Nutritional strategies for skeletal and cardiovascular health: hard bones, soft arteries, rather than vice versa
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4809188/
2016年の論文。先にまとめを書いて、その後に詳しく書いていきます。
★先にまとめ
カルシウムはサプリメントよりも食事から摂取する。特に骨を含む食品を多く食べると良い。骨を含む食品とは、例えばイワシや鮭(もちろん骨ごと)、鶏の軟骨、ブロス(骨のスープ)など。一般的なカルシウムサプリメントは心臓血管系に悪影響が出る可能性がある。
乳製品もカルシウム摂取に良いが、牛乳の飲み過ぎは乳糖不耐症やガラクトースの過剰摂取による悪影響の可能性があるので、牛乳の飲み過ぎは避け、チーズやヨーグルトを優先的に食べると良い。
十分な量の動物性タンパク質を摂取し、1日にカルシウム約1000mgを摂取することを目指す。カルシウム摂取量は多すぎても健康にネガティブな影響がある。
果物と野菜の摂取を増やす。体内システムをアルカリ化し骨の健康を保つ効果が期待される。またナトリウムの摂取量が多く、カリウムの摂取量が少ないと、心臓血管系の疾患リスクが上がるので、この面でも果物や野菜を積極的に食べるのは効果的。種子類や豆類も良いだろう。
ビタミンDも重要。日光にあたるか食品やサプリメントで摂取する。
ビタミンK1・K2も骨と血管の健康に良いと考えられる。色の濃い葉物野菜や種子類、納豆やチーズやカード(凝乳)などの発酵食品にビタミンKが豊富に含まれるので、これらの食べ物の摂取を増やすと良いだろう。
★骨と心臓血管の疾患
- 50歳以降、閉経後の女性は年に0.7-2%の骨量が減少し、男性は0.5-0.7%の骨量が減少する。45歳から75歳の間に、平均で女性は30%の骨量を失い、男性は15%を失う。
- 骨密度の低下と心臓血管系の疾患リスクの上昇は強く相関している。例えば骨粗相症の人は冠動脈疾患のリスクが高く、逆もまた然り。
★牛乳をカルシウムの主な摂取源とする場合のリスク
- 乳糖不耐症の人はあまり乳糖を摂取できない。
- 牛乳の摂取量がいくつかの疾患、具体的には白内障や卵巣がん、前立腺がん、パーキンソン病、タイプ1糖尿病と相関することが疫学調査で示されることがある。
- また乳糖は体内でグルコースとガラクトースに分解され、ガラクトースが炎症と酸化を増加させるという研究もある。
- 安全を期するなら、牛乳をたくさん飲んでカルシウムを摂取しようとするのは避け、乳製品はヨーグルトやチーズを主に食べるのが良いだろう
★ベジタリアン食の骨への影響
- 多くの植物や穀物や豆類に含まれるシュウ酸やフィチン酸がカルシウムの吸収を阻害する。
- ヴィーガンは骨折リスクが高いことがいくつかの研究で示されている。カルシウムの摂取量が少ないことと、吸収率が低いことが影響していると考えられる。
★カリウムとナトリウム
- 植物や加工度が低い食品にはカリウムが多く含まれている傾向がある。加工度の高い食品にはナトリウムが多く含まれている傾向がある。
- ナトリウムを多く摂取すると心臓血管系の疾患のリスクが上がる。
- 心臓血管を健康に保つには、野菜や果物や豆類やナッツなどカリウムの豊富な食品を多く食べ、味の濃い加工度が高い食品は控えめにするのが良い。
★ビタミンK
- 骨の強度を増すことで、骨を健康にするのに役立つと考えられている。
- 血管の石灰化は心臓血管疾患の予測因子。ビタミンKの摂取で血管の石灰化を防ぐことができると考えられる。
- ビタミンKは、色の濃い葉物野菜や種子類、納豆やチーズやカード(凝乳)などの発酵食品に多く含まれている。
★カルシウムサプリメントの問題点
- 一般的なカルシウムサプリメントは、炭酸カルシウムやクエン酸カルシウム。リン酸塩の吸収を阻害することで、骨が脆くなるのを防ぐと考えられるが、これまでの研究だと骨折リスクの低下について強いエビデンスが出ているわけではない。
- カルシウムサプリメントの摂取は心筋梗塞リスクと相関すると報告する研究もある。
- 血清カルシウム濃度の上昇は、頸動脈のプラークの厚み、動脈と大動脈の石灰化、そして心筋梗塞の発症と相関するという研究がある。500-1000mgのカルシウムサプリメントの摂取後に血清カルシウム濃度が一時的に上昇することが観察されている。
- 対照的に、食事からカルシウムを摂取した場合のカルシウム濃度の上昇はずっと小さい。
- カルシウムサプリメントと心臓血管疾患を結びつける他のメカニズムとしては、冠動脈の石灰化、血管拡張の阻害、動脈の硬化の増大、血液凝固の亢進。
★骨を食べる利点
- 骨に含まれるカルシウムはカルシウム・ハイドロキシアパタイトで、非常に効果的に骨を形成する。
- またカルシウムとともにマグネシウム、リン、ストロンチウム、亜鉛、鉄、銅、コラーゲン、アミノグリカン、オステオカルシンなどを摂取でき、頑強な骨の形成をサポートする。
- イワシや鮭(もちろん骨ごと)、鶏の軟骨、ブロス(骨のスープ)など動物の骨を積極的に食べ、カルシウムを摂取すると良いだろう。
- サプリメントで摂取するなら、一般的な水溶性のカルシウム塩ではなくて、ハイドロキシアパタイトのが良いだろう。カルシウム・ハイドロキシアパタイトとビタミンDの投与で骨の厚みが大きく増したという研究がある。
☆コメント
一般的なカルシウムサプリメントが骨を強くするか微妙な感じで、心臓血管系の疾患リスクを上げるネガティブな効果があるというのが新たな発見だった。栄養なんてサプリで摂ればいいだろうという人間の浅知恵を嘲笑うかのような人体のメカニズム。こういう例はよくあって、たいていは健康のためには肉や魚や野菜や果物や豆類や種子類や乳製品などをバランスよく食べ、加工度の高い食品を食べ過ぎず、適度に運動しましょうという常識的で平凡なガイドラインになる。食物繊維やフィトケミカルなどの効果がわかってきたのも最近だし、今後も同じようにホールフードに含まれる栄養について新たな発見があることでしょう。長期的な健康を考えるなら、食事に対してこのようなアプローチ方法は危険だと思う(栄養失調よりはマシだが)。
ヨーグルトなら牛乳の飲み過ぎによるデメリットが無いみたいに書かれているけど・・・ヨーグルトは乳糖がだいぶ残っている。まあ牛乳をがぶ飲みするのは簡単でも、ヨーグルトを大量摂取するのはかなり頑張らないと難しいので、ヨーグルトを優先的に食べればガラクトースの過剰摂取は避けられると思う。牛乳も毎日1リットルとか飲まない限りは問題ないでしょう。こういう研究を知ると、特定の食品を少しでも食べると身体に毒になる、という考え方をしてしまう人がいるけど、そういうのは病的になるので止めたほうが良いでしょう。チーズについては、カルシウムは豊富だけどカロリーと塩分の摂り過ぎに注意が必要。カッテージチーズは脂質少ないけどカルシウムも少ない。
骨の摂取には、骨ごと食べられる魚の缶詰が便利だと思う。イワシや鮭や鯖の缶詰。安いし、オメガ3脂肪酸も豊富に含まれるし、タンパク質も摂取できる。すばらしい栄養価とコストパフォーマンス。小魚も良いと思う。
それとウェイトトレーニングが骨密度を高めるのはよく知られているので、骨の健康のためにはウェイトトレーニングも行うとなお良い。心臓血管系にはたしか有酸素運動が効果的(うろ覚え)。
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