10/08/2023

たくさん食べたほうが筋肥大と筋力向上のペースが速くなるのか


カロリー超過幅や体重増加ペースの違いに対するトレーニング効果を比較し、「たくさん食べたほうが筋肥大と筋力向上のペースが速くなるのか?」というテーマを調べた研究を見ていきます。




(1)Effect of Small and Large Energy Surpluses on Strength, Muscle, and Skinfold Thickness
https://assets.researchsquare.com/files/rs-3184470/v1/77d2dd37-39fc-4972-a6ad-ea07d831b3f3.pdf?c=1690991894

<被験者>
トレーニング歴あり。2名女性、15名男性。

被験者の初期状態の平均値

年齢 27.2歳
身長 173.2cm
体重 77.5kg
BMI 25.8
ベンチプレス1RM 98.4kg
スクワット1RM 140.9kg

3グループに分けた
・維持カロリー
・+5%カロリー(維持カロリーから5%超過したカロリーを摂取)
・+15%カロリー(維持カロリーから15%超過したカロリーを摂取)


<食事>
食事は指示を与えて自己管理。


<トレーニング内容>
期間は8週間、頻度は週3回、セット数は各種目2-3セット(1,8週が2セット、ほかは3セット)で、強度を徐々に上げてレップ数を徐々に少なくするリニアピリオダイゼーション。
DAY1 スクワット、ベンチプレス、ラットプルダウン、ダンベルショルダープレス、バーベルカール
DAY2 スクワット、ベンチプレス、ダンベルロウ、ラテラルレイズ、ハンマーカール
DAY3 スクワット、ベンチプレス、ラットプルダウン、ダンベルショルダープレス、バーベルカール




<結果>
グループ間の比較だけでなく、被験者の個々のデータを用いて体重増加とトレーニング効果に相関があるかを調べています。

・筋肥大(筋肉の厚みを測定)
測定箇所:外側広筋3箇所 大腿直筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋
筋肉の厚みの変化はグループ間で差なし
体重の増加が上腕二頭筋の厚みの変化と関係する弱いエビデンス
他の部位は体重の増加と筋肉の厚みの変化に関係なし
3グループとも厚みがそれなりに増えたのは上腕二頭筋のみ。他の部位の変化はほぼゼロ(ほとんど筋肥大していない)。

・1RM
スクワット1RM:伸びにグループ間で差なし
ベンチプレス1RM:維持カロリーグループと+15%グループに比べて、+5%グループの伸びが大きかった。
体重の増加と1RMの伸びに関係なし


・皮下脂肪の厚み
維持カロリーグループに比べて、+5%グループと+15%グループは皮下脂肪の厚みが増えた。
体重増加が皮下脂肪の厚みの増加に関係する強いエビデンス。


・体重
維持カロリーグループ:8週間で+0.4kg(+0.56%)。週あたり+0.07%。
+5%グループ:8週間で+3.3kg(+4.2%)。週あたり+0.5%。
+15%グループ:8週間で+3.3kg(+4.0%)。週あたり+0.5%。


<コメント>
筋肥大については、トレーニングボリュームが足りなかったようで、上腕二頭筋以外はほぼ筋肥大しませんでした。BMI25.8でスクワット1RMが体重の1.8倍の人が、下半身トレーニングがスクワット3セットを週3回のみだと脚の筋肥大は難しいでしょう。上腕三頭筋についても、ベンチプレス3セット×週3回のみなので、ボリュームが足りずほぼ筋肥大しなかったと思われます。上腕二頭筋は、カール種目3セット×週3回に加えて、ロウ・プル種目でもある程度は刺激が入るので、筋肥大したと考えられます。

上腕二頭筋の厚みの増加にのみ体重増加が弱く関連していました。ロウプル種目のセット数も加えれば上腕二頭筋は今回のプログラムでは最も高ボリュームで、またスクワット・ベンチプレス以外の種目は全セット限界までやっているので、上腕二頭筋には強い刺激が入ったと考えられます。もしかしたら、高ボリュームのハードトレーニングを行い、なるべく速く筋肥大させたい場合には、大きめのカロリー超過がメリットがあるかもしれません。(逆に言えば、ハードトレーニングをせずにたくさん食べても、筋肥大せず太るだけです)

1RMは、各グループともしっかり伸びました。スクワットはグループ間で差なしです。ベンチプレスは+5%グループが他のグループよりも伸びたという結果ですが、1グループあたり被験者が5,6人と少なかったこと、+5%グループの平均体重が最も重たく、絶対値での伸びが大きく出やすかったこともあり、偶然の結果である可能性が高いと思います。被験者の個々のデータだと、体重増加と1RMの伸びに関係はありませんでした。

皮下脂肪の厚みは、維持カロリーグループに比べて、カロリー超過にしたグループが増えました。また、体重の増加が皮下脂肪の厚みの増加と関係することが強く示されています。たくさん食べて体重が増えれば、それだけ皮下脂肪も増えるという当然の結果になっています。

栄養摂取について、+5%グループと+15%グループの体重増加が同じくらいなので、コントロールできていない可能性があります。3000kcalを+5%しても一日+150kcal。8週間で+8400kcalなので、全部体脂肪で増えたとしても1kgちょっとのはずです。+5%グループは食べ過ぎでしょうね。体重増加率だと、+15%グループよりも+5%グループのほうが大きいです。



(2)Predicting Adaptations to Resistance Training Plus Overfeeding Using Bayesian Regression: A Preliminary Investigation
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8167794/

<被験者>
18-40歳の男性21名

体重 73.8kg
BMI 22.9
体脂肪率13.9% 
ベンチプレス1RM 体重の1.3倍
レッグプレス1RM 体重の3.3倍


<食事>
647.5 kcalのウェイトゲイナーを普段の食事に足す。

最低でも週に0.45kgは体重が増えるように指導。


<トレーニング内容>
期間は6週間、頻度は週3回、各セットRPE8-10。

DAY1 ヒップスレッド3セット、RDL3セット、ダンベルウォーキングランジ3セット、レッグカール2セット、レッグエクステンション2セット、カーフレイズ2セット
DAY2 ベンチプレス4セット、逆手バーベルロウ3セット、クロースグリップベンチプレス3セット、ニュートラルグリッププルアップ2セット、サイドレイズ2セット、EZバーバイセップスカール2セット
DAY3 デッドリフト3セット、ヒップスレッド2セット、レッグカール2セット、足上げベンチプレス3セット、ペンドレイロウ2セット、ダンベルキックバック2セット、ダンベルカール2セット


<結果>
平均では、体重が5.8kg増加した。ベンチプレス1RMや筋肉の厚みも順調に増えた。

個々の体重変動と、筋トレへの適応(除脂肪体重、1RM、筋肉の厚み、筋持久力)にどれくらい相関があるか調べたが、体重変動だけでは各筋トレパラメータの適応は説明しにくいという結果になった(弱い相関はあるがそこまで強い相関がない)。

週に+0.55%の体重増加だと、平均としては、体重の増加分がすべて除脂肪体重になるという結果が出た。


<コメント>
(1)の研究よりも被験者のBMIが低く、トレーニング内容も筋肥大寄りのプログラムだったため、順調に筋肥大したと考えられます。体重変動と筋トレへの適応の関係についてはクリアな結果が出ませんでした。




まとめ

今回見ていったのは、2023年と2021年の研究です。見ての通り、中級者レベルの人の、適切なカロリー超過の幅と適切なトレーニングボリュームについては、あまり研究が進んでいません。

被験者ごとの体重変動と、トレーニング効果の関係を調べても、あまりはっきりした結果が出ていません。これは、被験者の研究開始時点での状態や普段のトレーニング内容によって、研究で課せられる食事とトレーニングへの反応が大きく変わるからだと思います。

遺伝子で決まる素質ベースでの反応の個人差もありますし、その人のトレーニング歴による反応の差もあります。

例えば、トレーニング初期の身長170cmで体重60kg、体脂肪率20%の状態だと、部位あたり週10セットで維持カロリーの食事でも順調に筋肥大するでしょう。一方で、長年トレーニングを続けて、身長170cmで体重70kg、体脂肪率12%になった状態だと、トレーニングボリュームを増やし、カロリー超過にして体重を増やしていかないとさらなる筋肥大は困難です。

研究開始時点の被験者の状態はかなりバラついているので、一律のトレーニングと食事では反応もバラバラになります。


(1)の研究からわかることは、中級者くらいの人が高ボリュームのハードトレーニングを行わずにたくさん食べても、筋肥大や筋力アップが加速するわけでもなく無駄に体脂肪が増えるだけ、ということです。

伸び盛りの初心者のうちは、多めに食べたほうが成長が速くなりますが、中級者くらいになったら忍耐強くハードトレーニングしつつゆっくり増量していったほうが良いと思います。ただ、減量のことを考えなければ、大きめのカロリー超過で筋肥大ペースが速くなるかもしれないので、競技のために短期間でとにかく身体を大きくしたいといったケースでは多めに食べるのも良いでしょう。

1RMを伸ばしたい場合は、6-8週間程度の期間では、維持カロリーでもカロリー超過でもほとんど差は出ないでしょう。半年などの長期間だと、カロリー超過にしたほうが筋力に差がつくくらいの筋肥大が起こると考えられ、それが1RMに影響を与えると思います。


体重の増加ペースは、感覚的には、例えば身長170cmで体重60-65kg、体脂肪率15%の人が週に0.5%ずつ体重を増やすのは筋肥大狙いで適正ペースですが、170cm、75kg、体脂肪率15%の人が週に0.5%ずつ体重を増やすと、いくらハードトレーニングをしても体脂肪がかなり増えると思います(このケースだと一ヶ月で+0.5-1%くらいのペースが適正の目安かなと)。筋肉が多くなると、筋肥大のペースは遅くなっていくので、その上限ペースを越えた分のカロリーは体脂肪になります。

ボリュームについて、これも感覚的な判断ですが、身長170cmで60-65kgの人だと部位あたり週10セット程度で筋肥大すると思いますが、170cm、75kgの人だと部位あたり週15-25セットくらい欲しいです。



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