5/12/2020

新型コロナの年齢群別死亡リスク

Covid-19 Mainly Kills Old People. So Do Most Other Diseases.
https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2020-05-07/comparing-coronavirus-deaths-by-age-with-flu-driving-fatalities

アメリカの新型コロナ死者のデータを使って、他の死亡要因とのリスク比較を出している記事を見つけたので紹介します。アメリカではこの記事の時点で新型コロナで7万人くらい亡くなっていて、その7万人に占める各年齢群の割合がわかっている。

最終的なアメリカ全体の新型コロナ死亡数はまだわからないけど、いくつかのシナリオごとに各年齢群が何人亡くなるか試算できるので、その数字を使えば他の死亡要因とのリスク比較ができる。

この記事でのアメリカ全体の最終的な新型コロナ死亡数のシナリオは、10万人、20万人、75万人の3つ。


★新型コロナの最終的な死亡数の考察
欧米でのいくつかの抗体検査の結果から、高齢化の進んだ先進国での新型コロナの致死率は0.1-0.2%程度ではないかと言われている。アメリカ人口3.3億人、人口の7割感染で集団免疫獲得となり新型コロナ終息、致死率0.1-0.2%と仮定して計算すると、アメリカの最終的な新型コロナ死者は23-46万人になる。記事の死亡数シナリオだと、10万人は大幅に超える可能性が高い、20万人は楽観寄りの数字、75万人はだいぶ可能性が低い悲観的な数字だと考えられる。

アメリカのデータだとアフリカ系とヒスパニック系の死亡率が高いので、日本だと全体の死亡率はアメリカほど高くならないかもしれない。それに加えて東アジアは欧米に比べるとなぜか感染が広がりにくく死者が少ない感じなので、地域的に過去に類似のウイルスが流行っていて部分的に免疫を獲得済みな可能性もある(アジアかぜのケースを見るとそういった可能性はある)。


◆季節性インフルエンザ+肺炎との比較

インフルエンザ+肺炎の数字は人口10万人あたりのアメリカの年齢群別死亡率。その年齢群が10万人いた場合に、何人がインフルエンザ+肺炎で亡くなったか。全員がインフルエンザに感染したわけではない。

新型コロナの数字は各シナリオごとの、インフルエンザ+肺炎と比較しての相対的な死亡リスク。1ならインフルエンザ+肺炎と同じ死亡リスク。1より大きければインフルエンザ+肺炎よりも死亡リスクが高い、1より小さければ死亡リスクが低い。

2018年のインフルエンザ+肺炎と新型コロナの死亡リスクを比較すると、アメリカの新型コロナ死者数75万人の悲観シナリオであっても、子供の新型コロナ死亡リスクはインフルエンザ+肺炎の半分~4分の1。一方で大人は死者数20万人の楽観寄りのシナリオであっても、インフルエンザ+肺炎よりも新型コロナのほうが死亡リスクは3~4倍高い。ただインフルエンザに感染するのは人口の1,2割なので、大人が感染した場合に死ぬ確率だと、インフルエンザと新型コロナで近い数字になりそう。(つまり大人にとって新型コロナウイルスがインフルエンザウイルスよりも怖いのは、毒性の強さによるものではなくて、感染しやすさによるものだと言える)

季節性インフルエンザ(+それに伴う肺炎)と新型コロナではどっちが怖いか?という問いに対しては、子供にとっては季節性インフルエンザのほうが怖い、大人にとっては新型コロナのほうが怖いという答えになるだろう。

アメリカと日本とでインフルエンザ+肺炎の死亡率はあまり変わらないと思う。年ごと地域ごとの流行度合いによってインフルエンザの死亡数は大きく変わるし、超過死亡の概念があるので、直接比較が難しい。5年平均のインフルエンザ死亡率のデータだと日本とアメリカは同じくらい。従って大雑把に言えば、日本とアメリカの新型コロナ死亡リスクが同じくらいなら、日本でのインフルエンザ+肺炎と新型コロナの相対リスクも同じくらいになると考えられる。


◆交通事故との比較

アメリカの人口は日本の3倍弱で、アメリカの交通事故死者数は日本の約10倍。交通事故のリスクはアメリカのほうがずっと高い。それを考慮しても、日本で子供が新型コロナで死ぬリスクは交通事故より大幅に低いだろう。若い世代は交通事故と同じくらい。中高年は交通事故よりも新型コロナで死ぬリスクのほうが高く、年齢が上がるにつれて交通事故に比べての死亡リスクは大幅に上がっていく。子供の命を守るという観点では、新型コロナ対策で学校を閉めるよりも、自動車の使用を禁止するほうが高い効果が期待できる(リスク評価をせずコストを度外視した政策への皮肉です)。


★新型コロナの死亡リスク
年齢群別の新型コロナの死亡率を算出してみる。悲観寄りにアメリカ新型コロナ40万人死亡と仮定して、

0歳    死亡率0.001%(10万人に1人)
1-4歳   死亡率0.0001%(100万人に1人)
5-14歳   死亡率0.0001%(100万人に1人)
15-24歳  死亡率0.001%(10万人に1人)
25-34歳  死亡率0.006%(10万人に6人)
35-44歳  死亡率0.017%(10万人に17人)
45-54歳  死亡率0.05%(10万人に50人)
55-64歳  死亡率0.12%(10万人に116人)
65-74歳  死亡率0.27%(10万人に270人)
75-84歳  死亡率0.68%(10万人に684人)
85歳以上  死亡率1.9%(10万人に1896人)

人口の6,7割感染で集団免疫になり終息と仮定しての死亡率なので、感染した場合に死ぬ確率(致死率)はこれを1.5倍したくらいの数字になる。

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