本格的に全身のウェイトトレーニングを行う場合、一般的には以下のような種目を組み合わせることが多い。
スクワット(レッグプレス)、デッドリフト、ベンチプレス、懸垂(ラットプルダウン)、ローイング、ショルダープレス、あとは腕と脚のカールやエクステンションなどのアイソレート種目。
一見バランス良く全身をトレーニング出来ているように見えるが、このようなプログラムの組み方では筋肉の発達がアンバランスになり、姿勢が悪くなったり怪我をしやすくなったりする。良いフォームで行っていたとしてもそうなる。
さらに仕事や勉強で座っている時間が長い場合、下の図のように座ることで悪くなりやすい姿勢を、トレーニングによりさらに悪化させる方向に筋肉が発達してしまう。(実際に自分がそうなった。なので現在、姿勢矯正のためのトレーニングを行っている)
以下、デスクワーク+一般的なトレーニングプログラムでどう筋肉のアンバランスが起こるのか見ていく。
★動作のアンバランス
対になる動作をそれぞれ見ていく。図で赤くなっている動作が一般的なトレーニングプログラムでは強化され、青くなっている動作が弱いまま。
・股関節
内転と外転:スクワットやスモウデッドで内転はよく鍛えられるが、外転がほぼ鍛えられない。
伸展と屈曲:座りっぱなしで屈曲の筋肉は固く縮みやすい。スクワットやデッドリフトでは臀筋群がそれほど使われず、臀筋群が弱い場合が多い。
内旋と外旋:内旋を行う筋肉が強くなりやすい。
・肩関節
水平方向の内転と外転:ベンチプレスで内転は鍛えられるが、外転が全く鍛えられない。
伸展と屈曲:懸垂で伸展が鍛えられるが、屈曲が全く鍛えられない。
内旋と外旋:大胸筋も三角筋前部も広背筋も内旋を行う。従ってベンチプレス、ショルダープレス、懸垂では内旋を行う筋肉ばかりが鍛えられる。外旋の動作が全く鍛えられない。
・肩甲骨
挙上と下制:デッドリフトや懸垂で下制はするが、広背筋が支配的になってしまって僧帽筋下部など細かい制御を行う筋肉が働いていないケースがある。
内転と外転:ベンチプレスで内転の動作(肩甲骨を寄せる)。ローイングは内転を鍛えられるが、外転は鍛えられない。一般的には内転も外転も弱く、特に外転の動作が全く無いので外転で使う筋肉が上手く働かない。
上方回旋と下方回旋:あまり動きがない。どちらかに寄って動きにくくなっているケースがある。
前傾と後傾:猫背や身体の前側に重いものを持つ(アームカールなど)ことで前傾しやすい。
肩甲骨の動きについてはこのサイトがわかりやすい。
★筋肉のアンバランス
赤い部分が強くて固く縮こまってる。
青い部分が弱くて伸びている。
ハムストリングス(紫色)は一般的には弱くて固い。
・股関節
- 内転と内旋が強いことで大腿骨が内側によれる。膝を痛めやすくなる。
- 座りっぱなしで屈曲の筋肉は固く縮みやすい。腹筋と臀筋群が弱く、脊柱起立筋群と広背筋が強いので、骨盤が前傾し、腰椎が過度に伸展する。腰椎が過度に伸展すると腰を痛めやすい。また内蔵が前に押され、下腹部がぽっこり出る。
・肩関節と肩甲骨
- 水平方向の内転と内旋が強いことで猫背や巻き肩になる。座りっぱなしでも猫背や巻き肩になりやすいので、筋トレでさらにこれが悪化する。
- 伸展と肩甲骨の前傾と猫背により、上腕骨の骨頭と肩関節のソケットの接点がずれたり、衝突無く動かすためのスペースが少なくなったりして肩を痛めやすくなる。
- 肩甲骨の外転動作が行われないので前鋸筋が働かなくなり、腕を上げたりする時の制御が不安定に。
各関節は連動するため、一箇所の関節がおかしくなると他の関節にも影響が及ぶ。例えば、腰椎が過度の伸展をする(腰が反りすぎる)と、そのままでは上体が後ろに仰け反って倒れてしまうので、胸椎を前に曲げる(胸椎を過度に屈曲する)ことで重心のバランスをとる。そして胸椎が曲がると視線が下の方に向いて前が見にくくなるので、頭を起こす(頚椎を過度に伸展させる)。
怪我の発生リスクは、関節の強度や重量やボリュームやアンバランスの度合いなど個人の状況によって異なってくるので、一般的なトレーニングプログラムを行っているからといって必ず怪我をするわけではないけど、アンバランスが大きくなるとそれだけ怪我のリスクが上がるので、怪我をなるべく避けたい場合はバランスを整えるためのエクササイズを行ったほうが良いだろう。具体的なエクササイズ例は次の記事で書く予定。
次の記事: バランスの取れたトレーニング種目の選択-エクササイズ編-
参考記事:
Neanderthal No More - Part 1
https://www.t-nation.com/training/neanderthal-no-more-1
Neanderthal No More - Part 2
https://www.t-nation.com/training/neanderthal-no-more-2
Neanderthal No More - Part 3
https://www.t-nation.com/training/neanderthal-no-more-3
Neanderthal No More - Part 4
https://www.t-nation.com/workouts/neanderthal-no-more-4
Neanderthal No More - Part 5
https://www.t-nation.com/workouts/neanderthal-no-more-5
関連記事:
懸垂のやり過ぎによる怪我リスク(肘と肩)
肩の健康のために
膝の健康のために
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