10/18/2023

デッドリフトのバリエーション種目TIER表




納得感のあるTIER表なので紹介。この人はパワーリフターで、パワーリフティング目線(競技種目をどれだけ伸ばせるか)でランク付けしています。fxxkを連呼しているけど、論理的な解説です。

動画:Deadlift Assistance Exercise Tier List (the best deadlift exercises)
https://www.youtube.com/watch?v=DcrikVZx8Uo





S

<バーベルヒンジ>

具体的にはRDLとスティフレッグデッドリフト。体幹とハムケツに効く。RDLは筋肥大寄り。スティフレッグデッドリフトはきつい体勢で負荷をかける。両種目とも踏み込みの勢いを使わず、ヒップヒンジで挙げる。RDLもスティフレッグデッドリフトもスネは垂直で固定。スティフレッグデッドリフトは床引きのRDLで、スネ垂直から挙上開始する。(スティフレッグは、ボディビル系だとなるべく膝を曲げないと解説されることもあるけど、床引きでやるにはある程度は膝を曲げないと腰が死ぬので曲げましょう)。



<競技フォームがスモウの人にとってのコンベンショナルデッドリフト>

コンベンショナルで体幹とハムケツが鍛えられるので、スモウを伸ばす効果がある。



<ベルト無し3インチデフィシットデッドリフト>

体幹に非常に効く。コンベンショナルの人向け。



<ベルト無しポーズドデッドリフト>

中級者に効果的。体幹をきっちり固める練習になる。1-2秒止め。コンベンショナルにもスモウにも。



<ワイドグリップRDL>

背中とハムケツを鍛えるのに効果的。




A


<ポーズドデッドリフト>

初心者~中級者には非常に効果的な種目。初心者にとってはSランク、上級者にとってはB~Cランク。1秒未満の止めだとほぼ意味なし。1-2秒は止めたい。



<ベルト無しでトレーニング>

正しく体幹を固めるのに有用。ベルト無しで体幹を正しく固められるようになると、コンベンショナルで特に効果的。




A-B

<2インチデフィシット・下側ハンドルトラップバー>

ワークキャパシティが低かったり、コーディネーション能力に問題がある(身体操作が苦手な)初心者向け。




B


<デフィシット>

デフィシットデッドリフトをまとめるとこの位置。コンベンショナルの人にとってはA、スモウの人にとってはD。コンベンショナルはきつい体勢で粘って出力を出すトレーニングが効果的。スモウはそこまで体幹の強さが要求されない。



<テンポ/コントロールしたエキセントリック>

エキセントリックフェーズもきっちり負荷をかけるのは筋肥大に効果的。



<ワイドグリップでのトレーニング>

肩甲骨を正しくポジションニングして背中を固める練習になる。広背筋があまり寄与しないので、起立筋と肩甲骨周りの筋肉できっちり背中を固める必要がある。




C


<トラップバー>

背中の負担を下げて脚を鍛えられると言われるが、大腿四頭筋への負荷も臀筋への負荷も中途半端。デッドリフトの疲労を管理したいなら、床引きのボリュームを減らしたり、RDLやスティフレッグをやったりしたほうが効果的だろう。もしトラップバーでやるなら、低い方のハンドルを握ってデフィシットでやると、脚や背中に強い負荷をかけられる。



<ブロックプル/ラックプル>

可動域が小さくなるのであまり有用ではない。やるならワイドグリップで。




D


<バンド/チェーン>

あまり意味がない。ロックアウトでの失敗は、単にバーベルが重すぎてロックアウトできる高さまで上半身を打ち上げられなかったか、上半身を丸めすぎか、上半身の重心が前後にずれて臀筋に力が入らずケツをはめこめなくてロックアウトできないことが要因なので、トップポジション付近で負荷が強くなるバンドやチェーンでのトレーニングをしてもロックアウト強化にはならない。



<競技フォームがコンベンショナルの人にとってのスモウデッドリフト>

身体の使い方がだいぶ違うので、コンベンショナルの人にとってはスモウでのトレーニングはコンベンショナルを伸ばす効果はあまりない。股関節外旋で臀筋に負荷をかけることが出来るので、その点では有用な種目。




F


<パーシャル/ROM変化>

1.5レップデッドリフトなど。わざわざ重量を落として、競技動作から外れた動きをやる意味はない。





コメント

共通する特徴としては、メインのデッドリフトフォームでかかる負荷よりも、すこしきつい体勢でのトレーニングが効果的。股関節伸展を少し深いところからやる、上半身の傾きをすこし大きくしたところからやる。


・スティフレッグ/デフィシット/ポーズド

スティフレッグデッドリフト
→「股関節」と「背中」がきつい体勢からスタート

デフィシットデッドリフト
→「股関節」と「背中」と「踏み込み」がきつい体勢からスタート 

個人的にはデフィシットは、股関節の可動域が要求されるので万人向けではなく、使えるシチュエーションが限られていると考えています。それと、踏み込みの筋肉はスクワットで鍛えればよいのでは?と思います。スクワットをやっていれば筋肉量の面ではデッドリフトの踏み込みには問題がないはずです。強い踏み込みに必要なのは、背中とハムケツの緩みを取って(slack pull)、膝を空間に固定しつつケツを打ち込んで床から反力を得るコツを習得することなので、デフィシットでボトムフェーズが強くなるかは疑問です。

股関節と背中に負荷をかけるならポーズドでも似たようなことが出来て、ポーズドなら股関節の可動域は床引きができればOKなので、ポーズドのほうが万人向けかなと。初心者・中級者にはフォーム矯正効果も高いので、ポーズドは多くのシチュエーションで使える種目だと思います。

スティフレッグも床引きでやると股関節の可動域が要求されますが、ラックプルでやるなどの調整ができますし、丁寧に体幹を固めてから挙上すれば安全に出来るので、使えるシチュエーションが多い気がします。


・ラックプル/ブロックプル

多くの人は、その高さからの挙上に最適化して高重量を挙げようとします。そうすると床引きと動作が変わってきて、床引きを伸ばす効果があまりなくなります。ラックプルでやるなら、踏み込み動作を除外してスティフレッグでやるか、ワイドグリップで動作範囲を広くすると良いと思います。


・スモウ⇔コンベンショナル

メインのフォームがコンベンショナルの人にとってスモウをやる意味はあまりなく、スモウの人がコンベンショナルをやるのは効果的だというのはその通りだと思います。スモウの人にとっては、コンベンショナルは股関節伸展の動作範囲が広がり、上半身の傾きが大きくなるので、ハムケツと背中の筋トレになります。しかし、コンベンショナルの人にとってのスモウは、股関節伸展の動作範囲が狭くなり上半身の傾きも小さくなるので、ハムケツ背中の筋トレになりません。

スモウの人は、コンベンショナルやそれに近い動きのRDLなど、ハムケツ背中に強い負荷がかかる種目を補助トレーニングでやるとスモウを伸ばす良い筋トレになると思います。


・トラップバー

私も一時期試しましたが、コンベンショナルを伸ばしたい人に役立つかというと微妙です。上側の持ち手を握ると、コンベンショナルよりも動作範囲がかなり狭くなります。それとグリップ幅が広くてニュートラルポジションで握るため、広背筋が固めにくい感じがして、普通のバーと感覚が結構違います。悪くはないけど、トレーニング時間と疲労コストを払ってやるかというと、入れる枠がないな・・・という結論になりました。

踏み込みの強化には使えると思います。尻が先に上がって膝がスっぽ抜けたり、膝が前に出てバーの軌道がおかしくなったりして踏み込みが苦手という人には、トラップバーでのデッドリフトは良い練習になります。ある程度デフィシットにして上の持ち手を握るか、何も踏まずに下側の持ち手(トラップバーをひっくり返すと握れます)で握ると高さがちょうどよいと思います。

初心者がデッドリフト動作を学ぶ場合や、バーベルデッドリフトにこだわらない人のデッドリフト動作のトレーニングとしては優秀です。ただ、バーベルデッドリフトができない人がトラップバーを使うと、ヒップヒンジで挙げずにハーフスクワットで挙げがちな気もします。

トラップバーはハムストリングスの負担が減って、ハムが筋肉痛になりにくいので、なにか競技をやっていて競技に影響を出したくない人のトレーニングにも向いています。あとは高身長の人ですね。身長190cm以上になると、ストレートバーを床引きするのは、かなり体勢がきつくなります。


・ベルト無し

ベルト無しのトレーニングは、特にコンベンショナルで有効だと思います。体幹をしっかり固められるようになれば、1RMの90-95%くらいの重量はベルト無しで挙がるはず。ベルトの有無で重量が大幅に変わるようなら、体幹の使い方に改善の余地があります。なるべくベルトを付けたほうがよいシチュエーションは、1RM挑戦、追い込み度の高いセット、高ボリュームのトレーニングを行う場合ですね。ギリギリの挙上になるトレーニングではベルトをつけたほうが安全です。

個人的には、初心者のうちはベルト無しで練習して、正しい体幹の使い方を身につけたほうが良いと思います。ベルトをつけると(特にきつく締めた場合)、自分の体幹の姿勢が今どうなっているのか感じにくいときがあります。



・ワイドグリップ

ベンチプレスと同じくらいの手幅が目安です。広背筋で背中を固められなくなるので、脊柱起立筋と肩甲骨まわりが鍛えられます。個人的にはワイドグリップで床引き種目はやりにくくて、ワイドグリップRDLが気にっています。


2 件のコメント:

  1. いつも拝読しております。
    以前早朝トレをコメントした者です。
    デッドリフトに関しては非常に苦手で上半身長 大腿部長 膝下長 腕は上腕が短い、前腕が長でイカリ肩+肩が上がりやすい
    ハムは柔らかいが股関節が非常に硬く?床引きのスタートポジションでバーベルに触れる前にお尻が思いっきり下がってしまいます。
    膝付近のハーフデッドならギリギリなんとか出来ますが、股関節の硬さが仇になり重さが持てません。スクワットも同様に股関節の硬さに悩まされてます。
    上記のような股関節に関する記事があれば紹介していただきたいです。

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    1. 股関節の固さ対策ですと、一般的には、

      スパイダーストレッチ
      https://www.youtube.com/watch?v=oSwYRbN0q3o

      お尻のストレッチ
      https://www.youtube.com/watch?v=KPz58MtoALQ

      ですね。

      脚トレを熱心にしている人だと、大腿四頭筋(大腿直筋)が固くなって股関節の詰まりを起こしているケースもあるので、前腿をフォームローラーで潰すようにマッサージすると、股関節が緩む場合もあります。
      https://www.youtube.com/watch?v=Y6WC6j6_5Mk


      これらをやっても股関節の可動域が広がらないようであれば、骨の問題だと思います。

      股関節の骨の個人差とスクワットのスタンス
      https://changebodycomposition.blogspot.com/2020/02/blog-post.html


      骨の問題も、股関節の外旋・内旋を調整して深さが出せる場合があります。

      この動画のように仰向けに寝て、様々な角度で膝を胴体に近づけてみて、どのくらい足を開くと股関節が深く曲がるか調べてみます。足を開いたほうが深く曲がるようなら、デッドリフトでつま先と膝の向きを外側に広げてみると深さが出しやすいと思います。
      https://www.youtube.com/watch?v=81xUjrD1Wao


      これでも股関節が固い場合は、骨のかみ合わせの問題で屈曲方向の可動域が出ないのだと思います。他にデッドリフト対策で出来ることは、実質的な腕の長さをいかに伸ばすかなので、僧帽筋上部をマッサージやストレッチをして肩を下げられるようにしたり、肘を脱力して腕を伸ばしたり、背中を反らないようにしたりといったことですね。

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