3/30/2025

チーティングとストリクトの筋肥大効果を比較した研究

Do cheaters prosper? Effect of externally supplied momentum during resistance training on measures of upper body muscle hypertrophy
https://www.researchgate.net/publication/387411261_Do_cheaters_prosper_Effect_of_externally_supplied_momentum_during_resistance_training_on_measures_of_upper_body_muscle_hypertrophy?ck_subscriber_id=699589358

stronger by scienceのメルマガで紹介されていた研究です。

チーティングは、ターゲットの筋肉以外を使い、勢いや反動をつけて筋トレをするテクニックです。ストリクトは、できるだけターゲットの筋肉のみを使い、勢いや反動を使わずに筋トレをするテクニックです。

この研究では、チーティングとストリクトの筋肥大効果を比較しています。

3/02/2025

代謝ストレスによる筋肥大効果はあるのか

筋肥大をもたらす刺激には大きく分けて、「メカニカル(力学的)な負荷」「筋肉のダメージ」「代謝ストレス」の3つがあるというのが現在の主流の考えです。

関連記事:筋肥大をもたらす刺激(2019年版)

ただ、70-80%1RMの普通の筋トレに血流制限(BFR)で代謝ストレスを上乗せしても、筋肥大効果が増大するわけではないという研究がいくつか出ているので、今回の記事ではそれを紹介します。

基礎知識として、血流制限トレーニングは、腕や脚の付け根を圧迫して血液の流れを制限し、筋肉を酸欠状態にしてトレーニングする方法です。一般的には、20%1RMや30%1RMといった低強度で血流制限トレーニングが行われ、低強度・低ボリュームでも普通の筋トレと同等に筋肥大することが示されています。(血流制限をすると限界レップ数が低下するので、血流制限なしの低強度トレーニングよりも筋肥大に必要なボリュームは少なくなる。血流制限なしの低強度トレーニングも、限界までやれば普通の筋トレと同等に筋肥大するが、限界までのレップ数が多い)

2/04/2025

北米パワーリフターのトレーニング内容および大会前のテーパリング方法の調査研究

(1)Characterizing the Tapering Practices of United States and Canadian Raw Powerlifters
https://journals.lww.com/nsca-jscr/fulltext/2021/12002/characterizing_the_tapering_practices_of_united.5.aspx


カナダとアメリカのパワーリフター(ノーギア)の普段の練習内容と、大会前のテーパリング方法をアンケート調査で調べた研究です。テーパリングとは、大会でベストのパフォーマンスを発揮できるように、大会前にトレーニング負荷を減らしてストレスを軽減していくことです。

アンケート期間は不明。2021年の論文なので、アンケート実施は2020年くらいでしょうか。

アンケート結果から、北米パワーリフターの普段のトレーニングでのBIG3の頻度(回/週)を大まかに書くと、

・スクワット 2.0回/週
・ベンチプレス 2.5回/週
・デッドリフト 1.5回/週

今回の研究のアンケート調査対象は北米の選手ですが、おそらく世界的にもこのくらいの頻度が主流だと思います。

世界各国の選手を対象としたアンケート調査でも似たような数字が出ています。
(2)Stretching Practices of International Powerlifting Federation Unequipped Powerlifters
https://www.semanticscholar.org/paper/Stretching-Practices-of-International-Powerlifting-Spence-Helms/3a4aeecdf4600a46f73ffe97c7311fcdfcb3e3d9


ただ、ノルウェーのパワーリフターは特殊で、もっと高頻度で練習しているようです。ノルウェーはパワーリフティングの強豪国で、先日のSheffield2025男子66kg級でとんでもない記録(トータル770kg)を出したKjell Bakkelund選手はノルウェーの選手です。

(3)Contemporary Training Practices of Norwegian Powerlifters.
https://www.semanticscholar.org/paper/Contemporary-Training-Practices-of-Norwegian-Shaw-Andersen/c6ed22f880904c8b043fd9ce45ba514fed478b76





アンケート結果によると、北米のパワーリフターのテーパリングの主流の方法は、

・大会まで残り7-10日くらいからテーパリング開始。
・テーパリングではトレーニングボリュームを約半分に減らす。
・大会まで残り一週間を切ったらトレーニング強度を下げる(75%1RM付近)。

アンケート結果をもとに、北米パワーリフターの一般的な大会前スケジュール例を図に表すと以下のようになります。





大会前1-2ヶ月前に最大ボリュームで、平均2.3週間前に最大強度なので、ボリュームを下げつつ強度を上げるプログラムを実施しているようです。大会前2週間を切ったらテーパー期間に入り、ボリュームを下げて疲労を抜きつつ、大会直前は70-80%1RMのトレーニング日を挟んでストレングスを維持しながら大会に臨んでいます。回復に時間のかかるスクワットとデッドリフトの高強度トレーニングは大会から7日以上間隔を空けますが、ベンチプレスはそこまで間隔を空けていません。

個人差が大きいので、あくまで上の図は一例になりますが、無理のない理に適ったスケジュールです。大会出場を目指す場合は、このスケジュールを叩き台にして自分にあったやり方に調整していくと上手くいきやすいと思います。これは競技レベルの高い(=扱う重量が重たくて回復に時間がかかる)パワーリフターのスケジュールなので、そこまでレベルが高くない場合は、最後の高強度BIG3、最後のBIG3のトレーニング実施日を1-2日、大会に近づけても大丈夫だと思います。

1/05/2025

PEDs使用ボディビルダーと非使用ボディビルダーのトレーニング方法の違い

(1)Self-Reported Training and Supplementation Practices Between Performance-Enhancing Drug-User Bodybuilders Compared with Natural Bodybuilders
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36165879/

競技ボディビルダーにアンケート調査をし、PEDs使用ボディビルダーと、非使用ボディビルダーで、トレーニング方法にどのような違いがあるのかを調べた研究です。おそらく前回の記事と同じデータを使って分析した論文です。

前回記事:競技ボディビルダーのトレーニングを調べた研究

187名がオンラインアンケートに回答。アンケート期間は2018年4月~2020年2月。


使用割合の高いPEDsは、testosterone (85.0%),drostanolone propinate (57.5%), stanozolol (47.5%),trenbolone
acetate (45.0%), boldenone undecylenate (42.5%), oxandrolone(37.5%), clenbuterol (37.5%),nandrolone decanoate (32.5%), methenolone enanthate(20.0%).

12/21/2024

競技ボディビルダーのトレーニングを調べた研究

Training, Supplementation, and Pharmacological Practices of Competitive Male Bodybuilders Across Training Phases
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33651737/

235人の競技ボディビルダーにアンケート調査し、そのデータをまとめた研究です。

アンケート回答期間は、2018年4月~2020年2月。

アンケート回答者のデータ
性別:全員男性
平均年齢:26歳
平均身長:177cm
平均体重:88kg

回答者235名中、165名がナチュラルの大会に参加。

大部分の回答者がアマチュア競技者。13名がプロの競技者(うち2名がナチュラル大会の競技者)


12/01/2024

ドロップセットの研究

(1)Muscular Adaptations in Drop Set vs. Traditional Training: A Meta-Analysis
https://journal.iusca.org/index.php/Journal/article/view/135/226

この論文はドロップセットのメタアナリシスで、普通の筋トレとドロップセットの効果を比較しています。普通の筋トレとドロップセットは、例えば以下のような方法を指します。

・普通の筋トレ:10レップ→3分休憩→10レップ→3分休憩→10レップ

・ドロップセット:10レップ→重量を下げてすぐさま5レップ→再び重量を下げてすぐさま5レップ→再び重量を下げてすぐさま5レップ

メタアナリシスでは、筋力と筋肥大について、普通の筋トレとドロップセットは同等の効果で、ドロップセットはセットの組み方によってはトレーニング時間を大幅に短縮することができる、という結論になっています。

メタアナリシスの中身を見ると、解析対象の研究が5つしかありません。ドロップセットの追加セット数や重量設定も研究によってまちまちです。より深くドロップセットの効果を調べるため、個別の研究を見て、実際の運用方法を考察していきたいと思います。

11/15/2024

「レップ数×セット数」と「sets x reps」

日本語のメニュー表記だと、一般的には「レップ数×セット数」

英語のメニュー表記だと、一般的には「sets x reps」

英語のメニューを読むときに、例えば「3x5@RPE8」というように、どの数字がセット数なのか書かれてないと私は混乱するのですが、小2の娘の学校公開(授業参観)の算数の授業で、式の順序を重視した掛け算を習っているのを見て気づきました。トレーニングのメニュー表記の言語による違いは、掛け算の順序の言語による違いと同じだなと。

例えば、B個で一まとまりのグループが、Aグループ数あったとすると、

日本語だと、(掛けられる数)×(掛ける数)なので、B×A(BかけるA)。



引用元(Wikipedia):かけ算の順序問題


英語だと、(掛ける数)×(掛けられる数)なので、A×B(A times B)。



参考サイト:3×4か4×3か


10/31/2024

筋トレの有酸素運動的な効果

これまで、筋トレでは筋力向上や筋肥大が起こり、ランニングなどの有酸素運動では最大酸素摂取量(VO2max)などの有酸素性能力が向上する・・・と二分法で考えられてきましたが、最近のトレンドとして、各種のトレーニングの効果には連続性があり、筋トレにも有酸素運動的な効果があり、有酸素運動にも筋トレ的な効果がある、という考えが広まってきています。

例えば、HIITやサーキットトレーニングなどの全身を使った高強度の有酸素運動は、筋肥大もする可能性がありますし、高レップ・短インターバルで息がゼーゼーするような筋トレはインターバルトレーニングに近くなり有酸素性能力が上がる可能性があります。


10/02/2024

運動をすると認知機能がアップするという研究

運動(筋トレや有酸素運動)の認知機能への影響を調べた研究を見ていきます。

「高齢化社会が進み、高齢者の認知機能の低下は社会的に大きな問題になっている。運動は、身体の健康面にプラスの効果があることは多くの研究で示されているが、認知機能の面でも効果があるなら、高齢化社会への効果的な処方箋となるだろう」といった感じの研究が多いです。

それと、学齢期(5歳~18歳)の子供・青少年の認知機能・学業・メンタルヘルスにも運動が効果的という研究が出てきているので紹介します(自分に学齢期の子供がいるので興味がある)。

20代~50代くらいの人の認知機能をアップさせる効果があるのかは、研究が乏しいため不明です。

9/13/2024

筋トレのウォームアップセットの強度設定についての研究

低強度と高強度のウォームアップセットでは、どちらがメインセットのパフォーマンスが上がるのかを比較した研究を見ていきます。(stronger by scienceのメルマガにあったネタです)


(1)High-load and low-volume warm-up increases performance in a resistance training session
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1360859224004017

被験者:若い男性 トレーニング経験有り

種目:ベンチプレス、インクラインレッグプレス、ワイドグリップラットプルダウン

ウォームアップの種類
(a)15レップ×1@40%10RM(10RMの重量の40%の重量で15レップ)
(b)10レップ×1@60%10RM(10RMの重量の60%の重量で10レップ)
(c)5レップ×1@80%10RM(10RMの重量の80%の重量で5レップ)

手順:ウォームアップ→2分休憩→測定

測定:10RMの重量で限界まで行う 2分インターバルで3セット トータルボリュームを測定


<結果>
合計ボリューム(総レップ数×重量)は、5レップ×1@80%10RMのウォームアップが最も大きかった。