7/29/2014
自重での膝を前に出さないスクワット
普段通ってるフィットネスクラブで、パーソナルトレーナーが指導したり、彼らに教えてもらったとおぼしき人たちが、主に自重で「膝を前に出さないスクワット」を窮屈そうにやっているのを見て思ったことを書いてみたい。
膝を前に出さないスクワットには、膝への負担が軽い、股関節周りの筋肉を鍛えられるといったメリットがあり、これが一般的に推奨されている要因であろう。膝への負担が軽い理由は、私の知る範囲では以下の通り。
・モーメントアームの問題。挙上対象部分の重心への水平距離が短いほど関節のトルクは小さくなる。
・ハムストリングスが伸びて大腿の前面側(四頭筋)のテンションを相殺することで前十字靭帯への負荷が低くなる。
・個人差はあるが、膝の角度が鋭角になりすぎると膝の軟骨への負担が大きくなり怪我をしやすくなる。膝を前に出さないスクワットは膝の角度があまり鋭角にならない。
私も膝を前に出さないスクワット(ロウバースクワット)を普段やっているのだけど、バーベル担ぐのと自重とでは重心の関係でフォームが変わってくる。
スクワットに限らず立った状態で行うトレーニングは、重心が足の真上に来ないとバランスが取れない。自重で膝を前に出さないスクワットをちゃんとやろうとすると、重心が足よりも後ろ側になり後ろに倒れる(図1)。赤い印が身体の重心。適当に描いたけど多分ここら辺だろう。
試してみればわかるように、大腿が床と平行になるまでしゃがむのは至難の業だ。これは足首や股関節の柔軟性の問題ではなく、重心の問題である。無理にやろうとするとなんとか重心を前に残そうとして、背中を丸めたり上半身を前側に倒しこんだりする不自然な姿勢になる(図2)。自重ならあまり害はないだろうけど、このフォームでスクワットを覚えてバーベルを担ぐと怪我をするリスクが高い。
上半身をやや前に倒して腕を前に出すと、重心が前側に移動してバランスが取れる(図3)。自重で膝を前に出さないスクワットをやりたい場合はこうやるのが良いと思う。下背部が丸まらないように注意する。手で何かに掴まりながらでも良いだろう。
個人的には、自然に膝を前に出して自重スクワットをやればいいと思う(図4)。健康体なら、蹲踞やうさぎ跳びみたいやり方をしない限り、膝を壊すようなことにはならないでしょう。
重たいバーベルを担いでの膝を前に出さないスクワット(ロウバースクワット)は、自然にバランスが取れる。重心(身体の重心とバーベルの重心の合成)がバーベル近くになる(図5)。緑の印が、身体+バーベルの重心。バーベルが軽い場合は、合成重心が身体の重心に近くなるので膝が前に出る。
それと5kgとか10kgのバーを首の辺りに担いで膝を前に出さないスクワットをしてるケースも見るけど、上体を前に倒しつつ首の辺りで担ぐと頚椎に負担がかかって危ない感じがする。軽量では問題が起きることはあまり無いだろうけど、男性だと重量を増やしていく人もいるから気をつけないと・・・。ロウバーもハイバーも担ぐ位置には合理性がある。
関連記事:
スクワットの基本ポイント
7/19/2014
減量時のタンパク質摂取量による体組成変化の違い
Increased protein intake reduces lean body mass loss during weight loss in athletes.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19927027/
一日のタンパク質の摂取量を体重1kgあたり1.0gのグループと2.3gのグループに分けて、減量による体組成変化の違いを調べている。被験者はエリートレベルではないアスリートで、減量前の体脂肪率(平均値)は17%程度。結果は、2週間という短い期間ではあるが、高タンパク質摂取グループの方が除脂肪体重の減少が抑制された。2010年の論文。
★被験者
年齢: 18-40歳
運動歴: 週に2回以上のレジスタンストレーニングを6ヶ月以上継続。
性別: 男性
人種: 英国人
人数: 20人
詳しいデータはTABLE 1に。(数値は平均値±標準誤差)
★実験期間
- トータル4週間
- 減量フェーズは3週目と4週目の計2週間
★減量期間の食事
- 維持カロリー摂取の60%に制限(40%のカロリーカット)。
- マクロ栄養素の割合は、高タンパク質グループがタンパク質35%、脂質15%、炭水化物50%。対照群がタンパク質15%、脂質35%、炭水化物50%。
- 一日のタンパク質の摂取量は、高タンパク質グループが体重1kgあたり2.3g、対照群が体重1kgあたり1.0g。詳しくはTABLE 2に。
- タンパク質は主に動物性タンパク質を摂取。
- 食事回数は不明だが、通常の食事に加えて軽食も摂取して、栄養摂取タイミングを一日に分散させている。栄養摂取タイミングはトレーニングに合わせてはいない。
- 被験者が高タンパク質グループなのか対照群なのかわからなくするため、脂質中心でタンパク質をほとんど含まないプロテインシェイクもどきを作ったり、肉っぽいけど実は脂質が多い食べ物を提供したりと気を使っている。被験者のトレーニングに対するやる気が違ってきたりしないように。
★トレーニング
- 通常のトレーニングを各自継続。
★測定
- 体組成測定方法: DEXA
- 運動パフォーマンス測定: スクワットジャンプ、アイソメトリックでのレッグエクステンションの最大筋力、チェストプレの1RM、チェストプレスの筋持久力テスト、バイクでの無酸素運動能力テスト(Wingate test)
- 血液分析もしているけど特に面白くないのでここでは割愛。
- 主観での疲労感や満腹感も測定している。
★結果
<体組成変化>
以下の数値はアブストラクトに載っているもので多分2週目の測定値からの変化。FIGURE 2 は1週目と2週目の平均値からの変化。体脂肪の減少量は両グループとも同じで、対照群は除脂肪体重の減少が大きく、そのぶんトータルの体重の減少も大きくなっている。
・体重
高タンパク質群: -1.5±0.3kg
対照群: -3.0±0.4kg
・除脂肪体重
高タンパク質群: -0.3±0.3kg
対照群: -1.6±0.3kg
<運動パフォーマンス>
スクワットジャンプの際の踏み込みの力以外は、減量による変化はなし。除脂肪体重は減少しているので、実際には運動能力はわずかに低下していて測定では観測できなかった可能性がある。スクワットジャンプの際の踏み込みの力の低下は、体重減少に伴う必然的なもので、運動パフォーマンスの低下を示すものではないだろうとのこと。
<疲労感>
主観での疲労感は、高タンパク質グループの方が高くなった。理由は不明。
★個人的な感想
- 2週間という短い減量期間だけど、減量時にはタンパク質の摂取量を増やすことで、除脂肪体重の減少を抑制できるという常識的な結果になっている。
- 40%のカロリーカットなので割と速い減量ペース。
- 体重1kgあたり2.3gのタンパク質摂取量がベストなのかは不明。
- 被験者の体脂肪率が平均で17%程度で運動歴があるのでボディメイクの参考になる(アスリート対象の実験は少なく、被験者が肥満で運動歴の無い実験が多い)。
- 減量前後の体重変化にはグリコーゲンと水分量の変化も寄与してそうだけど、両グループ間の比較においては条件は同じ。
関連記事:
減量ペースの違いによる体組成変化と運動パフォーマンス変化
7/13/2014
減量ペースの違いによる体組成変化と運動パフォーマンス変化
Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21558571
ここで全文PDFをダウンロードできる。
遅い減量と速い減量をするグループに分けて、減量ペースの違いが体組成と運動パフォーマンスに与える影響を調べている。2011年の論文。先に結果を書くと、ゆっくり減量した方が除脂肪体重と運動パフォーマンスに有利。
★2つの目標減量ペース
遅い減量:週あたり体重の0.7%ずつ減らしていくようカロリー制限をする。体重70kgだったら毎週0.5kg。
速い減量:週あたり体重の1.4%ずつ減らしていくようカロリー制限をする。体重70kgだったら毎週1kg。
★被験者
年齢:18-35歳
運動歴:エリートアスリート
人種:ノルウェー人
人数:男性11人、女性13人
被験者の競技種目はフットボール、バレーボール、クロスカントリースキー、柔道、柔術、テコンドー、ウォータースキー、モトクロス、自転車、陸上、キックボクシング、体操、アルペンスキー、スキージャンプ、フリースタイルダンス、スケート、バイアスロン、アイスホッケー。
被験者の詳しい身体データはTable 1に。
★食事
- 体組織1gあたり7kcalのエネルギーに相当すると仮定して、目標減量ペースから一日あたりのカロリー不足量を算出。
- 一日あたりの摂取量は、カロリーの25%をタンパク質、55%を炭水化物、20%を脂質。詳しいマクロ栄養素の配分はTable 2に。
- タンパク質摂取量は1.2-1.8g/kg
- 食事回数は、軽食も含めて一日5-7回。
- ミルクプロテインと炭水化物の含まれたドリンクをトレーニング後30分以内に摂取。
- サプリメントについては、クレアチンの摂取を禁止。マルチビタミンとタラの肝油(必須脂肪酸)が処方された。
★トレーニング
- 実験は各アスリートのオフシーズンに行われた。
- トレーニングは、週4回のストレングストレーニング。それに加えて各競技種目の専門トレーニングが平均週15時間程度。
- ストレングストレーニングの内容は、二分割で各部位週に2回トレーニング。メイン種目とアイソレートされたサブ種目を実施。
- 脚のメイン種目はクリーン、スクワット、ハックスクワット、デッドリフト。
- 上半身のメイン種目はベンチプレス、ベンチプル(bench pull)、ローイング、懸垂、ショルダープレス、体幹種目。
- セット数・レップ数: トータル12週間の場合、最初の4週間が3セット・8-12レップ、次の4週間が4セット・6-12レップ・次の4週間が5セット・6-10レップ。減量ペースが速くて実験期間が短い場合はそれぞれ期間を短縮。
★測定
- 体組成測定方法: DEXA
- 運動パフォーマンス測定: 40m走、垂直跳び(countermovement jump)、1RM(ベンチプレス、ベンチプル、スクワット)
★結果
<実験期間>
遅い減量: 8.5±2.2週
速い減量: 5.3±0.9週
<1日のカロリー不足量>
遅い減量: 19%±2%
速い減量: 30%±4%
<体組成変化>
・体重減少
遅い減量: 5.6%±0.8%(週平均0.7%±0.4%)
速い減量: 5.5%±0.7%(週平均1.0%±0.4%)
・体脂肪量減少
遅い減量: 31%±3%
速い減量: 21%±0%
・除脂肪体重変化
遅い減量: +2.1%±0.4%
速い減量: -0.2%±0.7%
・男女別の除脂肪体重変化(遅い減量グループと速い減量グループを合わせたデータ)
女性: +1.8%±0.4%
男性: 0.0%±0.7%
・男性の除脂肪体重変化
遅い減量: +1.7%±0.4%
速い減量: -2.0%±1.0%
<体組成変化の詳細>
- 遅い減量での除脂肪体重の増加は、主に上半身の除脂肪体重増加(+3.1%±0.8%)によってもたらされた。これは、一般的に上半身の方がレジスタンストレーニングに対しての反応が良い、さらにアスリートの場合は下半身はすでに十分鍛えられていて伸びしろがあまりない、といった理由によるものであろう。
- 女性の方が除脂肪体重が増加。体脂肪率が高めなことが影響しているのかもしれない。
<運動パフォーマンス>
Figure 2の通り。遅い減量の方が良い結果だが、遅い減量の方が実験期間が長いのでトレーニング期間も長い。測定種目全体の1RMを週あたりの変化で見ると、1.4%±0.7%と1.3%±0.5%でほぼ同じ結果になっている。
<目標達成について>
減量ペースの目標は週あたりの体重減0.7%と1.4%だが、達成できなかった人もいた。遅い減量では3人が、速い減量では5人が目標レンジから外れた。今回のデータには、達成できなかった人たちのデータも含まれている。達成できなかった人たちのデータを除外しても、結果に有意な違いはなかった。
☆感想☆
- サンプルサイズは小さいけど、ゆっくり減量した方が除脂肪体重と運動パフォーマンスに有利という結果が出ている。
- 実際の減量ペースの目安としては、体脂肪率15-20%程度の男性の場合、週に体重が1%以上減る減量ペースだと、レジスタンストレーニングを行っていても除脂肪体重に悪影響が出るリスクが高い。この実験は被験者が運動歴があって通常の体脂肪率なので、ボディメイクを続けている人にとって参考になると思う。
- 一般的に、体脂肪率が高いほうが減量時に除脂肪体重を維持・増加しやすく、体脂肪が減少しやすい。また、運動歴が少ない方が、減量時にレジスタンストレーニングを取りいれた場合に除脂肪体重の維持・増加が行いやすい。
- この実験でのタンパク質摂取量はそれほど多くないので、減量ペースが速くてもタンパク質の摂取量を2-3g/kgに増やせばある程度は除脂肪体重の減少を抑えられるかもしれない。
- 論文中で引用されている2004年のUmeda他(弘前大学)の実験では、被験者は38名の柔道選手、期間20日、減量ペース1.2kg/週、ストレングストレーニングは2時間/週、という実験条件で、減少した体重の61%が体脂肪、残りが除脂肪体重という結果になったとのこと。無料で読めないので私は中身は読んでないけど、減量ペースが速い、ストレングストレーニングのボリュームが少ないといった点が、除脂肪体重の減少につながってる可能性がある。
関連記事:
減量時のタンパク質摂取量による体組成変化の違い
7/04/2014
筋肥大についてのレビュー論文
A Brief Review of Critical Processes in Exercise-Induced Muscular Hypertrophy
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4008813/
筋肥大についてのレビュー論文。2014年時点の筋肥大についての科学研究の大まかなまとめいったところ。以下、抄訳。(*n)は私のコメント。
★筋肉のタンパク質の更新メカニズム
- 筋繊維の肥大は、筋肉におけるタンパク質バランスの超過と、筋繊維へのサテライト細胞の付着の結果である。
- 筋肉におけるタンパク質バランスの超過は、筋合成が筋分解を上回ることによってもたらされる。
- 運動なしの普通の生活では、食後に筋肉のタンパク質のネットバランスがプラスになり、空腹時にマイナスになり、長期的には筋肉量は一定の水準を保つ。
- レジスタンストレーニングと、食後の血中アミノ酸濃度の高まりの両方が筋合成を刺激する。
- レジスタンストレーニングによる筋合成の増加は少なくとも48時間は続き、トレーニングボリュームが大きければより長く続く。
- 運動後のインスリンレベルの上昇は、筋合成を増大させるというよりも、筋分解を抑制する。
- レジスタンストレーニングは、食事によるタンパク質の合成反応を一時的に増幅させる。運動終了から時間が経つにつれ、食事(アミノ酸供給)への筋合成反応の程度は低下する。(Fig.1)
★タンパク質摂取による筋合成の反応。
- 運動後の時間帯は、血中アミノ酸濃度の高まりが筋合成を大きく増加させる。
- 若い男性がタンパク質を摂取した実験での筋合成の飽和点は、20-25g(必須アミノ酸8.5-10g)程度。(*1)
- 超過分のアミノ酸は酸化される。ただ、筋合成が最大になる前でもある程度は酸化される。
- 血中アミノ酸濃度の上昇は、運動後の筋分解を抑制する。
★タンパク質のクオリティ
- 筋合成のプロセスを推進するのは必須アミノ酸。特にロイシンは筋合成のトリガーの役割を果たす。
- ソイに対するミルクのタンパク質の筋合成優位性は、含有ロイシンの量によってもたらされる。
- ホエイは、カゼインや加水分解されたカゼインよりも大きな筋合成を示した。(*2)
- Fig.2 はロイシンが筋合成のトリガーであるという仮説の概念図。運動はロイシンへの感受性を改善する、すなわち筋合成のトリガーとなるロイシン閾値を下げる。加齢や運動不足はロイシン閾値を上げる(アナボリック抵抗性)。
- 従って、筋合成速度を最大化するには、ロイシン含有率が高く、素早く消化吸収されて血中のロイシン濃度とアミノ酸濃度を急騰させるタンパク質を、運動後に摂取するのが望ましい。
- ただ、ミルク(ホエイ+カゼイン)の摂取が良い結果を出していることは、ファストとスローのプロテインを合わせて摂取することも効果的であることを示している。
★減量時の高タンパク質摂取
- カロリー不足が体重減を決定するというのにはほとんど疑いはないが、体重減には体脂肪と除脂肪体重の減少の割合がどうかというクオリティの問題がある。
- 長期間の自由な食事では高タンパク質の食事でも体重減のクオリティには差がないという研究結果になっている。(*3)
- コントロールされた短期間の実験では、カロリー不足下での高タンパク質の食事は筋肉を維持し体脂肪を多く減らすという結果になっている。
- 運動を伴った減量では、高タンパク質と乳製品の摂取は筋肉を維持し、状況によっては筋肉量の増加をもたらすという結果。
- ただし高タンパク質の食事でも、減量スピードが速いと筋肉量を維持するのは難しい。
★筋合成を増大させるための付加栄養素
- 十分なタンパク質を摂取している場合、それに加えて炭水化物やグルタミンやアルギニン(いわゆるNO系)を摂取しても、筋合成を増加させるというエビデンスはこれまでのところ無い。(*4)
- アルギニンの筋合成への影響を調べた実験では、一時的な成長ホルモンレベルの上昇が観察されたが、他の研究でも示されているように、一時的な成長ホルモンレベルの上昇は筋合成を増加させない。
(*1)消化吸収の速いホエイプロテインパウダーやアミノ酸を摂取すればそうなる。血中アミノ酸濃度が急騰し、筋合成速度の上限に達し、数時間で筋合成レベルが元に戻る。ホールフードならもっと多くのタンパク質を摂取してもゆっくり消化吸収され、長時間筋合成が続くだろう。
(*2)この手の実験はカゼインの消化吸収が終わる前に計測を終えてるのが多いし、筋分解の抑制度合いについては計測していないので、あまりフェアな比較ではない。個人的には、ロイシン含有率が高いほうが筋肥大には優れたタンパク質だと思うけど、消化吸収速度は遅いほうが良いと思う(関連記事参照)。ミルクタンパク質の摂取がソイプロテインの摂取よりも良い結果が出ているのは、カゼインの消化吸収速度が遅いことも影響しているだろう。
(*3)食事内容は自己申告だろうからあまりあてにならない。
(*4)この論文では言及されていないがクレアチンは筋肥大(と運動パフォーマンス)に効果がある。
<感想>
プロテインパウダーやアミノ酸を使ったacuteの研究が多いので、現実へそのまま適用するのはあまり自然ではない。長期的な筋肥大を目指す場合、炭水化物を摂取してグリコーゲンを補充するのと、カロリーを十分に摂取する必要がある(関連記事参照)。それとホールフードの食事では長時間に渡って栄養が供給されるので、運動と食事のタイミングにそれほどシビアになる必要はない。ロイシン含有率については、含有率が低い食品はそのぶん多く摂取すれば良い
関連記事:
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度
AMPkについて
[ボディメイク記録] 増量終了
前回の記録 5月9日
今回の記録 7月4日
★現状記録
筋グリコーゲンレベルは高め。直前のトレ履歴は、前日に全身。
★身体計測
身長:180cm
体重:80.2kg(+2.2kg)
バスト:102cm(+1.0cm)
ウェスト:83cm(+2.0cm)
ヒップ:95cm(+1.0cm)
右上腕:31cm(+0cm)
左上腕:30cm(+0cm)
手首径:16cm
右大腿:59cm(+1.5cm)
左大腿:58cm(+1.0cm)
右カーフ:36cm(+0cm)
左カーフ:35cm(+0cm)
足首径:19cm
★主な種目のトレーニング重量
懸垂ワイド順手・・・7.5kg加重×7reps
ベンチプレス・・・70kg×7reps
ダンベルショルダープレス・・・22kg×10reps
デッドリフト・・・125kg×3reps
スクワット(スミスマシン)・・・85kg×5reps
レッグプレス・・・140kg×10reps
レッグカール・・・65kg×10reps
★トレーニング種目明細
セット数: メイン種目は5レップのフェーズでは3セット、それ以上のレップ数のフェーズでは2セット。補助種目は1-2セット。
メイン種目
- スクワット(週2回)
- デッドリフト(週2回)
- ベンチプレス(週3回)
- レッグプレス(週1回)
補助種目1(毎回やる)
- インクラインダンベルプレス
- インクラインベンチにうつ伏せになってラテラルレイズ
- インクラインベンチにうつ伏せになって上背部を使ってのダンベルローイング
- 懸垂(ワイド順手・ナローパラレル)
- ローイングマシン
補助種目2(毎回はやらない)
- レッグカール
- カーフレイズ
- プレス
- ダンベルショルダープレス
- サイドレイズ
- キューバンプレス
- 腹筋マシン
- 台に肘を置いて身体を浮かせてのレッグレイズ
- インクラインベンチに仰向けになってのアームカール
★増量プロセス
HSTを取り入れて全身を週3回トレーニングした。
カロリー摂取の振り分け目安は以下の通り。あくまで目安なので厳密には出来ていない。
1. トレーニング前の直近の食事は炭水化物多め。
2. トレーニング後24時間は500-1000kcalくらいオーバーカロリー。
3. 24時間を過ぎたら炭水化物カット。次のトレーニング日が来たら1.に戻る。
従って、1週間のサイクルはこんな感じ。
1日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
2日目:休み/維持~アンダーカロリー
3日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
4日目:休み/維持~アンダーカロリー
5日目:全身トレ/500-1000kcakオーバー
6日目:休み/維持~アンダーカロリー
7日目:休み/維持~アンダーカロリー
★食事内容
- タンパク質の摂取量は2-3g/体重1kg/日。動物性食品とプロテインパウダーのみ摂取量にカウント。植物性タンパク質はアミノ酸組成と人体への吸収率が低いのでカウントしていない。
- 脂質の摂取量はあまり把握していないけど、1g/体重1kg/日くらいだと思う。卵や魚や乳製品など高たんぱく質食品に付随する脂質を主に摂取した。揚げ物やドレッシングなどの付加的な脂質はあまり摂取していない。
- トータルカロリーの調整は炭水化物で行った。米、パスタ、ミューズリーが主体。甘いものも適当に。
- 健康のため、野菜、果物、豆も摂取。
★雑感
- 前回(3月~5月)の増量サイクルに比べると、体脂肪が結構ついた。トレーニング重量はあまり伸びず。
- 内転筋が太くなってきて歩く時に内股が擦れる(´・_・`) 4スタンス理論の区別だと私は踵内側重心なので、内転筋やハムストリングスが発達しやすいのだと思う。そしておそらくカーフや大腿四頭筋は発達しにくい。アイソレートして集中的に鍛えれば発達するだろうけど、脚の関節が小さくて怪我しやすいだろうからロウバースクワットをメイン種目としていきたい。
★怪我
- 低レップフェーズになると、左肘に違和感が出ることがあった。ベンチプレスを一回休みにしたら問題なくなった。
★今後の予定
- 1~2週間の維持期の後に減量を始める。
6/11/2014
レップ数によるトレーニング効果の違い
ネタ元: Lyle McDonaldの記事
Effects of different volume-equated resistance training loading strategies on muscular adaptations in well-trained men – Research Review
一般的に、低レップトレーニングは筋力を伸ばし、中レップトレーニングは筋肥大に向いていると言われる。しかしこれまでの研究の多くはトレーニングボリュームが揃っておらず、実験デザインに問題がある。例えば、3セット・3レップと3セット・10レップで実験をして、低レップは筋力向上、中レップは筋肥大をもたらすといった主張をしても、差をもたらしたのはレップ数の違いなのかトレーニングボリュームの違いなのかわからない。
この研究では、パワーリフティング型の低レップトレーニングと、ボディビル型の中レップトレーニングをトレーニングボリュームを揃えて実施し、筋肥大と筋力への影響を調べている。
★実験方法
被験者: トレーニング経験のある若い男性
期間: 8週間
人数: 17名(当初20名で途中で3名脱落)
食事: 自由+トレーニング日にプロテインサプリメント24gを支給
トレーニングボリュームは、セット×レップ×重量で表せる。これが等しくなるよう調整。
- 低レップ群: 7セット・3レップ / インターバル3分
- 中レップ群: 3セット・10レップ / インターバル90秒
トレーニング日は週3回。低レップ群は各トレーニング日に全身(胸、背中、脚)。中レップ群は、胸の日、背中の日、脚の日を分け、各部位3種目を週1回ずつトレーニング。
★結果
筋肥大については、上腕二頭筋を測定。両群とも筋肥大の程度に差は無しという結果になった。ただ、プル系の種目で上腕二頭筋をある程度使うとは言っても、上腕二頭筋にフォーカスした種目はトレーニングプロトコルに含まれておらず、なぜこのような測定方法なのかモヤモヤが残る。これについてはコメント欄に論文著者が書き込んでいて、実験では大腿四頭筋の測定も行ったが、十分なデータが得られなかったので論文には載せなかったとのこと。得られた範囲のデータでは、同じくらいの筋肥大を示していた。
筋力についてはベンチプレスとスクワットの1RMを測定。低レップ群の方が伸びが大きかった。
- 低レップ群: ベンチプレス+13%、スクワット+25.9%
- 中レップ群: ベンチプレス+9.1%、スクワット+22.2%
低レップ群の方が、肉体的・精神的に強い疲労を感じていた。
脱落者3名は、2名が関節周りの怪我、1名が個人的な理由。怪我の2名は低レップ群から出た。当実験では小さいサンプルではあるが、一般的に低レップ高重量のトレーニングは関節周りの怪我のリスクが高くなる懸念がある。
トレーニングにかかる時間に大きな差がある。7セット・3レップ/インターバル3分をこなすにはかなり時間がかかる
★個人的な感想
筋力の伸びの差をもたらした要因が発火頻度とモーターユニット連動だけなら、トレーニング時間効率と怪我のリスクを考慮して、ボディメイクでは中レップトレーニングを中心に行うのが良いと思う。ただ、8週間という短さでは筋肥大測定で有意な差が出ていない可能性があり、実際には筋肥大の程度に差が出ていてそれも筋力の伸びの差の要因になっているのなら、低レップにも優位点がある。まあ特定のレップ数のみでトレーニングを行わなければならない理由はないので、適当に混ぜてやれば良いと思う。
関連記事:
セット数によるトレーニング効果の違い
筋肥大トレーニングプログラムにおけるトレードオフ
Effects of different volume-equated resistance training loading strategies on muscular adaptations in well-trained men – Research Review
一般的に、低レップトレーニングは筋力を伸ばし、中レップトレーニングは筋肥大に向いていると言われる。しかしこれまでの研究の多くはトレーニングボリュームが揃っておらず、実験デザインに問題がある。例えば、3セット・3レップと3セット・10レップで実験をして、低レップは筋力向上、中レップは筋肥大をもたらすといった主張をしても、差をもたらしたのはレップ数の違いなのかトレーニングボリュームの違いなのかわからない。
この研究では、パワーリフティング型の低レップトレーニングと、ボディビル型の中レップトレーニングをトレーニングボリュームを揃えて実施し、筋肥大と筋力への影響を調べている。
★実験方法
被験者: トレーニング経験のある若い男性
期間: 8週間
人数: 17名(当初20名で途中で3名脱落)
食事: 自由+トレーニング日にプロテインサプリメント24gを支給
トレーニングボリュームは、セット×レップ×重量で表せる。これが等しくなるよう調整。
- 低レップ群: 7セット・3レップ / インターバル3分
- 中レップ群: 3セット・10レップ / インターバル90秒
トレーニング日は週3回。低レップ群は各トレーニング日に全身(胸、背中、脚)。中レップ群は、胸の日、背中の日、脚の日を分け、各部位3種目を週1回ずつトレーニング。
★結果
筋肥大については、上腕二頭筋を測定。両群とも筋肥大の程度に差は無しという結果になった。ただ、プル系の種目で上腕二頭筋をある程度使うとは言っても、上腕二頭筋にフォーカスした種目はトレーニングプロトコルに含まれておらず、なぜこのような測定方法なのかモヤモヤが残る。これについてはコメント欄に論文著者が書き込んでいて、実験では大腿四頭筋の測定も行ったが、十分なデータが得られなかったので論文には載せなかったとのこと。得られた範囲のデータでは、同じくらいの筋肥大を示していた。
筋力についてはベンチプレスとスクワットの1RMを測定。低レップ群の方が伸びが大きかった。
- 低レップ群: ベンチプレス+13%、スクワット+25.9%
- 中レップ群: ベンチプレス+9.1%、スクワット+22.2%
低レップ群の方が、肉体的・精神的に強い疲労を感じていた。
脱落者3名は、2名が関節周りの怪我、1名が個人的な理由。怪我の2名は低レップ群から出た。当実験では小さいサンプルではあるが、一般的に低レップ高重量のトレーニングは関節周りの怪我のリスクが高くなる懸念がある。
トレーニングにかかる時間に大きな差がある。7セット・3レップ/インターバル3分をこなすにはかなり時間がかかる
★個人的な感想
筋力の伸びの差をもたらした要因が発火頻度とモーターユニット連動だけなら、トレーニング時間効率と怪我のリスクを考慮して、ボディメイクでは中レップトレーニングを中心に行うのが良いと思う。ただ、8週間という短さでは筋肥大測定で有意な差が出ていない可能性があり、実際には筋肥大の程度に差が出ていてそれも筋力の伸びの差の要因になっているのなら、低レップにも優位点がある。まあ特定のレップ数のみでトレーニングを行わなければならない理由はないので、適当に混ぜてやれば良いと思う。
関連記事:
セット数によるトレーニング効果の違い
筋肥大トレーニングプログラムにおけるトレードオフ
6/06/2014
カゼイネートとミセラーカゼインの消化吸収速度
★基礎知識
カゼイネートとミセラーカゼインの違いについてはこの記事(pdf)を参照。ちなみに今回引用した論文は、この記事内のBoirieとReitelsederのもの。先に論文読んでからこの記事見つけたので偶然。この記事で言及されてないことは、Reitelsederの研究で使われたカゼインはカゼイネートであること。
<<カゼイネートの消化吸収速度>>
Whey and casein labeled with l-[1-13C]leucine and muscle protein synthesis: effect of resistance exercise and protein ingestion
http://ajpendo.physiology.org/content/300/1/E231.long
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康
性別: 男性
人数: 17名
年齢: 24-30歳
BMI: 22-25
LBM: 55-60kg
運動歴: 過去6ヶ月に継続的な有酸素運動とレジスタンストレーニングの経験なし
★実験方法
運動: 片足レッグエクステンション、80%1RMの重量で8レップ10セット。
栄養摂取: 運動直後に、水かホエイかカゼイン(カルシウム・カゼイネート)を摂取。プロテインの摂取量は、LBM(除脂肪体重)1kgあたり0.30g
★結果
血漿アミノ酸濃度は以下のFig.4.の通り。これはトータルの濃度で、実験で摂取したアミノ酸と筋分解で血中に放出されたアミノ酸を区別していない。有意差*はホエイとカゼインについてのもので、ベースラインに対してのものではない。全体的に、ホエイは3時間程度で、カゼイン(カルシウム・カゼイネート)は4時間程度でベースラインに戻っている。

以下のFig.6.は筋合成の速度。1時間後から3.5時間後はホエイの筋合成速度が大きく、3.5時間後から6時間後はカゼインの筋合成速度が大きい。トータルではホエイとカゼインの間では有意差なし。この実験では筋合成のみ調べていて、筋分解については不明。カゼインの方が筋分解を長時間に渡って防ぐだろうから、ネットバランスはカゼインの方が有利という結果になっていると思われる(注意点:短期の結果が長期の結果を保証するわけではない)。

<<ミセラーカゼインの消化吸収速度>>
よく見かける1997年のBoirie他の研究を引用する。カゼインの種類は論文中には書かれていないがミセラーカゼイン。他の論文でこの実験で使ったのはミセラーカゼインだと明記している。
Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9405716
この実験の優れている点。
- 同位体を含んだ標識用ロイシンを乳牛を経由(絞られた乳からプロテイン抽出)させることで実験用のプロテインに標識をつけている。
- ロイシンを主な測定対象としているので、ホエイとカゼインのトータルの摂取量を、含有ロイシン量が等しくなるように調整している。
- 血中のロイシンの測定はトータルのロイシン濃度だけではなく、実験で摂取したプロテイン由来のものと、筋分解により血中に供給されたものも測定している。
- プロテイン摂取後7時間まで測定している。
★結果
カゼインは、7時間後もトータルの血漿ロイシン濃度(左上)がベースラインを上回っている。右側はロイシン現出速度で、Exoが実験で摂取したプロテイン由来で血中へのアミノ酸供給の目安、Endoが内部由来つまりカタボリックの目安。
実験条件は、摂取量がホエイ30g、カゼイン43g(含有ロイシンの量が等しくなるようにしている)で、カゼイネートの実験より摂取量が多く、またこの実験では運動を行っていないこともあり、直接の比較は難しいけど、別の論文でミセラーカゼイン30g摂取で8時間経っても血漿ロイシン濃度はベースラインを上回っていたし、消化吸収の速度は、ホエイ>カゼイネート>ミセラーカゼイン で良いと思う。
ちなみに日本製のカゼインプロテインは、カゼイネートを使っているものが多いので、成分チェックをちゃんとしよう。私は何のしがらみもないので遠慮なく具体名を出すけど、バルクスポーツのカゼインプロテインはカゼイネートを使っているのに、たしか以前購入した時の記憶ではパッケージにはBoirieの論文のグラフとおぼしきものを載せていて、商品説明には「ミルクをろ過して製造され」「約7時間もアミノ酸を放出」といったミセラーカゼインの特徴が書かれているので、誇大広告か虚偽表示になるのではないだろうか。
★実際の栄養摂取への適用
通常はホールフードの食事をメインにして補助としてプロテインパウダーを使うだろうから、ホエイかカゼイネートかミセラーカゼインかはそれほど神経質になる必要はないとは思う。一日のトータルのタンパク質摂取量が最も大事。プロテインパウダーと糖分を含んだ飲み物といった流動食をメインにするのなら、消化吸収速度に合わせて食事間隔を調整した方が良いだろう。シビアな減量時や食事間隔が空く時にプロテインパウダーを使う場合は、カゼイネートは避けてミセラーカゼインにするのが良いと思う。
★補足
こういう短期(acute)の研究から導かれる一般的論としては、ホエイとカゼインを合わせて摂取するのがベストということになる。ただ、長期間に渡ってだとどうなるかわからない。acuteの研究だと、運動無しでも食後には筋合成が起きる。これは空腹時の筋分解の回復なのか、一時的に筋肉にアミノ酸が押し込まれる感じになっているのかよくわからないけど、運動なしでは当然長期の筋肥大にはつながらない。従って運動後の栄養摂取による筋合成のデータにも、一時的なものと長期的なものが含まれてると思う。ホエイの短時間の筋合成ブーストも一時的なものの割合が高いのなら、長期の筋肥大にはあまり意味がなくて、ホールフードやカゼインなどのスロープロテインで淡々とアミノ酸供給しとけば良いのではないかという話になる。(ホエイとカゼインの効果を比較した長期の研究は一応あるんだけど、実験デザインがいまいち)
関連記事:
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
カゼイネートとミセラーカゼインの違いについてはこの記事(pdf)を参照。ちなみに今回引用した論文は、この記事内のBoirieとReitelsederのもの。先に論文読んでからこの記事見つけたので偶然。この記事で言及されてないことは、Reitelsederの研究で使われたカゼインはカゼイネートであること。
<<カゼイネートの消化吸収速度>>
Whey and casein labeled with l-[1-13C]leucine and muscle protein synthesis: effect of resistance exercise and protein ingestion
http://ajpendo.physiology.org/content/300/1/E231.long
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康
性別: 男性
人数: 17名
年齢: 24-30歳
BMI: 22-25
LBM: 55-60kg
運動歴: 過去6ヶ月に継続的な有酸素運動とレジスタンストレーニングの経験なし
★実験方法
運動: 片足レッグエクステンション、80%1RMの重量で8レップ10セット。
栄養摂取: 運動直後に、水かホエイかカゼイン(カルシウム・カゼイネート)を摂取。プロテインの摂取量は、LBM(除脂肪体重)1kgあたり0.30g
★結果
血漿アミノ酸濃度は以下のFig.4.の通り。これはトータルの濃度で、実験で摂取したアミノ酸と筋分解で血中に放出されたアミノ酸を区別していない。有意差*はホエイとカゼインについてのもので、ベースラインに対してのものではない。全体的に、ホエイは3時間程度で、カゼイン(カルシウム・カゼイネート)は4時間程度でベースラインに戻っている。

以下のFig.6.は筋合成の速度。1時間後から3.5時間後はホエイの筋合成速度が大きく、3.5時間後から6時間後はカゼインの筋合成速度が大きい。トータルではホエイとカゼインの間では有意差なし。この実験では筋合成のみ調べていて、筋分解については不明。カゼインの方が筋分解を長時間に渡って防ぐだろうから、ネットバランスはカゼインの方が有利という結果になっていると思われる(注意点:短期の結果が長期の結果を保証するわけではない)。

<<ミセラーカゼインの消化吸収速度>>
よく見かける1997年のBoirie他の研究を引用する。カゼインの種類は論文中には書かれていないがミセラーカゼイン。他の論文でこの実験で使ったのはミセラーカゼインだと明記している。
Slow and fast dietary proteins differently modulate postprandial protein accretion
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9405716
この実験の優れている点。
- 同位体を含んだ標識用ロイシンを乳牛を経由(絞られた乳からプロテイン抽出)させることで実験用のプロテインに標識をつけている。
- ロイシンを主な測定対象としているので、ホエイとカゼインのトータルの摂取量を、含有ロイシン量が等しくなるように調整している。
- 血中のロイシンの測定はトータルのロイシン濃度だけではなく、実験で摂取したプロテイン由来のものと、筋分解により血中に供給されたものも測定している。
- プロテイン摂取後7時間まで測定している。
★結果
カゼインは、7時間後もトータルの血漿ロイシン濃度(左上)がベースラインを上回っている。右側はロイシン現出速度で、Exoが実験で摂取したプロテイン由来で血中へのアミノ酸供給の目安、Endoが内部由来つまりカタボリックの目安。
実験条件は、摂取量がホエイ30g、カゼイン43g(含有ロイシンの量が等しくなるようにしている)で、カゼイネートの実験より摂取量が多く、またこの実験では運動を行っていないこともあり、直接の比較は難しいけど、別の論文でミセラーカゼイン30g摂取で8時間経っても血漿ロイシン濃度はベースラインを上回っていたし、消化吸収の速度は、ホエイ>カゼイネート>ミセラーカゼイン で良いと思う。
ちなみに日本製のカゼインプロテインは、カゼイネートを使っているものが多いので、成分チェックをちゃんとしよう。私は何のしがらみもないので遠慮なく具体名を出すけど、バルクスポーツのカゼインプロテインはカゼイネートを使っているのに、たしか以前購入した時の記憶ではパッケージにはBoirieの論文のグラフとおぼしきものを載せていて、商品説明には「ミルクをろ過して製造され」「約7時間もアミノ酸を放出」といったミセラーカゼインの特徴が書かれているので、誇大広告か虚偽表示になるのではないだろうか。
★実際の栄養摂取への適用
通常はホールフードの食事をメインにして補助としてプロテインパウダーを使うだろうから、ホエイかカゼイネートかミセラーカゼインかはそれほど神経質になる必要はないとは思う。一日のトータルのタンパク質摂取量が最も大事。プロテインパウダーと糖分を含んだ飲み物といった流動食をメインにするのなら、消化吸収速度に合わせて食事間隔を調整した方が良いだろう。シビアな減量時や食事間隔が空く時にプロテインパウダーを使う場合は、カゼイネートは避けてミセラーカゼインにするのが良いと思う。
★補足
こういう短期(acute)の研究から導かれる一般的論としては、ホエイとカゼインを合わせて摂取するのがベストということになる。ただ、長期間に渡ってだとどうなるかわからない。acuteの研究だと、運動無しでも食後には筋合成が起きる。これは空腹時の筋分解の回復なのか、一時的に筋肉にアミノ酸が押し込まれる感じになっているのかよくわからないけど、運動なしでは当然長期の筋肥大にはつながらない。従って運動後の栄養摂取による筋合成のデータにも、一時的なものと長期的なものが含まれてると思う。ホエイの短時間の筋合成ブーストも一時的なものの割合が高いのなら、長期の筋肥大にはあまり意味がなくて、ホールフードやカゼインなどのスロープロテインで淡々とアミノ酸供給しとけば良いのではないかという話になる。(ホエイとカゼインの効果を比較した長期の研究は一応あるんだけど、実験デザインがいまいち)
関連記事:
タンパク質の消化吸収速度の違いによる筋肥大への影響
5/30/2014
オーバーカロリー時のグルコース・フルクトース摂取の影響
1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースを10週間にわたって摂取した場合の、体組成および脂質代謝異常やインスリン感受性に関する各指標への影響を調べた研究。結論を先に書いておくと、オーバーカロリーの状態でフルクトースを大量に摂取すると、腹部内臓脂肪が増加しやすく、脂質代謝異常のリスクが高まり、耐糖能が低下し、インスリン感受性が低下する。
★基礎知識
グルコース: ブドウ糖
フルクトース: 果糖
スクロース: グルコース分子1つとフルクトース分子1つが結合したもの。いわゆる普通の砂糖。
普通の食べ物で甘いものにはだいたいフルクトースが含まれている(麦芽糖や人工甘味料を除く)。
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康(肥満で中性脂肪などの各指標は良くはないけど現状では特に病気無し)
性別: 男性・女性
人数: 32名
年齢: 45-72歳
BMI: 25-35
運動: 被験者選びの段階で週の運動時間が3.5時間以上の人は除外。実験期間中も運動指導はなし。
<期間>
3段階の実験フェーズで構成されている。
a) 研究センター内での2週間。維持カロリーの食事。マクロ栄養素の割合は、タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%。炭水化物は複合炭水化物。
b) 研究センター外での8週間。自由な食事に加えて、1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースのドリンクを摂取。糖ドリンクは3度の食事の時にそれぞれ一緒に摂取。これ以外は糖分の含まれる飲み物を飲まないよう指導。
c) 研究センター内での2週間。1日の必要カロリーの25%相当のグルコースもしくはフルクトースのドリンクを摂取しつつ、トータルで維持カロリーになるように食事管理。マクロ栄養素の割合は、タンパク質15%、脂質30%、炭水化物55%。炭水化物は複合炭水化物30%と、グルコースもしくはフルクトース25%。
★結果
- 研究センター外の8週間の体重・体脂肪量・ウェストサイズの増加は、グルコース・フルクトース群とも同じくらい。(Table 3 参照)
- フルクトース群は、腹部の体脂肪、特に内臓脂肪の増加が多かった。グルコース群は腹部内臓脂肪はほとんど増えなかった。(Figure 1 と Table 3 を参照 / SAT=皮下脂肪 VAT=内臓脂肪)
- 男性は腹部内臓脂肪の増加が女性よりも顕著だった。(Table S3 の最下段参照)
- 血中の脂質とリポタンパクの各指標は、全般的にフルクトース群の方が大幅に増加。(Table 4 参照)
- 食後のDNL(糖質→脂質)変換はフルクトース群で大幅に増加。(Table 4 参照)
- 耐糖能は、グルコース群では変わらなかったが、フルクトース群では低下。(Table 5 参照)
- インスリン感受性は、グルコース群では男性が上昇、女性は低下、フルクトース群では男女とも低下し女性の方が低下率が大きい。(Table 5 参照)
★個人的な感想
この実験とボディメイクでの意図的な増量では、運動の有無と、実験の被験者がすでにかなりの肥満であるという点が異なる。まあ増量時は甘いものを大量に食べない方が、比較的健康的に増量できるだろう。摂取する炭水化物は、米やパスタなど複合炭水化物を主体にするのが良いだろう。デザートやおやつに適度に甘いものを食べるのはさして影響ないと思う。
ちなみにこの研究で摂取したフルクトースと同レベルのフルクトースを摂取しようとしたら、成人男性(1日の必要摂取カロリー2400kcalと想定)で毎日2.5リットルのコーラを飲む必要がある。砂糖なら300グラム。ただ、フルクトースに加えてほぼ同量のグルコースも摂取することになるのでこの実験デザインと等しくはならない。
参考:
Consuming fructose-sweetened, not glucose-sweetened, beverages increases visceral adiposity and lipids and decreases insulin sensitivity in overweight/obese humans
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19381015
関連記事:
維持カロリーでの砂糖・果糖ぶどう糖液糖の摂取の影響
砂糖と糖尿病
果糖ぶどう糖液糖と肥満
5/28/2014
維持カロリーでの砂糖・果糖ぶどう糖液糖の摂取の影響
スクロース(≒砂糖)やHFCS(≒果糖ぶどう糖液糖)の健康への影響を調べた既存の研究は、疫学調査や、マウスに異常な量を与えるといった研究が多い。今回の研究は、肥満の人が一般的に摂取している量の糖を摂取した場合の身体への影響を調べた初めての前向き研究(prospective study)とのこと。2014年発表の研究。
スクロースとHFCSの違いは、グルコース分子とフルクトース分子が結合しているか否かと、フルクトースが含まれる割合。一般的に使用されているHFCSはフルクトースの割合が55%か42%なので、フルクトース含有率はスクロースとほぼ同じ。
★実験条件
<被験者>
健康状況: 健康な肥満
性別: 男性・女性
人種: 白人68%、アフリカ系9%、ヒスパニック14%、アジア系6%、その他3%
人数: 65名
年齢: 25-60歳
BMI: 27-35
<期間>
10週間
<一日の食事>
摂取カロリー: 維持カロリー
総摂取カロリーに占める糖由来のカロリーの割合: 10%HFCS / 20%HFCS / 10%スクロース / 20%スクロース
食事管理方法:低脂肪乳に糖を混ぜたものを被験者に配給。トータルで維持カロリーになるよう食事指導。食事は外で各自食べる。加糖された低脂肪乳を規定量飲まなかったりすると実験から脱落。開始時86名で最終的に65名が残った。
★結果
血圧や中性脂肪レベルは全てのグループで変化無し。
体重は全体では10週間で1kg増えたが、テクニカルには維持されていると言っていい状態。自己申告ベースでトータルの摂取カロリーが増えたことが原因かも(外で各自食事しているので正確な摂取カロリーは把握できない)。ウェストサイズには有意な差は無し。
スクロース20%群でHDL低下が見られた。脂質の摂取量が減って炭水化物の摂取量が増えたことが要因かも。
まとめると、一日の摂取カロリーの10%および20%相当のスクロースと砂糖(食事でも糖を摂取しているのでトータルの糖の摂取量はもっと多い。Table 3を参照)を10週間摂取しても、総摂取カロリーが維持カロリー程度ならば、体重や肥満状況やウェストサイズや中性脂肪レベルやLDLや血圧には悪影響が現れないという結果になった。
★感想
一通り読んだけど、まともな研究だと思った。ただ、資金を出しているのがコーン精製に関わる企業の協会だ。当然、HFCSの利害関係者。うーん。他の研究からも、トータルの摂取カロリーが維持カロリーで、常識的な範囲内での摂取量なら、砂糖およびHFCSの摂取は肥満や循環器疾患などの大きなリスクにならないというのは正しいと思うが。
参考:
The Effect of Normally Consumed Amounts of Sucrose or High Fructose Corn Syrup on Lipid Profiles, Body Composition and Related Parameters in Overweight/Obese Subjects
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3967182/
関連記事:
砂糖と糖尿病
果糖ぶどう糖液糖と肥満
5/26/2014
砂糖と糖尿病
高スクロースと低スクロースの食事をした場合の、健康への影響を調べた研究。糖尿病と循環器疾患に関わる各指標に差が出るのかどうか実験している。砂糖を多く摂取すると2型糖尿病と循環器疾患の発症リスクが高まるのかを調べるのが目的。
★実験条件
<被験者>
健康状態: 健康
性別: 男性
人種: 西欧白人
人数: 13名
年齢: 33歳±3
BMI: 26.6±0.9
<期間>
6週間
<一日の食事>
摂取カロリー: 維持カロリー
マクロ栄養素:タンパク質10-15% / 脂質30-35% / 炭水化物~55%
その他: 食物繊維18g
スクロース: 低スクロース群が10%、高スクロース群が25%のカロリーをスクロースで摂取。
食事管理方法: 条件に沿う量を計り被験者に配給。食事は外で各自食べる。週二回の体重測定で連続して増加もしくは減少した場合はカロリー調整を行う
★結果
高スクロース群と低スクロース群では、インスリン感受性や血圧や空腹時血糖値や中性脂肪レベルなどに違いは出なかった。総コレステロールとLDLコレステロールは、高スクロース群の方がやや高くなった(レベル自体は正常の範囲内)。これについては、両群でトータルの脂質の摂取量は同じだが、高スクロース群は低スクロース群に比べて、飽和脂肪酸の摂取量が多くて多価不飽和脂肪酸の摂取量が少なく、これがLDLコレステロールの上昇に寄与したのではないかと論文著者は推測している。
★結論
健康な若い白人男性においては、高スクロースの食事は糖尿病と循環器疾患の大きなリスクファクターにはならないだろう。カロリーオーバーと運動不足が大きなリスクファクターだろう。
★個人的感想
2型糖尿病のなりやすさは個人差があるけど、人種によっても差があって、白人は2型糖尿病の耐性が高いという話が一般的。農業(高炭水化物食)の歴史の長さが遺伝子プールに影響してウンタラカンタラ。なんだけど、このへんの話はイデオロギー的な論争(糖質制限主義者など)や糖尿病関連ビジネスに群がる団体・研究者が入り乱れていて、調べようとしても何が科学的に正しいのかよくわからない。まあインスリン関連の体内システムの悪化が2型糖尿病の要因になるのなら、今回の研究ではインスリン関連の指標に差が出ていないので、スクロースの摂取量の増加は人種間の耐性の差に関係なく2型糖尿病の大きなリスクファクターにはならないということになる。リスクがゼロと断言できないのは、疫学調査では砂糖の摂取量と糖尿病の発症が相関する傾向がある、今回の研究は期間が6週間程度で長期間の影響がわからない、といった理由。
カロリーオーバーと運動不足を避けるのが最も重要だというのは間違いなさそうなので、それを守っていれば炭水化物の質にそれほど神経質にならなくてもいいかと個人的には思ってる。もちろん砂糖の摂り過ぎは、カロリーや微量栄養素の観点から健康には良くないだろう。砂糖に限らず精製度の高い食品の問題点は、GI値がどうのではなくて、カロリーオーバーしやすく微量栄養素が乏しいこと。
参考:
Effect of Eucaloric High- and Low-Sucrose Diets With Identical Macronutrient Profile on Insulin Resistance and Vascular Risk A Randomized Controlled Trial
http://diabetes.diabetesjournals.org/content/55/12/3566.long
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