12/26/2020

マグネシウムと運動パフォーマンス

マグネシウムはエネルギー代謝、神経伝達、筋肉の収縮・弛緩、タンパク質合成など身体の様々なメカニズムに関わる重要な物質です。摂取量が不足すると、血圧上昇、耐糖能低下などの症状が出る可能性があります。欠乏すると様々な身体機能が損なわれます。

マグネシウムはエネルギー代謝や筋肉の収縮・弛緩やタンパク質合成に関わるため、マグネシウム摂取による運動パフォーマンスへの効果を調べた研究がいくつかあります。今回の記事では、マグネシウムが運動パフォーマンスを向上させる効果があるのかを見ていきます。



動物対象の研究

動物実験だとマグネシウム摂取により、脳、血管、筋肉のグルコースレベルを上げ、乳酸塩の蓄積を遅くすることで、持久能力を向上させる効果が見られます。


人間対象の研究

血中のマグネシウム濃度や食事内容から分析した想定のマグネシウム摂取量と、各種の運動能力が相関するという研究はいくつかあります。

RCTのほうが重要度が高いので、今回はマグネシウム摂取とプラシーボ摂取を比べたRCTを見ていきます。

・マグネシウム摂取により、シャトルランのパフォーマンスが向上し、乳酸塩の蓄積が低下した。(1)

・マグネシウム摂取+ストレングストレーニング。マグネシウム摂取グループのほうがストレングス(大腿四頭筋のトルク)が向上した。(2)

・高齢者の歩行速度と椅子から立ち上がるスピードが上がったが、膝の伸展力と握力についてはマグネシウムグループとコントロールグループで有意差なし。(3)

・1週間マグネシウム摂取or4週間マグネシウムとプラシーボを比較。1週間摂取だとベンチプレスのストレングスと回復力(2日連続でハードな内容の測定をするのだけど、2日目にどれくらいパフォーマンスが低下するか)が向上で、4週間マグネシウム摂取だと効果なしという結果。ただ1週間グループは、おそらく測定が1週間くらいの間隔(ベースライン測定→1週間マグネシウム摂取→測定)になっていて、ベンチプレス1RMが60kg程度で初心者だと思われるので、測定自体のトレーニング効果が影響しているのではないか。あと回復力の結果はグループ間の差が大きすぎて違和感がある。グループ内で見ると、1週間も4週間も各々のベースラインに比べるとマグネシウム摂取で回復力が向上している傾向があるので、ハードなトレーニングからの回復にマグネシウムの摂取が効果があるかもしれない。(4)

・マグネシウム摂取で、フルマラソンのパフォーマンスと、マラソン後の回復に効果なし。(5)

・中年の肥満の女性。マグネシウム摂取グループは、体組成が改善し、運動機能が部分的に改善した。(6)

・トライアスロンのタイム測定。マグネシウム摂取グループのほうがタイムが短縮した。(7)

・バレーボール選手が被験者。マグネシウム摂取グループはジャンプ力が向上した。(8)

・マグネシウム摂取グループは、ベンチプレスの限界レップ数が中レップと高レップで増加、トレーニングの主観的な辛さが低下、翌日以降の筋肉痛の辛さが低下。(9)



運動パフォーマンス向上に効果がある?

ビタミンDと運動パフォーマンスの関係に似ていて、研究の数が少なく、ベースラインの状況(不足しているか充足しているか)によって効果が変わりそうといった問題があります。

・欠乏状態の場合は、健康にも運動機能にも悪いので解消したほうが良いでしょう。

・不足状態を解消した場合は、運動パフォーマンスが向上する場合もあれば、しない場合もありそうです。

・充足状態でさらにサプリメントを摂取した場合の効果は不明です。感触としては、過剰摂取によるエルゴジェニック効果はあまり期待できなそうです。

ビタミンDの研究よりも厄介なのは、マグネシウムが足りているかどうかを食事記録から算出したり、血中のマグネシウム濃度を測定したりしていて、実際に不足しているかどうかがよくわからないことです。マグネシウムが不足しているかどうかは、マグネシウムを投与してどれだけ排泄されるか(不足しているほど身体が多く吸収してあまり排泄されない)を測定するのが最も信頼性が高いのですが、費用や手間の面からその方法で測定している研究が無いです。それとサプリメントとして摂取するマグネシウムの量が研究によってまちまちです。

筋トレに関係するものでは、マグネシウム摂取によりストレングス向上が見られた研究が2つあります。1つ目は1992年の古い研究(2)で、ストレングス評価が膝の伸展トルクの測定であり、スクワットなどの実践的な動作ではないです。2つ目は、1週間のマグネシウム摂取でベンチプレスの1RMが向上したという研究(4)ですが、上述したように測定自体のトレーニング効果が影響している可能性があります。

新し目の研究(9)と、(4)の研究の回復力の結果を参考にすると、限界レップ数と、ハードなトレーニングの翌日以降の回復に効果がありそうな感じがします。マグネシウムの摂取は、エルゴジェニック効果にはそれほど期待できなそうですが、コンディションを整えてトレーニングの質と量を上げる効果があるかもしれません。


マグネシウムが多く含まれる食品

マグネシウムが多く含まれるのは、穀物だったら外側に近い部分です。従って、全粒粉や玄米など精製度の低い食品のほうがマグネシウムの含有量が多いです。白米や精白パンなど精製度が高い食品は含有量が少ないです。

肉類は含有量が少ないです。

魚やエビは、骨・皮・内蔵をまるごと食べられる小さな種類のほうが含有量が多い傾向です。大きな魚の身の部分のみだと含有量が少ない傾向です。貝類は全体的に含有量が多いです。

豆類は含有量が多いです。ナッツ類・種子類も含有量が多いです。

野菜と果物はそれほどマグネシウムが多くないです。ほうれん草、オクラ、ごぼう、とうもろこし、アボカド、バナナなど、一部の食品は含有量が多いですが、全体的に見れば含有量はそれほど多くありません。

乾燥わかめ、ココア、干しエビなど、乾物、粉の状態の食品は、可食部100gあたり含有量の上位に来ますが、一回あたりに普通に食べる量だと含有量はあまり多くありません。

主な食品の可食部100gあたりのマグネシウム含有量を以下の表にまとめました。米やパスタや蕎麦は、炊いたり茹でたりした状態の100gです。野菜も普段食べる状態(生が難しいものは茹でた状態)の100gです。肉や魚は生です。

主な食品のマグネシウム含有量(クリックで表が出ます)
白米 7mg
胚芽米 24mg
玄米 49mg
パスタ 18mg
蕎麦 27mg
うどん 13mg
食パン 20mg
ライ麦パン 40mg


豚肉(ばら) 15mg
牛肉(サーロイン) 18mg
鶏肉(もも) 28mg


イワシ 30mg
サンマ 28mg
マグロ 35mg
ししゃも 55mg
たこ 55mg
あさり 100mg
桜えび(生) 69mg
桜えび(乾物) 310mg
煮干し 230mg
しらす干し 130mg


大豆(茹で) 110mg
きなこ 240mg
納豆 100mg
豆腐(絹) 44mg
あずき(ゆで) 43mg


煎りごま 360mg
アーモンド 310mg
落花生 200mg
くるみ 150mg
甘栗 71mg


ほうれん草(茹で) 40mg
オクラ 51mg
ごぼう 40mg
とうもろこし 38mg
かぼちゃ 24mg
じゃがいも 20mg
チンゲンサイ 17mg
ナス 17mg
きゅうり 15gm
トマト 9mg
人参 9mg
レタス 8mg
大根 10mg
ブロッコリー 17mg
白菜 9mg
しめじ 11mg
エリンギ 12mg


アボカド 33mg
バナナ 33mg
パパイヤ 26mg
メロン 13mg
いちご 13mg
キウイ 12mg


全卵 11mg
牛乳 10mg

 

マグネシウムサプリメント

マグネシウムの一日あたりの推奨摂取量は、男性が約400mg、女性が約300mgですが、主な食品に含まれるマグネシウムの含有量を見てみると、普通の食生活では不足しがちになると思います。

マグネシウムは多めに摂取しても、身体が必要とする分だけ吸収されて残りは排泄されるので、マグネシウム不足のリスクを解消するためサプリメントを摂取するのは有りだと思います。

サプリメントでマグネシウムを摂取するなら一日あたり200-400mgが目安で、食事と一緒に摂取します。摂取量が多すぎると、お腹が痛くなったり、便がゆるくなったりする場合があります。

マグネシウムサプリメントにはいくつか種類がありますが、基本的にはあまりこだわらなくても大丈夫だと思います。お腹の調子が気になる場合は、酸化マグネシウム(magnesium oxide)や塩化マグネシウム(magnesium chloride)よりも、クエン酸マグネシウム(magnesium citrate)が良いでしょう。

認知機能の向上を謳うL-トレオン酸マグネシウム(magnesium L-threonate)という種類もあり、ラット実験で認知能力の向上が見られました。ただ、Examine.comを読む限り、人間対象の研究は無いようです。


サプリメントについての個人的な話

私は、サプリメントはクレアチン、ビタミンD、プロバイオティクス、亜鉛を摂取しています。クレアチンは筋肉のためで、ビタミンDとプロバイオティクスは体調管理のためです。亜鉛については、偏食で肉と貝類を食べられないのと、皮膚が弱いため、その対策で摂取しています。今回、色々と調べてみてマグネシウムも追加したほうが良いかなと思っています。

費用対効果を考えると、クレアチン以外のエルゴジェニック系のサプリ(プレワークアウト製品に含まれるような物質)はコスパが高くないので、エルゴジェニック目的ではクレアチンのみ摂取しています。あとは、体調を整えて長期的にトレーニングの質と量を確保していったほうが良いと考えているので、体調管理のためのサプリメントを摂取するようにしています。歳を取るにつれ、体調や疲労を管理する重要度が高くなってきたように感じます。




関連記事:

クレアチンについて

ビタミンDと運動パフォーマンス

ビタミンD摂取がストレングスと体組成変化に効果があったとする研究

プロバイオティクスのスポーツへの利用


<参考文献>

(1)The effect of magnesium supplementation on lactate levels of sportsmen and sedanter
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17063625/

(2)Effect of magnesium supplementation on strength training in humans
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1619184/

(3)Effect of oral magnesium supplementation on physical performance in healthy elderly women involved in a weekly exercise program: a randomized controlled trial
https://academic.oup.com/ajcn/article/100/3/974/4576609

(4)The effect of acute vs chronic magnesium supplementation on exercise and recovery on resistance exercise, blood pressure and total peripheral resistance on normotensive adults
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4419474/

(5)Failure of magnesium supplementation to influence marathon running performance or recovery in magnesium-replete subjects
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1299490/

(6)Does magnesium supplementation improve body composition and muscle strength in middle-aged overweight women? A double-blind, placebo-controlled, randomized clinical trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23619906/

(7)On the significance of magnesium in extreme physical stress
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9794094/

(8)Magnesium status and the physical performance of volleyball players: effects of magnesium supplementation
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24015935/

(9)Effects of Magnesium Supplementation on Muscle Soreness and Performance
https://ir.una.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1001&context=scholarsweek2019

(10)Effect of magnesium supplementation on muscular damage markers in basketball players during a full season
https://www.researchgate.net/publication/319175277_Effect_of_magnesium_supplementation_on_muscular_damage_markers_in_basketball_players_during_a_full_season

(11)Magnesium and the Athlete
https://journals.lww.com/acsm-csmr/Fulltext/2015/07000/Magnesium_and_the_Athlete.8.aspx

(12)Can Magnesium Enhance Exercise Performance?
https://www.researchgate.net/publication/319342345_Can_Magnesium_Enhance_Exercise_Performance

(13)Examine.com
https://examine.com/supplements/magnesium/

0 件のコメント:

コメントを投稿