2/09/2020

股関節の骨の個人差とスクワットのスタンス

股関節は、大腿骨の先っぽの丸い部分(ボール)と骨盤の受け皿部分(ソケット)からなる関節。

筋肉などの柔軟性が制約にならなければ、股関節の可動域はこの骨と骨がぶつからない範囲になる。大腿骨の先っぽの形と、骨盤のソケットの位置や深さには個人差があり、そのため骨と骨がぶつからない範囲にも個人差がある。

股関節がどこまで曲がる(屈曲する)か、脚を大きく開いた方が曲げやすいか、あまり開かないほうが曲げやすいかは、スクワットのしゃがめる深さと適したスタンスに影響する。

股関節の骨の形には個人差があり、しゃがみやすいスタンスは人によって違うこと、また骨の形の問題でどうやっても深くしゃがむのが困難な人がいて、そういう人が無理に深いスクワットや床引きデッドリフトをやると危険なことなどをこの記事では書いていきたい。

まず最初に、大腿骨の先っぽの形と骨盤のソケットの位置の個人差を見ていく


★大腿骨の先っぽの形と骨盤のソケットの位置

(1)大腿骨の先っぽの捻じれの角度 femoral anteversion / femoral neck angle
日本語だと前捻角。上から見たときの大腿骨のシャフトに対する先っぽ部分の角度。後で紹介するCraig's testで大体の値がわかる。赤ちゃんの時は40度くらいで、成長とともにだんだん角度が小さくなっていく。

被験者グループの遺伝子や生活様式によって値は異なるけど、だいたい5-15度くらいが普通で、この程度の角度だとしゃがむ動作や歩行動作に問題が出にくい。このノーマルレンジを大幅に外れる人も一定数いる。下のグラフはインドの研究のデータ。

色々な研究での、前捻角の平均値。


(2)大腿骨の先っぽの傾き Angle of Inclination / femoral neck shaft angle
前から見た場合の(frontal planeの)、大腿骨の先っぽの角度。赤ちゃんの時は140-150度で成長とともにだんだん角度が小さくなっていく。画像のBとCはノーマルのレンジを外れたケースで、股関節を動かしやすいように赤点の部分を合わせると、X脚、O脚になる。



(3)骨盤ソケット位置(前後) acetabular anteversion
上からみた場合の(Horizontal planeの)、骨盤ソケットの向き。普通は20度程度。



(4)骨盤ソケット位置(横向きか下向きか) Center-Edge Angle / acetabular inclination
前から見た場合の(frontal planeの)、骨盤ソケットの向き。普通は35度程度。


★骨の左右差
大腿骨の先っぽの捻じれと傾きの角度、骨盤のソケットの位置は、多くの人がおおよそシンメトリーになっているが、左右差が大きい人もいる。成長過程でアシンメトリーの負荷がかかると、アシンメトリーに骨が成長するのかもしれない。骨の形の左右差が大きい場合は、スクワットの脚の開き度合いも左右で異なるようにするのが適切だろう。アラインメント異常によるアシンメトリーと、骨自体のアシンメトリーとを見分ける必要があるが・・・人間の身体は難しいですね。


★ソケットの深さと骨頭の太さ
ソケットが深くて大腿骨の先っぽが太いと可動域が狭くなる。スクワットを深くしゃがむのは困難だけど、関節の安定性が高いので長時間歩いたりするのが得意。ソケットが浅くて、大腿骨の先っぽが細いと、屈曲も伸展も可動域が広くなるけど、股関節の安定性が低くなる。


★骨の形の個人差による得手不得手
例えば、骨盤ソケット位置が前向き・横向きで、大腿骨の先っぽの角度が普通だと深くしゃがみやすい。その分、股関節伸展の可動域があまりなく、デッドリフトやヒップスラストのロックアウトがカッチリしない場合もある。その場合は、腰を反ってロックアウトしてる風にならないように注意する。

骨盤ソケット位置は、下向きよりも横向きのほうがしゃがみやすけど、そのぶんボール上部のカバー面積が小さくなるので、長時間の歩行などに不利。カバー面積が小さいため周辺組織にかかる圧力が高くなることで経年劣化が早まり、変形性股関節症になりやすい可能性がある。


★股関節の屈曲可動域チェック
骨の形の話を細かく書いても、スクワットのスタンスのために股関節をレントゲン撮影して判断する人は多分いないと思うので、手軽にできる判断の方法を紹介。

動画:Quick Hip Assessment for Squatting | Movement Fix Monday | Week 6 | Dr. Ryan DeBell
https://www.youtube.com/watch?v=b0nJpBGOml4&feature=emb_title

最初にうつ伏せになって大腿骨の内旋と外旋のレンジをチェック。このモデルの女性のように大腿骨の先っぽの捻じれがretroversionと思われる人は外旋レンジが大きく内旋レンジが小さい。

次にやっているのがCraig's test。腿の横側を触り、大腿骨を内旋・外旋して骨の出っ張りがもっとも顕著になるところで足を止める。この足を止めた時の脛の角度が、垂直から外側に5-15度くらいになるのがノーマルレンジで、スクワットのスタンスは肩幅くらいの普通の足幅で楽にしゃがめる可能性が高い。脛が内側になる場合はワイドスタンスが向いている可能性が高い。脛が15度より外側になる場合はナロースタンスが向いている可能性が高い。この角度に左右差がある場合もあるので、両脚ともチェックしたい。


Craig's testを一人でやってみたい場合は、片脚立ちして関節の角度をうつ伏せ時と同じにして、大腿骨を内旋・外旋すると良いと思う。大腿骨の出っ張りは外側広筋の付着点のすぐ上なので、チェックしたい足で床を踏んだりして外側広筋をピクピクさせると場所を把握しやすい。

次は仰向けになって、様々な角度で膝を胴体に近づけてみて、どのくらい足を開くと股関節が深く曲がるかチェックする。大腿骨の形だけでなく、骨盤のソケットの位置も股関節の可動域に影響する。股関節の可動域の確認は、骨盤がどこで動き出すかに注意する。大腿骨を動かしていって骨と骨がぶつかると、それ以上脚を動かそうとすると骨盤が動く。

動画:Hip Socket Self-Assessment
https://www.youtube.com/watch?v=81xUjrD1Wao
一人でチェックする場合はこんな感じ。


このようにチェックしていくと、股関節の骨の噛み合わせの点で、どのようなスタンスだと楽にしゃがめるのか、どこまで深くしゃがめるのかが大体分かる。骨の形の問題で深くしゃがむのが困難な人は、スクワットで無理に深くしゃがむ必要はない。人によってはナロースタンスでの床引きデッドリフトが、背骨ニュートラルのままでは無理な場合もある(ワイドスタンス向きの噛み合わせならスモウが向いている)。ワイドでもナローでも股関節を深く曲げるのが苦手な噛み合わせなら、浅いスクワット、ラックプル、もしくはヒップスラストが良いだろう。骨の形の問題で股関節が深く曲がらないのに、無理に深くスクワットしたり床引きデッドリフトをしたりすると、股関節の屈曲が足りない分を背骨を丸めることで達成しようとして危ない。

楽にフルボトムまでしゃがめる人は、股関節が繰り返し負荷に弱い可能性があるので、老後のことを考えるなら、股関節周りと脚の筋肉を鍛えて歩行やランニングの衝撃を筋肉で和らげられるようにする。また、肥満にならないように注意する(体重が重ければそれだけ股関節にかかる負荷が増える)。

ただスクワットのスタンスやしゃがめる深さには、足首の可動域や内転筋の柔軟性や身体コントロール能力なども影響する。その場合はこれらの問題に対処することで、スクワット動作が改善するので、身体全体をトータルで見ていく必要がある。


関連記事:
butt winkの話

スクワットの深さ

アシンメトリー


参考サイト:
Beyond Butt Wink: Hip Shape, Injuries, and Individual Ability Part 1
https://deansomerset.com/beyond-butt-wink-hip-shape-injuries-and-individual-ability-part-1/

Beyond Butt Wink: Part 2
https://deansomerset.com/beyond-butt-wink-part-2/

Beyond the Butt Wink: Part 3
https://deansomerset.com/beyond-the-butt-wink-part-3/

Hip
https://clinicalgate.com/hip-5/

Study Of Femoral Neck Anteversion Of Adult Dry Femora In Gujarat Region
http://njirm.pbworks.com/f/4femoral_neck_antiversion.pdf

Femoral neck shaft angles: A radiological anthropometry study
http://www.npmj.org/article.asp?issn=1117-1936;year=2016;volume=23;issue=1;spage=17;epage=20;aulast=Adekoya-Cole

Three-dimensional acetabular orientation measurement in a reliable coordinate system among one hundred Chinese
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0172297

A Novel Approach for Determining Three-Dimensional Acetabular Orientation:Results from Two Hundred Subjects
https://www.academia.edu/21070725/A_novel_approach_for_determining_three-dimensional_acetabular_orientation_Results_from_two_hundred_subjects

1/31/2020

身体機能チェック

下の画像のポーズができるかどうかで、骨盤が左右ローテーションできるか、大腿骨の上に骨盤がしっかり乗るか、背中を丸められるか、胴体をねじることができるかなどをまとめてチェックできる。

やりかたは左脚で片脚立ちしながら、右脚を前に伸ばし、左手で右足つま先を触り、息を止めず楽に呼吸しながらこの姿勢をキープ。
今度は逆に、右脚で 片脚立ちしながら、左脚を前に伸ばし、右手で左足つま先を触り姿勢をキープ。

両脚とも上手くできるなら身体機能のコンディションが良好と思われる。 アシンメトリーが強いと、片方しかできなかったりする。背中の伸展筋に負荷がかかり続けて背中が反ったまま固まっていると背中を丸められない。


関連記事:
背中のストレッチ

アシンメトリー

1/17/2020

片脚種目のアシンメトリー



前後動作のブルガリアンスクワットやランジ、左右動作のラテラルランジやコサックスクワット。骨盤が固まっていて左右のローテーションが上手くいかないと、左右の踏み込みの際に違う筋肉に負荷がかかっている感じがしたり、しゃがめる深さが違ったり、身体がぐらついてバランスが上手くとれなかったりする。アシンメトリーが原因で片脚種目が苦手な場合、ちょっとしたコツでスムーズに出来るようになるので紹介します。

以下の記事を読んでない方は、一通り読んで骨盤が動くようにしておくとやりやすいです。骨盤が動くようにしてから、動作を脳に覚え込ませる。

関連記事:アシンメトリー


★前後動作
ブルガリアンスクワットなどの前後動作の種目では、棒を杖のように持って練習する。棒は常に重心が乗りにくい側に持つ。left AIC(右側重心)だったら左側。壁などに手を当てるよりも、棒の方が良い。棒だと弱っている腹斜筋に力が入り、開いている肋骨が締まりやすい。弱っている筋肉が働くようにしたいので、重心が乗りやすい側の脚が前の時は尻の外側に負荷がかかるように、重心が乗りにくい側の脚が前の時は腿の内側や股関節の伸展筋(殿筋やハムストリング)に負荷がかかるように意識する。

下図の例は、left AICで右側に重心が乗りやすい人の場合。左側に重心が乗りやすい場合は、棒を右手に持つ。





ケトルベルやダンベルや穴の空いているプレートを、重心が乗りやすい側の腕で以下のように持ちながら、ブルガリアンスクワットなどをやると、重心側に曲がっていた背骨が矯正されてバランスが取りやすくなる。右側に重心が乗りやすいなら、右手で重りを持つ。最初は5kg以下でやったほうが良いと思う。あまり重いと肘が痛くなる。outlaw rackと呼ぶみたいなのだけど、この持ち方には他のことにも応用できそうな可能性を感じる。




★左右動作
ラテラルランジやコサックスクワットなど。パラレル程度のしゃがみ込みなら骨盤がローテーションできなくても誤魔化せるけど、フルボトム付近までしゃがむ場合ごまかせなくなる。

left AICの人だと、右側にしゃがみこむのはスムーズに出来るけど、左側にしゃがみこむのが難しいと思う。普段重心がかからない側(left AICなら左側)の股関節は骨盤が前傾していて、普通のスクワットでもコサックスクワットでも股関節の骨がぶつかって深くしゃがみにくい。

深くしゃがむコツはしゃがみ込む方向に上半身を曲げ、重心を移動させる。息を吐きながら、内転筋と殿筋と脇腹に力をいれつつ、同側の肩が膝の内側に触れる感じで上半身を曲げると深くしゃがめる。普段重心がかからない側の内転筋は緩んでいるので、骨のポジションさえ直せば重心がかかる側よりも深くしゃがみやすい。つま先は45度くらい開く、腰を反らないように、スクワットの基本と同じようにつま先の方向と膝の方向が一致するように。

これはケトルベルを持ってるけど、この腕のポジションにして自分の肩甲骨を指でタッチする感じにするのもやりやすい。

左右動作で深くしゃがむのは、普通の両足スクワットで尻の横移動が起きる人が、重心が乗らず深くしゃがめない側の脚を上手く使う練習にもなる。重心が乗らず深くしゃがめない側の脚は深くスクワットすると、大腿骨が内に、脛が外になりやすく、そのため膝が捻じれて膝に痛みが出やすい。left AICなら左脚がこうなりやすい。骨盤をコントロールし、膝にまっすぐ力を入れられるようにする。


股関節の柔軟性が足りない場合は、手を床につきながらゆっくりしゃがみこんでいく。これもしゃがみ込む側に肩を近づけるようにすると深くしゃがみやすい。ただ股関節の可動域には個人差がある。痛みや骨のぶつかりを感じるようならその手前で止め、限界を攻めないほうが良い。

動画:4 Point Cossack Squat
https://www.youtube.com/watch?v=N9eYixgN-cE

12/31/2019

アシンメトリー

★アシンメトリー
アシンメトリーは左右の非対称のこと。日常動作やウェイトトレーニングでは以下のような症状が出る。

・立った時に重心が片側にいきやすい。
・直立時に骨盤や肩の傾きがある。
・歩く時にどちらかの脚が接地している時はスムーズに動き、反対側の脚が接地している
時はぎこちない動きになる。
・上半身を捻りながら腕を前に伸ばすと、片方の腕は伸ばしやすくて、もう片方の腕は伸ばしにくい。
・スクワットとデッドリフトで重たい重量を持ち上げようとすると、重心が片足に乗って、お尻が横に移動する。重心が乗らない側の脚は、膝がグラグラする。
・スクワットで深くしゃがもうとすると、片側の股関節が先にひっかかり尻が横に動く。

PRI関連を少し調べてみて、アシンメトリー修正として自分の身体に適用してみたら、すごくフィットしたので紹介します。ちなみにセミナーとか受けてないので浅いところしか知らないです。

「PRIのような姿勢矯正やリハビリ系のテクニックって、歩くのも大変になってきた高齢者に使うものでしょ? ハードな筋トレをしている若い自分には関係ないよ」と思う人は、以下の動画をどうぞ。ストレングストレーニングガチ勢がPRIのテクニックを使って、スクワットの際の尻の横移動(Hip shift)を修正しようとしています。

動画:Fixing Hip Shift in the Squat-JTSstrength.com
https://www.youtube.com/watch?v=LnFyYuY2Sro

PRIの理論だと、肝臓など一つしか無い臓器の配置や横隔膜の左右の強さの違い、左右の横隔膜の背骨への付着点の違いなどで、多くの人の身体はアシンメトリー、特にLeft AIC/Right BCパターンと呼ばれる右足重心の姿勢になっている。実際にこのパターンが多いのかは知らないけど、私の身体の状況はこれとはほぼ左右逆で左足重心になっているので、利き腕、利き足(と軸足)、スポーツ歴の影響も大きいのではないかと個人的には思っている。

他のアラインメント異常の問題と同じように、アシンメトリーのアラインメントでの動作を、「日常動作の軽い負荷で何十年と続ける」もしくは「重たいバーベルやダンベルを使って強い負荷で短期間(数ヶ月~数年)続ける」と、アシンメトリーの程度にもよるけど、身体に痛みや痺れなど不具合が出てくる可能性が高くなる。

別に完璧なシンメトリーを目指す必要な無く、日常生活だったらアシンメトリーの動作でも死ぬまである程度元気に動き続ければいいし、アスリートだったら現役の間、最高のパフォーマンスを続けられれば良い。

ただ問題が出ないように、なるべくアシンメトリーを修正すると、怪我を防ぎやすいし、パフォーマンス向上も望めるかもしれないので、なにか問題を感じている場合は試してみるのも良いと思います。私はウェイトトレーニングしかやらないので、アシンメトリーであることのメリットは無く、性格が神経質なので自分の身体はなるべくシンメトリーを目指そうと思うのですが、野球の投手なんかだとある程度のアシンメトリーが最高のパフォーマンスに必要みたいなこともあるようなので、アシンメトリーをどう扱うかは競技次第ですね。

アシンメトリーの形と原因は千差万別なので、今回のやり方ですべてが解決するわけではないけど、これで解決する人も一定割合はいると思われるので、なにか問題を感じている人は試してみると良いと思います。


★アセスメント
信頼できる専門家に診てもらうのがベストだと思うけど、ここでは自分で診断できるやり方を書いてみたい。

Left AIC/Right BCパターンの人はリラックスした場合にダビデ像のような姿勢になりやすい。ちなみにアート用語でこういうアシンメトリーの人物像を contrapposto と言って、人体の自然な姿勢が表現されている。


実際の人間の写真だとこうなる。

Left AIC/Right BCパターンの特徴を見ていくと、
正面から見た場合
- 右足重心
- 左肩に比べて右肩が下がる
- 骨盤の左側が右側に比べて下がる。
- 右側の肋骨と骨盤を近づける筋肉が固くて縮んでいる(腹斜筋や腰方形筋)
- 背骨が右側に曲がる
- 右脚の内転筋が強くて固い
- 左脚の内転筋が弱くて緩い
- 右足の外転筋が弱い。
- 右側骨盤が後傾
- 左側骨盤が前傾


上から見た場合
- 骨盤が右側に回旋(骨盤の左側が前に出る)
- 胸椎のねじれにより左肩が後ろになり、右肩が前側になる。
- 左足が前に出て、つま先が外に開く。

リラックスして立っている時に、右足に重心がきてダビデ像のようなポーズになると楽な人は、Left AIC/Right BCパターンの疑いがある。あと椅子に座って脚を組むと左脚が上に来るのが楽で、床に座って立て膝をすると左脚を立てるのが楽になる。

Left AIC/Right BCパターンだと、スクワットやデッドリフトをした時に もっとも力を入れやすいスタンスが下の図のようになると思う。上が両足のつま先を外側に開くことを優先した場合。下が骨盤が正面を向くことを優先した場合。右側の内転筋と股関節伸展筋が強いので、右側に重心移動してそこをフルに使おうとする。スクワットとデッドリフトで高重量になってくると、尻が右側に移動しやすい。


私みたいにLeft AIC/Right BCパターンと左右逆の人はこうなる。

スクワットの際の尻の横移動の研究だと、股関節周りの筋肉やアラインメントの状態が、左右の方向を考えなければLeft AIC/Right BCパターンと同じような感じになっているので、PRIのアプローチで尻移動が直るケースも結構あるのではと思う。

Presence of a Lateral Hip Shift During Squatting is Associated with Altered Mobility and Neuromuscular Control
https://uncexss.wordpress.com/2015/09/21/presence-of-a-lateral-hip-shift-during-squatting-is-associated-with-altered-mobility-and-neuromuscular-control/
オーバーヘッドスクワットで尻の横移動が起きる人の身体動作を、真っ直ぐ尻を下ろせる人と比較したところ、尻が寄って重心が乗る側の脚では、大腿骨がより内旋、あまり外転せず、足首はあまり曲がらず。重心側の足首があまり曲がっていないのは足首の可動域の問題ではないと思う。重心が乗る側の脚は骨盤後傾気味で股関節がスムーズに深く曲がるので尻を下ろす際に足首をあまり曲げる必要が無い。重心が乗らない側の脚は骨盤前傾気味で、骨の噛み合わせの問題で股関節が深く曲がらなくなっている。この実験のスクワットは写真を見ると、つま先を揃えたナロースタンスなので、股関節の骨がぶつかった後は膝と足首をさらに曲げることで尻の深さを出していると思われる。重心が乗らない側の股関節が深く曲がらないからといって、ここのストレッチをしても効果がない。むしろ重心が乗らない側の股関節の内転筋やハムストリングスは弱っていて伸びているので、これらの筋肉のストレッチはしないほうがよい。重心が乗らず深くしゃがめない側の骨盤の前傾を直す必要がある。


この画像の例だとLeft AIC/Right BCとは逆に左側に重心と尻が寄っている。両足のつま先の開き具合は、Left AIC/Right BCパターンと左右逆の人のつま先と同じで、右足つま先がより外側に開いている。重心側の大腿骨は、上の研究と同じように内旋している。足首の曲がりの違いが研究と違うけど、おそらく重心が乗らない側の股関節の骨のぶつかりを、よりワイドスタンスにすることで解決しようとしている。



★関節の分解
全部の関節がLeft AIC/Right BCパターンに沿ったアラインメント異常を見せるわけではないので、三箇所に分解して考えていく。

(a) 骨盤と股関節

(b) 背骨の横方向の曲がり

(c) 背骨の捻じれ

こうすると、個別ケースに沿って矯正エクササイズを左右逆に適用したりできる。例えば私の場合は、骨盤と股関節、背骨の横方向の曲がりはLeft AIC/Right BCパターンと左右逆になっていて、左側重心で背骨が左側に曲がっているのだけど、背骨の捻じれは左肩が後ろになっていてLeft AIC/Right BCパターンと同じ。なので骨盤と股関節、背骨の横方向の曲がりについては、Left AIC/Right BC用のエクササイズを左右逆にして行い、背骨の捻じれについてはLeft AIC/Right BC用のエクササイズをそのまま行っている。



★アシンメトリー矯正エクササイズ
床に寝たり四つん這いになって行うエクササイズに共通する呼吸方法は、鼻から息を吸って、口から息を深く吐き出す。3-4秒かけて吸い込んで、5-8秒かけて吐き出して、吐ききった状態で2-3秒止める。これを1セット4-5回繰り返す。吸う息の量は適当で良いが、背骨の曲がりと捻じれの矯正エクササイズでは限界近くまで吸い込んだほうが肋骨が広がって良いと思う。以下の関連記事も読んでおくと理解が深まると思う。

関連記事:背中のストレッチ

関連記事:体幹トレーニング

アラインメントがLeft AIC/Right BCと左右逆の人は、エクササイズを左右逆にやる。そうしないと、もともと固く縮こまっている側をさらに固く縮こまらせるので悪化する。専門家の診断を受けず自己判断でやる場合、スクワットやデッドリフトで重心と尻が右側に移動しやすい人は、以下のLeft AIC/Right BC矯正エクササイズと同じやり方でやってみると良いと思う。重心と尻が左側に移動しやすい人は、左右逆にする。やってみて調子が良かったら続ける。コンディションが悪化したら中止する。


(a) 骨盤と股関節
Left AIC/Right BCだと骨盤が右回旋し、骨盤の左側が前に出る。骨盤の左側は前傾、骨盤の右側は後傾。右股関節は内転筋と股関節伸展筋が強く短縮し、右脚大腿骨は内転・内旋。外転の筋肉(殿筋外側)は弱い。左股関節は内転筋やハムストリングスが弱く、左脚大腿骨は外転。

端的に言うと、歩行サイクルにおいて、右脚接地で右脚に重心が乗っていて左脚を前方に振り出すフェーズでのアラインメントと筋肉の緊張のまま固まっている。この状態で固まっているので、歩行の際は左脚接地で右脚を前方に振り出すフェーズがぎこちなくなる。

骨盤左側が前傾しているので、深くしゃがもうとすると左側股関節の骨がぶつかってしゃがめなくなる。右は後傾しているのでしゃがみやすい。この左右の可動域の差により、深くしゃがもうとすると尻が右側に移動しやすい。それと右脚内転筋と股関節伸展筋(ハムストリングスや殿筋)が強いので、特に高重量になってくると右股関節で荷重を受けようとして、尻が右に移動しやすい。

骨盤と股関節のアラインメントを直すには、
1. 固まってる骨盤と股関節をほぐし動かす。骨盤周りはかなり固いので、自由度の高い動作で直そうとすると、他の関節での帳尻合わせ(代償)が起きやすい。まずは背中と足の裏を固定して自由度を下げたエクササイズを行い、骨盤を動かせるようにしていく。
2. 重心が乗らず弱っている方の内転筋とハムストリングスに力を入れる。重心側の外転筋を強化。
3.  骨盤が動くようになったら、片脚に負荷をかけたスクワットやデッドリフトに近いエクササイズを行い、弱っている部分を実践的な動作で鍛える。
4. 普通の両足でのスクワットやデッドリフトの動作をやり、左右対称の動きが出来るよう練習する。

骨盤と股関節周りのエクササイズに共通するやり方は、重心がかかりやすい側の骨盤を前にグイッと出す。その反対側の内転筋、ハムストリングス、殿筋に力を入れる。Left AIC/Right BCなら右側の骨盤を前に出して、左側の内転筋、ハムストリングス、殿筋に力を入れる。息を吐ききる場合は、左側の脇腹と肋骨を特に意識して締め、内腹斜筋中心に収縮させる。

動画:Postural Restoration 90/90 With Hip Shift
https://www.youtube.com/watch?v=3x2uhhcu-LA&feature=emb_title
腰椎をフラットにし背中を床にべったりつけて、左足の裏を壁につけて、右脚を上に(右膝を上に押し上げるイメージで骨盤を左旋回する)。左足の踵を特に意識し、壁につけたまま下に押す感じで力を入れる。すると左のハムストリングスと殿筋が収縮する。膝の間に5-10cm程度のボールを挟むとと内転筋にも力が入るので良い。フォームローラーを挟んでも良いと思う。この状態で鼻から息を吸って、口から息を限界まで吐く。
動画:Adductor Pullback
https://www.youtube.com/watch?v=Rz91r8EbrPk&feature=emb_title
 重心が乗りやすい側を下にして横たわる。Left AIC/Right BCなら右側が下。膝と股関節を90度にし腰を丸める。膝の間に厚手のタオルを挟むとやりやすい。両足の裏を壁につけたまま、鼻から息を吸いながら、上の脚を骨盤を回して後ろに引く。上の脚を後ろに引いた状態で、息を吐きながら上の脚の膝をタオルに力いっぱい押し付ける(下の脚は力を入れない)。上の脚の内股の筋肉が強く収縮する。息を限界まで吐ききると、左の肋骨が締り左脇腹も強く収縮する。その状態で息を2-3秒止める。再び息を吸いながら、さらに上の脚を後ろに引き、また同じように息を限界まで吐きながら上の脚で強くタオルを挟む。呼吸4-5回で1セット。

重心が乗る側の内転筋やハムストリングスが固く縮こまっているので、適当にストレッチしておく。


動画:EricCressey.com: Left-Stance Toe Touch (with Toe Lift and Med Ball)
https://www.youtube.com/watch?v=GonP-y46dwk&feature=emb_title
重心が乗りにくい側の脚を後ろに引いて、股に適当なものを挟んで、後ろに引いた脚の踵に重心をかけてRDLの動きをする。重心が乗らない側の骨盤前傾を直したいので、ハムストリングをストレッチするのではなくて、股関節の関節包の後ろ側をストレッチする。腰を丸め気味にするとやりやすい。左殿筋の上端のちょっと上あたりが伸びると効いている。


内転筋と外転筋を鍛えるエクササイズ
段差で片足を一段上に乗せて、足の裏を床につけたまま上の段の足に重心移動しながらRDLの動き。股が足の真上にくるくらいまで動く。肩とヘソが正面を向くよう注意しながら行う。段差が高いとやりにくいので、低めの段差が良いと思う。ゴブレットスクワットの要領でダンベルを持つと負荷を上げられる。弱っている外転筋(left AICなら右側)を鍛えるのには、横に寝て膝を開くエクササイズもあるのだけど、個人的には横に寝て膝開くエクササイズはやりにくくて、この段差を使ったエクササイズのほうが効いている感がある。

動画:Left AF IR Split Stance KB Deadlift
https://www.youtube.com/watch?v=cS1U9AaFHrM
 重心が乗らない側の脚(Left AIC/Right BCだったら左脚)を後ろに引いて、同側の腕にダンベルなどを持ってRDL。後ろ側の足に重心をのせ、踵と母指球にしっかり荷重を感じながら足底のアーチを作り、内転筋、殿筋に負荷をかけ、ダンベルを持ってる側の体幹(腹斜筋や広背筋)を締めて行う。デッドリフトの前にやっておくと重心が乗らない側の脚に力が入るようになって、左右のぐらつきを抑えやすい。

動画:EricCressey.com: Bowler Squats
https://www.youtube.com/watch?v=X5xW-eVRg6c
 脚は内転筋や殿筋に力が入るように、上半身は捻りが行えるように。左右両方向やったほうがよい。Left AIC/Right BCだと右脚で片足立ちの時は踏ん張りやすいけど上半身が捻りにくく、左脚で片足立ちの時は踏ん張りにくいけど上半身は捻りやすいと思う。


(b) 背骨の横方向の曲がり
Left AIC/Right BCだと背骨が右側に曲がっている。左側内腹斜筋が弱い、左股関節屈筋(腸腰筋など)が強い。

背骨を逆方向に曲げて、息を吸い込む際は普段短縮している側(エクササイズ時は伸びている側)の肺と肋骨(横と前)を大きく膨らまし、息を吐き出す際は普段伸びている側(エクササイズ時は縮んでいる側)の脇腹の筋肉が収縮するようにする。

Left AIC/Right BCなら背骨を左側に曲げて、息を吸い込みながら右側の肋骨の横と前を膨らませて、息を吐きながら左側の脇腹を締める。


(c) 背骨の捻じれ
Left AIC/Right BCだと左側背部の筋肉が固く縮こまっている。ねじれを直した状態で短縮している背部に息を吸い込み、左側背部を膨らませる。

この動画を見ると 、肋骨がどうなっているのかイメージが掴みやすい。赤丸で囲んだ部分を、胸椎を曲げながら肺を膨らませることで内側から広げる。ちなみに胸郭が歪んでいると、肩甲骨も正常に動かなくなるので、肩関節の動きにも支障がでる。
動画:Why the 90-90 With Hip Shift Also Needs Hands and Knees Breathing
https://www.youtube.com/watch?time_continue=142&v=2vxVYYg8XgA&feature=emb_title
 


動画:All Fours Left ZOA Exercise
https://www.youtube.com/watch?v=Bx2Imj_nTn0&feature=emb_title
 左膝の下に厚手のタオルを置くと骨盤のアラインメントも調整できる。関連記事の背中のストレッチのエクササイズと同じように背中を丸めて、背骨を左に曲げて、息を吸い込んで左背部(左肩甲骨の下辺り)を大きく膨らませる。背骨の横方向の曲がりの矯正エクササイズで膨らませる肋骨とは逆側の背部を膨らませる。

12/24/2019

背中のストレッチ

ベンチプレス、デッドリフト、バックスクワット、プルやロウ。コンパウンド種目中心に本格的なウェイトトレーニングを行うと、背中が過度に反った(伸展)状態になりやすく、背中を反らせる筋肉が緊張しやすい。また肩甲骨を寄せて(内転)下げる(下制)状態になりやすい。骨盤が前傾し、腰が反り、肋骨が開きっぱなしになりやすい。




従って、背中を丸めて、肩甲骨を開いて、骨盤を後傾させて、肋骨を締めるエクササイズを行い、動作のバランスを取るとコンディションを整えやすい。

以下のストレッチをやると背中の緊張が取れ、肩甲骨の動きがスムーズになるので、熱心にウェイトトレーニングをやる人は試してみると良いと思う。ウォームアップの段階で行いアラインメント調整すると良いが、BIG3のセット間インターバルや、トレーニング後にもやると背中がリラックス出来て気持ちがいいのでおすすめです。

動画:Lift Moore Monday: All Fours Belly Lift
https://www.youtube.com/watch?v=LgpOlZpVFcQ

1. 口から息をゆっくり限界まで吐き出す。同時に背中を丸めながら、骨盤を後傾させる。恥骨と肋骨を近づけるイメージで行う。殿筋に力を入れる。息を吐ききった後はそのまま2,3秒息を止める。腕は肘を伸ばし床を押しながら(特に親指と人差し指で押す)、手で床を掴む感じをキープする。顎は引く。
2. その姿勢を維持したまま、鼻から息を吸い込む。上背部を膨らませるイメージで行う。
3. 次の吐き出すフェーズでさらに背中を丸めていく。息を吐き出すたびに少しずつ背中が丸まるよう頑張る。
4. 呼吸4,5回で1セット。これを2,3セット行う。


このエクササイズは上手くやると効果が絶大。
・背中の反りを直し、脊柱起立筋群の緊張を緩和する。
・肩甲骨が内転・下制で張り付いているのをスムーズに動かせるようにする。
・横隔膜をしっかり使って肋骨を膨らませて深く呼吸できるようにする。
・肋骨を締め強い体幹を作れるようにする。

熱心にウェイトトレーニングする人がなりやすい症状をオフセットするのに、一つだけエクササイズをするとしたらこれがベストだと思う。


他にも背中を丸めて腕を伸ばすエクササイズがあるので興味がある方は以下のサイトをどうぞ。NFLドラフト候補生のトレーニングを指導している人の記事で、ベンチプレスやデッドリフトやプルやロウを行うアスリートの身体コンディションを保つにはどうすれば良いのかという内容です。

Why You Must Reach
https://dsstrength.com/why-you-must-reach/


関連記事:プッシュとプルのバランス


11/26/2019

体幹トレーニング

★体幹の役割
身体動作における体幹の役割は、下半身と上半身をつなぐこと。日常動作やスポーツの多くにおいて、体幹は下半身の生み出した力を上半身に伝える。重いものを持ち上げたり、ボールを投げたり、棒を振り回したり(野球やゴルフ)。

力の伝達の橋渡しを効率的にするには、体幹はグニャグニャ動いてはいけない。また腰椎の健康のためにも、強い力をかけながら腰椎をグニャグニャ動かさないほうが良い。

日常動作やスポーツで、体幹を積極的に動かして力を生み出すケースはあまりないので、体幹を積極的に動かして筋力トレーニングを行うシットアップやバックエクステンションといったエクササイズは、機能的な身体動作の面からいって効果的とはいえない。そして腰の健康にも悪い。

体幹のトレーニングの基本的な考え方は、
(1)腰椎のニュートラルポジションを保ちつつ、腹圧を高め体幹を固める。

(2)日常動作やスポーツによって体幹をどの程度固めるかは異なる。目的に応じて、適切な強度と適切なタイミングで体幹を固めることが出来るようにトレーニングする。

日常動作だけだったら、そこまで強く体幹を固める必要はない。物を持ち上げるときにフッと力が抜けてぎっくり腰にならないように、意識せず自動的に適切なタイミングで体幹の筋肉が働くようにトレーニングすると良いだろう。重たいバーベルでスクワットやデッドリフトを行うなら、せん断方向と圧縮方向の強い力がかかる時に体幹をガチガチに固められるようトレーニングする。野球やゴルフなどねじりの動作があるスポーツを行うなら、捻り方向に力がかかったときにも体幹が固まるようトレーニングする。

トレーニングの順序としては、まずは股関節や肩関節などを動かさず、外部からの負荷もかけない状態で体幹を固める練習をする。それからこの状態を保ったまま肩関節や股関節を動かし、徐々に動作を複雑にし、かける負荷を強くしていく。



★体幹を固める練習
PRIなど姿勢系の分野でキャニスターポジションと呼ばれる姿勢を作れるようにする。競技によっては腰を反ったり丸めたりしたほうが競技パフォーマンスの面で良いケースもあるけど、ほとんどの人にとっては腰椎ニュートラルが効率的な身体動作の面でも腰の健康の面でもメリットがあるので、腰椎ニュートラルで体幹を固める方法を書いていく。

キャニスターは蓋のある密閉容器のことだけど、個人的にあまり馴染みがないので海苔の缶で例え話を書きます。海苔の缶の蓋をまっすぐ下ろしていくと、缶の中で空気がパンパンになる感じがする。これと同じように、骨盤に肋骨を真っ直ぐ下ろして蓋をするイメージで姿勢を作ると、腹圧がパンパンになって体幹が固まる。正確には横隔膜と骨盤底を平行にして真っ直ぐ下ろして蓋をするのだけど、横隔膜と骨盤底の身体イメージを持つのは困難なので、肋骨で骨盤に蓋をするイメージで良いと思う。

今回説明する体幹を固めるエクササイズが主に向いているのは、腰が過度に反っているタイプの人。熱心にトレーニングをしていたり、背筋をぴんと伸ばした姿勢で長時間座っていたりするとこうなりやすい。他のパターン、例えば腰がフラットになっているケースだとまた別のアプローチが向いているかもしれない(ただ腰がフラットだとすでにウェイトトレーニングで怪我をしている可能性が高いので、この記事を読む人にはそのケースはほとんどいないと思う)。


自分がどのような姿勢になっているのか知るには、能力の高い専門家による正確なアセスメントが一番良いのだけど、自己診断するなら、
・固い床に仰向けに寝ると、背中が反って腰の部分にかなりスペースが出来る、後頭部を床につけると肋骨が上方に突き出る。
・太っているわけではないが、直立姿勢になると下腹部がぽっこり前に出る。
・腰を反ると腰が痛い。
・自重で踵とお尻をぺったりとつけて座り込むフルボトムスクワットのポジションが出来ない。
このような状態だと、骨盤が前傾して、腰が反っていると思われる。

骨盤が前傾して腰が反っていると、以下のような症状が出やすい。
・股関節を深く曲げた時に腿の前側の付け根(鼠径部)が痛む。
・腰が張ったり、痛くなったりする。
・デッドリフト系のエクササイズをやると、ハムストリングスが伸び過ぎてハムストリングスが痛む。
・スクワットやデッドリフトで膝が内側によれやすく、膝が痛くなる。

骨盤の前傾を修正し、体幹を意識して固めるエクササイズは、ウォームアップの段階で行う。アラインメントの調整や、スタビライザーへの刺激はウォームアップでやったほうが良い。ウェイトやケーブルマシンを使って本格的に体幹に負荷をかけるエクササイズは、トレーニング本番で行う。

関連記事:ストレッチとウォームアップ


◇◇◇ステップ1◇◇◇
骨盤が前傾した状態で固まってしまっている場合は、まず骨盤が動くようにする。

関連記事:骨盤の前傾の矯正

a) 腰椎を曲げ、脊柱起立筋を伸ばし、骨盤を後傾させよう。強い負荷をかけて腰椎を曲げ伸ばしするのは腰に悪いけど、負荷をかけない状態で軽く曲げ伸ばしするのは腰に良い。motion is lotion!(関節は適度に動かすと関節の健康に良い)。

背中が強く反っている人は、この背中のストレッチをやっておくと良い。

関連記事:背中のストレッチ

キャットキャメル。息を吐き出しながら背中を丸める。背骨の可動域の限界を攻めないこと。腰椎を曲げて、骨盤が後傾できるようにすれば良い。
動画:RTS Coaching: The Cat-Camel

b) 股関節の屈筋を伸ばす。脛が地面と並行だと股関節の単関節筋(腸腰筋)が主に伸びる。足首を持ち上げると、膝と股関節の二関節筋(大腿直筋)が伸びやすくなる。両方やろう。コツは前後にグイグイ動いたりせず、腰を反らないように注意し、殿筋に力を入れ、恥骨をクイッと上に向ける感じでやる。


c) 広背筋を伸ばす
デッドリフトや懸垂など背中のトレーニングを熱心にやる人は広背筋もストレッチしておくと良い。適当なものに掴まって、体重を後ろにかけて伸ばすのが手軽。肩関節だけ伸ばすのではなくて、肩甲骨も一緒に引っ張られる感じにすると良い。

動画:Best Lat Stretch EVER!


◇◇◇ステップ2◇◇◇
体幹を固める練習を行う。

寝転んで膝と股関節を90度に曲げて、足を壁につけるか椅子に乗せるかして、膝の間にフォームローラーなど適当なものを挟んで、踵を下方向に軽く押して、臀筋とハムストリングスと内転筋に軽く力を入れて尾てい骨を少し浮かせて、腰の部分がぺったり床につくようにする。首には力を入れない。首が辛い場合は、後頭部の下に数センチの厚みのものを置いて枕にする。腕はやりやすい位置に置いておく。顔の上あたりに伸ばしておいたり、手のひらを膝に軽く乗せたりするのも良いだろう。



ニュートラルポジションよりも骨盤が後傾して、腰椎がフラットになるが、このエクササイズはこれで大丈夫。その状態で、鼻から息を吸って、口から息を深く吐き出す。目安としては、吸い込む息の量は限界の75%程度、吐き出す息の量は限界100%。3-4秒かけて吸い込んで、5-8秒かけて吐き出して、吐ききった状態で2-3秒止める。これを4-5回繰り返す。

腹直筋だけでなく腹斜筋のあたりも締まり肋骨がタイトになればOK。鏡や窓ガラスに顔を近づけて、「はー」と息を吐きかけて曇らせるイメージでやると感覚を掴みやすい。クランチのように上半身を丸めないこと。海苔の缶の例えだと、腹直筋だけでなくお腹周り360°を筋肉の壁で固めることで、腹圧を高め体幹を強く固めることが出来る。息を吸って深く吐き出すのを何回か繰り返して練習する。

吸って吐く動作に慣れてきたら、今度は体幹を締めた状態をキープしながら、ある程度息を吸ってお腹に空気を入れる。この時、息を止めたまま全力で叫ぼうとすると腹圧が高まる感覚を掴める。この腹圧を高めた状態で息を止め、上の歯と下の歯をあわせて、舌を口蓋(口の中の上の部分)にベタッと押し付けると、体幹を非常に強く固めることが出来る。スクワットやデッドリフトなどガチガチに体幹を固める際は、このやり方で体幹を強く固めると良い。

動画:90-90 Breathing Drill


動画:90/90 Hip Lift | Melbourne Strength Culture Tutorial


このエクササイズで体幹を固めることができるようになったら、目的に応じて股関節や肩関節を動かし、動かす関節の数を徐々に増やし、負荷を上げていく。下半身だったら、最初は股関節だけで、次に股関節と膝関節といった具合に、動作の複雑性を上げていく。負荷も最初は軽い負荷で、慣れてきたら徐々に上げていく。



★目的に応じた体幹トレーニング
アラインメント調整や体幹を固める練習をやったら、目的に応じた体幹トレーニングへ。目的の数だけエクササイズの種類はあると思うけど、ざっと例を挙げていく。基本的な考え方を理解すれば、自分で効果的なエクササイズを選んだり、新たに作り出したり出来る。

例1) 日常動作で元気に動きたい。ぎっくり腰になりたくない。
軽めの負荷でスクワットとデッドリフトの動きをやっておくと良い。スクワットはゴブレットスクワットがおすすめ。バーベルバックスクワットは体幹を固めるのが難しいので、重い重量を必要としないなら無理にやる必要はない。

関連記事:バックスクワットでのバーベルの担ぎ方


関連記事:butt winkの話


デッドリフトは股関節の使い方だけでなく、低い位置のものを持ち上げるときにタイミング良く体幹を固める練習も大事なので、ルーマニアンデッドリフトのような「エキセントリック→コンセントリック」のパターンと、床に置いたバーベルやダンベルを持ち上げ、1レップごとに床に置いて、一旦直立姿勢に戻りまた床から持ち上げる「最初からコンセントリック」のパターンの両方をやると良い。

・ゴブレットスクワット

・ダンベルデッドリフト



例2)バーベルを使ったスクワットやデッドリフト
背中を反らないスクワットとデッドリフトの動きを一から学ぶ場合は、息を吐ききった状態で息を止め体幹を固め、非常に軽い負荷をかけながらルーマニアンデッドリフトやゴブレットスクワットをしてみると良い。腰を反って背中で重量を受け止めるのではなく、大腿四頭筋、殿筋、ハムストリングス、内転筋などで負荷を受け止め、体幹は固い筒になるのをイメージする。1レップごと直立時に息継ぎをする。腹圧が弱くなっているので、必ず非常に軽い負荷でゆっくり行うこと。慣れてきたら、息をお腹に吸い込んだ状態で同様に体幹を固めて腹圧をかけ、バーベルの重量を上げていく。

前半が腰を反りすぎのデッドリフトの例。後半が腰を反らないデッドリフトの例。後半のやり方のほうが良い。
動画:over driving erectors on deadlift


腰を反らず最短距離でバーベルを挙げ、最小の動きで直立姿勢になる。
動画:Simple Tip For Better Lifting | Plymouth Back Pain Experts


デッドリフトのロックアウトの動きはヒップスラストと同じなので、ヒップスラストをやると良い練習になる。ヒップスラストは無理に重たい重量でやると腰を反って無理やり挙げるので、軽めの重量で股関節のみをバシンとロックアウトするよう意識すると良い。

関連記事:ヒップスラストのやり方


関連記事:デッドリフトのやり方



例3)プッシュ・プレス動作の体幹トレーニング
プル動作での体幹トレーニグはデッドリフトで手軽に出来るけど、プッシュ・プレス時の体幹トレーニグは負荷の調整と手軽さの面で結構難しい。

手軽に出来るのは bear crawlかな。ケーブルマシンでプッシュ動作をするのも良いと思う。

強い負荷をかけるならシンプルにソリを押すトレーニングが良いだろう。アメフトやラグビーといった競技をするならこのようなトレーニグが効果的。


例4)横方向の体幹トレーニグ
サイドベントのように体幹を動かすのではなく、体幹を固めながら横方向の力を加えるのが良い。手軽に出来るのはサイドブリッジ(サイドプランク)。



やり方を少し変えることで負荷を上げることも出来る。

動画:EricCressey.com: 1-leg Side Bridge, Top Leg on Bench

動画:EricCressey.com: Side Bridge with Top Leg March



例5) 捻り動作の体幹トレーニング
ケーブルマシンが負荷を調整しやすくて使いやすいと思う。捻りの動きを生み出すのは、股関節や胸椎や肩関節で、体幹(腰椎)は捻らない。

動画:Half-Kneeling Chop/Lift | Core Stability | Controlled Rotation


動画:Band Half Kneeling Pallof Press


あとはメディシンボール投げとか。




★ベルト
体幹トレーニングの際はリフティングベルトはしないほうが良いと思う。体幹の筋肉の力の入り方が微妙に変わってくるし、日常動作や多くの競技ではベルトはしないで動作を行う。スクワットやデッドリフトでとにかく重たい重量を挙げたいなら、多くの人はベルトをしたほうがより重い重量を挙げられるので、したほうが良いだろう。




★見た目問題
腹直筋の見た目を良くするにはクランチ系をやるのが手っ取り早いので、ボディメイクの観点では少しは腹筋運動的なエクササイズをやっておくのもありだと思う。肩周り(三角筋や大胸筋)のトレーニングもそうなんだけど、ベンチプレスや三角筋のアイソレート種目や腹筋運動は、機能的な身体動作と怪我リスクの面ではデメリットがあるが、見た目重視の筋肉を筋肥大させるには効果的。個人的にはこんな感じの腹筋マシンが腰に負担をかけず、腹直筋の中部上部を収縮させられる。