9/24/2016

デッドリフトにおける広背筋の重要性


参考サイト

Cueing Lat Activation For a Deadlift, or pretty much anything that needs lats
http://deansomerset.com/cueing-lat-activation-deadlift-pretty-much-anything-needs-lats/

Cueing Lat Activation For a Deadlift, or pretty much anything that needs lats
http://deansomerset.com/the-most-important-low-back-muscle/

The Importance of the Lats in the Deadlift
http://strengtheory.com/lats-in-the-deadlift/


★基礎知識
- 背骨の伸展(extension)は、背中を反らす方向の動き
- 背中の屈曲(flexion)は、背中を丸める方向の動き


★広背筋のデッドリフトへの寄与

大きく分けて2つ

◇胸椎の負荷を減らし上背部の姿勢を保ちやすくする

腕を下半身の方に引き寄せ、肩甲骨を下半身の方向に押し込むことで、荷重点を股関節方向にわずかに移動させ、股関節にかかる曲げモーメントを少し減らし、胸椎にかかる曲げモーメントを大幅に減らすことが出来る。


肩甲骨を下半身の方向に押し込む動き(専門用語だと肩甲骨の下制)を意識しにくい場合は、立った状態で胸を上にクイッと上げる動きをすると良い。同時に頭をやや後ろに動かすとやりやすい。


ちなみに他のトレーニング種目でも、体幹に強い負荷がかかる種目は大体この姿勢で行う。懸垂やローイングもこの姿勢の方が広背筋に刺激が入りやすい。胸を張るのではなくて、胸を上にクイッと。

ではなぜ肩甲骨を下制し、腕を引き寄せると、胸椎の負荷が減るかというと・・・

デッドリフト時の背中は片持ち梁だと考えられる。荷重点はバーベルと上半身の合成重心の真上(バーベルが十分に重ければバーベルの位置と近似)。重力は垂直方向にかかるので、荷重点からの水平距離(モーメントアーム)と、バーベル+上半身の重さ(荷重)の積が曲げモーメントになる。荷重点から離れるほど(デッドリフトの場合は股関節に近づくほど)、曲げモーメントは大きくなる。

strengtheoryの例を使うと、肩甲骨を下制し腕を引き寄せることで荷重点を1インチ股関節に近づけた場合、股関節(重りを持ち上げるのに動かす関節)は荷重点から遠いので、例えば水平距離が20インチ→19インチになると曲げモーメントは5%減る。一方で、胸椎は荷重点から近いので例えば5インチ→4インチになると曲げモーメントは20%も減る。上の図では赤の矢印がbeforeで、緑の矢印が1インチ股関節に近づけたafter。

このため上背部の姿勢をキープしやすく、また股関節が重りに打ち勝つのに必要な力も少しだが小さくなるので、デッドリフトを効率的に行うことができる。

このメカニズムから、バーよりも肩が前に出て、腕が鉛直にならない方がデッドリフトは効率的になるのだが、バーベルが重たいとこの腕の角度をキープするのに広背筋はかなりの力が必要になる。従って高重量のデッドリフトでは腕はほぼ鉛直になる。

トップレベルになると上背部を意図的に曲げるフォームになることもあるみたいで、これも力学的にどう有利になるのか解説されているけど、技術的な難しさと怪我のリスクを考えると、趣味でトレーニングする人はあまり真似しない方が良いと思う。


◇腰椎の伸展をサポートし下背部の姿勢を保つ

広背筋は背骨の中の方から下の方や肩甲骨にくっついていて、もう片方は上腕骨にくっついている。これだけ大きい筋肉なので、下背部のS字姿勢を保つのに重要な働きをする。下の画像はWikipediaから。




★広背筋の収縮を意識する方法

背中を壁にベタッとつけ、息を吐きながら手のひらで壁を強く押す。下背部のアーチを作らずベタッと壁につける。


ストレートアームのプルダウンの動き



★広背筋に効かせやすいトレーニング

パラレルグリップでのプルダウン。股関節を伸ばした状態で、背中を伸ばし、臀筋(尻)に力をいれながらやると良い。座った状態(股関節が曲がった状態)でのラットプルダウンは広背筋を使うのが難しい。

個人的に広背筋に負荷をかけやすい種目は、デッドリフトとナローパラレルグリップでの懸垂なので、これはよくわかる。



☆コメント

Greg Nuckols(strengtheory)が言うには、「広背筋は(脊柱起立筋と違って)複数の椎骨にまたがってつながっているわけではないから、脊柱の伸展方向の力はほぼなく、また広背筋は上部胸椎にはつながっていないから胸椎の伸展には関わらない」とのことだけど・・・

私が考えるには、下背部は腰椎がS字を維持している限りは、広背筋の収縮で下背部には伸展方向の力が働き、バーベルによる曲げモーメントに抵抗するのでは。



ただし下背部が丸まると伸展の力は働かなくなり、逆にやや屈曲方向の力が働くのでは。広背筋がストレッチされて力を入れにくいが、水泳のスタートのときのように背中を丸めて広背筋に力を入れてみるとそうなると思う。

自分で背中を丸めたり伸ばしたりした状態で広背筋に力を入れて試してみたけど、たぶんこれで合ってるかと。脊椎がS字のときは広背筋の収縮で下背部を面でサポートできる感じ。脊柱起立筋だけだと線でサポートする感じになる。

なのでDean Somersetの言うとおり、広背筋は下背部に伸展方向の力を加え下背部の姿勢を保つのに非常に重要な働きをすると思う。

上背部は、肩甲骨を下制することで鎖骨を引っ張り胸椎の伸展を保つのに寄与するのではないだろうか。ただこの力は弱いかも。モーメントアーム短縮による曲げモーメントの削減の方が大きそう。

0 件のコメント:

コメントを投稿