2/22/2024

ファットバーナーはファットをバーンするのか


ファットバーナーは体脂肪を燃やして減らすと謳うサプリメントです。ダイエット効果があるとされる物質を複数組み合わせています。


ファットバーナーの効果を調べた最新の研究を見てみます。

(1)Chronic Thermogenic Dietary Supplement Consumption: Effects on Body Composition, Anthropometrics, and Metabolism
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10674526/


<研究概要>

被験者は若い男女で、構成比は男女半々。最低でも週2回はなんらかの運動をしている。

普段のカフェイン摂取量が一日に40-200mgの人を集めている。

男女合わせた平均の体脂肪率は27%くらい。
年齢は平均23歳

3グループに分けた
・プラシーボ(コントロールグループ)
・プロテイン
・プロテイン+ファットバーナー

実験期間中は、支給されるパッケージ(プラシーボ/プロテイン/ファットバーナー)以外の飲食で摂取するカフェインを100mg以内に制限。ファットバーナーにはカフェインが含まれている。

プロテインのタンパク質含有量は1杯25g(合計130kcal)。
体重50-59.9kgの人は1杯/日
体重60-89.9kgの人は2杯/日
体重90-100kgの人は3杯/日

ファットバーナーは最初の1週間は1杯/日を摂取。それ以降は2杯/日を摂取。
摂取タイミングは朝、および午後の早い時間もしくはトレーニング前。

ファットバーナーの主な成分は
カフェイン(1杯あたり150mg)、ビタミンC、B群、脂肪分解や燃焼効果があるとされる各種成分

詳しくは以下の成分表を

ファットバーナーを一日2杯飲む期間は、カフェインを最低でも一日に300mg摂取することになる。

ちなみにこの研究は、ファットバーナーを作ってるサプリメーカーの出資を受けています(記事の冒頭の画像が研究で使われたファットバーナーです)。

実験期間は4週間で、食事や運動はそれまでどおりの生活を続ける。



<結果>

各グループとも、体重と体脂肪量変化に有意差なし。ファットバーナーを使用しても、体脂肪が減ったりはしなかった。


コントロールグループの安静時代謝(REE)が、プロテイングループとプロテイン+ファットバーナーグループに比べて低下した。



実験期間中のカフェイン摂取量
・コントロール 86mg
・プロテイン 74mg
・プロテイン+ファットバーナー 348mg


被験者がサプリメントに起因すると考えた実験期間中の副作用報告(被験者がそう感じたという報告で、本当に副作用なのかは不明)

プロテインのみ:食欲の抑制(1人)、肌がオイリー・にきび(1人)、ファットバーナーのプラシーボを飲むのが大変(2人)、エネルギーが増した感(2人)、胃の不快感(1人)、乗り物酔い(1人)、頭痛(1人)、おなら(1人)、食欲の増大(1人)

プロテイン+ファットバーナー:おなら(1人)、胃の不快感(3人)、倦怠感(2人)、頭痛(1人)、睡眠障害(1人) 、食欲の増大(1人)、にきび(1人)、体温上昇(1人)


プロテインのみグループとプロテイン+ファットバーナーの比較をすると、ファットバーナーの影響と思われるのは、胃の不快感、倦怠感、体温上昇、睡眠障害ですかね。


全体として見れば、睡眠の質には影響なかったとのこと。


<コメント>

論文では、3グループまとめてだと体重が減少傾向で、そのなかでの比較ではプロテイン+ファットバーナーを使うとREEを維持しやすいかも、みたいな結構苦しい感じでファットバーナー推しをしているのですが、コントロールグループは有意差なしとは言え、体重がやや減っているので、おそらくそれがREE低下の要因でしょう。これまで通りの生活を続けるようにと言われ、プラシーボしか摂取していないのだから、体重減少以外にREE低下の要因が見当たりません。

REEの測定は、タイミング的にカフェインが抜けた時間帯に測定しています。従って、結構な量のカフェインを摂取しているファットバーナーグループも、特にREEががブーストされていません。他の物質も、研究は乏しいですが、一時的にREEをブーストするものはあっても、持続的にブーストし続けるものは無いと思います。逆にブーストし続けたら怖いですね。カフェインなどは交感神経を刺激したりといったメカニズムで消費カロリーを増やすわけですから、ブーストし続けたら24時間ガンギマリみたいな状態になります。



体脂肪を減らすと謳われている物質

体脂肪を減らすと謳われている物質に期待される主な効果は、主に3つあります。

・安静時代謝を増やす(消費カロリーを増やす)

・食欲を抑制する(摂取カロリーを減らす)

・体脂肪蓄積を防ぐ


メジャーな物質の研究を見ていきます。


まずはカフェインです。カフェインを数ヶ月摂取したRCTのメタアナリシスはいくつかありますが、カフェイン単独でどこまで効果があるか微妙なラインです。ドーピング検査に引っかかるような薬物を同時に摂取している研究もメタアナリシスに含まれています。

(2)The effects of caffeine intake on weight loss: a systematic review and dos-response meta-analysis of randomized controlled trials
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30335479/

(3)Comparing effectiveness of fat burners and thermogenic supplements to diet and exercise for weight loss and cardiometabolic health: Systematic review and meta-analysis
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33427571/

カフェインだけでなく他の物質もそうですが、消費カロリーを増やしたり食欲を抑えたりする効果は一時的なので、あとで余分に食べたりして、結局収支は変わらない可能性もあります。通常は、日々の摂取カロリーと消費カロリーに多少の増減があっても、食べる量やNEATで無意識に調整されて、数ヶ月のスパンでは体重は大きくは変動しません。(1)の研究でも、プロテイン2杯の人だと毎日260kcalが追加されたはずですが、体重は増えていないです。

(4)Hibiscus sabdariffa tea affects diet-induced thermogenesis and subjective satiety responses in healthy men but not in women: a randomized crossover trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34370964/

(5)Caffeine Transiently Affects Food Intake at Breakfast
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30033159/

カフェインを長期間摂取した場合の研究だと、12年間のカフェイン摂取量変化と体重変化の関係を調べた研究があります。カフェイン摂取量を増やすと体重の増加が少し抑えられたという結果になっています。最もカフェインを減らしたグループと、最もカフェインを増やしたグループの体重増加の差が12年間で0.4kgくらいです。

(6)Changes in caffeine intake and long-term weight change in men and women
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002916523293454


次は緑茶(カテキン)のメタアナリシスです。

(7)The effect of green tea supplementation on the anthropometric outcomes in overweight and obese women: a time and dose-response meta-analysis of randomized controlled trials
https://www.researchgate.net/publication/371472084_The_effect_of_green_tea_supplementation_on_the_anthropometric_outcomes_in_overweight_and_obese_women_a_time_and_dose-response_meta-analysis_of_randomized_controlled_trials

カテキンは過体重の人の体重を減らすのに効果があるようですが、研究での投与量のボリュームゾーンが一日に緑茶1.5リットル相当(だいたいの研究がタブレットで摂取)です。高い効果を発揮している研究は一日に20リットル相当を摂取しています。


それと肥満の被験者が対象なので、普通体型の人に同様の効果があるのか不明です。カテキンが体脂肪を減らすメカニズムは、体重コントロールシステムの正常化みたいな感じなので、普通体型の人にはあまり効果がなさそうな気もします。通常は、肥満になると体重を適正に保とうとする体内システムが破綻し、さらに太りやすくなります。緑茶は、この負のループを止める効果が期待されています。

(8)過栄養による肥満誘導 緑茶カテキンの作用からの考察
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/19/1/19_29/_pdf/-char/ja


次は、カプサイシン(唐辛子の成分)を見ていきます。

(9)Capsaicin for Weight Control: “Exercise in a Pill” (or Just Another Fad)?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9316879/

カプサイシンが体重が減らすとされるメカニズムの候補は
・栄養の吸収を抑える(辛いものを食べすぎると下痢する)
・脂肪蓄積を防ぐ
・熱産生を増やして消費カロリーアップ
・食欲を抑える
・腸内環境を整えて体重コントロールをしやすくする

RCTの結果だと、タブレットでかなりの量のカプサイシンを摂取すれば、肥満の人の体重をわずかに減らす効果はありそうです。

辛いもの好きと、辛いものを食べない人を比較した疫学調査の結果だと、BMIに差はありませんでした。辛いものを好んで食べる程度のカプサイシンの量だと体重を減らす効果は無さそうです。ただ健康には良いようで、死亡率が下がります。辛いものを食べると食道がんリスクが上がりそうですが、トータルでは健康に良いみたいですね。


L-カルニチンも効果があるのは肥満の人のみのようです。

(10)Beneficial effects of l-carnitine supplementation for weight management in overweight and obese adults: An updated systematic review and dose-response meta-analysis of randomized controlled trials
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31743774/


メタアナリシスをざーっと見てみましたが、メタアナリシスの対象になっている個別研究は細かくは見ていません。サプリメーカー出資の研究だと妙に高い効果が出やすいので、それがメタアナリシスにどれだけ影響しているかは不明です。カフェインくらいコモディティ化している物質だとバイアスはないでしょうけど、特定のサプリメーカーが扱っているマニアックな物質になればなるほど妙に高い効果が出やすくなります。


ファットバーナーには入れられませんが、エフェドリンは交感神経刺激作用が強くて、減量効果が高いです。ただ、死亡するケースがあります。

(11)厚生労働省-エフェドラ
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/04.html

(12)ウィキペディア-エフェドリン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%B3




<まとめ>

作用機序を考えると、普通体型の人が使って、安全に消費カロリーを増やして体脂肪を減らすような物質はないと思います。リターンが高い物質ほど、リスクも高い。カフェインも多量に摂取し続けると、それなりにリスクのある薬物です。そして高い効果があって高リスクの薬物は、市販されているファットバーナー製品には入れられません。

体脂肪を減らすと言われる物質に使い所があるとしたら、摂取カロリーをきっちり制限できる人が、ボディコンテストに出る直前の追い込みに使うくらいだと思います。用量依存なので、多めに入れないとほぼ効果がないでしょう(そのぶん副作用もきつくなります)。

ファットバーナーだと様々な成分を少しずつ入れているものが多いので、普通体型の人が、なんとなく普段からファットバーナーを摂取しても、量が少なかったり、あとで余分に食べたりして、効果は無いと思います。それと本当に効果がある物質なら、飲み合わせの問題があるので、よくわからない物質がたくさん混ざっているほうが怖いですね

肥満体型の人は、カテキンやカプサイシンが効果があるかもしれませんが、2-3ヶ月で0.5kg減るくらいなので、運動と食事コントロールを頑張ったほうが良いでしょう。余分なお金もかかりませんし。

(13)Effect of green tea, caffeine and capsaicin supplements on the anthropometric indices: A meta-analysis of randomized clinical trials
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1756464618301415



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