2/15/2017

ストレスについて-身体反応と管理方法-

ネタ元はこの本
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Why Zebras Don't Get Ulcers
https://www.amazon.com/Why-Zebras-Dont-Ulcers-Stress-Related-ebook/dp/B0037NX018/

エビデンスベースでストレスについて様々な面から書かれている。著者は研究者なので科学的思考でエビデンスを扱えていて内容の信頼性が高い(科学的思考でエビデンスを扱えないとエビデンスベースでも誤った主張をいくらでも行うことが出来る)。文章も機知に富んでいて面白い。Lyle McDonald と Greg Nuckols も推薦。

邦訳(「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか」)は絶版かな。探してみたけど売っていない。


★ストレスへの身体の反応
生物のストレス反応は、短期的で肉体的なストレスに適応している。例えば、捕食者からダッシュで逃げる時は、身体に強いストレスがかかっている。

ストレス反応により身体は、栄養素の取り込みや身体組織の構築など今やる必要のないコストのかかる活動は抑制して、酸素を取り込み貯蔵してあるエネルギーを動員しそれを筋肉に送り込んで走って逃げることに集中する。捕食側ならエネルギーを動員して追いかける。同種間での資源(食べ物や繁殖相手など)を巡っての闘争も同様。ストレス反応は生物の生存に必要不可欠なもの。

激しい運動をするとアドレナリンやノルアドレナリンや成長ホルモンやコルチゾールの血中レベルが一時的に急上昇するのも、この不必要な活動の抑制とエネルギー動員が目的。貯蔵されているグリコーゲンや体脂肪が分解され、身体活動のエネルギー源として使われる。

捕食者から逃れ、食事をして休んでいる時はストレス反応が消えて、消化吸収や身体組織の構築が行われる。

精神的なストレスでも、基本的には同じストレス反応システムが活性化される。アドレナリンやノルアドレナリンやグルココルチコイド(コルチゾールなど)の血中レベルが上がり、心拍増加や血圧上昇などが起きる。精神的なストレスを感じると心臓がバクバクするのはこのため。

身体は短期間のストレス反応に適応している。現代の先進国では捕食活動や逃走や闘争などの必要性は滅多になく、また人間は脳みそが非常に発達しているため、現代社会では精神的なストレスを感じることが多くなっている。肉体的なストレスは通常は一時的なものだけど、精神的なストレスは容易に長期間続くことができる。精神的なストレスにより長期間このストレス反応システムを活性化すると、身体には色々と不具合が出てくる。具体的には胃潰瘍や心血管疾患など色々な病気になりやすくなったり、性欲が低下したり、記憶力に悪影響が出たり、子供だったら成長が阻害されたりする。


★ボディメイクへの適用
強いストレスがかかった状態が続くと、維持・増強に高いコストがかかる筋肉は減りやすくなり、食べ過ぎるとメタボにもなりやすい。また上述したような様々な悪影響があるので生活の質も低下する。

歳を取ると一般的には仕事や家庭での責任が増え、精神的なストレスも大きくなってくる。一方で加齢とともにストレスへの耐性が低下していく。ボディメイクに限らず、歳を取るほどストレス管理の重要性が高くなる。


★ストレスの管理
以下に挙げたストレス管理方法を、まずはいくつか試してみる。できれば毎日少しずつ続けると良い。

・環境を整える
1) ストレスのはけ口を持つこと。
趣味や運動などを行いストレスを解放する。はけ口を周囲の人間に向ける、つまりイライラしたら人にあたるのはストレス低減に効果的で、類人猿でも序列が下の相手をいじめて憂さ晴らしをするのが観察されるが、理性ある人間としては避けたい行為。

2) コントロールできる範囲を少しずつ広げること
状況をコントロールできないほどストレスは増大しやすい。

3) 予測可能性
ストレス要因となる出来事は予測可能な方が、心構えが出来てストレス低減の傾向がある。しかし、毎度のこと(例:通勤電車は混んでます)や非常に稀なこと(例:小さな隕石があなたの車を直撃します)が知らされても、ストレス低減効果はほとんどない。前者は毎度のことで避けられないし、後者はもともと普段から気にしてストレスを感じているわけではないので、予測可能になってもストレスは低下しない。あとストレス要因発生の直前に知っても心構えができず、ストレス低減にはならない。逆にずっと先のことがわかってもストレス低減にはならない。またあまりに悪い出来事(例:明日あなたは脚を切断されます)は、事前に知らされてもストレス低減にならない。

4) コミュニティへの参加や周囲のサポート
社会的なつながりを持つとストレスは低減しやすい。ただし親しみを感じる相手とつながること。合わない相手や見知らぬ他人の中に放り込まれてもストレスが増大するだけになる。それと困ってる人に必要とされ、サポートをする側になるのもストレスを低減させる。

5) 運動
継続的で自発的で適度な運動はストレス低減効果がある。特に軽めの有酸素運動が良い。嫌々やってもストレス低減にはならないので、自分が楽しく出来る運動を選ぶのが良い。

6) 睡眠
規則正しい生活リズムで良質の睡眠を取る。

7) 瞑想
瞑想中は血圧低下などの良い効果が見られるが、それが日々の生活で継続するのかは不明。実験デザインが良くない研究が多いのではっきりとはわからない。自分に合っていると感じるなら続けると良い。

8) 自主性
小さなことで良いので、能動的に行動し責任を持って自分で決定する機会を増やすと良い。

・自分の考え方
1) 物事の良い面を見ること
ポジティブに捉える。物事は今後良くなっていくと考える。ただし結果が悪くなることも心の隅で想定しておくこと。ひたすら楽観しているとその間はストレスは軽いけど、実際に悪い結果が出たら大きなストレスを感じてしまう。

2) その状況が世界の全てだと思わないこと
世の中には色々な選択肢がある。他の道を選ぶ可能性を塗りつぶしていくと、追い詰められてしまう。

3) コントロール可能だと思うこと
受け身にならず発生した問題は自分でコントロールでき、解決できると思うとストレスを低減しやすい。ただし致命的な病気や交通事故など非常に悪い出来事については、コントロール可能だと思わない方が良い。自分がああすれば防げたのに・・・もっと頑張れば良かった・・・とさらにストレスを感じてしまう。

4) ストレス要因を変えるか、自分の受け止め方を変えるか
ロジカルなアプローチで結果を良く出来ることは、変えようとした方が良い。変えようもない大きなこと、すでに起こってしまった悪いことは、自分の受け止め方を変えるしかない。そして状況が変更可能なものかどうか見分ける。変えられない大きすぎるものに挑み続けると潰れてしまう。また良い出来事は自分の手柄、悪い出来事は何か外部要因のせいで一時的なものだと考えるのもストレス低減になる(でもこれをやると成長できないような・・・どこかの政治家がこんな態度だけど)。

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