7/23/2021

パーシャルとフルレンジの筋肥大効果の比較

パーシャルとフルレンジの筋肥大効果を調べた研究を見ていきます。

そんなのフルレンジに決まってるでしょ? と思われるかもしれませんが、わりと面白い研究が出てきていて、考察しがいがあります。 

フルレンジの定義を最初にしたほうが良いと思うのですが、研究だとそのへんが曖昧で、多くの研究で可動域が広いグループをフルレンジ、狭いグループをパーシャルとしていて、なんとな~くの相対的なグループ分けになっているので、研究内容に沿って見ていくとなると定義が困難です。

例えば、レッグエクステンションの研究だと、フルレンジは膝屈曲90°か100°。マシンの可動域がそれくらいですし、それ以上膝を曲げると力が入らなくなります。スクワットの研究だと膝屈曲のフルレンジはパラレル付近や安全にしゃがめる限界までとしているケースが多く、レッグエクステンションでのフルレンジ相当の膝屈曲90°をパーシャルとしている研究もあります。そして、もし膝関節の可動域の限界までをフルレンジとするなら、(そのような研究は無いと思いますが)ピストルスクワットでもやるべきということになります。このように何がフルレンジなのかを考えだすと定義するのが難しいです。

 

7/10/2021

肩甲帯のトレーニング(プッシュ・プル動作に重要)


肩甲帯は、肩周りの骨・関節・筋肉の一連のシステムのことで、肩甲骨・胸骨・鎖骨・上腕骨と、これらをつなぐ筋肉・靭帯で構成されます。身体イメージを作る場合は、肩甲骨周辺の骨と筋肉をまとめてイメージすると良いと思います。


解剖学的な肩甲帯の範囲と、上のイメージの範囲は完全には一致していないと思いますが、上のようなイメージを持つと実用面でやりやすく、また他に適切な用語が無いので、当記事では肩甲帯を上のイメージとして扱います。ローテーターカフも肩周りの安定に重要ですが、肩甲骨周辺の安定にはローテーターカフ以外にも前鋸筋や肩甲挙筋や菱形筋や僧帽筋(上部・中部・下部)など多くの筋肉が関与するので、ひっくるめて肩甲帯と呼ぶと便利です。


ショルダープレスやベンチプレスや腕立て伏せなどのプッシュ・プレス動作、懸垂やシーテッドローイングなどのプル・ロウ動作では、肩甲帯の「安定」と「可動性」の両方が求められます。肩甲帯の働きにより、肩甲骨の適切なポジショニングと、肩関節でのボール・ソケットのスムーズな動きが実現されます。

肩甲帯がうまく働かなくても、広背筋や大胸筋といった大きな筋肉で動作を行うことは可能です。ラットマシンやチェストプレスマシンといったマシントレーニングだと、肩甲帯の動きや安定が足りなくてもなんとかなる感じがします。ただ、フリーウェイトの場合は、プッシュやプルの動作中に肩甲帯が適切に働かないと、負荷が肘や肩に集中して、これらの部位を怪我しやすくなります。

ショルダープレスやベンチプレスなどプッシュ・プレス動作では、肩甲帯が安定しないと肩峰下インピンジメントなどになって肩を痛めやすいです。プル・ロウ動作では、懸垂で上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)になるケースが多いです。肘の痛みについては以前にも記事を書いたのですが、怪我の予防のために肩甲帯にフォーカスした記事を今回書きます。

身体機能レベルが高い人は、プッシュやプル動作でバーやグリップを握った時に、あまり意識しなくても肩甲骨周りの細かい筋肉に力が入って、自動的に肩甲帯が働き始めると思います。そのような人はあまりトラブルもなくトレーニングを続けられます。しかし、自動的に肩甲帯が働かない人もいます。私は肩甲帯の右側はすぐ反応してくれるのですが、左側が自動的に反応しづらいので、意識してアクティベートしないといけないです。

肩甲帯が自動的に働いてくれない場合、筋トレを続けていると肘や肩に問題が出やすくなるので、肩甲帯の働きを取り戻し、維持していくためのトレーニング方法を書いていきます。


6/26/2021

肩周りの安定性強化のための腕立て伏せ

肩甲骨のコントロール能力と、肩関節を安定させる細かい筋肉の強化に効果的な腕立て伏せのやり方を解説していきます。腕立て伏せで肩周りの安定性を強化しておくと、ベンチプレスで肩を痛めにくくなると思います。

このあと肩周り(肩甲帯)のトレーニングをテーマに記事を書くつもりで、その中のエクササイズの一つとして腕立て伏せを出そうと思っています。腕立て伏せは難しい種目で、技術的に細かい解説が必要なため別記事として書くことにしました。



6/19/2021

足裏と足首の強化(スクワットやデッドリフトでの安定した踏み込み)

足裏・足首は身体と地面の接点なので、スクワットやデッドリフトの時に安定していることが重要です。また何かスポーツをやる場合も、足裏・足首のスタビリティ(安定性)はとても大事です。

足裏・足首の安定性を強化することで、パフォーマンスがどれだけ向上するかは、現在のコンディションと、どのような運動をするかによります。現時点で足裏・足首のアラインメントが悪かったり安定性が低くて、ランニングやサッカーなど足裏・足首に強い負荷がかかるスポーツをするなら、足裏・足首を鍛えることでパフォーマンス向上やケガ防止などが見込めます。この場合は、足裏・足首を強化することを強く勧めます。

足を使う運動はスクワットやデッドリフトくらいしかやらないなら、ウェイトリフティングシューズなどサポート力の強い靴を履いたり、アーチサポートのインソールを使ったりすれば、足裏・足首のコンディションが良くなくても、問題が出ないことも多いです。その場合は、足裏・足首を鍛えてもスクワットやデッドリフトの1RMが向上したりはしないでしょう。

足裏・足首のアラインメント異常や安定性の低さは、膝や股関節や腰などに悪影響を及ぼすことがあるので、鍛えておくと怪我を防ぎやすいです。またスクワットの際に膝が内側に入ったり、足首のモビリティが問題になる場合、足裏・足首のコンディション不良が原因のこともあるので、今回の記事のエクササイズをすることで改善される場合もあります。ただ、直接的にパフォーマンス向上をもたらすようなものではないので、地味なトレーニング箇所です。

正常な身体機能の維持や健康面では、足裏・足首は絶対に鍛えたほうが良いです。現代人の足は靴で過保護にされ、窮屈なポジションに押し込められているので、望ましい足裏・足首のコンディションの人は少ないです。


6/12/2021

スクワットとデッドリフトのバーの軌道と足裏の重心

スクワットの深さの記事を書いていて気付いたバーの軌道と足裏の重心について書いていきます。

スターティングストレングスの影響なのか、スクワットとデッドリフトでは、重心は常に足の真ん中(ミッドフット)、バーの軌道はミッドフットライン上を垂直(鉛直)に上下すると解説しているところが多いです。バーや重心の位置を不必要にグラグラと動かさないためにそういった意識を持つことは必要だとは思いますが、実際にはバーの軌道は常に垂直ではないですし、足裏の重心も常にミッドフットではないです。そして垂直軌道とミッドフット重心を厳格に守ろうとすると、フォームが破綻します。


「身体の質量があるため、バックスクワットでバーベルが軽いとバーの軌道は垂直にならない」

これは気づいている人もいて、私も認識していました。


「スクワットで尻を後ろに出す時と、ある程度の重さ以上のコンベンショナルデッドリフトでは、足裏の重心はミッドフットから踵寄りに数cm移動している」

これは新たに認識しました。自分で試した感じでもそうなっていますし、バーの軌道分析でもそうなっていることが示唆されます。

はじめに明確にしておくと、踵寄りに重心が移動するといっても、踵の骨までは移動しません。足裏の三点荷重を維持できる範囲で移動します。つま先が浮くくらいまで踵に重心を移動するのは、スクワットでもデッドリフトでも望ましくないフォームです。

ミッドフット:足の真ん中。アーチの高い部分。三点荷重になる(下の絵)。

踵寄り重心:ミッドフットから数cmほど踵寄りの位置。脛の骨の前端の真下あたりから、くるぶりの下あたり。バーベルの重さの影響や、身体の使い方の個人差がありそうで、おそらく点ではなくてレンジ。前側(母指球・小趾球)の踏み圧は弱まるが、つま先は浮かず足裏の三点荷重は維持可能。

踵重心:踵の骨に重心を乗せる。つま先が浮き、三点荷重が維持できない。この重心でスクワットやデッドリフトをやるのは望ましくない。


6/05/2021

スターティングストレングスの正しさの範囲

Mark Rippetoe のスターティングストレングス(=パワーリフティング基準でのBIG3)について、色々と書いていきます。否定的なことも書きますが、パワーリフティング基準でのBIG3を「ルールのある遊び」として楽しむことを否定するわけではありません。そこは個人の価値観です。

私がモヤモヤするのは、「パワーリフティング基準でのBIG3は安全で効果的。正しいフォームでやれば怪我リスクの低いトレーニング方法だ」といった主張に対してです。YouTubeにたくさんある「正しい〇〇のやり方」といった動画にも、モヤモヤしたものを感じます。それは誰にとって正しいのか?と。(「宇宙一正しいスクワット」という動画は勢い良すぎてクスッとしました)

昔の私のような準備の出来ていない初心者がバーベルトレーニングで怪我をしたり、経験の浅いトレーナーがスターティングストレングスに傾倒して正しさの範囲を意識せずにクライアントに適用したり・・・そういったことを少しでも減らしたいです。そこら辺をつっついていく記事です。

バーベルトレーニングは筋肉量やストレングスの向上にとても効果的だ、という点には強く同意します。BIG3を否定したいわけではなく、多くの人が安全に効果的にトレーニングできるよう問題点を洗い出して改善していきませんか、という問題提起がしたいです。

5/28/2021

スクワットの深さ/推奨のスクワット方法

 

スクワットの分類 

<フルボトム/フル/ATG>

腰が曲がらない範囲でなるべく深く、腿の裏側とふくらはぎが接触するまでしゃがむスクワット。膝の屈曲角度は約130-150°。日本語だと、パラレルより少し下の深さをフルスクワットと呼ぶことがありますが、研究だとフルスクワットは出来るだけ深くしゃがむスクワットのことを意味することが多いので、この記事ではフルボトムもフルもATGも同じものとします。

<パラレル>

太腿が床と平行になるまでしゃがむスクワット。膝の屈曲角度は骨格やフォームによって違いますが、だいたい110-130°くらい。

<ハーフ>

膝の屈曲角度が約90°になるまでしゃがむスクワット。

<クォーター>

膝の屈曲角度が50-60°になるまでしゃがむスクワット。

 

5/15/2021

パワーリフティングのケガ率/BIG3の調整

過去のパワーリフティングのケガ率の研究で、パワーリフティングのケガ率は低いというものがあります。同じようにウェイトリフティング(五輪の重量挙げ)のケガ率が低いという研究もあり、マッチョ寄りのフィットネス業界ではそれらの研究をもとに「バーベルを使ったウェイトトレーニングは、正しく行えばケガ率が低く安全である」と言われることが多いです。

しかし、それらの研究での怪我は、トレーニングや試合出場を中断せざるを得ないレベルの怪我のことでした。今回紹介する研究では、怪我を「痛みと、トレーニングに影響を与える機能障害」と定義し、記録上位25%のエリートレベルを除くパワーリフターにアンケートを送って、現在の怪我、過去12ヶ月の怪我について回答を集めています。調査はスウェーデンで行われました。

Prevalence and Consequences of Injuries in Powerlifting: A Cross-sectional Study
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5954586/

バーベルを使って趣味でBIG3をする場合、パワーリフティング系、特にRippetoeのスターティング・ストレングスのやり方をする人も多いと思います。このブログの過去記事にもスターティング・ストレングスのやり方は紹介していますし、自分もそのやり方をやっていました。

ただ、趣味でBIG3をやるなら、パワーリフティング系のやり方から何箇所か調整したほうが、怪我リスクを下げられます。

今回のパワーリフティングの怪我リスクの研究をもとに、BIG3で怪我をしやすい部位、原因、趣味でやる場合の調整方法などを考察していきます。

(今回はパワーリフティングについての研究なのでパワーリフティングのみ取り上げていますが、ウェイトリフティングのケガ率も似たようなものだと思います。トレーニングや試合出場を中断せざるを得ないレベルの怪我は少ないが、痛みを抱えるケースは多いでしょう)

5/08/2021

デッドリフト 腹圧のかけかた 体幹の固め方

私のやり方の説明です。コンベンショナル、ベルト無し。撮影可能なジムをビジターで利用してスマホで撮ってきました。画質が10年前の動画みたいですが数日前に撮ってます。

動画:デッドリフト 腹圧のかけかた 体幹の固め方
https://www.youtube.com/watch?v=7L11x3_1lbY


これが正しいやり方だと言いたいわけではなくて、デッドリフトで体幹を固めるのが苦手な人に参考にしてもらえればと。

腹圧のコントロール方法は、関連記事に詳しく書いてあります。

関連記事:筋トレでの腹圧の高め方・体幹の固め方