姿勢が悪いまま筋トレをすると、怪我をしやすくなりますし、見た目も良くありません。以前にも姿勢矯正の記事はいくつか書いたのですが、今回の記事ではそれらをまとめています。扱うのは3タイプの悪い姿勢で、矢状面のみです。悪い姿勢には他のタイプもありますし、前額面・水平面での悪い姿勢(アシンメトリー)もあります。(姿勢矯正は難しいです。あらゆる姿勢を治せるならそれで飯が食えますから)
(1)良い姿勢
背骨はニュートラルのS字カーブ。胸椎が適度に曲がって、腰椎が適度に反っているのがニュートラルです。
(2)猫背&反り腰
胸椎曲がり+腰椎反り。ベンチプレス偏重型のトレーニーに多い。
(3)背中全体が反り
胸椎反り+腰椎反り。背中全体の筋肉が緊張している。胸郭が開いている(リブフレア)。アスリートに多い。
(4)背中全体が曲がり
胸椎曲がり+腰椎曲がり。運動不足のデスクワーカーに多い。デスクジョッキー(desk jockey)と呼ばれる。
ちなみに腰椎曲がり+胸椎反りだと、背中のS字カーブが失われた状態で「平背」と呼ばれます。運動不足で全身の筋力が衰えている人に多い。
姿勢の良い・悪いには、ある程度の価値判断が入ってきます。例えば、フィギュアスケート、新体操、ボディビルなど審美系の競技だと、背中がニュートラルよりも反った姿勢が「良い姿勢」の場合もあります。
この記事での良い姿勢は、関節や筋肉に負担がかかりにくい、怪我をしにくい、高い運動パフォーマンスを発揮しやすいといった面で優れた姿勢のことを指します。ただこの良い姿勢を丸一日キープするのが理想的なのかと、そういうわけではなく、この姿勢をホームポジションにしつつ、様々な姿勢を取っていくと身体のコンディションを良い状態に保ちやすくなります。
姿勢チェック方法
壁に背中をつけて直立姿勢をとります。かかとは壁から5cm程度離して、尻、背中、後頭部が壁に接触するようにします。
対処方法
胸椎曲がり、胸椎反り、腰椎反り、腰椎曲がりの対処方法を順に書いていきます。姿勢のタイプごとに、必要な対処方法を組み合わせて用います。例えば、猫背&反り腰の人は、「胸椎曲がり」と「腰椎反り」の対処方法を組み合わせます。
すべての姿勢パターンでやったほうが良いこと
キャット・キャメルと、All Fours Belly Liftは全ての姿勢パターンでやっておいたほうが良いです。
[キャット・キャメル]
キャット・ドッグ、キャット・カウといった呼び方もされます。メジャーなエクササイズで、普及しているやり方で問題ないと思います。リラックスして背骨を滑らかに動かせればOKです。可動域の限界を攻めないように。
[All Fours Belly Lift]
All Fours Belly Liftは、あまり知られていないと思いますが、複数の面で非常に高い効果のあるエクササイズです。姿勢改善だけでなく、ハードなトレーニングをする人との相性も良いです。反り腰による腰痛は、All Fours Belly Liftが劇的に効きます。
・背中の反りを直し、脊柱起立筋群の緊張を緩和する。
・肩甲骨が内転・下制で張り付いているのをスムーズに動かせるようにする。
・横隔膜をしっかり使って深く呼吸できるようにする。
・肋骨を締め強い体幹を作れるようにする。
運動を熱心にやっている人でも、運動不足の人でも、横隔膜を使った深い呼吸ができていないケースが多いです。それと、胸郭の形を整えるには、呼吸を組み合わせることが必須です。
胸椎曲がりの対処方法
胸椎曲がりの人に多い症状は、
・胸椎が曲がっている
・首が反っている
・肩が内旋している(巻き肩)
・肩甲骨が開いている
・肩甲骨が前傾している。
したがって対策は、
・胸椎を伸ばす。
・顎を引いて首の後ろを伸ばす
・肩を内旋させる筋肉を伸ばす
・肩を外旋させる。
・肩甲骨を寄せる。
・肩甲骨を後傾する。
<胸椎を伸ばす>
フォームローラーで胸椎を伸ばすのが効果的です。1000-2000円の安価なもので十分なので、一つ買っておくと便利です。
<顎を引いて首の後ろを伸ばす>
<肩を内旋させる筋肉を伸ばす>
広背筋と大胸筋は、肩を内旋させる大きくて強い筋肉です。これらの筋肉をストレッチします。
<肩の外旋動作と肩甲骨の後傾>
これは正確にやるのが難しいです。頭の後ろに重りをぶら下げるトレーニングで、肩外旋・肩甲骨後傾・胸椎伸展のポジションにもっていけるので、まずこれで肩・肩甲骨・胸椎の位置が矯正された状態を記憶します。それから、ゴムチューブで負荷をかけながらのショルダープレス動作、高い位置へのフェイスプルなどをやっていくと良いでしょう。y-pullやトラップレイズ系も効果的です。
ゴムチューブで負荷をかけながらのショルダープレス動作
<肩甲骨を寄せる>
脇角度の小さいロウ(シーテッドローやワンハンドロー)は、猫背の人がやると肩甲骨を前傾させやすいので、脇を開いて肩甲骨を寄せる種目を重点的にやると良いでしょう。リバースフライや脇角度60°くらいのロウ動作がおすすめです。ロウのやり方は、関連記事を参考に。
関連記事:怪我をしにくいロウ・プルのやり方
胸椎反り
胸椎反りの人に多い症状は、
・胸椎が反っている
・肩甲骨が寄っている
・胸郭が開いている
・胸椎を曲げる
・肩甲骨を開く
・胸郭を締める
このタイプの人には、All Fours Belly Liftが非常に効きます。念入りにやりましょう。先ほどと同じ画像ですが再掲します。
あとはベアクロールなどです。胸椎を曲げ、肩甲骨を開いて、遠くに腕を伸ばすのを「Reach」と呼ぶのですが、このReach要素のある種目が効果的です。
腰椎反り
腰椎反りの人に多い症状は、
・腰椎が反っている
・骨盤が前傾している
・腰椎反り・骨盤前傾の筋肉をストレッチする
・腰椎曲がり・骨盤後傾の筋肉を鍛える
ストレッチしたい筋肉は、股関節の屈筋と広背筋と脊柱起立筋。鍛えたい筋肉は、腹直筋下部・腹斜筋と臀筋です。
<股関節の屈筋のストレッチ>
股関節の角度は180°程度までにします。180°を超えてグイグイと伸ばすと、股関節の前側の関節包・靭帯が緩んで、股関節の痛みにつながりやすくなります。
<広背筋のストレッチ>
<脊柱起立筋のストレッチ>
またAll Fours Belly Liftです。腰椎の付け根のほうまで伸びるよう、臀筋と体幹前側を強く収縮し、強めに骨盤を後傾させると効果的です。筋トレで反り腰になっている人は腰椎周辺がかなり固くなっているので、強めにやってOKです(ただし一気にやらず徐々にやること)。
<腹直筋下部・腹斜筋を鍛える>
アイソメトリックで、腹直筋下部・腹斜筋を鍛えられるプランクやデッドバグが効果的です。クランチ系だと胸椎を曲げる動きになりやすいので、腰椎の反り対策としては不向きです。
<臀筋を鍛える>
ヒップスラスト、ヒップリフトが効果的です。
腰椎曲がり
腰椎が曲がっている人は運動不足の人に多く、全身の筋力と関節の可動性が低下しています。
基本方針は、
・股関節を様々な方向に動かして、可動性と基礎的な筋力を高めていく。
<背骨を滑らかに動かせるようにする>
<体幹をニュートラルポジションで固める>
<股関節を様々な方向に動かす>
下の関連記事に、股関節を様々な方向に動かすやりかたを書いています。ランジやルーマニアンデッドリフトのセット数を増やすと筋肉に負荷をかけられるので、体力不足の人はこういった基本的な動きを中心にトレーニングしていくと良いでしょう。
関連記事:股関節のストレッチ・ウォームアップ
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