3/11/2017

ショルダープレス

★ショルダープレスのやり方
肩周りの可動域が十分で、肩甲骨の上方回旋と肩関節の外転を行う筋肉がバランス良く働くのなら、ショルダープレスは簡単。肘をダンベル(バーベル)の下にキープしたまま腕を頭上に突き上げればOK。

動画:HOW To Overhead Press: Proper Technique for Size, Strength & Performance
オリンピックリフティングスタイルでのオーバーヘッドプレス。Tシャツが気になる。臀筋と体幹を締めて腰が反らないようにし、バーを上に突き上げる。ロックアウトでは肩甲骨を寄せ上背部を固め、頭を前に出す。ロックアウトポジションでは、バー、肩、尻が直線上に来るようにする。

頭を前に出してロックアウトするのが肩の健康に良いのかはわからない。Dean Somersetがこの記事で、頭を前に突き出すと胸椎と肩甲骨の連動に悪影響と書いている。



★ショルダープレスの誤魔化し
立った状態で、臀筋と腹筋(主に下部と外腹斜筋あたり)に力を入れて腰が反らないようにする。この状態でショルダープレスが出来るかどうかやってみる。肩周りの可動域が足りなかったり、胸椎が過度に曲がっていたり(猫背)、大胸筋の関与を増やして無理に重い重量を上げようとすると、腰を反らせて胸を天井に向けてやってしまう。これをやると腰を痛めやすい。

動画:Lee Boyce Z Press 155lbs x 8
脚を伸ばして床に座ってプレスを行うと、さらに誤魔化しがきかない。

出来ない人は結構いると思う。私は出来なかった。4ヶ月くらい矯正エクササイズを続けてようやくまともにショルダープレスが出来るようになった。ジムでの観察と自分自身の経験から、腰を反らせて腕が上がらないのを誤魔化したり、インクラインベンチで斜めになってショルダープレスをする人が多いと思う。



★腕を上げる動作で使われる筋肉


画像は、[書籍] 姿勢の教科書 から引用。

腕を上げる動作は、肩甲骨の上方回旋と肩関節(肩甲上腕関節)の外転で行われる。

・肩甲骨の上方回旋
僧帽筋上部:挙上+上方回旋
僧帽筋下部:下制+上方回旋

僧帽筋上部と僧帽筋下部がバランス良く働くと、挙上と下制が打ち消し合って肩甲骨は上下に動かず、純粋な上方回旋の動きが起こる。

僧帽筋中部:内転+上方回旋
前鋸筋:外転+上方回旋

僧帽筋中部と前鋸筋がバランス良く働くと、内転と外転が打ち消し合って肩甲骨は寄せたり開いたりせず、純粋な上方回旋の動きが起こる。


・肩関節(肩甲上腕関節)の外転

棘上筋と三角筋が腕を引っ張り上げ、同時にローテーターカフが斜め下方向に上腕骨を引っ張って、上腕骨頭が肩甲骨の関節窩(ソケット部分)から上に飛び出ないよう制御する。


筋力のアンバランスがあるとこれらの動作が正常に行えず、肩甲骨が挙上したり(シュラッグの動き)、上腕骨頭がソケットからずれたりする。肩周りは神経や靭帯が密集していて、重いものを持った状態で骨が正常な軌道からずれると挟まったりぶつかったりして痛みが起きる。

痛みが無く誤魔化しのないショルダープレスを行うために、可動域の回復、筋力バランスの調整、肩甲骨と肩関節の動きの学習の順番でエクササイズを行っていく。



★肩周りの可動域の回復
・固く縮んでいる筋肉を伸ばす
ウェイトトレーニングを継続的に行っている人は、大胸筋、三角筋前部、広背筋、菱形筋をしっかりストレッチする。これらの筋肉が、縮んで固まっていることが多い。


・胸椎を伸ばす
猫背になっている場合は胸椎を伸ばす必要がある。普段デスクワークでトレーニングではベンチプレスばかりやっていると猫背・巻き肩になりやすい。

動画:T-spine extension
フォームローラーで胸椎を伸ばす

動画:Sun Dogs
胸椎を伸ばし、肩甲骨を正しい位置に。尻を天井に向けて突き上げるイメージで。

動画:EricCressey.com: Bench Thoracic Spine Mobilization
伸ばした時に息を限界まで吐くとさらに効く


・腕を上げる動作の可動域の回復
動画:Supine Shoulder Flexion

動画:EricCressey.com: Back-to-Wall Shoulder Flexion

動画:Foam supine lying arm slides

いずれも腕を上げた時に腰が反らないように注意する。


・肩甲骨の可動域の回復
動画:TonyGentilcore.com Prone Lengthening
肩甲骨が張り付いて前鋸筋をうまく使えない人が、まずは可動域を取り戻すためのエクササイズ。四つん這いになって手を広げて両手の親指が互いにつくかつかないかの距離の幅で前腕を床につけ、肩甲骨を前に突き出し前腕を押しながら胸椎を少し丸めて深く息を吸い込む。その姿勢を維持したまま息を限界まで吐いていく。発展バージョンは息を吐くフェーズで肘を伸ばす。

一般的なウェイトトレーニングの問題点は、肩甲骨の外転(肩甲骨を突き出す動作)を鍛える種目が無いこと。


★筋力バランスの調整
多くのケースでは僧帽筋下部と前鋸筋とローテーターカフが弱いので、これらの筋肉を鍛える。

僧帽筋下部のトレーニング
動画:ShoulderPerformance.com: Prone 1-arm Trap Raise

動画:EricCressey.com: Troubleshooting the Prone 1-arm Trap Raise
- 仰向けになって顎を引く。
- 片腕ずつ行う。
- 意識して収縮させるのは僧帽筋下部で、メインで動かすのは「胸椎-肩甲骨」の部分。三角筋などを使って肩関節メインで動かさないこと。
- 肩がだらんと身体の前側に垂れないようにする。腕を上げるにつれ肩甲骨はやや後傾させる。
- 脇と胴体の角度は135度。


・前鋸筋のトレーニング
動画:Bonvecstrength.com - Serratus Wall Slide w/ Roller
肩甲骨を前に突き出し背中はやや丸めて、腹筋に力を入れて腰が反らないようにし、腕を上下させる。

動画:The Perfect Push Up - Do it right!
腕立て伏せも効果的。ボトムで肩甲骨を寄せて、トップで肩甲骨を突き出す。ベンチプレスは肩甲骨を寄せて動かさないけど、腕立て伏せは肩甲骨をダイナミックに動かす。


・ローテーターカフのトレーニング
動画:ShoulderPerformance.com: Elbow-Supported DB External Rotations
三角筋後部を使わないよう注意する。肩甲骨の中央あたりで細かい筋肉がグリグリ動いていればOK。



★肩甲骨と肩関節の動きを学ぶ
動画:HighPerformanceHandbook.com: Half-Kneeling 1-arm Landmine Press
姿勢セットアップ:臀筋と体幹を締める。顎を引く。頭、肩、尻が直線上にくるように背筋を伸ばす。
バーを上下させる:下ろした時に肘が胴体よりも後ろにいかないように。肩甲骨が挙上や前傾(猫背の動き)はしないように注意する。ただ肩甲骨が下に押し付けられている人(なで肩になっている人)は、肩甲骨をやや挙上してニュートラルポジションに戻してエクササイズした方が良い。

動画:HighPerformanceHandbook.com: 1-arm Bottoms-up KB Waiter's Walk
体幹を締めて背骨ニュートラルと肩甲骨の後傾を維持。腕を突き上げたまま歩く。ニュートラルグリップ(手のひらが内側を向く)で持つ。ケトルベルが無かったら5kgプレートやダンベルを縦に持っていいかも。


ここまで出来るようになったら、ショルダープレスを実施する。ただ、加齢や過去の怪我で可動域が十分にならなかったり、痛みが出る場合は、無理にショルダープレスを行う必要はないだろう。プレス動作で三角筋前部を鍛えたいのなら、1-arm Landmine Pressをやったりインクラインベンチを使って斜めにプレスしたりすれば良いし、レイズ系で鍛えても良い。



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3 件のコメント:

  1. こんにちは
    毎回、とても役に立つブログで勉強させていただいています。

    ショルダープレスについて、気になる事があったので質問させていただきます。

    ジムだと多数の方が、ビハインドネックで行っているのを目にしますが、フロントに比べてメリットがあったりするんでしょうか?

    個人的には、首や肩関節に無駄な負担がかかる気がするのですが。。。

    返信削除
    返信
    1. Daiさん、

      こんにちは。コメントありがとうございます。

      フロントでのショルダープレスは三角筋前部が主に鍛えられ、ビハインドネックでは三角筋中部が主に鍛えられますね。怪我のリスクはかなり高い種目になります。

      肩周りが健康、つまり関節の可動域と筋力のバランスが良好で、姿勢も良くて、肩の怪我を抱えていないこと、それに加えて肩の骨の形が怪我をしにくいタイプであることが比較的安全にビハインドネックでプレスを行える前提条件になります。

      ビハインドネックのプレスは、ビハインドネックでやることのリターンと怪我のリスクを比較して、リターンがその人にとって大きい場合にはやる価値がある種目になります。三角筋を大きくしたいボディビルダーや、プレス動作を鍛えたいオリンピックリフターはそれに当てはまるでしょう。趣味で筋トレしている人にはリスクリターンが見合わない種目だと個人的には思います。

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    2. 丁寧な返信ありがとうございます。
      やっぱり、リスク高いですよねぇ。何であそこまで、ビハインドネック種目が普及しているかは理解に苦しみます。

      他の方もコメントでおっしゃってましたけど、本当に質の高い情報発信されてますよね。

      これからも参考にさせていただきつつ、たまに質問させていただくかと思いますが、よろしくお願いします。

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