタンパク質摂取タイミングは筋肥大に影響なしという結果になり、サブ解析ではトータルのタンパク質摂取量が、摂取タイミング研究で示された筋肥大の差の大部分を説明するという結果が出た。これらの結果は、トレーニングの直前・直後にタンパク質を摂取することが筋トレ効果を高めるのに非常に重要であるという一般的な考えを否定するように見える。
タンパク質のトータルの摂取量を揃えていない摂取タイミング研究での平均のタンパク質摂取量は、対照群が1.33 g/kg/dayで、実験群が1.66 g/kg/dayだった。レジスタンストレーニングの効果を最大に得るためには初心者は少なくとも1.6 g/kg/dayのタンパク質摂取が推奨されていることを考慮すると、これらの研究での筋肥大の差はタンパク質摂取量の違いによるものである可能性が高い。
タンパク質のトータルの摂取量を揃えた摂取タイミング研究では、対照群が1.81 g/kg/dayで、実験群が1.91 g/kg/dayだった。トータルの摂取量を揃えた研究はわずかに3つあり、2つは結果に差が無し。残り一つは摂取タイミングが筋力と除脂肪体重の増加に有意差をもたらしたという結果なのだが、データ不足により今回の解析対象の基準を満たせず除外された。
このメタ解析研究の強みは、
- 解析対象に含める研究の基準を高く設定し、質の高い研究を集め、バイアスが入る可能性を減らしたこと。
- それなりのサンプル数を確保できたこと。実験数23で、筋力については被験者数478名、筋肥大については被験者数525名。
- 良い解析手法。
このメタ解析研究の限界は、
- 対照群の食事タイミングが研究によってバラバラ。ある研究では運動後2時間でタンパク質摂取で、他の研究では何時間もタンパク質摂取を遅らせた。
- 大半の研究がレジスタンストレーニング初心者を被験者としている。トレーニング歴のある人と初心者とでは反応が異なるのは良く知られている。今回の研究でのサブ解析では、筋力についても筋肥大についても、トレーニング歴とタンパク質摂取タイミングの間に交互作用効果は示されなかったが、トレーニング歴のある被験者数を対象とした研究が4つだけなので、この解析結果は強くはない。
- サンプル数を大きくするため、筋断面積と除脂肪体重のデータを筋肥大のデータとして扱った。除脂肪体重の増加は大部分が筋繊維の肥大によるものであるが、レジスタンストレーニングでは骨や結合組織も増加することが知られている。筋断面積と除脂肪体重のデータを分けて解析もしてみたが、結果はほぼ同じだった。
- トータルのタンパク質摂取量を揃えた研究がわずかしかない。
★結論
既存のエビデンスは、ワークアウト前後1時間以内のタンパク質摂取が、レジスタンストレーニングの効果(筋力と筋肥大)を大きく高めるという主張をサポートしないようだ。もしワークアウト前後にアナボリックウィンドウが存在するのなら、それは前後1時間よりも長いものだろう。
ただ、今回の解析からは因果関係は直接には導けないため、タンパク質摂取タイミングが実際にはトレーニング効果の違いをもたらし、タンパク質摂取量の増加はそれに偶然に一致した可能性を排除できない。今後、タンパク質摂取量を揃えて摂取タイミングの影響を調べる研究、またトレーニング歴のある人を対象にした研究が多く行われることが期待される。
関連記事:
ゴールデンタイムはあるのか?
http://www.jissn.com/content/10/1/53
タンパク質の摂取タイミングが筋力向上と筋肥大にどのような影響を与えるのか、既存の複数の研究結果をメタ解析した論文。私は統計学について無知なためここで用いられている手法を理解できているわけではないが、Alan Albert Aragon も Brad Jon Schoenfeld も現場知識があって誠実に科学研究を行う信頼できる研究者だと思うので、以下抄訳してみる。
★今回の論文で解析対象とした研究
- 実験群はレジスタンストレーニング実施の前後1時間以内に6g以上の必須アミノ酸(or相当のタンパク質)を摂取し、対照群は前後2時間以内にタンパク質を摂取しなかった研究。
- レジスタンストレーニングプロトコルを少なくとも6週間継続した研究。
★結果
共変量をコントロールしなかった単純な解析では、タンパク質摂取タイミングは筋肥大に有意差ありで、筋力に有意差無しという結果になった。筋肥大への影響量は、小さい~中程度といったレベル。しかし、共変量をコントロールした解析ではタンパク質摂取タイミングは筋肥大に影響なしという結果になり、サブ解析ではトータルのタンパク質摂取量が、摂取タイミング研究で示された筋肥大の差の大部分を説明するという結果が出た。これらの結果は、トレーニングの直前・直後にタンパク質を摂取することが筋トレ効果を高めるのに非常に重要であるという一般的な考えを否定するように見える。
タンパク質のトータルの摂取量を揃えていない摂取タイミング研究での平均のタンパク質摂取量は、対照群が1.33 g/kg/dayで、実験群が1.66 g/kg/dayだった。レジスタンストレーニングの効果を最大に得るためには初心者は少なくとも1.6 g/kg/dayのタンパク質摂取が推奨されていることを考慮すると、これらの研究での筋肥大の差はタンパク質摂取量の違いによるものである可能性が高い。
タンパク質のトータルの摂取量を揃えた摂取タイミング研究では、対照群が1.81 g/kg/dayで、実験群が1.91 g/kg/dayだった。トータルの摂取量を揃えた研究はわずかに3つあり、2つは結果に差が無し。残り一つは摂取タイミングが筋力と除脂肪体重の増加に有意差をもたらしたという結果なのだが、データ不足により今回の解析対象の基準を満たせず除外された。
このメタ解析研究の強みは、
- 解析対象に含める研究の基準を高く設定し、質の高い研究を集め、バイアスが入る可能性を減らしたこと。
- それなりのサンプル数を確保できたこと。実験数23で、筋力については被験者数478名、筋肥大については被験者数525名。
- 良い解析手法。
このメタ解析研究の限界は、
- 対照群の食事タイミングが研究によってバラバラ。ある研究では運動後2時間でタンパク質摂取で、他の研究では何時間もタンパク質摂取を遅らせた。
- 大半の研究がレジスタンストレーニング初心者を被験者としている。トレーニング歴のある人と初心者とでは反応が異なるのは良く知られている。今回の研究でのサブ解析では、筋力についても筋肥大についても、トレーニング歴とタンパク質摂取タイミングの間に交互作用効果は示されなかったが、トレーニング歴のある被験者数を対象とした研究が4つだけなので、この解析結果は強くはない。
- サンプル数を大きくするため、筋断面積と除脂肪体重のデータを筋肥大のデータとして扱った。除脂肪体重の増加は大部分が筋繊維の肥大によるものであるが、レジスタンストレーニングでは骨や結合組織も増加することが知られている。筋断面積と除脂肪体重のデータを分けて解析もしてみたが、結果はほぼ同じだった。
- トータルのタンパク質摂取量を揃えた研究がわずかしかない。
★結論
既存のエビデンスは、ワークアウト前後1時間以内のタンパク質摂取が、レジスタンストレーニングの効果(筋力と筋肥大)を大きく高めるという主張をサポートしないようだ。もしワークアウト前後にアナボリックウィンドウが存在するのなら、それは前後1時間よりも長いものだろう。
ただ、今回の解析からは因果関係は直接には導けないため、タンパク質摂取タイミングが実際にはトレーニング効果の違いをもたらし、タンパク質摂取量の増加はそれに偶然に一致した可能性を排除できない。今後、タンパク質摂取量を揃えて摂取タイミングの影響を調べる研究、またトレーニング歴のある人を対象にした研究が多く行われることが期待される。
関連記事:
ゴールデンタイムはあるのか?
10/22/2014
[書籍] The Ketogenic Diet
Lyle McDonald の The Ketogenic Diet を読んでのメモ。自分用のメモなのであまりわかりやすいようには書いてないです。
糖質制限ダイエットに興味がある人には参考になる情報が多くあると思います。出版1998年なので一部outdatedな情報もあるかも。本の後半は運動生理学の教科書的な内容なので割愛して、前半部分だけメモしてます。
Lyle McDonald の本は amazon.comでも買えますが、Lyle McDonald のサイトから買った方が安いです。購入を考えている人には、amazonのレビューが参考になるかも。
★基礎知識
人間の身体のエネルギー源:グルコース、タンパク質、遊離脂肪酸、ケトン
どのエネルギー源を使うかは、炭水化物の可用性(ホルモンレベルに影響)、肝グリコーゲンの状態、ある種の酵素のレベル、次第。
エネルギーの身体内の貯蔵量は、脂質>>タンパク質>炭水化物
一般的に、身体の組織は血液中濃度の比率に沿ったエネルギー源を使う。例えば血中のグルコースが増えれば、それを優先的に使う。逆に炭水化物の可用性を低下させることで、脂質を優先的に使うようにできる。
炭水化物が不足すると、タンパク質が糖新生で使われる。炭水化物を多く取れば糖新生は起こりにくくなるけど、同様に脂質もエネルギー源になりにくくなる。
炭水化物不足の状態の初期は糖新生が起こりやすいので、身体のタンパク質が分解されないようタンパク質の摂取量を増やす必要がある。身体がケトーシスに適応すると脂質とケトンでエネルギーを賄うようになり、タンパク質が分解されにくくなる。
ほとんどの身体組織は遊離脂肪酸をエネルギー源に出来るが、脳、赤血球、腎髄質、骨髄、TypeⅡ骨格筋は遊離脂肪酸を使えない。
ケトーシス適応後は、脳は消費エネルギーの75%までをケトンでまかなうことが出来る。残りはグルコース。
ほとんどの身体組織はケトンをエネルギーとして利用できる。例外は肝臓で遊離脂肪酸を利用。
ケトーシスの三日目にはタンパク質以外のエネルギー源は全て遊離脂肪酸とケトンになる。ケトーシスが進むにつれて、脳以外の組織はケトンを利用しなくなっていき、3週間後以降は遊離脂肪酸を主にエネルギー源とするようになる。ケトンを脳に使わせるため。
身体組織による遊離脂肪酸の利用が高まるとケトンも増えて利用されるようになる。
遊離脂肪酸をエネルギー源として利用できるようになれば、それだけグルコースの必要量も減少する。
★エネルギー利用に影響を与えるファクター
・摂取栄養素の質: グルコースを多く摂取するとグルコースの利用が増える(少ないと減る)。タンパク質の摂取を増やすとある程度はタンパク質の酸化が増える(少ないと減る)。脂質は摂取量を増やしてもエネルギー源としての利用割合が顕著に増えるわけではない。炭水化物とアルコールの摂取が増えると、脂質のエネルギー利用は低下する。筋グリコーゲンのレベルが筋肉での脂質の利用を調整する。運動か炭水化物制限により、筋グリコーゲンと肝グリコーゲンのレベルを低くすると、脂質の利用が増える。
・ホルモンレベル: インスリンは貯蔵ホルモンで、血中のグルコースは筋肉か肝臓に貯蔵され、脂質の合成・貯蔵も刺激される。脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出は、わずかなインスリンでも抑制される。インスリンの主な役割は血糖レベルを一定のレンジに保つこと。炭水化物の摂取でインスリンレベルは大きく上昇するが、タンパク質の摂取でも上昇する(一部のアミノ酸がグルコースに転換されるため)。遊離脂肪酸もわずかにインスリンレベルを上昇させる。血糖値が下がるとインスリンレベルも低下し、グルカゴンなどの他のホルモンレベルが上昇し、貯蔵されたエネルギーが血中に放出される。脂肪細胞から遊離脂肪酸とグリセロールが、筋肉などのタンパク質組織からアミノ酸が、肝グリコーゲンからグルコースが放出される。グルカゴンはインスリンの逆の役割で、通常レベルでは肝グリコーゲンの分解を促進、炭水化物制限や運動によりインスリンレベルが非常に低くなると、筋グリコーゲンや脂肪細胞内の脂質の分解放出も。肝臓でのケトン体の生成にも関わる。絶対レベルよりも、インスリンとグルカゴンの比率が重要。他のホルモンは、GH、IGF-1、甲状腺ホルモン、コルチゾール、アドレナリン、カテコールアミン。
・肝グリコーゲン: 肝グリコーゲンのレベルは、身体全体の栄養貯蔵or分解の傾向を決定する主要因。
・酵素のレベル: 摂取する栄養とホルモンレベルによって決まる。
以上まとめると、炭水化物の摂取が多いと炭水化物がエネルギーとして利用され貯蔵され脂質はあまり使われない。炭水化物の摂取が少ないとその逆。
★ケトン生成
インスリンレベルが高いと脂肪分解が抑制される。
カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)は脂肪分解を促進。グルカゴンや成長ホルモンやコルチゾールも脂肪分解効果があるが効果は小さい。まれなケースではなるが、インスリンレベルが高いと、カテコールアミンレベルが高くても脂肪分解は抑制される。普通は運動といったカテコールアミンの分泌を促す刺激は、同時にインスリンレベルを低下させる。
脂肪細胞のトリグリセリドが分解されると、グリセロールと遊離脂肪酸になる。遊離脂肪酸は血液中を流れていき身体の組織でエネルギーとして利用される。大量の遊離脂肪酸があって、肝臓が準備ができていると、ケトン体に変換され、それが血液に放出される。
ケトンは通常でも微量作られて身体で利用されている。肝グリコーゲンが枯渇すると肝臓はケトジェニックモードになりケトン体をどんどん生成するようになる。この状態では遊離脂肪酸のアベイラビリティがケトン生成レートを決定する。カーボカットしてから12-16時間程度で肝グリコーゲンは枯渇する。カーボカットしてから三日後に肝臓はケトン・フル生産体制になる。
★ケトーシスとケトアシドーシス
ケトーシスとは、グルコースベースの代謝から脂質ベースの代謝に完全移行すること。絶食や高脂質食や運動直後に起きる。タイプⅠ糖尿病やアルコール依存症でのケトアシドーシスは命に関わる。通常のケトーシスとケトアシドーシスの主な違いは血中のケトン濃度。絶食や低炭水化物高脂質食では身体システムにフィードバックループが存在するので危険なレベルまではいかない。
血中のケトン濃度が0.2 mmol/dlを超えるとケトーシス
血中のケトン濃度が7 mmol/dlを超えるとケトアシドーシス
ケトニミア(血中のケトン濃度が高まっていく)
ケトヌリア(尿中のケトン濃度が高まっていく)
★ケトーシスへの適応
ケトーシスは、絶食(飢餓状態)の研究で色々と調べられている。ケトジェニックダイエットは、身体の適応の面では飢餓状態と大まかに同じである。タンパク質と脂質の摂取により、飢餓状態で失われる分のタンパク質と脂質の減少が抑えられる。
飢餓への適応(5段階)
1. 絶食開始後8時間は最後の食事の消化吸収。10時間以内に身体のエネルギー消費の半分が遊離脂肪酸から。
2. 1,2日で遊離脂肪酸と肝グリコーゲンの分解に頼るようになる。12-16時間で肝グリコーゲンは枯渇する。
3. 最初の1週間は、身体はタンパク質や乳酸塩などからのグルコース生成を増やす。脳以外の組織はグルコースの使用量を減らし遊離脂肪酸とケトンの使用を増やす。
4. 3,4日後からケトーシスが始まり、脳はケトンを利用するようになる。
5. 2週目から糖新生が減る。3週間でケトン濃度はプラトーに達する。
絶食後三日目までにエネルギー消費の90%が遊離脂肪酸とケトンで賄われる。3週間後には93%。
3週間後以降は脳以外のほとんどの組織はケトンを使わず遊離脂肪酸をエネルギーとして使うようになる。脳にケトンを回すため。脳は絶食開始直後はケトン利用に適応していないが、じきに適応する。
脳と中枢神経は一日に約100gのグルコースを使うが、飢餓に適応すると、エネルギー消費の75%までをケトンで賄うようになる。残りはグルコースで。
絶食時(炭水化物ゼロ)だと12-16時間で肝グリコーゲンが枯渇。肝臓は糖新生により、グリセロール、乳酸塩、ピルビン酸塩、アミノ酸(アラニンとグルタミン酸)からグルコースを生成する。絶食が続くと腎臓もグルコースを生成するようになる。グリセロールは脂肪細胞のトリグリセリドを分解して得られる。乳酸塩とピルビン酸塩はグリコーゲンとグルコースを分解して得られる。アミノ酸は筋肉から。アラニンは肝臓で糖新生、グルタミン酸は腎臓で糖新生。
★タンパク質の分解
絶食1週間は尿に一日に12gの窒素、75gのタンパク質が75gのグルコースを作るのに使用されたことを示す。1週間を過ぎるとタンパク質の分解は抑制されてくる。3週間後には3-4gの窒素損失、約20gのタンパク質。
トリグリセリドの質量の約1割がグルコースに(グリセロールを糖新生)。150ポンドの人だと一日におおよそ160-180gの脂肪を分解、そこから16-18gのグルコースを生成。
ケトジェニックに脳が適応するまでは1日100gのグルコースが必要。最初の1週間は、タンパク質由来と脂肪由来で合わせて約100gのグルコースを生成。
3週間で脳がケトン利用に対応し最大75%のエネルギーをケトンで賄う、残りを脂肪由来とタンパク質由来のグルコースで賄う。従ってタンパク質の分解が抑制される。
★ケトーシスとタンパク質消費節約
ケトーシスがタンパク質の消費を抑える4つのメカニズム
- 身体のグルコース必要量を低下させる
- 腎臓での窒素排出を減少させる
- ケトン自体がアンチカタボリックの効果の可能性
- 甲状腺ホルモンT3のレベルが急低下することでタンパク質分解が抑制される。
★甲状腺ホルモンの変化と甲状腺機能について
甲状腺機能に関する以下の2つの症状は区別される必要がある。
・甲状腺機能低下症(hypothyroidism):通常より高いレベルのTSHと、低いレベルのT3、T4。症状は倦怠感と代謝低下。
・甲状腺機能正常性ストレス症候群(euthyroid stress syndrome):T3レベルの低下と、通常レベルのT4、TSH。ケトジェニックダイエットで見られる症状。甲状腺機能低下症で見られる代謝撹乱とは異なる。ここでのT3レベルの低下はケトジェニックダイエットで見られる代謝低下とリンクしていない。他の要因で代謝低下が起きる。(ここでは書かれてないけどレプチンかな)。
★各栄養素のケトジェニックダイエットへの影響
- 炭水化物は100%ケトジェニック阻害効果。1日あたり100g以下の炭水化物だとケトジェニックダイエットになる
- タンパク質は摂取し過ぎるとグルコース転換によりケトジェニックダイエットを阻害。一方でタンパク質はグルカゴンの分泌効果がありケトジェニックダイエットを促進。それと身体のタンパク質分解を防ぐ効果。
- 脂質は利用されたトリグリセリドの10%分がグルコース転換されるので、部分的にケトジェニック阻害効果。
★protein sparing modified fast (PSMF)
除脂肪体重1kgあたり1.5gのタンパク質とビタミンミネラルのみ摂取。かなり過激で身体へのリスクも高いので、病的な肥満の人向け。
★ケトジェニックダイエットと、カーボを取るバランス型ダイエットの体組成変化への影響
- ケトジェニックダイエットは水分が抜けやすい。
- 水分が抜けたあとの体重減少は両方のダイエットで同じ程度だろう
- 体組成(除脂肪体重と体脂肪)の変化への影響についての研究は、結果がまちまち。タンパク質摂取量が不十分だったり、カロリー摂取が低すぎたりで、現実のダイエットでどうなるのかよくわからない。カーボ摂取量が減るにつれて脂肪減・除脂肪体重維持の傾向がでる研究もあるが・・・。個人差もあるしケトジェニックダイエットが有利とははっきりとは言い切れない。研究では運動もしてないし。
ダイエットの種類によって体脂肪の変化や食欲への影響に個人差があるので、自分に向いているのをやればいいだろう。消費カロリー>摂取カロリーにすることが大原則。
★ケトジェニックダイエットの諸々の影響
・幼児のてんかん患者の治療としてのケトジェニックダイエットはよく研究されてる。最大3年間。副作用は、血中脂質の上昇、便秘、水溶性ビタミンの欠乏、腎結石リスクの増加、成長抑制、病気時の酸血症。この本で提案されているケトジェニックダイエットのやり方とは同一ではないので、そのまま当てはめることはできない。ただ、この本で提案されているやり方を長期間続けた場合の影響についてはまったくわかっていないので、ずっと続けることは推奨されない。
・インスリン抵抗性
- ケトジェニックが続いたあとカーボを入れるとインスリン抵抗性が増す傾向。酵素の働きが変化することが要因で、数時間から数日で身体は再びカーボのある状況に適応する。カーボの入れ始めは肝臓が適応しておらず血中にグルコースをリリースし筋グリコーゲンが補充される傾向。
・食欲抑制
- ケトジェニックダイエットは食欲が抑制される傾向。
・コレストロールレベル
- 体重減少だとコレストロールレベルが低下する傾向。体重維持だと上昇する傾向。動脈硬化には長期間のコレストロールレベルの上昇が必要なので、ケトジェニックダイエットで一時的にコレストロールレベルが上昇してもすぐさま動脈硬化になることはないだろうけど、念のためコレストロール測定しておいて、悪い反応が出たら対処する。
・エネルギーレベルの低下
- だるさや立ちくらみが起こる。ナトリウムを十分に摂取(4-5g/day).どうしても合わない場合は少量カーボ摂取か中止
・脳への影響
- てんかん患者の研究では認知能力の低下は見られない。開始数週間は疲労感がある傾向がある。個人差もある。
・尿酸レベル
- ケトンと尿酸は腎臓での処理プロセスが競合。ケトン処理が多いと、血中の尿酸レベルが高まる。ケトジェニックダイエット開始後数週間で元のレベルに戻る。遺伝的に痛風リスクの高い人は、トータルカロリーの5%のカーボ摂取するか、ケトジェニックダイエットは行わないことを推奨。
・腎臓結石と腎臓へのダメージ
- 短期の実験では腎臓への影響なし。てんかん患者で結石リスクがやや高まったのは脱水気味だったのが要因かもしれない。ただ、長期間の影響は不明である。
・肝臓へのダメージ
- 短期での研究では影響なし。長期間は不明。
・便秘
- 食物繊維の摂取量が減るので便秘気味に。カーボの少ない野菜を沢山食べるか繊維サプリを摂取するかしたほうが良い。
・ビタミンミネラル
- カロリー制限するとどうしてもビタミンミネラルの摂取は不足してくる。マルチビタミン剤の摂取を推奨。それと厳しくカーボ制限すると野菜をあまり食べられなくなるので、長期間はやらない方が良いだろう。
・電解質
- ケトジェニックダイエットでは脱水&電解質不足の傾向。食物に含まれる分に加えて、ナトリウム3-5g、カリウム1g、マグネシウム300mgの摂取を推奨。
・カルシウム損失・骨粗しょう症
- カルシウムを十分に摂取すること。特に精製されたプロテインパウダーを飲む場合は。
・リバウンド
- ケトジェニックダイエットの特徴として、水分とグリコーゲンの変化による体重変動が激しいので、炭水化物を再び入れた時の体重増加に落胆しないようにする。体重変動と体組成変動を分けて考えること
・免疫システム
- 維持カロリーでのケトジェニックダイエットだと免疫システムへの影響は見られない。アンダーカロリーかタンパク質不足だと免疫システムに悪影響だろう。
・視神経症
- ビタミンミネラル不足が要因
・抜け毛・爪の変化
- 要因はわからないが・・・タンパク質・ビタミン・ミネラルの不足では。抜け毛((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
★カロリー設定
- 1日の摂取カロリーが1000kcal以下になると代謝が急低下する。
- 推奨は、食事制限・運動により維持カロリーから10-20%のカロリー不足を作り出す。一般的に12-13 calories/lb程度。
- このカロリー設定で週に1-1.5ポンド体脂肪を減らせる。減少が週に1ポンド以下なら摂取カロリーを減らすか運動を増やす。- 週に2ポンド以上減ると筋肉減少リスクが高まるので摂取カロリーを増やすか運動を減らす。
- 代謝低下をあまり起こさずに体脂肪減できるカロリー不足量は1日1000kcal。体重が軽い人はそれ以内。
- 増量は維持カロリー+20%が目安
★The Standard Ketogenic Diet(skd)
炭水化物カットをずっと続けるスタンダードなケトジェニックダイエット。
炭水化物は食べない・タンパク質と脂質は好きなだけ食べて良いというダイエットををすると、多くの人は自動的に摂取カロリーを減らし、結果として減量できるケースが多い。もちろんカロリーオーバーすれば太る。
炭水化物一日100g以下でケトジェニックになるはずだけど、実際は一日30g以下にしないと目立ってケトーシス状態にならない。タンパク質摂取量や運動量によって個人差があるが。
最初の数週間は炭水化物30g以下で、身体が適応したらある程度は炭水化物摂取量を増やせる。
インスリンリリースをなるべく抑えてケトーシスを続けるために、炭水化物はGI値の低い食べ物から摂取、つまり野菜。デンプンはだめ。
・タンパク質摂取量
ケトーシスに適応するまでの最初の3週間は、0.8g/lb か 150g の多い方。体重が軽いと150gになる。これは運動しない場合。運動する場合は0.9g/lb
どれくらい多くのタンパク質摂取でケトーシスが止まるかは個人差がある。筋グリコーゲンのレベルによるのかもしれない。筋グリコーゲンが枯渇してると、入ってきたグルコースは筋グリコーゲンとして補充される。
タンパク質は動物性のものが基本。
脂質はケトーシスにニュートラル。摂取カロリーが低すぎると代謝低下や除脂肪体重の減少が起きやすくなるので、脂質の摂取量でカロリー調整を行う。
普段低脂質の食事をしている人は、急に脂質の多いケトジェニックダイエットを始めると胃に違和感が出たり吐き気がしたりすることがあるので、徐々に脂質の摂取量を増やしていく移行期をもうける。繊維質を多く摂取するのも良い。
必須脂肪酸は摂取すること。必須脂肪酸の多く含まれるオイルの摂取が体脂肪減につながりやすいという報告例も。
★他の飲食物のケトーシスへの影響
水: 健康のため十分に飲むこと。理屈の上では血中のケトン濃度が高くなるすぎるのを防ぐことで脂肪分解を妨げない効果が考えられるがエビデンスは無い。
アルコール: ケトーシス状態になった後はアルコールはケトーシスを深める傾向があるが、アルコール自体のカロリーがあるので、アルコールを飲むとその分の脂肪分解が減る。アルコールもケトンに転換される。
カフェイン: アドレナリンとノルアドレナリンと遊離脂肪酸の血中レベルを上げる。アドレナリンとノルアドレナリンのレベルが上昇することで肝グリコーゲンの分解を促し血中のグルコース濃度を上げてインスリンレベルが上がる。ケトーシス確立後は肝グリコーゲン空っぽなのでインスリンレベルは上がらない。
アスパルテーム クエン酸: クエン酸はケトーシスを阻害する可能性
繊維質: 炭水化物に分類されるけど消化できないのでケトーシスに影響なし。摂取してOK。炭水化物の摂取量にはカウントしない。
★炭水化物とケトジェニックダイエット
ウェイトトレーニングを行わなずにダイエットをすると、体脂肪だけじゃなく除脂肪体重もかなり減るので、除脂肪体重を維持したい場合はウェイトトレーニングが必須。
強度の高いウェイトトレーニングをするには炭水化物を摂取する必要がある。
ある程度筋グリコーゲンレベルが下がると脂肪燃焼しやすい。各ダイエットでのグリコーゲンレベルは図参照(p121)
運動後に炭水化物を摂取しないと筋グリコーゲンはわずかしか回復しない(乳酸塩由来のグルコースでわずかに回復する)
運動前に炭水化物を摂取しておくと、運動後に筋グリコーゲンはかなり回復する。
★The Targeted Ketogenic Diet (TKD)
トレーニングに合わせて炭水化物を摂取する。
TKDは、SKDとCKDの間の妥協策。CKDは強度とボリュームが高くて上級者向け。
トレーニング前のカーボ摂取。なぜトレーニング前の摂取がパフォーマンスを上げるのかよくわかっていない(グリコーゲン充填には時間がかかるし)。血糖値の上昇が筋繊維の動員率を上げるのかも。持久運動にもトレーニング前中のカーボ摂取は有効。
トレーニング30分前に25-50gのカーボ摂取。カーボの種類は問わない。自分に合うのを試そう。
トレーニングボリュームが多くて50g以上摂取する場合は、30分前と直前に分割摂取。
トレーニング後のカーボ摂取はケトーシスを長い時間中断させやすいので、25-50g必要があれば摂取する。その場合はフルクトースが入ってるのは避ける。肝グリコーゲンが補充されやすくケトーシス中断が長引くので。
トレーニング後のプロテイン摂取推奨
トレーニング後の脂質の摂取は推奨されない。タンパク質・炭水化物の消化吸収を遅らせるのと、インスリンレベルが高い時に脂質摂取すると脂肪貯蔵されやすいので(アンダーカロリーなら長期的にはネットで脂肪減になると思うけど・・・まあ頑固な脂肪は分解がボトルネックになるが)
★The Cyclical Ketogenic Diet (CKD)
(後に The Ultimate Diet 2.0 としてブラッシュアップされてるので、やり方についてはあまり詳しくメモしていないです)
CKDは1-2日の高炭水化物摂取フェーズを取り入れる。いったんグリコーゲンを枯渇させるので、高ボリュームのトレーニングが出来ない人には無理。上級者向け。ケトジェニックフェーズはSKDと同じやり方。
週の前半はそこそこグリコーゲン減らして週の後半に枯渇させてからカーボいれてグリコーゲン超回復してウェイトトレーニング。
筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード開始24時間以内に通常レベルまで筋グリコーゲンは回復。36時間で超回復。運動後6時間がグリコーゲン合成速度が高い。
24時間で2時間おきに50gのカーボでグリコーゲン合成最大化、体重70kgの人の場合。24時間で8-10g/除脂肪体重kg。睡眠などで食事間隔が空く場合はまとめて摂取でもOK。その後の24時間はグリコーゲン合成速度は低下し、多くの人にとって体脂肪増加のリスクに見合わない。
カーボの種類はグルコースベースかスクロースを推奨。フルクトースは筋グリコーゲンの回復が鈍い。最初の24時間はGI高めの方が良い傾向、その後の24時間は低GIの方が良い。
トレーニング直後にカーボとプロテイン摂取。トレーニング前中から摂取しても良い。
摂取カロリーはケトジェニックフェーズでの摂取カロリーの2倍。カロリーの70%が炭水化物、タンパク質と脂質が15%ずつ。タンパク質は1g/lbで十分
筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード局面24時間は、炭水化物をたくさんとってもそれはグリコーゲン補充とエネルギー消費に使われ、また体脂肪の燃焼も続き脂質が蓄積されにくい。その後の24時間は脂質が体脂肪として蓄積されやすい。
★カーボロードとケトーシスへの適応
CKDでリフィード局面を入れると、ケトーシスへの適応がやや遅れるようだ(エビデンスなし、経験ベース)。
★カーボロードとアナボリック
生物学的な意味においては、アナボリックとは小さな物質から大きな物質を構築することである。
全身のアナボリック/カタボリックを司るのは肝臓。肝臓のグルコース代謝の酵素レベルが通常に戻るまで5時間かかる。なのでカーボロード前の最後のワークアウトの5時間前に25-50gのカーボ摂取。
肝グリコーゲンのレベルも重要。マウス実験だと肝グリコーゲンの補充にはグルコースとフルクトース合わせたのが有効だった。最後のワークアウト2時間前に摂取。
ここで示されているのはあくまでガイドライン。色々と試して自分の身体で良い結果が出るパターンを探す。
★ケトジェニックダイエットでの停滞期の越え方
- 飽和脂肪酸ではなくて不飽和脂肪酸を多く摂取する。熱としてカロリーが消費されやすくなる。
- 一日のトータルカロリーは同じで、食事回数を減らす。食事と食事の間に体脂肪が燃焼されやすくなるかも。
- 一週間維持カロリーに戻す。ケトジェニックのままでもカーボ入れてもOK。4-6週間ごとに1-2週間のブレークが多くの人にワークするようだ。
- 低カロリーと高カロリーの日を作る。平均して設定した摂取カロリーになるようにする。
CKDの場合
- リフィードの時間を24時間に減らす
- リフィードで食べる食事の質を良くする。ジャンクフードや甘いものを減らす。
- リフィード日の翌朝に有酸素運動してケトーシス開始を早める。
- 10日サイクル(うち1日リフィード)にしてケトーシス期間を長くする。
できれば一度に一つだけの戦略を使って、効くか効かないか判断する。
★ケトジェニックダイエットの終わらせ方
減量を終えて体重維持を続ける際は、運動を習慣にすると体重維持しやすい。
長期でのケトジェニックの影響はわかっていないので、この本ではケトジェニックの食生活を永続することを推奨しない。
炭水化物を再び摂取する際の注意点
- グリコーゲンと水による体重増加を体脂肪増加と混同しない。
- インスリン抵抗性による血糖値の乱高下と高インスリン血症。長期間炭水化物の摂取を制限すると、グルコース燃焼に関係する酵素の働きが低下。また血中の遊離脂肪酸濃度が高いとグルコース運搬を阻害。リフィード開始後、肝臓では5時間、筋肉では24-48時間でグルコース処理の働きが回復する。
・SKD/TKDの終わらせ方の推奨方法
炭水化物を再び摂取するようにする場合は、徐々に量を増やしていく、野菜も同時に摂取する(消化吸収を遅らせるため)、といった方法をとると移行がスムーズ。
・CKDの終わらせ方の推奨方法
- 炭水化物多めのバランス型食事に移行する。これがお薦め。
- CKDのサイクルを続けつつ、摂取カロリー増やす、カーボロードの時間を伸ばすといったやり方で、体重維持・増量フェーズにすることもできるが、長期でのCKDの健康への影響はわからないので、CKDをずっと続けることはこの本では推奨されない。
★検討と選択
ダイエットが有効であるためには、身体面だけではなく精神面でもその人に合ったものでないといけない。ダイエットを続けられないと、どんなダイエット方法も有効にはならない。
・ケトジェニックダイエットをバランス型ダイエットと比較
- 食材の制限: 食事の楽しみといったメンタル面に影響。個人差があって、食事の選択が楽になるという人もいる。あと野菜や果物が制限されるので、それらにのみ含まれる微量栄養素が不足する。CKDなら問題をだいぶ回避できるが、リフィード期間に抑制無く食べまくるタイプの人は食習慣にも健康にも良く無いだろう。
- 体組成変化: 体脂肪を多く減らし、筋肉の減少を抑えるというケトジェニックダイエットのセールスポイントは、強固なエビデンスがあるわけではない。経験ベースは、バランスダイエットに比べて体脂肪が減りやすく筋肉が残りやすいという多くの報告があり、とりわけボディビルダーにそういうケースが多いようだ。
・どのタイプのケトジェニックダイエットを選ぶか
- standard ketogenic diet (SKD): 運動をしない、もしくは低中強度の有酸素運動のみする人向け。
- cyclical ketogenic diet (CKD): 高い強度とボリュームのトレーニングをこなせる上級者向け。健康上の理由(高インスリン血症や高血圧)でケトジェニックダイエットをしている人はリフィード期間の高炭水化物摂取が健康上の問題を引き起こる恐れがあるので向いていない。
- targeted ketogenic diet (TKD): ほとんどの人に有効
・ケトジェニックダイエットを避けた方が良いケース
- 腎結石が出来易い人
- タイプ1糖尿病の人はインスリン必要量が変わるので医師と相談。タイプ2糖尿病で高インスリン血症・低血糖の人は血糖値が下がり過ぎるのに注意。それとタイプ2糖尿病や肥満の人はケトーシス状態を確立しにくい傾向がある。
- 冠状動脈の疾病・高コレステロールの人は血中脂質レベルの推移をチェックして、ケトジェニックダイエットがネガティブな影響を及ぼすようであれば中止する。
- 痛風の人。
- 妊娠中の人。
- てんかん患者。子供のてんかん患者治療に用いられるケトジェニックダイエットはここでのやり方とは異なるし、医師の監督の下に行われないといけない。
- 青年期の人。
糖質制限ダイエットに興味がある人には参考になる情報が多くあると思います。出版1998年なので一部outdatedな情報もあるかも。本の後半は運動生理学の教科書的な内容なので割愛して、前半部分だけメモしてます。
Lyle McDonald の本は amazon.comでも買えますが、Lyle McDonald のサイトから買った方が安いです。購入を考えている人には、amazonのレビューが参考になるかも。
★基礎知識
人間の身体のエネルギー源:グルコース、タンパク質、遊離脂肪酸、ケトン
どのエネルギー源を使うかは、炭水化物の可用性(ホルモンレベルに影響)、肝グリコーゲンの状態、ある種の酵素のレベル、次第。
エネルギーの身体内の貯蔵量は、脂質>>タンパク質>炭水化物
一般的に、身体の組織は血液中濃度の比率に沿ったエネルギー源を使う。例えば血中のグルコースが増えれば、それを優先的に使う。逆に炭水化物の可用性を低下させることで、脂質を優先的に使うようにできる。
炭水化物が不足すると、タンパク質が糖新生で使われる。炭水化物を多く取れば糖新生は起こりにくくなるけど、同様に脂質もエネルギー源になりにくくなる。
炭水化物不足の状態の初期は糖新生が起こりやすいので、身体のタンパク質が分解されないようタンパク質の摂取量を増やす必要がある。身体がケトーシスに適応すると脂質とケトンでエネルギーを賄うようになり、タンパク質が分解されにくくなる。
ほとんどの身体組織は遊離脂肪酸をエネルギー源に出来るが、脳、赤血球、腎髄質、骨髄、TypeⅡ骨格筋は遊離脂肪酸を使えない。
ケトーシス適応後は、脳は消費エネルギーの75%までをケトンでまかなうことが出来る。残りはグルコース。
ほとんどの身体組織はケトンをエネルギーとして利用できる。例外は肝臓で遊離脂肪酸を利用。
ケトーシスの三日目にはタンパク質以外のエネルギー源は全て遊離脂肪酸とケトンになる。ケトーシスが進むにつれて、脳以外の組織はケトンを利用しなくなっていき、3週間後以降は遊離脂肪酸を主にエネルギー源とするようになる。ケトンを脳に使わせるため。
身体組織による遊離脂肪酸の利用が高まるとケトンも増えて利用されるようになる。
遊離脂肪酸をエネルギー源として利用できるようになれば、それだけグルコースの必要量も減少する。
★エネルギー利用に影響を与えるファクター
・摂取栄養素の質: グルコースを多く摂取するとグルコースの利用が増える(少ないと減る)。タンパク質の摂取を増やすとある程度はタンパク質の酸化が増える(少ないと減る)。脂質は摂取量を増やしてもエネルギー源としての利用割合が顕著に増えるわけではない。炭水化物とアルコールの摂取が増えると、脂質のエネルギー利用は低下する。筋グリコーゲンのレベルが筋肉での脂質の利用を調整する。運動か炭水化物制限により、筋グリコーゲンと肝グリコーゲンのレベルを低くすると、脂質の利用が増える。
・ホルモンレベル: インスリンは貯蔵ホルモンで、血中のグルコースは筋肉か肝臓に貯蔵され、脂質の合成・貯蔵も刺激される。脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出は、わずかなインスリンでも抑制される。インスリンの主な役割は血糖レベルを一定のレンジに保つこと。炭水化物の摂取でインスリンレベルは大きく上昇するが、タンパク質の摂取でも上昇する(一部のアミノ酸がグルコースに転換されるため)。遊離脂肪酸もわずかにインスリンレベルを上昇させる。血糖値が下がるとインスリンレベルも低下し、グルカゴンなどの他のホルモンレベルが上昇し、貯蔵されたエネルギーが血中に放出される。脂肪細胞から遊離脂肪酸とグリセロールが、筋肉などのタンパク質組織からアミノ酸が、肝グリコーゲンからグルコースが放出される。グルカゴンはインスリンの逆の役割で、通常レベルでは肝グリコーゲンの分解を促進、炭水化物制限や運動によりインスリンレベルが非常に低くなると、筋グリコーゲンや脂肪細胞内の脂質の分解放出も。肝臓でのケトン体の生成にも関わる。絶対レベルよりも、インスリンとグルカゴンの比率が重要。他のホルモンは、GH、IGF-1、甲状腺ホルモン、コルチゾール、アドレナリン、カテコールアミン。
・肝グリコーゲン: 肝グリコーゲンのレベルは、身体全体の栄養貯蔵or分解の傾向を決定する主要因。
・酵素のレベル: 摂取する栄養とホルモンレベルによって決まる。
以上まとめると、炭水化物の摂取が多いと炭水化物がエネルギーとして利用され貯蔵され脂質はあまり使われない。炭水化物の摂取が少ないとその逆。
★ケトン生成
インスリンレベルが高いと脂肪分解が抑制される。
カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)は脂肪分解を促進。グルカゴンや成長ホルモンやコルチゾールも脂肪分解効果があるが効果は小さい。まれなケースではなるが、インスリンレベルが高いと、カテコールアミンレベルが高くても脂肪分解は抑制される。普通は運動といったカテコールアミンの分泌を促す刺激は、同時にインスリンレベルを低下させる。
脂肪細胞のトリグリセリドが分解されると、グリセロールと遊離脂肪酸になる。遊離脂肪酸は血液中を流れていき身体の組織でエネルギーとして利用される。大量の遊離脂肪酸があって、肝臓が準備ができていると、ケトン体に変換され、それが血液に放出される。
ケトンは通常でも微量作られて身体で利用されている。肝グリコーゲンが枯渇すると肝臓はケトジェニックモードになりケトン体をどんどん生成するようになる。この状態では遊離脂肪酸のアベイラビリティがケトン生成レートを決定する。カーボカットしてから12-16時間程度で肝グリコーゲンは枯渇する。カーボカットしてから三日後に肝臓はケトン・フル生産体制になる。
★ケトーシスとケトアシドーシス
ケトーシスとは、グルコースベースの代謝から脂質ベースの代謝に完全移行すること。絶食や高脂質食や運動直後に起きる。タイプⅠ糖尿病やアルコール依存症でのケトアシドーシスは命に関わる。通常のケトーシスとケトアシドーシスの主な違いは血中のケトン濃度。絶食や低炭水化物高脂質食では身体システムにフィードバックループが存在するので危険なレベルまではいかない。
血中のケトン濃度が0.2 mmol/dlを超えるとケトーシス
血中のケトン濃度が7 mmol/dlを超えるとケトアシドーシス
ケトニミア(血中のケトン濃度が高まっていく)
ケトヌリア(尿中のケトン濃度が高まっていく)
★ケトーシスへの適応
ケトーシスは、絶食(飢餓状態)の研究で色々と調べられている。ケトジェニックダイエットは、身体の適応の面では飢餓状態と大まかに同じである。タンパク質と脂質の摂取により、飢餓状態で失われる分のタンパク質と脂質の減少が抑えられる。
飢餓への適応(5段階)
1. 絶食開始後8時間は最後の食事の消化吸収。10時間以内に身体のエネルギー消費の半分が遊離脂肪酸から。
2. 1,2日で遊離脂肪酸と肝グリコーゲンの分解に頼るようになる。12-16時間で肝グリコーゲンは枯渇する。
3. 最初の1週間は、身体はタンパク質や乳酸塩などからのグルコース生成を増やす。脳以外の組織はグルコースの使用量を減らし遊離脂肪酸とケトンの使用を増やす。
4. 3,4日後からケトーシスが始まり、脳はケトンを利用するようになる。
5. 2週目から糖新生が減る。3週間でケトン濃度はプラトーに達する。
絶食後三日目までにエネルギー消費の90%が遊離脂肪酸とケトンで賄われる。3週間後には93%。
3週間後以降は脳以外のほとんどの組織はケトンを使わず遊離脂肪酸をエネルギーとして使うようになる。脳にケトンを回すため。脳は絶食開始直後はケトン利用に適応していないが、じきに適応する。
脳と中枢神経は一日に約100gのグルコースを使うが、飢餓に適応すると、エネルギー消費の75%までをケトンで賄うようになる。残りはグルコースで。
絶食時(炭水化物ゼロ)だと12-16時間で肝グリコーゲンが枯渇。肝臓は糖新生により、グリセロール、乳酸塩、ピルビン酸塩、アミノ酸(アラニンとグルタミン酸)からグルコースを生成する。絶食が続くと腎臓もグルコースを生成するようになる。グリセロールは脂肪細胞のトリグリセリドを分解して得られる。乳酸塩とピルビン酸塩はグリコーゲンとグルコースを分解して得られる。アミノ酸は筋肉から。アラニンは肝臓で糖新生、グルタミン酸は腎臓で糖新生。
★タンパク質の分解
絶食1週間は尿に一日に12gの窒素、75gのタンパク質が75gのグルコースを作るのに使用されたことを示す。1週間を過ぎるとタンパク質の分解は抑制されてくる。3週間後には3-4gの窒素損失、約20gのタンパク質。
トリグリセリドの質量の約1割がグルコースに(グリセロールを糖新生)。150ポンドの人だと一日におおよそ160-180gの脂肪を分解、そこから16-18gのグルコースを生成。
ケトジェニックに脳が適応するまでは1日100gのグルコースが必要。最初の1週間は、タンパク質由来と脂肪由来で合わせて約100gのグルコースを生成。
3週間で脳がケトン利用に対応し最大75%のエネルギーをケトンで賄う、残りを脂肪由来とタンパク質由来のグルコースで賄う。従ってタンパク質の分解が抑制される。
★ケトーシスとタンパク質消費節約
ケトーシスがタンパク質の消費を抑える4つのメカニズム
- 身体のグルコース必要量を低下させる
- 腎臓での窒素排出を減少させる
- ケトン自体がアンチカタボリックの効果の可能性
- 甲状腺ホルモンT3のレベルが急低下することでタンパク質分解が抑制される。
★甲状腺ホルモンの変化と甲状腺機能について
甲状腺機能に関する以下の2つの症状は区別される必要がある。
・甲状腺機能低下症(hypothyroidism):通常より高いレベルのTSHと、低いレベルのT3、T4。症状は倦怠感と代謝低下。
・甲状腺機能正常性ストレス症候群(euthyroid stress syndrome):T3レベルの低下と、通常レベルのT4、TSH。ケトジェニックダイエットで見られる症状。甲状腺機能低下症で見られる代謝撹乱とは異なる。ここでのT3レベルの低下はケトジェニックダイエットで見られる代謝低下とリンクしていない。他の要因で代謝低下が起きる。(ここでは書かれてないけどレプチンかな)。
★各栄養素のケトジェニックダイエットへの影響
- 炭水化物は100%ケトジェニック阻害効果。1日あたり100g以下の炭水化物だとケトジェニックダイエットになる
- タンパク質は摂取し過ぎるとグルコース転換によりケトジェニックダイエットを阻害。一方でタンパク質はグルカゴンの分泌効果がありケトジェニックダイエットを促進。それと身体のタンパク質分解を防ぐ効果。
- 脂質は利用されたトリグリセリドの10%分がグルコース転換されるので、部分的にケトジェニック阻害効果。
★protein sparing modified fast (PSMF)
除脂肪体重1kgあたり1.5gのタンパク質とビタミンミネラルのみ摂取。かなり過激で身体へのリスクも高いので、病的な肥満の人向け。
★ケトジェニックダイエットと、カーボを取るバランス型ダイエットの体組成変化への影響
- ケトジェニックダイエットは水分が抜けやすい。
- 水分が抜けたあとの体重減少は両方のダイエットで同じ程度だろう
- 体組成(除脂肪体重と体脂肪)の変化への影響についての研究は、結果がまちまち。タンパク質摂取量が不十分だったり、カロリー摂取が低すぎたりで、現実のダイエットでどうなるのかよくわからない。カーボ摂取量が減るにつれて脂肪減・除脂肪体重維持の傾向がでる研究もあるが・・・。個人差もあるしケトジェニックダイエットが有利とははっきりとは言い切れない。研究では運動もしてないし。
ダイエットの種類によって体脂肪の変化や食欲への影響に個人差があるので、自分に向いているのをやればいいだろう。消費カロリー>摂取カロリーにすることが大原則。
★ケトジェニックダイエットの諸々の影響
・幼児のてんかん患者の治療としてのケトジェニックダイエットはよく研究されてる。最大3年間。副作用は、血中脂質の上昇、便秘、水溶性ビタミンの欠乏、腎結石リスクの増加、成長抑制、病気時の酸血症。この本で提案されているケトジェニックダイエットのやり方とは同一ではないので、そのまま当てはめることはできない。ただ、この本で提案されているやり方を長期間続けた場合の影響についてはまったくわかっていないので、ずっと続けることは推奨されない。
・インスリン抵抗性
- ケトジェニックが続いたあとカーボを入れるとインスリン抵抗性が増す傾向。酵素の働きが変化することが要因で、数時間から数日で身体は再びカーボのある状況に適応する。カーボの入れ始めは肝臓が適応しておらず血中にグルコースをリリースし筋グリコーゲンが補充される傾向。
・食欲抑制
- ケトジェニックダイエットは食欲が抑制される傾向。
・コレストロールレベル
- 体重減少だとコレストロールレベルが低下する傾向。体重維持だと上昇する傾向。動脈硬化には長期間のコレストロールレベルの上昇が必要なので、ケトジェニックダイエットで一時的にコレストロールレベルが上昇してもすぐさま動脈硬化になることはないだろうけど、念のためコレストロール測定しておいて、悪い反応が出たら対処する。
・エネルギーレベルの低下
- だるさや立ちくらみが起こる。ナトリウムを十分に摂取(4-5g/day).どうしても合わない場合は少量カーボ摂取か中止
・脳への影響
- てんかん患者の研究では認知能力の低下は見られない。開始数週間は疲労感がある傾向がある。個人差もある。
・尿酸レベル
- ケトンと尿酸は腎臓での処理プロセスが競合。ケトン処理が多いと、血中の尿酸レベルが高まる。ケトジェニックダイエット開始後数週間で元のレベルに戻る。遺伝的に痛風リスクの高い人は、トータルカロリーの5%のカーボ摂取するか、ケトジェニックダイエットは行わないことを推奨。
・腎臓結石と腎臓へのダメージ
- 短期の実験では腎臓への影響なし。てんかん患者で結石リスクがやや高まったのは脱水気味だったのが要因かもしれない。ただ、長期間の影響は不明である。
・肝臓へのダメージ
- 短期での研究では影響なし。長期間は不明。
・便秘
- 食物繊維の摂取量が減るので便秘気味に。カーボの少ない野菜を沢山食べるか繊維サプリを摂取するかしたほうが良い。
・ビタミンミネラル
- カロリー制限するとどうしてもビタミンミネラルの摂取は不足してくる。マルチビタミン剤の摂取を推奨。それと厳しくカーボ制限すると野菜をあまり食べられなくなるので、長期間はやらない方が良いだろう。
・電解質
- ケトジェニックダイエットでは脱水&電解質不足の傾向。食物に含まれる分に加えて、ナトリウム3-5g、カリウム1g、マグネシウム300mgの摂取を推奨。
・カルシウム損失・骨粗しょう症
- カルシウムを十分に摂取すること。特に精製されたプロテインパウダーを飲む場合は。
・リバウンド
- ケトジェニックダイエットの特徴として、水分とグリコーゲンの変化による体重変動が激しいので、炭水化物を再び入れた時の体重増加に落胆しないようにする。体重変動と体組成変動を分けて考えること
・免疫システム
- 維持カロリーでのケトジェニックダイエットだと免疫システムへの影響は見られない。アンダーカロリーかタンパク質不足だと免疫システムに悪影響だろう。
・視神経症
- ビタミンミネラル不足が要因
・抜け毛・爪の変化
- 要因はわからないが・・・タンパク質・ビタミン・ミネラルの不足では。抜け毛((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
★カロリー設定
- 1日の摂取カロリーが1000kcal以下になると代謝が急低下する。
- 推奨は、食事制限・運動により維持カロリーから10-20%のカロリー不足を作り出す。一般的に12-13 calories/lb程度。
- このカロリー設定で週に1-1.5ポンド体脂肪を減らせる。減少が週に1ポンド以下なら摂取カロリーを減らすか運動を増やす。- 週に2ポンド以上減ると筋肉減少リスクが高まるので摂取カロリーを増やすか運動を減らす。
- 代謝低下をあまり起こさずに体脂肪減できるカロリー不足量は1日1000kcal。体重が軽い人はそれ以内。
- 増量は維持カロリー+20%が目安
★The Standard Ketogenic Diet(skd)
炭水化物カットをずっと続けるスタンダードなケトジェニックダイエット。
炭水化物は食べない・タンパク質と脂質は好きなだけ食べて良いというダイエットををすると、多くの人は自動的に摂取カロリーを減らし、結果として減量できるケースが多い。もちろんカロリーオーバーすれば太る。
炭水化物一日100g以下でケトジェニックになるはずだけど、実際は一日30g以下にしないと目立ってケトーシス状態にならない。タンパク質摂取量や運動量によって個人差があるが。
最初の数週間は炭水化物30g以下で、身体が適応したらある程度は炭水化物摂取量を増やせる。
インスリンリリースをなるべく抑えてケトーシスを続けるために、炭水化物はGI値の低い食べ物から摂取、つまり野菜。デンプンはだめ。
・タンパク質摂取量
ケトーシスに適応するまでの最初の3週間は、0.8g/lb か 150g の多い方。体重が軽いと150gになる。これは運動しない場合。運動する場合は0.9g/lb
どれくらい多くのタンパク質摂取でケトーシスが止まるかは個人差がある。筋グリコーゲンのレベルによるのかもしれない。筋グリコーゲンが枯渇してると、入ってきたグルコースは筋グリコーゲンとして補充される。
タンパク質は動物性のものが基本。
脂質はケトーシスにニュートラル。摂取カロリーが低すぎると代謝低下や除脂肪体重の減少が起きやすくなるので、脂質の摂取量でカロリー調整を行う。
普段低脂質の食事をしている人は、急に脂質の多いケトジェニックダイエットを始めると胃に違和感が出たり吐き気がしたりすることがあるので、徐々に脂質の摂取量を増やしていく移行期をもうける。繊維質を多く摂取するのも良い。
必須脂肪酸は摂取すること。必須脂肪酸の多く含まれるオイルの摂取が体脂肪減につながりやすいという報告例も。
★他の飲食物のケトーシスへの影響
水: 健康のため十分に飲むこと。理屈の上では血中のケトン濃度が高くなるすぎるのを防ぐことで脂肪分解を妨げない効果が考えられるがエビデンスは無い。
アルコール: ケトーシス状態になった後はアルコールはケトーシスを深める傾向があるが、アルコール自体のカロリーがあるので、アルコールを飲むとその分の脂肪分解が減る。アルコールもケトンに転換される。
カフェイン: アドレナリンとノルアドレナリンと遊離脂肪酸の血中レベルを上げる。アドレナリンとノルアドレナリンのレベルが上昇することで肝グリコーゲンの分解を促し血中のグルコース濃度を上げてインスリンレベルが上がる。ケトーシス確立後は肝グリコーゲン空っぽなのでインスリンレベルは上がらない。
アスパルテーム クエン酸: クエン酸はケトーシスを阻害する可能性
繊維質: 炭水化物に分類されるけど消化できないのでケトーシスに影響なし。摂取してOK。炭水化物の摂取量にはカウントしない。
★炭水化物とケトジェニックダイエット
ウェイトトレーニングを行わなずにダイエットをすると、体脂肪だけじゃなく除脂肪体重もかなり減るので、除脂肪体重を維持したい場合はウェイトトレーニングが必須。
強度の高いウェイトトレーニングをするには炭水化物を摂取する必要がある。
ある程度筋グリコーゲンレベルが下がると脂肪燃焼しやすい。各ダイエットでのグリコーゲンレベルは図参照(p121)
運動後に炭水化物を摂取しないと筋グリコーゲンはわずかしか回復しない(乳酸塩由来のグルコースでわずかに回復する)
運動前に炭水化物を摂取しておくと、運動後に筋グリコーゲンはかなり回復する。
★The Targeted Ketogenic Diet (TKD)
トレーニングに合わせて炭水化物を摂取する。
TKDは、SKDとCKDの間の妥協策。CKDは強度とボリュームが高くて上級者向け。
トレーニング前のカーボ摂取。なぜトレーニング前の摂取がパフォーマンスを上げるのかよくわかっていない(グリコーゲン充填には時間がかかるし)。血糖値の上昇が筋繊維の動員率を上げるのかも。持久運動にもトレーニング前中のカーボ摂取は有効。
トレーニング30分前に25-50gのカーボ摂取。カーボの種類は問わない。自分に合うのを試そう。
トレーニングボリュームが多くて50g以上摂取する場合は、30分前と直前に分割摂取。
トレーニング後のカーボ摂取はケトーシスを長い時間中断させやすいので、25-50g必要があれば摂取する。その場合はフルクトースが入ってるのは避ける。肝グリコーゲンが補充されやすくケトーシス中断が長引くので。
トレーニング後のプロテイン摂取推奨
トレーニング後の脂質の摂取は推奨されない。タンパク質・炭水化物の消化吸収を遅らせるのと、インスリンレベルが高い時に脂質摂取すると脂肪貯蔵されやすいので(アンダーカロリーなら長期的にはネットで脂肪減になると思うけど・・・まあ頑固な脂肪は分解がボトルネックになるが)
★The Cyclical Ketogenic Diet (CKD)
(後に The Ultimate Diet 2.0 としてブラッシュアップされてるので、やり方についてはあまり詳しくメモしていないです)
CKDは1-2日の高炭水化物摂取フェーズを取り入れる。いったんグリコーゲンを枯渇させるので、高ボリュームのトレーニングが出来ない人には無理。上級者向け。ケトジェニックフェーズはSKDと同じやり方。
週の前半はそこそこグリコーゲン減らして週の後半に枯渇させてからカーボいれてグリコーゲン超回復してウェイトトレーニング。
筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード開始24時間以内に通常レベルまで筋グリコーゲンは回復。36時間で超回復。運動後6時間がグリコーゲン合成速度が高い。
24時間で2時間おきに50gのカーボでグリコーゲン合成最大化、体重70kgの人の場合。24時間で8-10g/除脂肪体重kg。睡眠などで食事間隔が空く場合はまとめて摂取でもOK。その後の24時間はグリコーゲン合成速度は低下し、多くの人にとって体脂肪増加のリスクに見合わない。
カーボの種類はグルコースベースかスクロースを推奨。フルクトースは筋グリコーゲンの回復が鈍い。最初の24時間はGI高めの方が良い傾向、その後の24時間は低GIの方が良い。
トレーニング直後にカーボとプロテイン摂取。トレーニング前中から摂取しても良い。
摂取カロリーはケトジェニックフェーズでの摂取カロリーの2倍。カロリーの70%が炭水化物、タンパク質と脂質が15%ずつ。タンパク質は1g/lbで十分
筋グリコーゲン枯渇してからのリフィード局面24時間は、炭水化物をたくさんとってもそれはグリコーゲン補充とエネルギー消費に使われ、また体脂肪の燃焼も続き脂質が蓄積されにくい。その後の24時間は脂質が体脂肪として蓄積されやすい。
★カーボロードとケトーシスへの適応
CKDでリフィード局面を入れると、ケトーシスへの適応がやや遅れるようだ(エビデンスなし、経験ベース)。
★カーボロードとアナボリック
生物学的な意味においては、アナボリックとは小さな物質から大きな物質を構築することである。
全身のアナボリック/カタボリックを司るのは肝臓。肝臓のグルコース代謝の酵素レベルが通常に戻るまで5時間かかる。なのでカーボロード前の最後のワークアウトの5時間前に25-50gのカーボ摂取。
肝グリコーゲンのレベルも重要。マウス実験だと肝グリコーゲンの補充にはグルコースとフルクトース合わせたのが有効だった。最後のワークアウト2時間前に摂取。
ここで示されているのはあくまでガイドライン。色々と試して自分の身体で良い結果が出るパターンを探す。
★ケトジェニックダイエットでの停滞期の越え方
- 飽和脂肪酸ではなくて不飽和脂肪酸を多く摂取する。熱としてカロリーが消費されやすくなる。
- 一日のトータルカロリーは同じで、食事回数を減らす。食事と食事の間に体脂肪が燃焼されやすくなるかも。
- 一週間維持カロリーに戻す。ケトジェニックのままでもカーボ入れてもOK。4-6週間ごとに1-2週間のブレークが多くの人にワークするようだ。
- 低カロリーと高カロリーの日を作る。平均して設定した摂取カロリーになるようにする。
CKDの場合
- リフィードの時間を24時間に減らす
- リフィードで食べる食事の質を良くする。ジャンクフードや甘いものを減らす。
- リフィード日の翌朝に有酸素運動してケトーシス開始を早める。
- 10日サイクル(うち1日リフィード)にしてケトーシス期間を長くする。
できれば一度に一つだけの戦略を使って、効くか効かないか判断する。
★ケトジェニックダイエットの終わらせ方
減量を終えて体重維持を続ける際は、運動を習慣にすると体重維持しやすい。
長期でのケトジェニックの影響はわかっていないので、この本ではケトジェニックの食生活を永続することを推奨しない。
炭水化物を再び摂取する際の注意点
- グリコーゲンと水による体重増加を体脂肪増加と混同しない。
- インスリン抵抗性による血糖値の乱高下と高インスリン血症。長期間炭水化物の摂取を制限すると、グルコース燃焼に関係する酵素の働きが低下。また血中の遊離脂肪酸濃度が高いとグルコース運搬を阻害。リフィード開始後、肝臓では5時間、筋肉では24-48時間でグルコース処理の働きが回復する。
・SKD/TKDの終わらせ方の推奨方法
炭水化物を再び摂取するようにする場合は、徐々に量を増やしていく、野菜も同時に摂取する(消化吸収を遅らせるため)、といった方法をとると移行がスムーズ。
・CKDの終わらせ方の推奨方法
- 炭水化物多めのバランス型食事に移行する。これがお薦め。
- CKDのサイクルを続けつつ、摂取カロリー増やす、カーボロードの時間を伸ばすといったやり方で、体重維持・増量フェーズにすることもできるが、長期でのCKDの健康への影響はわからないので、CKDをずっと続けることはこの本では推奨されない。
★検討と選択
ダイエットが有効であるためには、身体面だけではなく精神面でもその人に合ったものでないといけない。ダイエットを続けられないと、どんなダイエット方法も有効にはならない。
・ケトジェニックダイエットをバランス型ダイエットと比較
- 食材の制限: 食事の楽しみといったメンタル面に影響。個人差があって、食事の選択が楽になるという人もいる。あと野菜や果物が制限されるので、それらにのみ含まれる微量栄養素が不足する。CKDなら問題をだいぶ回避できるが、リフィード期間に抑制無く食べまくるタイプの人は食習慣にも健康にも良く無いだろう。
- 体組成変化: 体脂肪を多く減らし、筋肉の減少を抑えるというケトジェニックダイエットのセールスポイントは、強固なエビデンスがあるわけではない。経験ベースは、バランスダイエットに比べて体脂肪が減りやすく筋肉が残りやすいという多くの報告があり、とりわけボディビルダーにそういうケースが多いようだ。
・どのタイプのケトジェニックダイエットを選ぶか
- standard ketogenic diet (SKD): 運動をしない、もしくは低中強度の有酸素運動のみする人向け。
- cyclical ketogenic diet (CKD): 高い強度とボリュームのトレーニングをこなせる上級者向け。健康上の理由(高インスリン血症や高血圧)でケトジェニックダイエットをしている人はリフィード期間の高炭水化物摂取が健康上の問題を引き起こる恐れがあるので向いていない。
- targeted ketogenic diet (TKD): ほとんどの人に有効
・ケトジェニックダイエットを避けた方が良いケース
- 腎結石が出来易い人
- タイプ1糖尿病の人はインスリン必要量が変わるので医師と相談。タイプ2糖尿病で高インスリン血症・低血糖の人は血糖値が下がり過ぎるのに注意。それとタイプ2糖尿病や肥満の人はケトーシス状態を確立しにくい傾向がある。
- 冠状動脈の疾病・高コレステロールの人は血中脂質レベルの推移をチェックして、ケトジェニックダイエットがネガティブな影響を及ぼすようであれば中止する。
- 痛風の人。
- 妊娠中の人。
- てんかん患者。子供のてんかん患者治療に用いられるケトジェニックダイエットはここでのやり方とは異なるし、医師の監督の下に行われないといけない。
- 青年期の人。
10/19/2014
人工甘味料が糖尿病のリスクを高める?
結局、人工甘味料は体にいいのか悪いのか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41973
先月話題になった人工甘味料が糖尿病のリスクを高めるという研究についての記事。ネットのダイエット関連記事は酷い内容のものが大半だけど、この記事は良質ですね。
記事の要点を書くと
・腸内細菌についての研究はマウス対象のもの。また人工甘味料の摂取量はかなり多い。
・疫学調査では、相関と因果がはっきりしない。糖尿病や肥満の人が自分の健康状態を意識して人工甘味料飲料を積極的に飲んでいるのかもしれない。
・ヒト対象の介入試験は被験者数が7名と少なく期間も短い。
・他の介入試験では、「血糖値に影響はない」という結果や、「血糖値は下がった」という結果が出ている。人工甘味料を摂取して「明らかに血糖値が悪化した」という結果は見られない。
・ただ、介入試験の期間は短いため、糖尿病のリスクが高まるのか高まらないのかははっきりとはわからない。2型糖尿病は長期間かけて発症するもの。
・どんなものでも大量摂取は毒になるだろう。また人工甘味料に対する感受性は個人差があると思われるので、自分が糖尿病になりやすい体質で人工甘味料を大量に摂取する生活を送っているならそれを見なおしたほうが良いだろう。
たしかヒト対象の介入試験はサッカリンのみを投与してる。ネイチャーのサイトで論文見ようとしたんだけど、無料では部分的にしか読めなかった(´・_・`) ちなみにサッカリンは日本ではほとんど使用されていない。
個人的には、人工甘味料の入ったゼロカロリー飲料はたまに飲む程度。CCレモンとペプシNEXは良く出来ていると思う。最近はシュウェップスのフルーツビネガーゼロがお気に入り。プロテインパウダーは、人工甘味料・人工香料不使用のOPTIMUMのNATURALシリーズを使っている。プロテインパウダーは摂取量が多いし、アメリカの人工甘味料入りプロテインパウダーは甘すぎたり薬品臭かったりで自分の味覚には合わないので(たぶん濃い目に溶くことが多いせいだと思う)。
9/24/2014
ゴールデンタイムはあるのか?
Nutrient timing revisited: is there a post-exercise anabolic window?
http://www.jissn.com/content/10/1/5
Alan Albert Aragonの関わった論文。2013年のもの。栄養摂取に関するこれまでの研究のレビュー論文。
巷間では、ワークアウト直後の短い時間に栄養摂取をしないとウェイトトレーニングの効果が低くなると言われている。いわゆるゴールデンタイム。英語だと anabolic window と言われる。そんなに摂取タイミングにシビアになる必要があるのか?という論文内容になっています。以下、抄訳。
★グリコーゲン回復
- 筋グリコーゲンレベルが高いとアナボリックになりやすく、筋グリコーゲンレベルが低いとカタボリックになりやすい(AMPKなどが関係する)。
- 筋グリコーゲンは運動直後の炭水化物摂取で回復が速い。炭水化物摂取が遅れるとその後の数時間は筋グリコーゲン回復速度が遅くなる。
- だが一日に複数回の激しい運動をするのでない限り、次のワークアウトまでにはグリコーゲン回復時間が十分になるので、神経質にならなくても良い。
★筋分解
- 運動後の栄養摂取は、運動後のカタボリックを防ぐ効果。インスリンレベルの上昇によってカタボリックが防がれる。運動後に絶食が続くとカタボリックが優勢になり、筋肉のタンパク質のネットバランスがマイナスになる。
- インスリンの抗カタボリック効果は空腹時の3-4倍程度のインスリンレベルでプラトーに達する。実験によると、このインスリンレベルは通常の固形物の食事やホエイプロテインパウダー(45g)のみで十分に達成可能。
- そもそも通常の食事の消化吸収には時間がかかるので、運動前に十分に栄養摂取してない場合にのみ、運動直後に速やかにインスリンレベルを上げたほうがよいということになる。
- また運動後の筋合成/筋分解でネットバランスに寄与するのは筋合成の方が大きく、筋分解抑制による寄与は小さい。従って、カタボリックを防ぐために運動後に慌ててインスリンレベルをスパイクさせることにどれだけ効果があるかは疑問。
★筋合成
- 運動と血中アミノ酸濃度の上昇を組み合わせることで筋合成が大きく上昇する。炭水化物の摂取が筋合成を上昇させるかについては、効果ありという研究と無しという研究とがある。
- 摂取タイミングを数時間遅らせたケースに対しての、運動直後のアミノ酸(タンパク質)摂取の優位性は一貫して示されてはいない。ありなし両方の研究がある。ありの方も、持久運動だったり実験デザインに欠陥があったりで強固なエビデンスとは言いがたい。
- また被験者がトレーニング歴があるか初心者かによる違いもある。
- そもそもこれらのacute研究で調べられている運動後数時間の筋合成/筋分解によるネットバランス変化が、長期の筋肥大にそのままつながるかは不明である。
★長期での筋肥大
- 研究の数が少ないし、実験結果がまちまち。運動前後の栄養摂取が効果ありという研究もあれば無しという研究もある。それに加えて実験デザインにより解釈に注意が必要。
- タンパク質vsプラシーボの場合、一日トータルのタンパク質摂取量に違いがでるので、筋肥大の結果の違いが摂取タイミングによるものかトータルのタンパク質摂取量によるものかわからない。
- 運動前と運動後の両方にタンパク質摂取している研究が多く、運動後摂取による効果の切り分けができない。
- 期間が短いと測定方法の性能限界により、筋肥大に差が出ているかわからない。
★ディスカッション
- 運動直後にすぐに栄養摂取することは、長期の筋肥大を最大化するのに非常に重要であるという主張を裏付ける決定的なエビデンスは今のところ無い。
- 空腹状態で運動をした場合は、その直後に栄養摂取をすることは効果的であろう。例えば、朝起きて何も食べずにワークアウトを行った場合は、直後の栄養摂取が推奨される。
- 実際に多くの人が行うトレーニング/栄養摂取プログラムを考えると、運動の1-2時間前にしっかりした食事を摂取すれば、運動後まで消化吸収は続いているので、運動前中後に渡って身体には栄養供給が行われていることになる。また運動直前の20gのホエイプロテイン摂取でも運動後3時間まで筋合成レベルが上昇していたという研究もある。このように運動前に栄養摂取を行った場合は、運動直後に再び栄養摂取を行うのはリダンダントであろう。通常の食事間隔で次の食事を摂れば、栄養摂取は十分だろう。
- 前の食事から運動まで3-4時間以上空く場合は、運動直前か運動直後の栄養摂取が推奨されるだろう。
- これまでの研究結果からは運動直後の栄養摂取の効果については曖昧な答えしか出ないが、シビアな結果を求めるアスリートは、あるかもしれない効果に賭けて運動直後に栄養摂取するのも良いだろう。効果がなかった場合でもコストは低い。
★実践
- タイミングは運動直前直後に拘らず、運動前と後の両方に0.4-0.5g/除脂肪体重kgのタンパク質を含む食事の摂取が、シンプルでフェールセーフなガイドラインだろう。この運動前と運動後の食事の間隔は3-4時間以上空けない方がよいだろう。ただ、食事の量が多い場合は5-6時間空けるのも良い。
- 例えば、運動前食事→90分休み→運動を60分間→90分休み→運動後食事だと、食事の間隔は4時間となりガイドラインに沿ったものになる。個人の好みやライフスタイルによって食事と運動の間隔はフレキシブルに調整可能である(図1参照)。もちろん一日のトータルのタンパク質摂取量は重要である(※)。
- 炭水化物の摂取タイミングについては、はっきりとした推奨方法を示すには一貫したデータを欠いている。一日のトータルの摂取量を決めて、それを守れば、タイミングはあまり気にしなくて良いのではないだろうか。
※筋肥大を目指してウェイトトレーニングを行う人の一日のトータルのタンパク質摂取量についての私の追記コメント。専門家によって推奨している数字が違うんだけど、維持カロリー以上摂取しているなら1日トータルで2g/体重kgの摂取で十分だと思われる。これでも一般的な推奨値よりも多め。多めでも食費がかかる以外には特にデメリット無いし。基本的には、カロリー不足、運動強度が高い、初心者、といった要因があると必要なタンパク質摂取量は増える。
関連記事:
タンパク質の摂取タイミングの効果についてのメタ解析研究
http://www.jissn.com/content/10/1/5
Alan Albert Aragonの関わった論文。2013年のもの。栄養摂取に関するこれまでの研究のレビュー論文。
巷間では、ワークアウト直後の短い時間に栄養摂取をしないとウェイトトレーニングの効果が低くなると言われている。いわゆるゴールデンタイム。英語だと anabolic window と言われる。そんなに摂取タイミングにシビアになる必要があるのか?という論文内容になっています。以下、抄訳。
★グリコーゲン回復
- 筋グリコーゲンレベルが高いとアナボリックになりやすく、筋グリコーゲンレベルが低いとカタボリックになりやすい(AMPKなどが関係する)。
- 筋グリコーゲンは運動直後の炭水化物摂取で回復が速い。炭水化物摂取が遅れるとその後の数時間は筋グリコーゲン回復速度が遅くなる。
- だが一日に複数回の激しい運動をするのでない限り、次のワークアウトまでにはグリコーゲン回復時間が十分になるので、神経質にならなくても良い。
★筋分解
- 運動後の栄養摂取は、運動後のカタボリックを防ぐ効果。インスリンレベルの上昇によってカタボリックが防がれる。運動後に絶食が続くとカタボリックが優勢になり、筋肉のタンパク質のネットバランスがマイナスになる。
- インスリンの抗カタボリック効果は空腹時の3-4倍程度のインスリンレベルでプラトーに達する。実験によると、このインスリンレベルは通常の固形物の食事やホエイプロテインパウダー(45g)のみで十分に達成可能。
- そもそも通常の食事の消化吸収には時間がかかるので、運動前に十分に栄養摂取してない場合にのみ、運動直後に速やかにインスリンレベルを上げたほうがよいということになる。
- また運動後の筋合成/筋分解でネットバランスに寄与するのは筋合成の方が大きく、筋分解抑制による寄与は小さい。従って、カタボリックを防ぐために運動後に慌ててインスリンレベルをスパイクさせることにどれだけ効果があるかは疑問。
★筋合成
- 運動と血中アミノ酸濃度の上昇を組み合わせることで筋合成が大きく上昇する。炭水化物の摂取が筋合成を上昇させるかについては、効果ありという研究と無しという研究とがある。
- 摂取タイミングを数時間遅らせたケースに対しての、運動直後のアミノ酸(タンパク質)摂取の優位性は一貫して示されてはいない。ありなし両方の研究がある。ありの方も、持久運動だったり実験デザインに欠陥があったりで強固なエビデンスとは言いがたい。
- また被験者がトレーニング歴があるか初心者かによる違いもある。
- そもそもこれらのacute研究で調べられている運動後数時間の筋合成/筋分解によるネットバランス変化が、長期の筋肥大にそのままつながるかは不明である。
★長期での筋肥大
- 研究の数が少ないし、実験結果がまちまち。運動前後の栄養摂取が効果ありという研究もあれば無しという研究もある。それに加えて実験デザインにより解釈に注意が必要。
- タンパク質vsプラシーボの場合、一日トータルのタンパク質摂取量に違いがでるので、筋肥大の結果の違いが摂取タイミングによるものかトータルのタンパク質摂取量によるものかわからない。
- 運動前と運動後の両方にタンパク質摂取している研究が多く、運動後摂取による効果の切り分けができない。
- 期間が短いと測定方法の性能限界により、筋肥大に差が出ているかわからない。
★ディスカッション
- 運動直後にすぐに栄養摂取することは、長期の筋肥大を最大化するのに非常に重要であるという主張を裏付ける決定的なエビデンスは今のところ無い。
- 空腹状態で運動をした場合は、その直後に栄養摂取をすることは効果的であろう。例えば、朝起きて何も食べずにワークアウトを行った場合は、直後の栄養摂取が推奨される。
- 実際に多くの人が行うトレーニング/栄養摂取プログラムを考えると、運動の1-2時間前にしっかりした食事を摂取すれば、運動後まで消化吸収は続いているので、運動前中後に渡って身体には栄養供給が行われていることになる。また運動直前の20gのホエイプロテイン摂取でも運動後3時間まで筋合成レベルが上昇していたという研究もある。このように運動前に栄養摂取を行った場合は、運動直後に再び栄養摂取を行うのはリダンダントであろう。通常の食事間隔で次の食事を摂れば、栄養摂取は十分だろう。
- 前の食事から運動まで3-4時間以上空く場合は、運動直前か運動直後の栄養摂取が推奨されるだろう。
- これまでの研究結果からは運動直後の栄養摂取の効果については曖昧な答えしか出ないが、シビアな結果を求めるアスリートは、あるかもしれない効果に賭けて運動直後に栄養摂取するのも良いだろう。効果がなかった場合でもコストは低い。
★実践
- タイミングは運動直前直後に拘らず、運動前と後の両方に0.4-0.5g/除脂肪体重kgのタンパク質を含む食事の摂取が、シンプルでフェールセーフなガイドラインだろう。この運動前と運動後の食事の間隔は3-4時間以上空けない方がよいだろう。ただ、食事の量が多い場合は5-6時間空けるのも良い。
- 例えば、運動前食事→90分休み→運動を60分間→90分休み→運動後食事だと、食事の間隔は4時間となりガイドラインに沿ったものになる。個人の好みやライフスタイルによって食事と運動の間隔はフレキシブルに調整可能である(図1参照)。もちろん一日のトータルのタンパク質摂取量は重要である(※)。
- 炭水化物の摂取タイミングについては、はっきりとした推奨方法を示すには一貫したデータを欠いている。一日のトータルの摂取量を決めて、それを守れば、タイミングはあまり気にしなくて良いのではないだろうか。
※筋肥大を目指してウェイトトレーニングを行う人の一日のトータルのタンパク質摂取量についての私の追記コメント。専門家によって推奨している数字が違うんだけど、維持カロリー以上摂取しているなら1日トータルで2g/体重kgの摂取で十分だと思われる。これでも一般的な推奨値よりも多め。多めでも食費がかかる以外には特にデメリット無いし。基本的には、カロリー不足、運動強度が高い、初心者、といった要因があると必要なタンパク質摂取量は増える。
関連記事:
タンパク質の摂取タイミングの効果についてのメタ解析研究
8/04/2014
挙上重量によるデッドリフトのフォームの違い
デッドリフトのフォームは、挙上するバーベルの重さによって変わってくると思われる。私はパワーリフティングなどをやってるわけではなく、それほど自信はないのだけど、考えたことを書いてみたい。
まず初めに、スクワットやデッドリフトの効率的な動作は以下の基本要件に従う。
・重心(身体の重心とバーベルの重心の合成)は常に足の真上
・無駄なモーメントアームを無くす
・バーベルは最短距離を動く(つまり直線)
無駄なモーメントアームを無くすというのは、例えばデッドリフトだと、バーが身体から離れると、それだけ関節(股関節)から挙上対象部分(上半身+バーベル)の重心への水平距離(モーメントアーム)が長くなり、関節により大きなトルクがかかるようになるので、バーを身体に沿わせてモーメントアームを短くしましょうという話。
★バーベルが軽い時のフォーム
例えばバーのみを持つ場合。図の赤い印が身体の重心で、緑の印が身体+バーベルの重心。バランスを崩さないためには、身体+バーベルの重心は常に足の真上にある必要がある。基本要件を満たすフォームは以下のようになる。
- 肩はバーよりも前側に出る。
- 広背筋を使って腕を胴体に引きつけ、バーを身体に沿わせながら挙上する。力を入れないと、振り子の動作で腕が前側に垂れる。
- 身体の重心は足の真上を動く。
★とても重たいバーベルを挙上する場合(失敗例)
バーベルが軽い時のように身体の重心が真上に動くように立ち上がると、振り子の力に耐えられずに前に倒れこんでしまう。
★とても重たいバーベルを挙上するフォーム
とても重たいバーベルを挙上するには、身体の重心を足の位置よりも後ろ側にし、腕が鉛直に近くなるようにする。バーベルが十分に重ければ、身体+バーベルの重心はバーベルに近くなるので、バーベルが足の真上を移動する限り、身体の重心が後ろ側にあってもバランスを崩さない。
実例を動画で見てみる。
★以前書いた記事の補足
バーベルが軽いと、身体+バーベルの重心が身体の重心に近くなるので、身体を後ろ側に傾けながら挙上するとバランスを崩す。以前書いた記事(デッドリフトの基本ポイント)でのデッドリフトの説明は、軽いバーベルを挙上する時のフォーム。元ネタのMark Rippetoeの本は、女性含めての初心者向けのものなので。
同一人物の、軽い重量と重い重量のフォームの違いを見てみる。序盤の軽い重量でのフォームはMark Rippetoeの本での説明通り。終盤の重い重量でのフォームは身体の重心が後ろ側になっている。
関連記事:
デッドリフトの基本ポイント
自重での膝を前に出さないスクワット
7/29/2014
自重での膝を前に出さないスクワット
普段通ってるフィットネスクラブで、パーソナルトレーナーが指導したり、彼らに教えてもらったとおぼしき人たちが、主に自重で「膝を前に出さないスクワット」を窮屈そうにやっているのを見て思ったことを書いてみたい。
膝を前に出さないスクワットには、膝への負担が軽い、股関節周りの筋肉を鍛えられるといったメリットがあり、これが一般的に推奨されている要因であろう。膝への負担が軽い理由は、私の知る範囲では以下の通り。
・モーメントアームの問題。挙上対象部分の重心への水平距離が短いほど関節のトルクは小さくなる。
・ハムストリングスが伸びて大腿の前面側(四頭筋)のテンションを相殺することで前十字靭帯への負荷が低くなる。
・個人差はあるが、膝の角度が鋭角になりすぎると膝の軟骨への負担が大きくなり怪我をしやすくなる。膝を前に出さないスクワットは膝の角度があまり鋭角にならない。
私も膝を前に出さないスクワット(ロウバースクワット)を普段やっているのだけど、バーベル担ぐのと自重とでは重心の関係でフォームが変わってくる。
スクワットに限らず立った状態で行うトレーニングは、重心が足の真上に来ないとバランスが取れない。自重で膝を前に出さないスクワットをちゃんとやろうとすると、重心が足よりも後ろ側になり後ろに倒れる(図1)。赤い印が身体の重心。適当に描いたけど多分ここら辺だろう。
試してみればわかるように、大腿が床と平行になるまでしゃがむのは至難の業だ。これは足首や股関節の柔軟性の問題ではなく、重心の問題である。無理にやろうとするとなんとか重心を前に残そうとして、背中を丸めたり上半身を前側に倒しこんだりする不自然な姿勢になる(図2)。自重ならあまり害はないだろうけど、このフォームでスクワットを覚えてバーベルを担ぐと怪我をするリスクが高い。
上半身をやや前に倒して腕を前に出すと、重心が前側に移動してバランスが取れる(図3)。自重で膝を前に出さないスクワットをやりたい場合はこうやるのが良いと思う。下背部が丸まらないように注意する。手で何かに掴まりながらでも良いだろう。
個人的には、自然に膝を前に出して自重スクワットをやればいいと思う(図4)。健康体なら、蹲踞やうさぎ跳びみたいやり方をしない限り、膝を壊すようなことにはならないでしょう。
重たいバーベルを担いでの膝を前に出さないスクワット(ロウバースクワット)は、自然にバランスが取れる。重心(身体の重心とバーベルの重心の合成)がバーベル近くになる(図5)。緑の印が、身体+バーベルの重心。バーベルが軽い場合は、合成重心が身体の重心に近くなるので膝が前に出る。
それと5kgとか10kgのバーを首の辺りに担いで膝を前に出さないスクワットをしてるケースも見るけど、上体を前に倒しつつ首の辺りで担ぐと頚椎に負担がかかって危ない感じがする。軽量では問題が起きることはあまり無いだろうけど、男性だと重量を増やしていく人もいるから気をつけないと・・・。ロウバーもハイバーも担ぐ位置には合理性がある。
関連記事:
スクワットの基本ポイント
7/19/2014
減量時のタンパク質摂取量による体組成変化の違い
Increased protein intake reduces lean body mass loss during weight loss in athletes.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19927027/
一日のタンパク質の摂取量を体重1kgあたり1.0gのグループと2.3gのグループに分けて、減量による体組成変化の違いを調べている。被験者はエリートレベルではないアスリートで、減量前の体脂肪率(平均値)は17%程度。結果は、2週間という短い期間ではあるが、高タンパク質摂取グループの方が除脂肪体重の減少が抑制された。2010年の論文。
★被験者
年齢: 18-40歳
運動歴: 週に2回以上のレジスタンストレーニングを6ヶ月以上継続。
性別: 男性
人種: 英国人
人数: 20人
詳しいデータはTABLE 1に。(数値は平均値±標準誤差)
★実験期間
- トータル4週間
- 減量フェーズは3週目と4週目の計2週間
★減量期間の食事
- 維持カロリー摂取の60%に制限(40%のカロリーカット)。
- マクロ栄養素の割合は、高タンパク質グループがタンパク質35%、脂質15%、炭水化物50%。対照群がタンパク質15%、脂質35%、炭水化物50%。
- 一日のタンパク質の摂取量は、高タンパク質グループが体重1kgあたり2.3g、対照群が体重1kgあたり1.0g。詳しくはTABLE 2に。
- タンパク質は主に動物性タンパク質を摂取。
- 食事回数は不明だが、通常の食事に加えて軽食も摂取して、栄養摂取タイミングを一日に分散させている。栄養摂取タイミングはトレーニングに合わせてはいない。
- 被験者が高タンパク質グループなのか対照群なのかわからなくするため、脂質中心でタンパク質をほとんど含まないプロテインシェイクもどきを作ったり、肉っぽいけど実は脂質が多い食べ物を提供したりと気を使っている。被験者のトレーニングに対するやる気が違ってきたりしないように。
★トレーニング
- 通常のトレーニングを各自継続。
★測定
- 体組成測定方法: DEXA
- 運動パフォーマンス測定: スクワットジャンプ、アイソメトリックでのレッグエクステンションの最大筋力、チェストプレの1RM、チェストプレスの筋持久力テスト、バイクでの無酸素運動能力テスト(Wingate test)
- 血液分析もしているけど特に面白くないのでここでは割愛。
- 主観での疲労感や満腹感も測定している。
★結果
<体組成変化>
以下の数値はアブストラクトに載っているもので多分2週目の測定値からの変化。FIGURE 2 は1週目と2週目の平均値からの変化。体脂肪の減少量は両グループとも同じで、対照群は除脂肪体重の減少が大きく、そのぶんトータルの体重の減少も大きくなっている。
・体重
高タンパク質群: -1.5±0.3kg
対照群: -3.0±0.4kg
・除脂肪体重
高タンパク質群: -0.3±0.3kg
対照群: -1.6±0.3kg
<運動パフォーマンス>
スクワットジャンプの際の踏み込みの力以外は、減量による変化はなし。除脂肪体重は減少しているので、実際には運動能力はわずかに低下していて測定では観測できなかった可能性がある。スクワットジャンプの際の踏み込みの力の低下は、体重減少に伴う必然的なもので、運動パフォーマンスの低下を示すものではないだろうとのこと。
<疲労感>
主観での疲労感は、高タンパク質グループの方が高くなった。理由は不明。
★個人的な感想
- 2週間という短い減量期間だけど、減量時にはタンパク質の摂取量を増やすことで、除脂肪体重の減少を抑制できるという常識的な結果になっている。
- 40%のカロリーカットなので割と速い減量ペース。
- 体重1kgあたり2.3gのタンパク質摂取量がベストなのかは不明。
- 被験者の体脂肪率が平均で17%程度で運動歴があるのでボディメイクの参考になる(アスリート対象の実験は少なく、被験者が肥満で運動歴の無い実験が多い)。
- 減量前後の体重変化にはグリコーゲンと水分量の変化も寄与してそうだけど、両グループ間の比較においては条件は同じ。
関連記事:
減量ペースの違いによる体組成変化と運動パフォーマンス変化
7/13/2014
減量ペースの違いによる体組成変化と運動パフォーマンス変化
Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21558571
ここで全文PDFをダウンロードできる。
遅い減量と速い減量をするグループに分けて、減量ペースの違いが体組成と運動パフォーマンスに与える影響を調べている。2011年の論文。先に結果を書くと、ゆっくり減量した方が除脂肪体重と運動パフォーマンスに有利。
★2つの目標減量ペース
遅い減量:週あたり体重の0.7%ずつ減らしていくようカロリー制限をする。体重70kgだったら毎週0.5kg。
速い減量:週あたり体重の1.4%ずつ減らしていくようカロリー制限をする。体重70kgだったら毎週1kg。
★被験者
年齢:18-35歳
運動歴:エリートアスリート
人種:ノルウェー人
人数:男性11人、女性13人
被験者の競技種目はフットボール、バレーボール、クロスカントリースキー、柔道、柔術、テコンドー、ウォータースキー、モトクロス、自転車、陸上、キックボクシング、体操、アルペンスキー、スキージャンプ、フリースタイルダンス、スケート、バイアスロン、アイスホッケー。
被験者の詳しい身体データはTable 1に。
★食事
- 体組織1gあたり7kcalのエネルギーに相当すると仮定して、目標減量ペースから一日あたりのカロリー不足量を算出。
- 一日あたりの摂取量は、カロリーの25%をタンパク質、55%を炭水化物、20%を脂質。詳しいマクロ栄養素の配分はTable 2に。
- タンパク質摂取量は1.2-1.8g/kg
- 食事回数は、軽食も含めて一日5-7回。
- ミルクプロテインと炭水化物の含まれたドリンクをトレーニング後30分以内に摂取。
- サプリメントについては、クレアチンの摂取を禁止。マルチビタミンとタラの肝油(必須脂肪酸)が処方された。
★トレーニング
- 実験は各アスリートのオフシーズンに行われた。
- トレーニングは、週4回のストレングストレーニング。それに加えて各競技種目の専門トレーニングが平均週15時間程度。
- ストレングストレーニングの内容は、二分割で各部位週に2回トレーニング。メイン種目とアイソレートされたサブ種目を実施。
- 脚のメイン種目はクリーン、スクワット、ハックスクワット、デッドリフト。
- 上半身のメイン種目はベンチプレス、ベンチプル(bench pull)、ローイング、懸垂、ショルダープレス、体幹種目。
- セット数・レップ数: トータル12週間の場合、最初の4週間が3セット・8-12レップ、次の4週間が4セット・6-12レップ・次の4週間が5セット・6-10レップ。減量ペースが速くて実験期間が短い場合はそれぞれ期間を短縮。
★測定
- 体組成測定方法: DEXA
- 運動パフォーマンス測定: 40m走、垂直跳び(countermovement jump)、1RM(ベンチプレス、ベンチプル、スクワット)
★結果
<実験期間>
遅い減量: 8.5±2.2週
速い減量: 5.3±0.9週
<1日のカロリー不足量>
遅い減量: 19%±2%
速い減量: 30%±4%
<体組成変化>
・体重減少
遅い減量: 5.6%±0.8%(週平均0.7%±0.4%)
速い減量: 5.5%±0.7%(週平均1.0%±0.4%)
・体脂肪量減少
遅い減量: 31%±3%
速い減量: 21%±0%
・除脂肪体重変化
遅い減量: +2.1%±0.4%
速い減量: -0.2%±0.7%
・男女別の除脂肪体重変化(遅い減量グループと速い減量グループを合わせたデータ)
女性: +1.8%±0.4%
男性: 0.0%±0.7%
・男性の除脂肪体重変化
遅い減量: +1.7%±0.4%
速い減量: -2.0%±1.0%
<体組成変化の詳細>
- 遅い減量での除脂肪体重の増加は、主に上半身の除脂肪体重増加(+3.1%±0.8%)によってもたらされた。これは、一般的に上半身の方がレジスタンストレーニングに対しての反応が良い、さらにアスリートの場合は下半身はすでに十分鍛えられていて伸びしろがあまりない、といった理由によるものであろう。
- 女性の方が除脂肪体重が増加。体脂肪率が高めなことが影響しているのかもしれない。
<運動パフォーマンス>
Figure 2の通り。遅い減量の方が良い結果だが、遅い減量の方が実験期間が長いのでトレーニング期間も長い。測定種目全体の1RMを週あたりの変化で見ると、1.4%±0.7%と1.3%±0.5%でほぼ同じ結果になっている。
<目標達成について>
減量ペースの目標は週あたりの体重減0.7%と1.4%だが、達成できなかった人もいた。遅い減量では3人が、速い減量では5人が目標レンジから外れた。今回のデータには、達成できなかった人たちのデータも含まれている。達成できなかった人たちのデータを除外しても、結果に有意な違いはなかった。
☆感想☆
- サンプルサイズは小さいけど、ゆっくり減量した方が除脂肪体重と運動パフォーマンスに有利という結果が出ている。
- 実際の減量ペースの目安としては、体脂肪率15-20%程度の男性の場合、週に体重が1%以上減る減量ペースだと、レジスタンストレーニングを行っていても除脂肪体重に悪影響が出るリスクが高い。この実験は被験者が運動歴があって通常の体脂肪率なので、ボディメイクを続けている人にとって参考になると思う。
- 一般的に、体脂肪率が高いほうが減量時に除脂肪体重を維持・増加しやすく、体脂肪が減少しやすい。また、運動歴が少ない方が、減量時にレジスタンストレーニングを取りいれた場合に除脂肪体重の維持・増加が行いやすい。
- この実験でのタンパク質摂取量はそれほど多くないので、減量ペースが速くてもタンパク質の摂取量を2-3g/kgに増やせばある程度は除脂肪体重の減少を抑えられるかもしれない。
- 論文中で引用されている2004年のUmeda他(弘前大学)の実験では、被験者は38名の柔道選手、期間20日、減量ペース1.2kg/週、ストレングストレーニングは2時間/週、という実験条件で、減少した体重の61%が体脂肪、残りが除脂肪体重という結果になったとのこと。無料で読めないので私は中身は読んでないけど、減量ペースが速い、ストレングストレーニングのボリュームが少ないといった点が、除脂肪体重の減少につながってる可能性がある。
関連記事:
減量時のタンパク質摂取量による体組成変化の違い
7/04/2014
筋肥大についてのレビュー論文
A Brief Review of Critical Processes in Exercise-Induced Muscular Hypertrophy
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4008813/
筋肥大についてのレビュー論文。2014年時点の筋肥大についての科学研究の大まかなまとめいったところ。以下、抄訳。(*n)は私のコメント。
★筋肉のタンパク質の更新メカニズム
- 筋繊維の肥大は、筋肉におけるタンパク質バランスの超過と、筋繊維へのサテライト細胞の付着の結果である。
- 筋肉におけるタンパク質バランスの超過は、筋合成が筋分解を上回ることによってもたらされる。
- 運動なしの普通の生活では、食後に筋肉のタンパク質のネットバランスがプラスになり、空腹時にマイナスになり、長期的には筋肉量は一定の水準を保つ。
- レジスタンストレーニングと、食後の血中アミノ酸濃度の高まりの両方が筋合成を刺激する。
- レジスタンストレーニングによる筋合成の増加は少なくとも48時間は続き、トレーニングボリュームが大きければより長く続く。
- 運動後のインスリンレベルの上昇は、筋合成を増大させるというよりも、筋分解を抑制する。
- レジスタンストレーニングは、食事によるタンパク質の合成反応を一時的に増幅させる。運動終了から時間が経つにつれ、食事(アミノ酸供給)への筋合成反応の程度は低下する。(Fig.1)
★タンパク質摂取による筋合成の反応。
- 運動後の時間帯は、血中アミノ酸濃度の高まりが筋合成を大きく増加させる。
- 若い男性がタンパク質を摂取した実験での筋合成の飽和点は、20-25g(必須アミノ酸8.5-10g)程度。(*1)
- 超過分のアミノ酸は酸化される。ただ、筋合成が最大になる前でもある程度は酸化される。
- 血中アミノ酸濃度の上昇は、運動後の筋分解を抑制する。
★タンパク質のクオリティ
- 筋合成のプロセスを推進するのは必須アミノ酸。特にロイシンは筋合成のトリガーの役割を果たす。
- ソイに対するミルクのタンパク質の筋合成優位性は、含有ロイシンの量によってもたらされる。
- ホエイは、カゼインや加水分解されたカゼインよりも大きな筋合成を示した。(*2)
- Fig.2 はロイシンが筋合成のトリガーであるという仮説の概念図。運動はロイシンへの感受性を改善する、すなわち筋合成のトリガーとなるロイシン閾値を下げる。加齢や運動不足はロイシン閾値を上げる(アナボリック抵抗性)。
- 従って、筋合成速度を最大化するには、ロイシン含有率が高く、素早く消化吸収されて血中のロイシン濃度とアミノ酸濃度を急騰させるタンパク質を、運動後に摂取するのが望ましい。
- ただ、ミルク(ホエイ+カゼイン)の摂取が良い結果を出していることは、ファストとスローのプロテインを合わせて摂取することも効果的であることを示している。
★減量時の高タンパク質摂取
- カロリー不足が体重減を決定するというのにはほとんど疑いはないが、体重減には体脂肪と除脂肪体重の減少の割合がどうかというクオリティの問題がある。
- 長期間の自由な食事では高タンパク質の食事でも体重減のクオリティには差がないという研究結果になっている。(*3)
- コントロールされた短期間の実験では、カロリー不足下での高タンパク質の食事は筋肉を維持し体脂肪を多く減らすという結果になっている。
- 運動を伴った減量では、高タンパク質と乳製品の摂取は筋肉を維持し、状況によっては筋肉量の増加をもたらすという結果。
- ただし高タンパク質の食事でも、減量スピードが速いと筋肉量を維持するのは難しい。
★筋合成を増大させるための付加栄養素
- 十分なタンパク質を摂取している場合、それに加えて炭水化物やグルタミンやアルギニン(いわゆるNO系)を摂取しても、筋合成を増加させるというエビデンスはこれまでのところ無い。(*4)
- アルギニンの筋合成への影響を調べた実験では、一時的な成長ホルモンレベルの上昇が観察されたが、他の研究でも示されているように、一時的な成長ホルモンレベルの上昇は筋合成を増加させない。
(*1)消化吸収の速いホエイプロテインパウダーやアミノ酸を摂取すればそうなる。血中アミノ酸濃度が急騰し、筋合成速度の上限に達し、数時間で筋合成レベルが元に戻る。ホールフードならもっと多くのタンパク質を摂取してもゆっくり消化吸収され、長時間筋合成が続くだろう。
(*2)この手の実験はカゼインの消化吸収が終わる前に計測を終えてるのが多いし、筋分解の抑制度合いについては計測していないので、あまりフェアな比較ではない。個人的には、ロイシン含有率が高いほうが筋肥大には優れたタンパク質だと思うけど、消化吸収速度は遅いほうが良いと思う(関連記事参照)。ミルクタンパク質の摂取がソイプロテインの摂取よりも良い結果が出ているのは、カゼインの消化吸収速度が遅いことも影響しているだろう。
(*3)食事内容は自己申告だろうからあまりあてにならない。
(*4)この論文では言及されていないがクレアチンは筋肥大(と運動パフォーマンス)に効果がある。
<感想>
プロテインパウダーやアミノ酸を使ったacuteの研究が多いので、現実へそのまま適用するのはあまり自然ではない。長期的な筋肥大を目指す場合、炭水化物を摂取してグリコーゲンを補充するのと、カロリーを十分に摂取する必要がある(関連記事参照)。それとホールフードの食事では長時間に渡って栄養が供給されるので、運動と食事のタイミングにそれほどシビアになる必要はない。ロイシン含有率については、含有率が低い食品はそのぶん多く摂取すれば良い
関連記事:
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度
AMPkについて
[ボディメイク記録] 増量終了
前回の記録 5月9日
今回の記録 7月4日
★現状記録
筋グリコーゲンレベルは高め。直前のトレ履歴は、前日に全身。
★身体計測
身長:180cm
体重:80.2kg(+2.2kg)
バスト:102cm(+1.0cm)
ウェスト:83cm(+2.0cm)
ヒップ:95cm(+1.0cm)
右上腕:31cm(+0cm)
左上腕:30cm(+0cm)
手首径:16cm
右大腿:59cm(+1.5cm)
左大腿:58cm(+1.0cm)
右カーフ:36cm(+0cm)
左カーフ:35cm(+0cm)
足首径:19cm
★主な種目のトレーニング重量
懸垂ワイド順手・・・7.5kg加重×7reps
ベンチプレス・・・70kg×7reps
ダンベルショルダープレス・・・22kg×10reps
デッドリフト・・・125kg×3reps
スクワット(スミスマシン)・・・85kg×5reps
レッグプレス・・・140kg×10reps
レッグカール・・・65kg×10reps
★トレーニング種目明細
セット数: メイン種目は5レップのフェーズでは3セット、それ以上のレップ数のフェーズでは2セット。補助種目は1-2セット。
メイン種目
- スクワット(週2回)
- デッドリフト(週2回)
- ベンチプレス(週3回)
- レッグプレス(週1回)
補助種目1(毎回やる)
- インクラインダンベルプレス
- インクラインベンチにうつ伏せになってラテラルレイズ
- インクラインベンチにうつ伏せになって上背部を使ってのダンベルローイング
- 懸垂(ワイド順手・ナローパラレル)
- ローイングマシン
補助種目2(毎回はやらない)
- レッグカール
- カーフレイズ
- プレス
- ダンベルショルダープレス
- サイドレイズ
- キューバンプレス
- 腹筋マシン
- 台に肘を置いて身体を浮かせてのレッグレイズ
- インクラインベンチに仰向けになってのアームカール
★増量プロセス
HSTを取り入れて全身を週3回トレーニングした。
カロリー摂取の振り分け目安は以下の通り。あくまで目安なので厳密には出来ていない。
1. トレーニング前の直近の食事は炭水化物多め。
2. トレーニング後24時間は500-1000kcalくらいオーバーカロリー。
3. 24時間を過ぎたら炭水化物カット。次のトレーニング日が来たら1.に戻る。
従って、1週間のサイクルはこんな感じ。
1日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
2日目:休み/維持~アンダーカロリー
3日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
4日目:休み/維持~アンダーカロリー
5日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
6日目:休み/維持~アンダーカロリー
7日目:休み/維持~アンダーカロリー
★食事内容
- タンパク質の摂取量は2-3g/体重1kg/日。動物性食品とプロテインパウダーのみ摂取量にカウント。植物性タンパク質はアミノ酸組成と人体への吸収率が低いのでカウントしていない。
- 脂質の摂取量はあまり把握していないけど、1g/体重1kg/日くらいだと思う。卵や魚や乳製品など高たんぱく質食品に付随する脂質を主に摂取した。揚げ物やドレッシングなどの付加的な脂質はあまり摂取していない。
- トータルカロリーの調整は炭水化物で行った。米、パスタ、ミューズリーが主体。甘いものも適当に。
- 健康のため、野菜、果物、豆も摂取。
★雑感
- 前回(3月~5月)の増量サイクルに比べると、体脂肪が結構ついた。トレーニング重量はあまり伸びず。
- 内転筋が太くなってきて歩く時に内股が擦れる(´・_・`) 4スタンス理論の区別だと私は踵内側重心なので、内転筋やハムストリングスが発達しやすいのだと思う。そしておそらくカーフや大腿四頭筋は発達しにくい。アイソレートして集中的に鍛えれば発達するだろうけど、脚の関節が小さくて怪我しやすいだろうからロウバースクワットをメイン種目としていきたい。
★怪我
- 低レップフェーズになると、左肘に違和感が出ることがあった。ベンチプレスを一回休みにしたら問題なくなった。
★今後の予定
- 1~2週間の維持期の後に減量を始める。
6/11/2014
レップ数によるトレーニング効果の違い
ネタ元: Lyle McDonaldの記事
Effects of different volume-equated resistance training loading strategies on muscular adaptations in well-trained men – Research Review
一般的に、低レップトレーニングは筋力を伸ばし、中レップトレーニングは筋肥大に向いていると言われる。しかしこれまでの研究の多くはトレーニングボリュームが揃っておらず、実験デザインに問題がある。例えば、3セット・3レップと3セット・10レップで実験をして、低レップは筋力向上、中レップは筋肥大をもたらすといった主張をしても、差をもたらしたのはレップ数の違いなのかトレーニングボリュームの違いなのかわからない。
この研究では、パワーリフティング型の低レップトレーニングと、ボディビル型の中レップトレーニングをトレーニングボリュームを揃えて実施し、筋肥大と筋力への影響を調べている。
★実験方法
被験者: トレーニング経験のある若い男性
期間: 8週間
人数: 17名(当初20名で途中で3名脱落)
食事: 自由+トレーニング日にプロテインサプリメント24gを支給
トレーニングボリュームは、セット×レップ×重量で表せる。これが等しくなるよう調整。
- 低レップ群: 7セット・3レップ / インターバル3分
- 中レップ群: 3セット・10レップ / インターバル90秒
トレーニング日は週3回。低レップ群は各トレーニング日に全身(胸、背中、脚)。中レップ群は、胸の日、背中の日、脚の日を分け、各部位3種目を週1回ずつトレーニング。
★結果
筋肥大については、上腕二頭筋を測定。両群とも筋肥大の程度に差は無しという結果になった。ただ、プル系の種目で上腕二頭筋をある程度使うとは言っても、上腕二頭筋にフォーカスした種目はトレーニングプロトコルに含まれておらず、なぜこのような測定方法なのかモヤモヤが残る。これについてはコメント欄に論文著者が書き込んでいて、実験では大腿四頭筋の測定も行ったが、十分なデータが得られなかったので論文には載せなかったとのこと。得られた範囲のデータでは、同じくらいの筋肥大を示していた。
筋力についてはベンチプレスとスクワットの1RMを測定。低レップ群の方が伸びが大きかった。
- 低レップ群: ベンチプレス+13%、スクワット+25.9%
- 中レップ群: ベンチプレス+9.1%、スクワット+22.2%
低レップ群の方が、肉体的・精神的に強い疲労を感じていた。
脱落者3名は、2名が関節周りの怪我、1名が個人的な理由。怪我の2名は低レップ群から出た。当実験では小さいサンプルではあるが、一般的に低レップ高重量のトレーニングは関節周りの怪我のリスクが高くなる懸念がある。
トレーニングにかかる時間に大きな差がある。7セット・3レップ/インターバル3分をこなすにはかなり時間がかかる
★個人的な感想
筋力の伸びの差をもたらした要因が発火頻度とモーターユニット連動だけなら、トレーニング時間効率と怪我のリスクを考慮して、ボディメイクでは中レップトレーニングを中心に行うのが良いと思う。ただ、8週間という短さでは筋肥大測定で有意な差が出ていない可能性があり、実際には筋肥大の程度に差が出ていてそれも筋力の伸びの差の要因になっているのなら、低レップにも優位点がある。まあ特定のレップ数のみでトレーニングを行わなければならない理由はないので、適当に混ぜてやれば良いと思う。
関連記事:
セット数によるトレーニング効果の違い
筋肥大トレーニングプログラムにおけるトレードオフ
Effects of different volume-equated resistance training loading strategies on muscular adaptations in well-trained men – Research Review
一般的に、低レップトレーニングは筋力を伸ばし、中レップトレーニングは筋肥大に向いていると言われる。しかしこれまでの研究の多くはトレーニングボリュームが揃っておらず、実験デザインに問題がある。例えば、3セット・3レップと3セット・10レップで実験をして、低レップは筋力向上、中レップは筋肥大をもたらすといった主張をしても、差をもたらしたのはレップ数の違いなのかトレーニングボリュームの違いなのかわからない。
この研究では、パワーリフティング型の低レップトレーニングと、ボディビル型の中レップトレーニングをトレーニングボリュームを揃えて実施し、筋肥大と筋力への影響を調べている。
★実験方法
被験者: トレーニング経験のある若い男性
期間: 8週間
人数: 17名(当初20名で途中で3名脱落)
食事: 自由+トレーニング日にプロテインサプリメント24gを支給
トレーニングボリュームは、セット×レップ×重量で表せる。これが等しくなるよう調整。
- 低レップ群: 7セット・3レップ / インターバル3分
- 中レップ群: 3セット・10レップ / インターバル90秒
トレーニング日は週3回。低レップ群は各トレーニング日に全身(胸、背中、脚)。中レップ群は、胸の日、背中の日、脚の日を分け、各部位3種目を週1回ずつトレーニング。
★結果
筋肥大については、上腕二頭筋を測定。両群とも筋肥大の程度に差は無しという結果になった。ただ、プル系の種目で上腕二頭筋をある程度使うとは言っても、上腕二頭筋にフォーカスした種目はトレーニングプロトコルに含まれておらず、なぜこのような測定方法なのかモヤモヤが残る。これについてはコメント欄に論文著者が書き込んでいて、実験では大腿四頭筋の測定も行ったが、十分なデータが得られなかったので論文には載せなかったとのこと。得られた範囲のデータでは、同じくらいの筋肥大を示していた。
筋力についてはベンチプレスとスクワットの1RMを測定。低レップ群の方が伸びが大きかった。
- 低レップ群: ベンチプレス+13%、スクワット+25.9%
- 中レップ群: ベンチプレス+9.1%、スクワット+22.2%
低レップ群の方が、肉体的・精神的に強い疲労を感じていた。
脱落者3名は、2名が関節周りの怪我、1名が個人的な理由。怪我の2名は低レップ群から出た。当実験では小さいサンプルではあるが、一般的に低レップ高重量のトレーニングは関節周りの怪我のリスクが高くなる懸念がある。
トレーニングにかかる時間に大きな差がある。7セット・3レップ/インターバル3分をこなすにはかなり時間がかかる
★個人的な感想
筋力の伸びの差をもたらした要因が発火頻度とモーターユニット連動だけなら、トレーニング時間効率と怪我のリスクを考慮して、ボディメイクでは中レップトレーニングを中心に行うのが良いと思う。ただ、8週間という短さでは筋肥大測定で有意な差が出ていない可能性があり、実際には筋肥大の程度に差が出ていてそれも筋力の伸びの差の要因になっているのなら、低レップにも優位点がある。まあ特定のレップ数のみでトレーニングを行わなければならない理由はないので、適当に混ぜてやれば良いと思う。
関連記事:
セット数によるトレーニング効果の違い
筋肥大トレーニングプログラムにおけるトレードオフ
6/06/2014
カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度
★基礎知識
カゼイネートとミセラーカゼインの違いについてはこの記事(pdf)を参照。ちなみに今回引用した論文は、この記事内のBoirieとReitelsederのもの。先に論文読んでからこの記事見つけたので偶然。この記事で言及されてないことは、Reitelsederの研究で使われたカゼインはカゼイネートであること。
<<カゼイネートの消化吸収速度>>
Whey and casein labeled with l-[1-13C]leucine and muscle protein synthesis: effect of resistance exercise and protein ingestion
http://ajpendo.physiology.org/content/300/1/E231.long
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康
性別: 男性
人数: 17名
年齢: 24-30歳
BMI: 22-25
LBM: 55-60kg
運動歴: 過去6ヶ月に継続的な有酸素運動とレジスタンストレーニングの経験なし
★実験方法
運動: 片足レッグエクステンション、80%1RMの重量で8レップ10セット。
栄養摂取: 運動直後に、水かホエイかカゼイン(カルシウム・カゼイネート)を摂取。プロテインの摂取量は、LBM(除脂肪体重)1kgあたり0.30g
★結果
血漿アミノ酸濃度は以下のFig.4.の通り。これはトータルの濃度で、実験で摂取したアミノ酸と筋分解で血中に放出されたアミノ酸を区別していない。有意差*はホエイとカゼインについてのもので、ベースラインに対してのものではない。全体的に、ホエイは3時間程度で、カゼイン(カルシウム・カゼイネート)は4時間程度でベースラインに戻っている。
以下のFig.6.は筋合成の速度。1時間後から3.5時間後はホエイの筋合成速度が大きく、3.5時間後から6時間後はカゼインの筋合成速度が大きい。トータルではホエイとカゼインの間では有意差なし。この実験では筋合成のみ調べていて、筋分解については不明。カゼインの方が筋分解を長時間に渡って防ぐだろうから、ネットバランスはカゼインの方が有利という結果になっていると思われる(注意点:短期の結果が長期の結果を保証するわけではない)。
<<ミセラーカゼインの消化吸収速度>>
よく見かける1997年のBoirie他の研究を引用する。カゼインの種類は論文中には書かれていないがミセラーカゼイン。他の論文でこの実験で使ったのはミセラーカゼインだと明記している。
Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9405716
この実験の優れている点。
- 同位体を含んだ標識用ロイシンを乳牛を経由(絞られた乳からプロテイン抽出)させることで実験用のプロテインに標識をつけている。
- ロイシンを主な測定対象としているので、ホエイとカゼインのトータルの摂取量を、含有ロイシン量が等しくなるように調整している。
- 血中のロイシンの測定はトータルのロイシン濃度だけではなく、実験で摂取したプロテイン由来のものと、筋分解により血中に供給されたものも測定している。
- プロテイン摂取後7時間まで測定している。
★結果
カゼインは、7時間後もトータルの血漿ロイシン濃度(左上)がベースラインを上回っている。右側はロイシン現出速度で、Exoが実験で摂取したプロテイン由来で血中へのアミノ酸供給の目安、Endoが内部由来つまりカタボリックの目安。
実験条件は、摂取量がホエイ30g、カゼイン43g(含有ロイシンの量が等しくなるようにしている)で、カゼイネートの実験より摂取量が多く、またこの実験では運動を行っていないこともあり、直接の比較は難しいけど、別の論文でミセラーカゼイン30g摂取で8時間経っても血漿ロイシン濃度はベースラインを上回っていたし、消化吸収の速度は、ホエイ>カゼイネート>ミセラーカゼイン で良いと思う。
ちなみに日本製のカゼインプロテインは、カゼイネートを使っているものが多いので、成分チェックをちゃんとしよう。私は何のしがらみもないので遠慮なく具体名を出すけど、バルクスポーツのカゼインプロテインはカゼイネートを使っているのに、たしか以前購入した時の記憶ではパッケージにはBoirieの論文のグラフとおぼしきものを載せていて、商品説明には「ミルクをろ過して製造され」「約7時間もアミノ酸を放出」といったミセラーカゼインの特徴が書かれているので、誇大広告か虚偽表示になるのではないだろうか。
★実際の栄養摂取への適用
通常はホールフードの食事をメインにして補助としてプロテインパウダーを使うだろうから、ホエイかカゼイネートかミセラーカゼインかはそれほど神経質になる必要はないとは思う。一日のトータルのタンパク質摂取量が最も大事。プロテインパウダーと糖分を含んだ飲み物といった流動食をメインにするのなら、消化吸収速度に合わせて食事間隔を調整した方が良いだろう。シビアな減量時や食事間隔が空く時にプロテインパウダーを使う場合は、カゼイネートは避けてミセラーカゼインにするのが良いと思う。
★補足
こういう短期(acute)の研究から導かれる一般的論としては、ホエイとカゼインを合わせて摂取するのがベストということになる。ただ、長期間に渡ってだとどうなるかわからない。acuteの研究だと、運動無しでも食後には筋合成が起きる。これは空腹時の筋分解の回復なのか、一時的に筋肉にアミノ酸が押し込まれる感じになっているのかよくわからないけど、運動なしでは当然長期の筋肥大にはつながらない。従って運動後の栄養摂取による筋合成のデータにも、一時的なものと長期的なものが含まれてると思う。ホエイの短時間の筋合成ブーストも一時的なものの割合が高いのなら、長期の筋肥大にはあまり意味がなくて、ホールフードやカゼインなどのスロープロテインで淡々とアミノ酸供給しとけば良いのではないかという話になる。(ホエイとカゼインの効果を比較した長期の研究は一応あるんだけど、実験デザインがいまいち)
関連記事:
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
カゼイネートとミセラーカゼインの違いについてはこの記事(pdf)を参照。ちなみに今回引用した論文は、この記事内のBoirieとReitelsederのもの。先に論文読んでからこの記事見つけたので偶然。この記事で言及されてないことは、Reitelsederの研究で使われたカゼインはカゼイネートであること。
<<カゼイネートの消化吸収速度>>
Whey and casein labeled with l-[1-13C]leucine and muscle protein synthesis: effect of resistance exercise and protein ingestion
http://ajpendo.physiology.org/content/300/1/E231.long
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康
性別: 男性
人数: 17名
年齢: 24-30歳
BMI: 22-25
LBM: 55-60kg
運動歴: 過去6ヶ月に継続的な有酸素運動とレジスタンストレーニングの経験なし
★実験方法
運動: 片足レッグエクステンション、80%1RMの重量で8レップ10セット。
栄養摂取: 運動直後に、水かホエイかカゼイン(カルシウム・カゼイネート)を摂取。プロテインの摂取量は、LBM(除脂肪体重)1kgあたり0.30g
★結果
血漿アミノ酸濃度は以下のFig.4.の通り。これはトータルの濃度で、実験で摂取したアミノ酸と筋分解で血中に放出されたアミノ酸を区別していない。有意差*はホエイとカゼインについてのもので、ベースラインに対してのものではない。全体的に、ホエイは3時間程度で、カゼイン(カルシウム・カゼイネート)は4時間程度でベースラインに戻っている。
以下のFig.6.は筋合成の速度。1時間後から3.5時間後はホエイの筋合成速度が大きく、3.5時間後から6時間後はカゼインの筋合成速度が大きい。トータルではホエイとカゼインの間では有意差なし。この実験では筋合成のみ調べていて、筋分解については不明。カゼインの方が筋分解を長時間に渡って防ぐだろうから、ネットバランスはカゼインの方が有利という結果になっていると思われる(注意点:短期の結果が長期の結果を保証するわけではない)。
<<ミセラーカゼインの消化吸収速度>>
よく見かける1997年のBoirie他の研究を引用する。カゼインの種類は論文中には書かれていないがミセラーカゼイン。他の論文でこの実験で使ったのはミセラーカゼインだと明記している。
Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9405716
この実験の優れている点。
- 同位体を含んだ標識用ロイシンを乳牛を経由(絞られた乳からプロテイン抽出)させることで実験用のプロテインに標識をつけている。
- ロイシンを主な測定対象としているので、ホエイとカゼインのトータルの摂取量を、含有ロイシン量が等しくなるように調整している。
- 血中のロイシンの測定はトータルのロイシン濃度だけではなく、実験で摂取したプロテイン由来のものと、筋分解により血中に供給されたものも測定している。
- プロテイン摂取後7時間まで測定している。
★結果
カゼインは、7時間後もトータルの血漿ロイシン濃度(左上)がベースラインを上回っている。右側はロイシン現出速度で、Exoが実験で摂取したプロテイン由来で血中へのアミノ酸供給の目安、Endoが内部由来つまりカタボリックの目安。
実験条件は、摂取量がホエイ30g、カゼイン43g(含有ロイシンの量が等しくなるようにしている)で、カゼイネートの実験より摂取量が多く、またこの実験では運動を行っていないこともあり、直接の比較は難しいけど、別の論文でミセラーカゼイン30g摂取で8時間経っても血漿ロイシン濃度はベースラインを上回っていたし、消化吸収の速度は、ホエイ>カゼイネート>ミセラーカゼイン で良いと思う。
ちなみに日本製のカゼインプロテインは、カゼイネートを使っているものが多いので、成分チェックをちゃんとしよう。私は何のしがらみもないので遠慮なく具体名を出すけど、バルクスポーツのカゼインプロテインはカゼイネートを使っているのに、たしか以前購入した時の記憶ではパッケージにはBoirieの論文のグラフとおぼしきものを載せていて、商品説明には「ミルクをろ過して製造され」「約7時間もアミノ酸を放出」といったミセラーカゼインの特徴が書かれているので、誇大広告か虚偽表示になるのではないだろうか。
★実際の栄養摂取への適用
通常はホールフードの食事をメインにして補助としてプロテインパウダーを使うだろうから、ホエイかカゼイネートかミセラーカゼインかはそれほど神経質になる必要はないとは思う。一日のトータルのタンパク質摂取量が最も大事。プロテインパウダーと糖分を含んだ飲み物といった流動食をメインにするのなら、消化吸収速度に合わせて食事間隔を調整した方が良いだろう。シビアな減量時や食事間隔が空く時にプロテインパウダーを使う場合は、カゼイネートは避けてミセラーカゼインにするのが良いと思う。
★補足
こういう短期(acute)の研究から導かれる一般的論としては、ホエイとカゼインを合わせて摂取するのがベストということになる。ただ、長期間に渡ってだとどうなるかわからない。acuteの研究だと、運動無しでも食後には筋合成が起きる。これは空腹時の筋分解の回復なのか、一時的に筋肉にアミノ酸が押し込まれる感じになっているのかよくわからないけど、運動なしでは当然長期の筋肥大にはつながらない。従って運動後の栄養摂取による筋合成のデータにも、一時的なものと長期的なものが含まれてると思う。ホエイの短時間の筋合成ブーストも一時的なものの割合が高いのなら、長期の筋肥大にはあまり意味がなくて、ホールフードやカゼインなどのスロープロテインで淡々とアミノ酸供給しとけば良いのではないかという話になる。(ホエイとカゼインの効果を比較した長期の研究は一応あるんだけど、実験デザインがいまいち)
関連記事:
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
5/30/2014
オーバーカロリー時のグルコース・フルクトース摂取の影響
1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースを10週間にわたって摂取した場合の、体組成および脂質代謝異常やインスリン感受性に関する各指標への影響を調べた研究。結論を先に書いておくと、オーバーカロリーの状態でフルクトースを大量に摂取すると、腹部内臓脂肪が増加しやすく、脂質代謝異常のリスクが高まり、耐糖能が低下し、インスリン感受性が低下する。
★基礎知識
グルコース: ブドウ糖
フルクトース: 果糖
スクロース: グルコース分子1つとフルクトース分子1つが結合したもの。いわゆる普通の砂糖。
普通の食べ物で甘いものにはだいたいフルクトースが含まれている(麦芽糖や人工甘味料を除く)。
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康(肥満で中性脂肪などの各指標は良くはないけど現状では特に病気無し)
性別: 男性・女性
人数: 32名
年齢: 45-72歳
BMI: 25-35
運動: 被験者選びの段階で週の運動時間が3.5時間以上の人は除外。実験期間中も運動指導はなし。
<期間>
3段階の実験フェーズで構成されている。
a) 研究センター内での2週間。維持カロリーの食事。マクロ栄養素の割合は、タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%。炭水化物は複合炭水化物。
b) 研究センター外での8週間。自由な食事に加えて、1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースのドリンクを摂取。糖ドリンクは3度の食事の時にそれぞれ一緒に摂取。これ以外は糖分の含まれる飲み物を飲まないよう指導。
c) 研究センター内での2週間。1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースのドリンクを摂取しつつ、トータルで維持カロリーになるように食事管理。マクロ栄養素の割合は、タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%。炭水化物は複合炭水化物30%と、グルコースもしくはフルクトース25%。
★結果
- 研究センター外の8週間の体重・体脂肪量・ウェストサイズの増加は、グルコース・フルクトース群とも同じくらい。(Table 3 参照)
- フルクトース群は、腹部の体脂肪、特に内臓脂肪の増加が多かった。グルコース群は腹部内臓脂肪はほとんど増えなかった。(Figure 1 と Table 3 を参照 / SAT=皮下脂肪 VAT=内臓脂肪)
- 男性は腹部内臓脂肪の増加が女性よりも顕著だった。(Table S3 の最下段参照)
- 血中の脂質とリポタンパクの各指標は、全般的にフルクトース群の方が大幅に増加。(Table 4 参照)
- 食後のDNL(糖質→脂質)変換はフルクトース群で大幅に増加。(Table 4 参照)
- 耐糖能は、グルコース群では変わらなかったが、フルクトース群では低下。(Table 5 参照)
- インスリン感受性は、グルコース群では男性が上昇、女性は低下、フルクトース群では男女とも低下し女性の方が低下率が大きい。(Table 5 参照)
★個人的な感想
この実験とボディメイクでの意図的な増量では、運動の有無と、実験の被験者がすでにかなりの肥満であるという点が異なる。まあ増量時は甘いものを大量に食べない方が、比較的健康的に増量できるだろう。摂取する炭水化物は、米やパスタなど複合炭水化物を主体にするのが良いだろう。デザートやおやつに適度に甘いものを食べるのはさして影響ないと思う。
ちなみにこの研究で摂取したフルクトースと同レベルのフルクトースを摂取しようとしたら、成人男性(1日の必要摂取カロリー2400kcalと想定)で毎日2.5リットルのコーラを飲む必要がある。砂糖なら300グラム。ただ、フルクトースに加えてほぼ同量のグルコースも摂取することになるのでこの実験デザインと等しくはならない。
参考:
Consuming fructose-sweetened, not glucose-sweetened, beverages increases visceral adiposity and lipids and decreases insulin sensitivity in overweight/obese humans
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19381015
関連記事:
維持カロリーでの砂糖・果糖ぶどう糖液糖の摂取の影響
砂糖と糖尿病
果糖ぶどう糖液糖と肥満
5/28/2014
維持カロリーでの砂糖・果糖ぶどう糖液糖の摂取の影響
スクロース(≒砂糖)やHFCS(≒果糖ぶどう糖液糖)の健康への影響を調べた既存の研究は、疫学調査や、マウスに異常な量を与えるといった研究が多い。今回の研究は、肥満の人が一般的に摂取している量の糖を摂取した場合の身体への影響を調べた初めての前向き研究(prospective study)とのこと。2014年発表の研究。
スクロースとHFCSの違いは、グルコース分子とフルクトース分子が結合しているか否かと、フルクトースが含まれる割合。一般的に使用されているHFCSはフルクトースの割合が55%か42%なので、フルクトース含有率はスクロースとほぼ同じ。
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康な肥満
性別: 男性・女性
人種: 白人68%、アフリカ系9%、ヒスパニック14%、アジア系6%、その他3%
人数: 65名
年齢: 25-60歳
BMI: 27-35
<期間>
10週間
<一日の食事>
摂取カロリー: 維持カロリー
総摂取カロリーに占める糖由来のカロリーの割合: 10%HFCS / 20%HFCS / 10%スクロース / 20%スクロース
食事管理方法:低脂肪乳に糖を混ぜたものを被験者に配給。トータルで維持カロリーになるよう食事指導。食事は外で各自食べる。加糖された低脂肪乳を規定量飲まなかったりすると実験から脱落。開始時86名で最終的に65名が残った。
★結果
血圧や中性脂肪レベルは全てのグループで変化無し。
体重は全体では10週間で1kg増えたが、テクニカルには維持されていると言っていい状態。自己申告ベースでトータルの摂取カロリーが増えたことが原因かも(外で各自食事しているので正確な摂取カロリーは把握できない)。ウェストサイズには有意な差は無し。
スクロース20%群でHDL低下が見られた。脂質の摂取量が減って炭水化物の摂取量が増えたことが要因かも。
まとめると、一日の摂取カロリーの10%および20%相当のスクロースと砂糖(食事でも糖を摂取しているのでトータルの糖の摂取量はもっと多い。Table 3を参照)を10週間摂取しても、総摂取カロリーが維持カロリー程度ならば、体重や肥満状況やウェストサイズや中性脂肪レベルやLDLや血圧には悪影響が現れないという結果になった。
★感想
一通り読んだけど、まともな研究だと思った。ただ、資金を出しているのがコーン精製に関わる企業の協会だ。当然、HFCSの利害関係者。うーん。他の研究からも、トータルの摂取カロリーが維持カロリーで、常識的な範囲内での摂取量なら、砂糖およびHFCSの摂取は肥満や循環器疾患などの大きなリスクにならないというのは正しいと思うが。
参考:
The Effect of Normally Consumed Amounts of Sucrose or High Fructose Corn Syrup on Lipid Profiles, Body Composition and Related Parameters in Overweight/Obese Subjects
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3967182/
関連記事:
砂糖と糖尿病
果糖ぶどう糖液糖と肥満
5/26/2014
砂糖と糖尿病
高スクロースと低スクロースの食事をした場合の、健康への影響を調べた研究。糖尿病と循環器疾患に関わる各指標に差が出るのかどうか実験している。砂糖を多く摂取すると2型糖尿病と循環器疾患の発症リスクが高まるのかを調べるのが目的。
★実験条件
<被験者>
健康状態: 健康
性別: 男性
人種: 西欧白人
人数: 13名
年齢: 33歳±3
BMI: 26.6±0.9
<期間>
6週間
<一日の食事>
摂取カロリー: 維持カロリー
マクロ栄養素:タンパク質10-15% / 脂質30-35% / 炭水化物~55%
その他: 食物繊維18g
スクロース: 低スクロース群が10%、高スクロース群が25%のカロリーをスクロースで摂取。
食事管理方法: 条件に沿う量を計り被験者に配給。食事は外で各自食べる。週二回の体重測定で連続して増加もしくは減少した場合はカロリー調整を行う
★結果
高スクロース群と低スクロース群では、インスリン感受性や血圧や空腹時血糖値や中性脂肪レベルなどに違いは出なかった。総コレステロールとLDLコレステロールは、高スクロース群の方がやや高くなった(レベル自体は正常の範囲内)。これについては、両群でトータルの脂質の摂取量は同じだが、高スクロース群は低スクロース群に比べて、飽和脂肪酸の摂取量が多くて多価不飽和脂肪酸の摂取量が少なく、これがLDLコレステロールの上昇に寄与したのではないかと論文著者は推測している。
★結論
健康な若い白人男性においては、高スクロースの食事は糖尿病と循環器疾患の大きなリスクファクターにはならないだろう。カロリーオーバーと運動不足が大きなリスクファクターだろう。
★個人的感想
2型糖尿病のなりやすさは個人差があるけど、人種によっても差があって、白人は2型糖尿病の耐性が高いという話が一般的。農業(高炭水化物食)の歴史の長さが遺伝子プールに影響してウンタラカンタラ。なんだけど、このへんの話はイデオロギー的な論争(糖質制限主義者など)や糖尿病関連ビジネスに群がる団体・研究者が入り乱れていて、調べようとしても何が科学的に正しいのかよくわからない。まあインスリン関連の体内システムの悪化が2型糖尿病の要因になるのなら、今回の研究ではインスリン関連の指標に差が出ていないので、スクロースの摂取量の増加は人種間の耐性の差に関係なく2型糖尿病の大きなリスクファクターにはならないということになる。リスクがゼロと断言できないのは、疫学調査では砂糖の摂取量と糖尿病の発症が相関する傾向がある、今回の研究は期間が6週間程度で長期間の影響がわからない、といった理由。
カロリーオーバーと運動不足を避けるのが最も重要だというのは間違いなさそうなので、それを守っていれば炭水化物の質にそれほど神経質にならなくてもいいかと個人的には思ってる。もちろん砂糖の摂り過ぎは、カロリーや微量栄養素の観点から健康には良くないだろう。砂糖に限らず精製度の高い食品の問題点は、GI値がどうのではなくて、カロリーオーバーしやすく微量栄養素が乏しいこと。
参考:
Effect of Eucaloric High- and Low-Sucrose Diets With Identical Macronutrient Profile on Insulin Resistance and Vascular Risk A Randomized Controlled Trial
http://diabetes.diabetesjournals.org/content/55/12/3566.long
5/23/2014
運動とミルクの摂取の効果
運動とミルクの摂取に関する研究はあまり多くは無いが、これまでの研究によるとミルクはレジスタンストレーニング後の筋合成にも、持久運動後の回復にも向いているドリンクだと思われる。
★低脂肪乳の成分の特徴(低脂肪乳を使った研究が多いので)
・タンパク質: カゼインとホエイで、比率は4:1~3:1。カゼインは消化吸収が遅く、長時間に渡って身体にアミノ酸を供給できる。ホエイは消化吸収が速く、BCAA含有率が約25%と高い。
・炭水化物: 乳糖。乳糖不耐症の人の摂取には向いていない。
・電解質: 豊富に含まれる。運動で失われた電解質の補給に有効。
★レジスタンストレーニング
レジスタンストレーニング後にミルクを摂取した場合の効果についての研究をいくつか。
・マクロ栄養素のバランスを等しくした無脂肪乳とソイプロテインドリンクをレジスタンストレーニング後に摂取し、その後数時間の筋合成を調べた研究では、無脂肪乳の方がより多く筋合成されたという結果に。
・期間10週間の研究。低脂肪チョコレートミルクと、市販のスポーツドリンク(カーボのみ含有)。それぞれ等カロリーをレジスタンストレーニング後に摂取。10週間後の筋力や体組成は同じくらいだった。ただ、低脂肪チョコレートミルクの方が除脂肪軟部組織(腱、靭帯、筋膜、皮膚、血管、横紋筋など)が増加した。
・期間12週間の研究。マクロ栄養素のバランスを等しくした無脂肪乳とソイプロテインドリンク。12週間後の測定では、無脂肪乳グループの方が筋量増加、脂肪減少という結果になった。脂肪減少はカルシウムの摂取が関係しているのではないかと推測される。
★持久運動
・持久運動における栄養摂取のタイミングとその目的
- 運動前: 運動に必要なエネルギーを補充する。ただし運動の邪魔にはならないように
- 運動中: エネルギーを補充し、体内のエネルギー枯渇を遅らせる。
- 運動後: 回復及び運動への身体の適応反応をサポート(ミトコンドリア増加などの持久能力の向上にも材料が必要)
・ミルクはやや腹が膨れる感覚があるが、運動能力には影響は無さそう。
・運動中に摂取したケース。運動持続が限界に達するまでの時間は、スポーツドリンク的な飲料(電解質+カーボ)、低脂肪乳、水では、この順にタイムが伸びる傾向はあったが統計的に有意な差は出なかった。
・運動後の回復は主に、グリコーゲン再合成と身体の水分回復。
- グリコーゲン再合成を直接調べた研究は無いが、激しい運動→休憩&ドリンク摂取→再び激しい運動をしてそのパフォーマンスを測定した研究では、チョコレートミルクは市販のスポーツドリンクと同程度の効果を発揮した。回復効果は高いと思われる。(この研究ではカーボドリンクの効果が劣ってたから、電解質と水分回復の影響かもしれない)
- 暑い環境で運動して脱水気味になった後に各種ドリンクを摂取した研究では、低脂肪乳の方がスポーツドリンクよりも身体の水分回復が早かった。電解質が多く含まれるのと、他のドリンクに比べて吸収が遅めなのが要因と思われる。
★結論
ミルクは運動後に飲むのに適したドリンクだと言えるだろう。ビタミンなどの微量栄養素の面ではスポーツドリンクよりも優れている。コンビニでも安く買える。カロリーが気になる場合は低脂肪乳を選択。最近ではスポーツ用と称した牛乳も売られている(明治のスポーツミルクという商品)。
ここまで書いておいてなんだけど・・・個人的にはミルクはほとんど飲まない。匂いが苦手なのと、レジスタンストレーニング後の栄養摂取目的だと量が多くてお腹がちゃぽちゃぽするので。ホエイプロテインパウダーをドロドロに溶いたものをカッテージチーズ(ほぼカゼイン)にかけたものをよく摂取する。
参考:
Milk: the new sports drink? A Review
http://www.jissn.com/content/5/1/15
関連記事: タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
http://changebodycomposition.blogspot.jp/2014/05/blog-post_15.html
5/15/2014
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
タンパク質(プロテイン)の種類によって消化吸収の速度に差が出るというのは広く知られるようになってきていて、サプリメントメーカーもホエイとカゼインを混ぜたファストとスローの両面アプローチを謳う製品を出したりしている。(余談だけど、日本のメーカーのカゼインプロテインパウダーは多くがカゼイネートを使っている。カゼインプロテインの消化吸収の遅さを示す研究で使われるのはミセラーカゼイン。カゼイネートの消化吸収速度はどのくらいだろう? あとで調べた→カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度)
この研究は、タンパク質の消化吸収速度の違いによって、体内でのタンパク質の利用のされかたがどう変わってくるかを調べている。
Hydrolyzed dietary casein as compared with the intact protein reduces postprandial peripheral, but not whole-body, uptake of nitrogen in humans
http://ajcn.nutrition.org/content/90/4/1011.full
比較したタンパク質は以下の2種類。
・IC(intact casein): 未加工カゼインプロテイン(ミセラーカゼイン)
・HC(hydrolyzed casein): 加水分解されたカゼインプロテイン。消化吸収が速い。
摂取の仕方は、カゼインプロテイン(IC/HC)+カーボ(マルトデキストリンとスクロース)+大豆油
上の一つ目の画像は摂取後の血清アミノ酸濃度の変化。加水分解されたカゼインプロテインは消化吸収が速いのでアミノ酸濃度がすぐ上がってすぐ下がる。
それで、今回の目玉が2つめの画像のデータ(TABLE 3)。
- Splanchnic retention : 内臓部分に回されるタンパク質量。
- Peripheral uptake : 周縁部分・・・つまり主に骨格筋に摂取されるタンパク質量。
未加工カゼインプロテインのほうが Peripheral uptake が多い。従って、骨格筋にタンパク質を送り込みたいなら、消化吸収が遅いタンパク質を摂取した方が有利。
この研究は食事直後の身体変化を調べたもの。それではレジスタンストレーニングをしながら長期間に渡って違う種類のタンパク質を摂取した場合は筋肥大に差が出るのだろうか。
これについては、ミルク(ホエイ2割+カゼイン8割)とソイプロテイン(消化吸収が速い)の摂取を比較した研究があって、ミルクの方がより筋肥大したという結果になっている。
Consumption of fat-free fluid milk after resistance exercise promotes greater lean mass accretion than does consumption of soy or carbohydrate in young, novice, male weightlifters1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/86/2/373.long
細かいことを言うと、ミルクとソイプロテインではミルクの方がアミノ酸組成が骨格筋の合成に有利な気がするので、吸収速度のみがファクターになっていないと思うけど、タンパク質摂取量とカロリーは等しくしてあるし、筋肥大に結構差が出てるから吸収速度の影響が大きいのだろう。
レジスタンストレーニング後のミルクとソイの摂取による筋合成反応の違いの研究(acute研究)もあって、アミノ酸供給が続いていた方が筋合成に有利だという結果になっている。
Consumption of fluid skim milk promotes greater muscle protein accretion after resistance exercise than does consumption of an isonitrogenous and isoenergetic soy-protein beverage1,2,3
http://ajcn.nutrition.org/content/85/4/1031.full
以上よりタンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響をまとめると、
・摂取量が同じなら、消化吸収速度が遅い方が骨格筋により多くのアミノ酸を届けられる。
・摂取量が同じなら、消化吸収速度が遅い方がより長い時間アミノ酸を身体に供給でき、筋合成を長く続けることができる。
消化吸収が速いタンパク質(ホエイやソイプロテインパウダー)のみを摂取する場合は、3時間おきくらいに多めに摂取するといった方法にすれば、レジスタンストレーニングによる筋肥大効果を十分に享受することが出来るだろう。食事回数を増やしたくない人は、固形物の食事かカゼインプロテインパウダーを摂取すると良い。
あと、骨格筋へのデリバリー効率を考えると、タンパク質単価(g/円)だけでは高たんぱく質食品やプロテインパウダーのコスパは決まらないなあと思った。
関連記事: タンパク質について
5/09/2014
[ボディメイク記録] 増量中間記録
前回の記録 3月14日
今回の記録 5月9日
★現状記録
筋グリコーゲンレベルは高め。直前のトレ履歴は、前日に全身。
★身体計測
身長:180cm
体重:78.0kg(+2.5kg)
バスト:101cm(+1.0cm)
ウェスト:81cm(+2.0cm)
ヒップ:94cm(+2.0cm)
右上腕:31cm(+1.0cm)
左上腕:30cm(+1.0cm)
手首径:16cm
右大腿:57.5cm(+1.5cm)
左大腿:56.5cm(+1.5cm)
右カーフ:36cm(+1.0cm)
左カーフ:35cm(+1.0cm)
足首径:19cm
★主な種目のトレーニング重量
懸垂ワイド順手・・・7.5kg加重×7reps
ベンチプレス・・・70kg×6reps
ダンベルショルダープレス・・・22kg×13reps
デッドリフト・・・120kg×3reps
スクワット(スミスマシン)・・・80kg×6reps
レッグプレス・・・140kg×9reps
レッグカール・・・65kg×10reps
★トレーニング種目明細
セット数: メイン種目は5レップのフェーズでは3セット、それ以上のレップ数のフェーズでは2セット。補助種目は1-2セット。
メイン種目
- スクワット
- デッドリフト
- ベンチプレス
- レッグプレス
補助種目1(毎回やる)
- インクラインダンベルプレス
- インクラインベンチにうつ伏せになってラテラルレイズ
- インクラインベンチにうつ伏せになって上背部を使ってのダンベルローイング
- 懸垂(ワイド順手・ナローパラレル)
- ローイングマシン
補助種目2(毎回はやらない)
- レッグカール
- カーフレイズ
- プレス
- ダンベルショルダープレス
- サイドレイズ
- キューバンプレス
- 腹筋マシン(これ)
- 台に肘を置いて身体を浮かせてのレッグレイズ(こんな感じの)
- インクラインベンチに仰向けになってのアームカール。
★増量プロセス
最初は上半身と下半身でトレーニング日を分けていたけど、3週目くらいからHSTを取り入れて全身を週3回トレーニングするようにした。
カロリー摂取の振り分け目安は以下の通り。あくまで目安なので厳密には出来ていない。
1. トレーニング前の直近の食事は炭水化物多め。
2. トレーニング後24時間は500-1000kcalくらいオーバーカロリー。
3. 24時間を過ぎたら炭水化物カット。次のトレーニング日が来たら1.に戻る。
従って、1週間のサイクルはこんな感じ。
1日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
2日目:休み/維持~アンダーカロリー
3日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
4日目:休み/維持~アンダーカロリー
5日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
6日目:休み/維持~アンダーカロリー
7日目:休み/維持~アンダーカロリー
★食事内容
- タンパク質の摂取量は2-3g/体重1kg/日。動物性食品とプロテインパウダーのみ摂取量にカウント。植物性タンパク質はアミノ酸組成と人体への吸収率が低いのでカウントしていない。
- 脂質の摂取量はあまり把握していないけど、1g/体重1kg/日くらいだと思う。卵や魚や乳製品など高たんぱく質食品に付随する脂質を主に摂取した。揚げ物やドレッシングなどの付加的な脂質はあまり摂取していない。
- トータルカロリーの調整は炭水化物で行った。米、パスタ、ミューズリーが主体。甘いものも適当に。
- 健康のため、野菜、果物、豆も摂取。
★雑感
- 全体的にトレーニング重量が伸びているので順調に増量できていると思う。
- 写真だと見た目はあまり変わった感じがしない。各部位のサイズは太くなっている。
- スクワットを始めた。ラックが無いのでスミスマシンでやっている。
- スクワットメインの日は週に2回で、そのうち1回はデッドリフト2セットをやる。スクワットやらない日はデッドリフト4セットくらいやって、レッグプレスをやる。スクワットがスミスマシンなので、フリーウェイトであるデッドリフトのトレーニングを増やしたいと思ってこの配分にした。下背部の疲労マネジメントも考慮した。
- 下背部温存のため、ベントローは止めてマシンでのローイングにした。
- 腹筋はスクワットとデッドリフトで結構使っているので、腹筋単独のトレーニングは週に1セット程度。寝転がっての腹筋運動(シットアップ・トランクカールなど)は私はすぐ腰が痛くなるのでやらない。体幹の筋肉は背骨を安定させるためのものであって、背骨をグニグニ動かすためのものではないので、アイソメトリック以外の腹筋運動はあまりやらない方が良いと思う(参考:Rippetoeのコラム)。
★怪我
- デッドリフトで腰を痛めたけど10日間くらいで再開出来たのであまり影響はなかった。それ以降はデッドリフトは限界2歩手前くらいのレップで止めるようにした。特に腰に負担を感じることなく背中ハムケツの筋肉に負荷をかけられている。
- 左肘に違和感が出るようになった。アームカールを省けるかなと思って上腕二頭筋もフルに動員する動作で逆手懸垂をやるようにしたのが原因だと思う。とりあえず逆手懸垂は止めた。
- ベンチプレスでも肘に負担がかかっている感じがするので気をつける。肩にも違和感が出る時があるし、ベンチプレスは低レップは避け、セット数を抑えた方が良いかもしれない。私の身体は骨が細長くて関節が小さいので、怪我しやすいと思う。
★今後の予定
HSTが1サイクル終わったので、10日間くらい完全休養する。その後、多分もう1サイクルやる。トータルのカロリーは少し減らすかも。
5/03/2014
筋肥大トレーニングプログラムにおけるトレードオフ
筋肥大を主目的とした3種類のトレーニングプログラムを比較する。
1. HST
2. Doggcrap
3. Lyle McDonald のアプローチ
各トレーニングプログラムは、以下の3つの要素のうち1つの要素にフォーカスし、残り2つはある程度妥協せざるを得ない。
- 頻度(frequency)
- 強度(intensity)
- ボリューム(volume)
各トレーニングプログラムの内容を簡単に見ていく。
1. HST
主に遺伝子の発現による筋肥大を狙う。全身を週に3回という高い頻度でトレーニングを行うが、最大強度で行うのは2週間に1回で、トレーニングボリュームも少ない。
2. Doggcrapp
強度にフォーカスし、漸進的な過負荷による筋肥大を狙う。非常に高い強度のトレーニングを行うが、トレーニング頻度は5日に1回程度で、レストポーズを用いてボリュームも少なくする。多くの人々はこのトレーニング方法では燃え尽きてしまうが、やり遂げた人は非常に良い結果が得られる。
3. Lyle McDonald のアプローチ
各部位を週に2回トレーニング。強度はDoggcrappに比べてやや低いが、HSTよりは高い。各セットを限界の1レップ手前で止めることを推奨。トータルのボリュームを多くする。
どのタイプのトレーニングプログラムにするかは、個人の好みやトレーニング環境や疲労回復速度で決めれば良い。
ボリュームと強度による疲労度合いと回復にかかる時間(コスト)と、得られる筋肥大の量(パフォーマンス)を鑑みて、コスパの良いパラメータ配分にすれば長期的に良い結果が得られる・・・ということだと思う。例えば回復に2週間かかるような激しいトレーニングは2週間分の筋肥大を得られるわけではないのでコスパが悪いし、逆に毎日同じ部位をトレーニングできる強度のトレーニングはコストは低いけどパフォーマンスも低い。
参考:A Quick Look at Some Popular Hypertrophy Programs
http://www.bodyrecomposition.com/muscle-gain/a-look-at-some-popular-hypertrophy-programs.html
関連記事:HST(筋肥大に特化したトレーニング)について
4/26/2014
果糖ぶどう糖液糖と肥満
High-fructose corn syrup causes characteristics of obesity in rats: increased body weight, body fat and triglyceride levels
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3522469/
異性化糖(High-fructose corn syrup)が肥満の元凶という主張の根拠としてよく引用されるプリンストン大の論文。この実験で使われた異性化糖は果糖含有率55%なので、異性化糖の分類から以下、High-fructose corn syrupを果糖ぶどう糖液糖と訳す。果糖ぶどう糖液糖という単語の方が馴染み深いし。
そもそもラットを対象とした研究を人間の肥満問題にそのまま当てはめるのはナンセンスだと私は思っているのだけど、この研究では等カロリーを摂取しているはずなのに何故か体重に違いが出ているという結果が出ていて、興味深いので取り上げてみます。
実験で使われた餌のパターンは、以下の3種類。
・スクロース(砂糖)溶液 + 普通の餌
・果糖ぶどう糖液糖(果糖含有率55%)溶液 + 普通の餌
・普通の餌のみ(対照群)
それと、糖溶液・餌へのアクセス時間が12時間・24時間、実験期間が8週間・6-7ヶ月。詳しくは画像のTable 1に。
まず、ダイエットや栄養や健康についての問題は、科学界にイデオロギー的な対立があって、バイアスのかかった研究も多い。この研究はおそらく、果糖ぶどう糖液糖を肥満の元凶だと思っている陣営によって行われている。実験の構成や論文の書き方もそう主張できるようにバイアスがかかっているように見える。
結果が正しく測定されたと仮定して、データを見比べてみる。
Experiment 1は8週間の実験。Experiment 2は6-7ヶ月の実験。
・1日12時間の果糖ぶどう糖液糖溶液へのアクセスのグループの最終的な体重が重い。これを果糖ぶどう糖液糖が肥満の要因という主張の根拠としている。糖溶液+餌の総摂取カロリーは、スクロースグループでも、果糖ぶどう糖液糖グループ(12時間・24時間両方)でも同じだったとしている。対照群の摂取カロリーについては言及なし。以下、私のツッコミ。
→ 24時間果糖ぶどう糖液糖溶液グループは、12時間スクロースグループと体重に差がない。12時間果糖ぶどう糖液糖アクセスだと肥満になって、24時間果糖ぶどう糖液糖アクセスだと肥満にならないという結果。12時間でも24時間でも、糖溶液からの摂取カロリーと、餌を含めた総摂取カロリーは同じ。どう説明すれば良いのか? (論文中では説明なし)
→ 摂取カロリーが等しいのに体重に差が出たということは、消費カロリーに差があると考えられる。果糖ぶどう糖液糖溶液へのアクセス可能な時間によって、消費カロリーが変化するのだろうか。何故?(論文中では説明なし)
→ Experiment 2 だと、24時間果糖ぶどう糖液糖グループと、12時間果糖ぶどう糖液糖グループは最終的な体重に有意差がないとしている。Experiment 2 については摂取カロリーに差があったかどうかは書かれていない。摂取カロリーが同じなら、Experiment 1の結果と矛盾する。(論文中では説明なし)
→ Experiment 1では、糖溶液由来の摂取カロリーは、スクロースグループの方が果糖ぶどう糖液糖グループよりも1.5倍くらい多くなった。従って、フルクトースの摂取量は、スクロースグループの方が多い。スクロース(50%がフルクトース)と果糖ぶどう糖液糖(ここでは55%がフルクトース)の違いは、フルクトース含有率と、フルクトース分子とグルコース分子が結合しているか否か。この実験の結果をそのまま解釈すると、フルクトースの摂取量がラットの肥満に関係するのではなくて、フルクトース分子とグルコース分子の結合状態がラットの肥満に関係するという結果になる。
→ Experiment 2では、12時間果糖ぶどう糖液糖+12時間餌グループと、12時間スクロース+12時間餌グループでは体重に差がない。Experiment 1との違いは、餌のアクセス時間が24時間ではなく12時間になっていること。12時間果糖ぶどう糖液糖アクセスの場合、24時間餌にアクセスできると総摂取カロリーが同じでも肥満になり、12時間餌にアクセスできると摂取カロリーは不明だが肥満にならないという結果に。
以上より、実験結果から論理的に引き出される因果関係は、「フルクトース分子とグルコース分子が結合していない状態の糖溶液に12時間アクセス可能、且つ餌に24時間アクセス可能な状態だと、24時間アクセス可能な場合及びスクロース溶液に12時間アクセス可能な場合と摂取カロリーは変わらないが、このケースのみ消費カロリーの低下が引き起こされ、ラットは肥満する」ということになる。
こんな特殊なメカニズムがラットに備わっている可能性と、実験に何らかの不備があった可能性、もしくは単なる偶然である可能性、どの可能性が高いだろうか。
ちなみに Alan aragon や Lyle McDonald も、フルクトース・果糖ぶどう糖液糖悪玉論に対して否定的。フルクトース・果糖ぶどう糖液糖悪玉論に対する、まともな人々の回答を書いておくと。
・一般的に使われている果糖ぶどう糖液糖は、フルクトースとグルコースの含有率が砂糖とほとんど変わらない。
・異常な量を摂取しなければ、フルクトース自体に毒性があるわけではない。(というか、どんなものでも異常な量を摂取すれば毒性はあるだろう)
・果糖ぶどう糖液糖に、カロリー収支を超えて肥満を引き起こす効果があるわけではない。
・肥満防止には、カロリーオーバーにならないよう気をつけること。カロリーがあるものならどんなものでも食べ過ぎれば太る。
・果糖ぶどう糖液糖の積極的な摂取を推奨するわけではない。健康維持に有用な微量栄養素の摂取のため、砂糖も果糖ぶどう糖液糖も摂取量は低く抑えて、精製度の低い食べ物をバランスよく摂取すること。
4/23/2014
[書籍] Starting Strength: Basic Barbell Training
著者: Mark Rippetoe
バーベルトレーニングを直接習う環境になく、独学で学びたい人にお薦めの本。1種目あたりのページ数が多く、とても詳しく説明されている。英語に抵抗がないなら、非常にお薦め。和訳は出ていないと思う。私は紙の本を米アマゾンから購入したけど、キンドル版はかなり安く手に入る。
内容は以下のとおり
★スクワット 67ページ
関連記事:スクワットの基本ポイント
★プレス 25ページ
関連記事: プレスの基本ポイント
★デッドリフト 49ページ
関連記事: デッドリフトの基本ポイント
★ベンチプレス 33ページ
関連記事: ベンチプレスの基本ポイント
★パワークリーン 55ページ
関連記事: パワークリーンの基本ポイント
★補助種目
- パーシャルのデッドリフト/スクワット/プレス/ベンチプレス
- オリンピックスクワット、フロントスクワット
- クロースグリップ/ワイドグリップでのベンチプレス、インクラインベンチプレス
- ルーマニアンデッドリフト、スティッフレッグドデッドリフト
- グッドモーニング
- プッシュプレス
- 順手/逆手懸垂
- ディップス
- バーベルロウ(地面からバーベルをローイングする)
- バックエクステンション、グルートハムレイズ
- バーベルカール
- トライセップスエクステンション
★トレーニングプログラムの組み方
- 別の著書にトレーニングプログラムの組み方は詳しく書いてあるとのこと。ここでは簡単に例を紹介。
- 具体的には、5レップ3セット程度を推奨。週三回のトレーニング日、スクワットは毎回、プレスとベンチプレスを交互、デッドリフトとパワークリーンを交互など(下背部の疲労管理のためデッドリフトは1セットにする)。例えばSL5X5もこの系統なので、ネットで調べてみたい人はこのサイトなどを参考に。
4/17/2014
パワークリーンの基本ポイント
★予備知識
- 短い時間に大きな力を発揮する(つまりパワーを発揮する)能力を鍛える。
- デッドリフトの50-75%程度の重量でトレーニングする。
- 前腕が長いなどの理由でラックポジションが難しい場合はパワースナッチを行う。
★習得順序
1. ハングポジション
- まずはプレートを付けずにバーのみで行う。
- 足幅はデッドリフトと同じくらい。垂直跳びをする時と同じくらい。ジャンプをしてバーを肩に乗っけた(ラックした)後は、足幅が少し開いてスクワットくらいの足幅になる。
- 手幅はデッドリフトよりも両サイドで2-3インチ広めに握る。
- まずは普通の順手で握る(あとでフックグリップを習う)
- 目線はデッドリフトの時と同じく12-15フィート先の地面を見る。パワークリーンの動作中はこの地点を見続ける。
- 腕をやや回内させて、肘を伸ばして握る。腕や肩でバーを引っ張りあげないよう、肘を伸ばすのは特に意識すること。バーをぶら下げたこの状態がハングポジション。
2. ラックポジション
- とりあえず持ち上げ方は何でもいいので、バーを持ち上げて肘を前に出してバーを前部三角筋の上に乗せる。肘を高く上げ、上腕は水平近くになるようにする。前腕は上腕の真上ではなくて外側の隣にくる。これがラックポジション。
- ラックポジションでは指を引っ掛け、手でバーを支えない。バーは前部三角筋に乗せて支える。柔軟性の問題で苦しかったら、小指や薬指はバーから外れても良い。
- バーを下ろす時は、バーをなるべく胸に近い軌道で重力に任せて落とし、ハングポジションでキャッチする。リバースカールの動きで下ろすわけではない。
3. ジャンピングポジション
- 膝関節と股関節を曲げる。尻を後ろに突き出す感じで行う。バーが腿の中間あたりにくるまで曲げる。バーは腿に触れた状態、腕は垂直、肘は真っ直ぐ。これがジャンピングポジション。
- ジャンピングポジションから肘を伸ばしたままジャンプしてみる。何度かジャンプ。肘を伸ばしたまま全力でジャンプ。
4. クリーンの練習
- 肘を伸ばしたままのジャンプに十分に慣れたら、ラックポジションへの移行をやってみる。全力でジャンプし、膝関節と股関節を伸ばしきり、ジャンプの頂点に達したら、バーを軸に一気に腕を回転させ肘を前に突き出しラックポジションにする。どの過程でもバーを腕力で動かさないこと。
- ジャンプのあと、膝関節と股関節を少し曲げてバーの下に潜り込んでドン!と足を踏みつけると同時に肘を突き出すと、動作をクイックに行える。
- バーは上げるときも下げるときも、なるべく垂直で、自分の身体に近い軌道を通るようにする。決してアップライトローの動作で持ち上げない。バーを上げるのは、膝関節と股関節の伸展による力がメインである。
- 何度かこの動作を行い、動きを習得する。次に、デッドリフトのネガティブの動作と同じように、尻を後ろに突き出し、バーが脚から離れないようにしながらバーを膝のすぐ下まで下ろす。このポジションからゆっくりとバーを脚から離さないように引き上げていき、ジャンピングポジションに達したら、動作を止めず一気にジャンプしクリーンを行う。
- 膝下からの動作に慣れてきたら、バーを脛の中間あたり(プレートが付いたバーをデッドリフトする時の位置)まで下げて、また同じようにバーをゆっくりと引き上げジャンピングポジションに来たらクリーンを行う練習をする。
- バーが床から膝上までの間の動作はデッドリフトと同じ。慣れてくるにつれて加速の要素が入ってくるが、最初はゆっくりデッドリフトするイメージで。
- 次にバーにプレートを付ける。バーのみと同様の順序で練習していく。ジャンピングポジションからのクリーンを練習、膝下までバーを下げてからのクリーンを練習、そして地面にプレートを付けてそこからデッドリフトの動作で膝上まで上げてからクリーンを行う。これでパワークリーンの完成。地面に置いた時のバーベルの高さは、できれば20kgプレートを付けた時と同じ高さになるようにする。バンパープレート等便利なものがない場合は適当に工夫。
5. フックグリップ
- 動作に慣れてきたらフックグリップを覚える。持ち方は、親指の爪の上に中指を乗せて握る。通常は柔軟性の制約から、ラックポジションの時にはフックグリップを解く。
6. 動作のスピードアップ
- 最初のうちは、膝上までのデッドリフトフェーズではゆっくり正確な動作を意識する。ジャンピングポジションに達してからは一気にジャンプしてラックポジションでキャッチ。これに慣れてきたら、デッドリフトフェーズでバーの高さが上がっていくにつれて加速するようにする。
7. その他の細かいポイント
- ジャンプするときのシュラッグは反射的に起こるので意識しなくても良い。重量がかなり重くなったら意識的にシュラッグする。
- ジャンピングポジションに入る時に、伸びてた膝関節が再び少し曲がってそれからジャンプするが、脚からバーを離さないようにしていると自動的にこの動作になるので意識しなくても大丈夫。あまり意識しすぎると、動作がいったん止まってしまって、膝上までの加速がその後のジャンプに使えなくなってしまう。
★パワースナッチ
- パワークリーンよりも軽い重量で行う。
- 手幅はかなり広く握る。
- パワークリーンと同様に、腕で持ち上げず、バーはなるべく垂直に上下する。
- 動作中はずっとフックグリップ。
- ラックポジションは頭上にバーを挙上した状態。手のひらを上に突き出し、肘を伸ばしきり、僧帽筋を収縮させる。プレスのトップポジションを広い手幅で行う感じ。だがバーの上げ下げはプレス動作では行わないこと。パワークリーンと同様に膝関節と股関節の伸展でバーを挙げる。
- ジャンピングポジションでのバーの位置は、パワークリーンの時よりも高くなる。手幅が広い分、垂直方向の腕の長さが短くなるので。
- ジャンプしたら、バーの上方向への移動に伴い肘を曲げ、バーが頭上に来たら一気にラックポジションに。パワークリーンと同様に、膝関節と股関節を少し曲げバーの下に潜り込む。
- パワークリーンと同様の練習手順で動作を習得していく。
- スタートポジション(プレートが地面についた状態)は、垂直方向の腕の長さが短くなるため、上体が水平に近くなる。
参考: Starting Strength Basic Barbel Training 3rd Edition / Mark Rippetoe
(本の説明では図と写真が多く入っていてわかりやすいです。他にはスクワットとデッドリフトとベンチプレスとプレスの解説があります。)
参考動画:
Mark Rippetoe: Coaching the Powerclean
https://www.youtube.com/watch?v=6tXcS0Xp1aE
Mark Rippetoe Teaching Power Snatch from Starting Strength
https://www.youtube.com/watch?v=O327jxFqzQM
- 短い時間に大きな力を発揮する(つまりパワーを発揮する)能力を鍛える。
- デッドリフトの50-75%程度の重量でトレーニングする。
- 前腕が長いなどの理由でラックポジションが難しい場合はパワースナッチを行う。
★習得順序
1. ハングポジション
- まずはプレートを付けずにバーのみで行う。
- 足幅はデッドリフトと同じくらい。垂直跳びをする時と同じくらい。ジャンプをしてバーを肩に乗っけた(ラックした)後は、足幅が少し開いてスクワットくらいの足幅になる。
- 手幅はデッドリフトよりも両サイドで2-3インチ広めに握る。
- まずは普通の順手で握る(あとでフックグリップを習う)
- 目線はデッドリフトの時と同じく12-15フィート先の地面を見る。パワークリーンの動作中はこの地点を見続ける。
- 腕をやや回内させて、肘を伸ばして握る。腕や肩でバーを引っ張りあげないよう、肘を伸ばすのは特に意識すること。バーをぶら下げたこの状態がハングポジション。
2. ラックポジション
- とりあえず持ち上げ方は何でもいいので、バーを持ち上げて肘を前に出してバーを前部三角筋の上に乗せる。肘を高く上げ、上腕は水平近くになるようにする。前腕は上腕の真上ではなくて外側の隣にくる。これがラックポジション。
- ラックポジションでは指を引っ掛け、手でバーを支えない。バーは前部三角筋に乗せて支える。柔軟性の問題で苦しかったら、小指や薬指はバーから外れても良い。
- バーを下ろす時は、バーをなるべく胸に近い軌道で重力に任せて落とし、ハングポジションでキャッチする。リバースカールの動きで下ろすわけではない。
3. ジャンピングポジション
- 膝関節と股関節を曲げる。尻を後ろに突き出す感じで行う。バーが腿の中間あたりにくるまで曲げる。バーは腿に触れた状態、腕は垂直、肘は真っ直ぐ。これがジャンピングポジション。
- ジャンピングポジションから肘を伸ばしたままジャンプしてみる。何度かジャンプ。肘を伸ばしたまま全力でジャンプ。
4. クリーンの練習
- 肘を伸ばしたままのジャンプに十分に慣れたら、ラックポジションへの移行をやってみる。全力でジャンプし、膝関節と股関節を伸ばしきり、ジャンプの頂点に達したら、バーを軸に一気に腕を回転させ肘を前に突き出しラックポジションにする。どの過程でもバーを腕力で動かさないこと。
- ジャンプのあと、膝関節と股関節を少し曲げてバーの下に潜り込んでドン!と足を踏みつけると同時に肘を突き出すと、動作をクイックに行える。
- バーは上げるときも下げるときも、なるべく垂直で、自分の身体に近い軌道を通るようにする。決してアップライトローの動作で持ち上げない。バーを上げるのは、膝関節と股関節の伸展による力がメインである。
- 何度かこの動作を行い、動きを習得する。次に、デッドリフトのネガティブの動作と同じように、尻を後ろに突き出し、バーが脚から離れないようにしながらバーを膝のすぐ下まで下ろす。このポジションからゆっくりとバーを脚から離さないように引き上げていき、ジャンピングポジションに達したら、動作を止めず一気にジャンプしクリーンを行う。
- 膝下からの動作に慣れてきたら、バーを脛の中間あたり(プレートが付いたバーをデッドリフトする時の位置)まで下げて、また同じようにバーをゆっくりと引き上げジャンピングポジションに来たらクリーンを行う練習をする。
- バーが床から膝上までの間の動作はデッドリフトと同じ。慣れてくるにつれて加速の要素が入ってくるが、最初はゆっくりデッドリフトするイメージで。
- 次にバーにプレートを付ける。バーのみと同様の順序で練習していく。ジャンピングポジションからのクリーンを練習、膝下までバーを下げてからのクリーンを練習、そして地面にプレートを付けてそこからデッドリフトの動作で膝上まで上げてからクリーンを行う。これでパワークリーンの完成。地面に置いた時のバーベルの高さは、できれば20kgプレートを付けた時と同じ高さになるようにする。バンパープレート等便利なものがない場合は適当に工夫。
5. フックグリップ
- 動作に慣れてきたらフックグリップを覚える。持ち方は、親指の爪の上に中指を乗せて握る。通常は柔軟性の制約から、ラックポジションの時にはフックグリップを解く。
6. 動作のスピードアップ
- 最初のうちは、膝上までのデッドリフトフェーズではゆっくり正確な動作を意識する。ジャンピングポジションに達してからは一気にジャンプしてラックポジションでキャッチ。これに慣れてきたら、デッドリフトフェーズでバーの高さが上がっていくにつれて加速するようにする。
7. その他の細かいポイント
- ジャンプするときのシュラッグは反射的に起こるので意識しなくても良い。重量がかなり重くなったら意識的にシュラッグする。
- ジャンピングポジションに入る時に、伸びてた膝関節が再び少し曲がってそれからジャンプするが、脚からバーを離さないようにしていると自動的にこの動作になるので意識しなくても大丈夫。あまり意識しすぎると、動作がいったん止まってしまって、膝上までの加速がその後のジャンプに使えなくなってしまう。
★パワースナッチ
- パワークリーンよりも軽い重量で行う。
- 手幅はかなり広く握る。
- パワークリーンと同様に、腕で持ち上げず、バーはなるべく垂直に上下する。
- 動作中はずっとフックグリップ。
- ラックポジションは頭上にバーを挙上した状態。手のひらを上に突き出し、肘を伸ばしきり、僧帽筋を収縮させる。プレスのトップポジションを広い手幅で行う感じ。だがバーの上げ下げはプレス動作では行わないこと。パワークリーンと同様に膝関節と股関節の伸展でバーを挙げる。
- ジャンピングポジションでのバーの位置は、パワークリーンの時よりも高くなる。手幅が広い分、垂直方向の腕の長さが短くなるので。
- ジャンプしたら、バーの上方向への移動に伴い肘を曲げ、バーが頭上に来たら一気にラックポジションに。パワークリーンと同様に、膝関節と股関節を少し曲げバーの下に潜り込む。
- パワークリーンと同様の練習手順で動作を習得していく。
- スタートポジション(プレートが地面についた状態)は、垂直方向の腕の長さが短くなるため、上体が水平に近くなる。
参考: Starting Strength Basic Barbel Training 3rd Edition / Mark Rippetoe
(本の説明では図と写真が多く入っていてわかりやすいです。他にはスクワットとデッドリフトとベンチプレスとプレスの解説があります。)
参考動画:
Mark Rippetoe: Coaching the Powerclean
https://www.youtube.com/watch?v=6tXcS0Xp1aE
Mark Rippetoe Teaching Power Snatch from Starting Strength
https://www.youtube.com/watch?v=O327jxFqzQM
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