7/15/2020

TRF(Time-Restricted Feeding)の研究

TRF(Time-Restricted Feeding)は、一日のうち食事を摂れる時間枠を8時間以内や4時間以内と決めて、残りの時間はカロリー摂取をしない食事方法のこと。具体名を出すと、リーンゲインズやウォリアーダイエットといった方法。

TRFはIF(Intermittent Fasting)に含まれるけど、IFだと一日置きの断食(ADF:Alternate-day fasting)などもあって、そういった方法は運動する人には実行が難しい。TRFは運動する人でも実行可能。

TRFとレジスタンストレーニングを組み合わせた研究がここ数年でいくつか出てきたので紹介します。

(1)Effects of eight weeks of time-restricted feeding (16/8) on basal metabolism, maximal strength, body composition, inflammation, and cardiovascular risk factors in resistance-trained males
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5064803/

・被験者
トレーニング歴ありの若い男性。平均は身長178cm、体重84kg、体脂肪率13%程度で、ベンチプレス1RMが110kgくらい。
 
・実験期間:8週間

・トレーニングは週3日 16時-18時に実施

・食事方法
TRF食事 午後1時、午後4時、午後8時
通常食事 午前8時、午後1時、午後8時

- 被験者の普段どおりの食事内容を続け、食事タイミングとカロリー配分だけ指導されている。
- 両グループともマクロ栄養素バランスは非常に似通っている。
- 摂取カロリーは3000kcal程度、タンパク質は体重1kgあたり2g程度。
- 自己申告での実験中摂取カロリーは両グループとも実験前より100kcal程度減少。

★結果
- 除脂肪体重と筋肉の断面積は両グループとも実験前後で有意差なし。
- 体脂肪量はTRFグループが1.6kgくらい減少、通常食グループは実験前後で有意差なし。
- ストレングスは両グループとも実験前後で有意差なし。

★コメント
TRF自体に体脂肪を減りやすくする効果があるかは微妙なところで、TRFグループは摂取カロリーが自己申告よりも少なくなっていた感じもする。炎症指標など健康面ではTRFのほうが良さそう。テストステロンレベルとIGF-1レベルがTRFグループでは低下しているが除脂肪体重に悪影響は無し。


(2)Time-restricted Feeding in Young Men Performing Resistance Training: A Randomized Controlled Trial
https://www.researchgate.net/publication/306395702_Time-restricted_feeding_in_young_men_performing_resistance_training_A_randomized_controlled_trial

・被験者
若い男性で、継続的にレジスタンストレーニングをしていない。

通常食被験者:身長180cm 体重79kg 体脂肪率18.7% 週あたり0.8回のレジスタンストレーニング
TRF被験者:身長179cm 体重87kg 体脂肪率21.3% 週あたり0.5回のレジスタンストレーニング

・実験期間:8週間

・トレーニングは週3日

・食事方法
TRFグループは、4時間以内の食事を週4日(トレーニングの無い日)。トレーニング日は好きに食べて良い。
通常食グループは普段どおりの食生活を続ける。

両グループとも食事の量も食品も自由。

★結果
- TRFグループはTRFの日は摂取カロリーが667kcal減少で、タンパク質摂取量はトレーニング日118g、TRF日79g。
- TRFグループの体組成変化は実験前後で有意差なし。
- 通常食グループは、体重、除脂肪体重、体脂肪それぞれ増加。
- ストレングスの伸びはベンチプレスは同程度、レッグプレスはTRFのほうが伸びた

★コメント
他のTRFの研究では全日TRFで、食事枠の時間内にトレーニングを実施というデザインだが、この研究は違う。研究デザインがTRFの効果を考える上であまり参考にならないが一応紹介。

被験者のトレーニング歴はほぼ初心者だけど、TRFグループは除脂肪体重が増えていないので、トレーニング日以外のカロリーを減らしたり、タンパク質摂取量を減らしたりするのは筋肥大に向かないと考えられる。


(3)Time-restricted Feeding Plus Resistance Training in Active Females: A Randomized Trial
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6735806/

・被験者
トレーニング歴有りの若い女性。平均で身長166cm、体重64kg、体脂肪率29%、ベンチプレス1RMが40kgくらい。普段は週3日トレーニングしているとのこと。

・グループ分け
- 通常食
- TRF
- TRF+HMB(食事方法がTRFでサプリメントでHMB摂取)

・実験期間:8週間

・トレーニングは週3日 12時-18時の間に実施

・食事方法
TRFは12時-20時の間に食事
通常食は朝起きてすぐ朝食、あとは普段どおりに

タンパク質摂取量と摂取カロリーはグループ間で揃えるよう指導した。
実験中の摂取カロリーは実験前と比べて以下のようになった
通常食 +186kcal
TRF +194kcal
TRF+HMB +23kcal

タンパク質摂取量はどのグループも100g程度で、除脂肪体重45kg程度なので十分な摂取量と考えられる。

★結果
- 除脂肪体重と筋肉の厚みは、3グループとも増加した。グループ間で有意差なし。
- 体脂肪量はTRF+HMBグループのみ減少。おそらくこのグループは摂取カロリーが少なかったからと思われる。
- 血液の健康指標は特に改善されたりはしなかった

★コメント
摂取カロリーを揃えればTRFに特に効果なしといった結果。


(4)Four Weeks of Time-Restricted Feeding Combined With Resistance Training Does Not Differentially Influence Measures of Body Composition, Muscle Performance, Resting Energy Expenditure, and Blood Biomarkers
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7231047/

・被験者
トレーニング歴有りの若い男性。平均で身長178cm、体重83kg、体脂肪率19%、ベンチプレス1RM90kg程度。

・実験期間:4週間

・トレーニングは週3日 15-20時の間に実施

・食事方法
- TRF、通常食の両グループとも25%のカロリーカットを目指した。
- TRFグループは12-20時もしくは13-21時の8時間以内に食事。
- 実験中の食事記録から算出した摂取カロリーは1940kcal、タンパク質摂取量は約1.8 g/kg/dayで両グループとも同程度。

★結果
体組成変化
TRF 体重-1.2kg 体脂肪量-1.5kg
通常食 体重-1.4kg 体脂肪量-1.4kg

- 体重と体脂肪量は、実験前後の変化にグループ間有意差なし。
- 除脂肪体重は両グループとも実験前後で有意差なし。
- 筋肉の断面積と厚みは実験前後で肥大している測定箇所が複数有るが、増加量に両グループ間で有意差無し。 
- ストレングスは実験前後の変化にグループ間有意差なし。
- 安静時代謝は両グループで低下だが、両グループ間で有意差無し
- テストステロン、レプチン、アディポネクチンの変化は両グループ間で有意差なし
- コルチゾールレベルのみ通常食が高くなった

★コメント
この研究は明確にカロリーカットしている。TRFに体組成変化を有利にする効果は無しという結果になった。



★まとめ
TRFで体脂肪量が減りやすくなるかは微妙な感じ。TRFだと決められた時間枠で一日分のカロリーを食べきるのが大変で摂取カロリーが少なくなりやすく、結果として減量になることが多いだけな感じもする。

食事枠とトレーニングタイミングを合わせた研究では、8時間以内の食事でも除脂肪体重に悪影響が出ていないので、TRFを取り入れるかどうかに関わらず軽い減量なら食事タイミング(タンパク質とカロリーの供給タイミング)はフレキシブルに考えて良さそう。つまりカタボリックが起きないようにコンスタントに食べ続ける必要はなさそうといえる。

ただ、研究はトレーニングレベルやカロリー不足の度合いや体脂肪率がシビアな状況ではないので、例えばコンテストを目指すボディビルダーもTRFで除脂肪体重に悪影響が出ないかはわからない。

増量でTRFをやるとどうなるのかわからない。カロリーオーバーにすれば通常食と同程度筋肥大しそうな感じがするけど、TRFでカロリーオーバーにするのはかなりキツイと思う。

テストステロンやレプチンやコルチゾールの変動は研究によってまちまち。これらのホルモンレベルは日中の変動幅が大きいので、単なる測定タイミングの問題かもしれない。(1)の研究が出た時はTRFは健康改善に効果あるかもと考えたけど、その後(3)(4)の研究が出てきて、特に効果ないのかな?という考えに個人的には傾きつつある。

朝出社して夜帰宅する会社勤めの人の生活パターンだと、TRFは実行がなかなか難しい。トレーニングの実施タイミングを、8時間の食事時間枠のどこかに入れる必要があるが、退社時間が早くて18時からトレーニング開始といったやり方ができる生活スタイルでないと難しい。食事時間枠を後ろにずらして、15-23時に食事といった形にすると、寝る直前にたくさん食べることになり、睡眠の質が低下しやすくなる。

あと以前朝食抜きパターンでTRFを試したことあるのですが、朝食を食べないとウンコが出にくい。

3 件のコメント:

  1. 「ボディメイクガイド」からこのブログにきて、真っ先に興味のある記事を読ませていただきました。ブログものんびり拝見させていただきます。想像以上にガチですね(´ー`)

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  2. ドラさん、コメントありがとうございます!

    英語の勉強にもなるしと思って色々と読んでたらガチ方向に進んでいました。ダイエットは、「タンパク質摂取、カロリーカット、筋トレ」の基本ポイントを意識すればうまくいくと思うので、焦らずやっていってくださいね。

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    1. 返信ありがとうございます( ・∇・)まとめ読みにきましたよ!

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