10/13/2020

増量時の栄養調整

(1)Is an Energy Surplus Required to Maximize Skeletal Muscle Hypertrophy Associated With Resistance Training
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6710320/

筋肥大のペースを最大化するためには、栄養をどのように摂取していけば良いかを調べた2019年の論文です。何か実験をおこなっているわけではなく、既存の研究を調べて、増量を効率的にやるには栄養をどう調整すれば良いのかを考察してます。想定ターゲットは運動量の多いアスリートと思われます。

Eric Helmsが関わっていることもあり内容は良いのですが、議論をそのまま出している感じの論文で、あまりまとまっていないです。今の時点ではわからないことが多いので、現状の整理と今後の研究の指針がメインになっています。

論文中のエネルギーの単位がKJであまり馴染みがないので、本記事ではkcal表記にしています(4.2KJ=1kcalで計算)。


★前提
体脂肪率の高い初心者や、トレーニングを休んでいたアスリートがトレーニングを再開する場合は、摂取カロリーを増やさなくても体脂肪を減らしながら同時に筋肉量を増やすこともできます。しかし、トレーニングを継続的におこなっていて、体脂肪率が高くない人の場合は、カロリー収支をプラスにして体重を増やしていくほうが効率的に筋肉を増やせます。

ただ、現状ではカロリー超過の条件下での筋トレの研究が乏しいです。この論文での栄養摂取の調整方法については、かなりの部分が推測にもとづいたものになります。


★どのくらいのカロリー超過が良いのか
筋肉を増やすのに必要なカロリーを、コスト積み上げ方式で考えていきます。

<骨格筋に含まれるエネルギー>
骨格筋の構成割合を「タンパク質20%、筋肉中の脂質(IMTG)やグリコーゲンなど5%、水分75%」とします。この数値で計算すると、骨格筋1kgは約1200kcalのエネルギーを持つことになります。これは言わば骨格筋の材料費で、骨格筋1kgを増やすのに最低限はこれだけのエネルギーが必要です。

9/26/2020

電子書籍「ボディメイクガイド」リリース!

 


Kindle向けの電子書籍を出しました。
ボディメイクガイド Kindle版

Kindleアプリをインストールすれば、パソコンやスマホでも読めます!

https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/fd/kcp




<本を書いた経緯>

まず、私が筋トレを始めてからどのように情報収集をしていったのか、その思い出を語りたいと思います。

最初は右も左も分からないのでまずは筋トレ本を読もうと思い、元ボディビルダーの大学教授が書いた本を読んだのですが、筋肉の仕組みなどを説明されても結局何をやったらいいのかわからず、インターネットで情報を探すようになりました。

今もそうなのですが、インターネット上の情報は玉石混交で、何が正しいのかわからず試行錯誤の日々でした。そのうち、「教えてgoo」のOneHさんを中心としたやり取りのログを見つけました。目からうろこでした。この方面を調べていけば、良い情報にたどり着けると思い、Lyle McDonald や Alan Aragon の書いたものを読むようになりました。それから芋づる式に Brad Schoenfeld、Eric Helms、Greg Nuckolsなどを追いかけていき、今に至ります。

インターネット上のサイトを見たり、トレーニングや栄養関連の本を読んで学んできたのですが、いくつか不満もありました。

まず日本語の本だと実用的な筋トレ本があまりないです。今回あらためて市場調査をしましたが、自己啓発系の筋トレ本、最新研究を散漫に羅列しているだけで実践と結びついていない本、筋肉や身体の仕組みなどが最初の50ページくらいに書いてあってあとは自重トレかボディビル的な種目解説の絵で埋めている本・・・といったものが多いです。本気で体型を変えたい人には物足りません。

インターネット上には日本語でも有用な情報がありますが、断片的に散らばっていて探すのが大変です。サーチエンジンでもなかなか上位にきません。それで情報を探すとなると英語が必須になってきます。しかし、英語の壁を乗り越えたとしても、問題があります。

良書を探すと、だいたいが専門的でカバーしている範囲が狭いです。多くの分野の本を読む必要があります。そして値段が高いです。一冊3000-5000円くらいします。

内容が良くてカバー範囲が広い本も少数ですがあります。

マニア向けの定番だとこの本ですね。
The Muscle and Strength Pyramid

一般向けだと多分この本が最も売れていると思います。レビュー数がすごいです。
Bigger Leaner Stronger(Michael Matthews )

ただこれらの本にも不満点はあって、エビデンスベースでトレーニングと栄養の両方を扱っているのは良いのですが、本に書かれている内容を適用できるのが、「存分にトレーニングをすることができて、好きな時に望み通りの食事を食べられる体格に恵まれた若い男性」に限られるということです。著者自身がそうなのでしょうし、これらの本の著者が関わるようなハードコアなジムに来る人にはそういう人が多いのでしょうけど、本気でボディメイクをしたい人には、上に当てはまらない人も大勢います。その人たちがアクセスできる良い情報源が現状では乏しいわけです。

その状態をなんとかしようと思って、自分で本を書くことにしました。なるべく多くの人が、自分のできる範囲でなるべく良い結果を出せるようになれば・・・との思いです。

最初はブログの内容を土台にして書こうと思い、ブログの記事をエディターにまとめました。その時点で4万字でした。その後いろいろと書き直したり、書き足したりして、最終的に11万字を超えました。ビジネス書と同じくらいのボリュームです。一般的な筋トレ本は図や写真が多いので、もっと文字数は少ないと思います。

本を書くのは初めてで、最初から最後まで一人で仕上げたので至らない点もあると思います。変なところがあったらご指摘いただけるとありがたいです。どのような内容なのか、参考までに目次を載せておきます。もし気に入っていただけたら、SNSで紹介したり、Amazonにレビューを書いてくれると嬉しいです。

9/16/2020

女性の月経周期と合わせたトレーニングと栄養

Lyle Mcdonald の The Women’s Book Vol1を読んで、女性は月経周期によってトレーニングや栄養の反応が変わってくることを知ったので、自分でも記事を書いてみます。月経周期の有無、避妊薬使用(種類によって変わる)、閉経後(ホルモン補充療法の有無で変わる)も影響するので、女性のトレーニングと栄養は非常に複雑ですね。

Vol1は栄養がメインで、トレーニングについてはあまり書かれていないです。トレーニングの詳しい調整の仕方についてはVol2のリリース待ちなので、自分で論文を調べてトレーニングの調整についても書いてみます。

月経周期における各期間の分け方はいくつかあるのですが、ここではざっくりと前半後半に分ける分け方にします。月経開始から排卵までが卵胞期、排卵後から次の月経までが黄体期です。

8/25/2020

運動後のクールダウンの効果

Do We Need a Cool-Down After Exercise? A Narrative Review of the Psychophysiological Effects and the Effects on Performance, Injuries and the Long-Term Adaptive Response
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5999142/

運動後のクールダウンの効果を調べた研究を集めてレビューした論文。クールダウンの種類にはいくつかあるけど、この論文では5-15分程度のジョギングなど軽い有酸素運動の効果をメインに調べている。

8/21/2020

ケーススタディ:ボディビルダーの減量とコンテスト後の回復

(1)Natural Bodybuilding Competition Preparation and Recovery: A 12-Month Case Study
https://pdfs.semanticscholar.org/7eb2/f2177a56705379065088b3480ce75329fd8e.pdf

一人の男性ボディビルダーがコンテストに向けて減量するまでと、コンテスト後の回復を記録した研究。細かく記録されているので、減量期間の食事や体組成推移などを見ていきたい。

7/21/2020

Barbalho他の研究に注意

Improbable Data Patterns in the Work of Barbalho et al: An Explainer
https://www.strongerbyscience.com/barbalho/?ck_subscriber_id=699589358

筋肥大とストレングスの分野で「へ~」と思うような研究をいくつか出している研究者の複数の研究が、どうも信用できないという話が出ている。データのばらつきが確率的にありえないほど小さかったり、複数のグループのデータが酷似していたり、ストレングスの伸びがあり得なかったりとおかしい点がいくつもある。個人的な印象では、いいとこ取り手法でデータを整えたというレベルではなく、複数の研究でデータをほぼでっち上げたのではないかと。

上のGreg Nuckolsの記事におかしな点が詳しく書かれていて、Barbalhoの研究に関わった人の協力で実験の生データも手に入れてるのだけど、統計のことがわからなくても、生データの数字の不自然さは一目瞭然。例えば腕の周径の被験者ごとの変化の数値が、 0.8, 0.8, 0.8, 0.8, 0.8, 1.1, 1.1, 1.1, 1.1, 1.1となっている。被験者10人で数値が2パターンしかない。今後エビデンスを考える時、Barbalhoが関わった研究についての結果は全て、一旦棚上げして考えたほうがいいと思う。

7/15/2020

TRF(Time-Restricted Feeding)の研究

TRF(Time-Restricted Feeding)は、一日のうち食事を摂れる時間枠を8時間以内や4時間以内と決めて、残りの時間はカロリー摂取をしない食事方法のこと。具体名を出すと、リーンゲインズやウォリアーダイエットといった方法。

TRFはIF(Intermittent Fasting)に含まれるけど、IFだと一日置きの断食(ADF:Alternate-day fasting)などもあって、そういった方法は運動する人には実行が難しい。TRFは運動する人でも実行可能。

TRFとレジスタンストレーニングを組み合わせた研究がここ数年でいくつか出てきたので紹介します。

6/09/2020

トレーニングボリュームを被験者ごとに調整した研究

Muscle Hypertrophy Response Is Affected by Previous Resistance Training Volume in Trained Individuals
https://www.researchgate.net/publication/339583180_Muscle_Hypertrophy_Response_Is_Affected_by_Previous_Resistance_Training_Volume_in_Trained_Individuals

一律のボリュームでのトレーニングと、被験者の直近のトレーニングボリュームの20%増しのトレーニングを実施し、筋肥大に差が出るか調べた研究。

6/05/2020

リフィードの研究

Intermittent Energy Restriction Attenuates the Loss of Fat Free Mass in Resistance Trained Individuals. A Randomized Controlled Trial
https://www.mdpi.com/2411-5142/5/1/19/htm

毎日同じペースでカロリーカットをしたグループと、週に2日リフィードをしたグループの減量結果を比較した研究。筋トレ愛好家の知りたいポイントを押さえた研究デザインになっている。

・被験者は肥満ではなく、トレーニング歴あり
・筋トレしながらの減量
・タンパク質摂取量がこの手の研究にしては多め(個人的にはもう少し増やしたほうがいい思うが)
・週に2日という現実的なリフィード方法

減量や筋トレの研究は、社会的意義の面から肥満の人や高齢者を対象とした研究が多いので、こういう筋トレ愛好家向けの研究が行われるのは稀。

結論を先に書くと、リフィード群のほうが除脂肪量の減少を抑えられ良い結果になっている。


★被験者データ


体脂肪率は結果の表に載っていて、実験前の時点で21%くらい。男女合わせてのデータなので男性17%、女性25%くらいかな?


★実験期間
7週間


★食事
指導のもと自己管理

・摂取カロリー配分
一定カロリー群  ずっと25%カロリーカット
リフィード群  5日連続35%カロリーカット、2日連続維持カロリー



・マクロ栄養素バランス
カロリーカット時のマクロバランスは両群ともタンパク質摂取量 1.8g/kg/日、残りの必要カロリーを脂質と炭水化物で半分ずつ。

リフィード群のリフィード日は、カロリーカット時の食事に炭水化物のみを足して維持カロリーにする。



★レジスタンストレーニング
週あたり上半身メイン2日、下半身メイン2日の合計4日。4週目だけはデロードで合計2日。あと30分の有酸素運動を週2日。



★結果
体重差を考えると両群とも同じくらい体重が減少したが、リフィード群のほうが除脂肪量の減少を抑えられ、良い結果となっている。リフィードによる保水量の差を考慮するため、乾燥除脂肪量(Dry FFM)も算出しているが、これもリフィード群のほうが減少を抑えられている。体脂肪量もリフィード群のほうが減っていて良い。今回の研究では、リフィードは体重を落ちやすくするというよりも、除脂肪量を維持しやすいという結果になっている。



リフィードの目的は一般的に以下の3つ。

・代謝低下の抑制
・筋肉の維持・肥大
・メンタル面の息抜き

代謝低下については、安静時代謝(RMR)の減少幅に少し差がついている。安静時代謝は除脂肪量の影響が大きいので、除脂肪量減少の差が表れていると考えられる。リフィードで期待されるレプチンなど内分泌系の影響による代謝低下の抑制が起きているかはよくわからない。そもそも代謝低下の抑制があったかは安静時代謝だけではなくNEATも見ないといけない。

マクロ視点でみると、7週間での体重減少量は両群でほぼ同じだが、分解して消費する場合、除脂肪部分のほうが体脂肪よりもエネルギー密度が低いことを考慮すると、リフィード群のほうがトータルでの消費カロリーが少し多かった感じはする。

除脂肪量の維持については、リフィードでグリコーゲンを補充してトレーニングの質が上がったり、筋肉のエネルギーレベルが一時的に高くなることで、筋肉の維持・肥大がしやすくなったのかもしれない(個別データだと除脂肪量が増えている人もいる)。

トレーニングボリュームは両群で同じとのことだが、ボリュームをセット数×レップ数で出しているのか、セット数×レップ数×重量で出しているのか不明なので、トレーニングの質に差がついたのかよくわからない。


★コメント
デザインの良い研究で、リフィードの優位性が示された結果になっている。今後同じようなデザインの研究で繰り返しリフィード優位の結果が示されれば、確度が高まる。

体脂肪率を楽に維持できる水準(男性なら13-15%くらい)より高い体脂肪率で減量をするならリフィードはあまり必要ないと思っていたけど、体脂肪率が低くなくても体組成変化に効果がありそうなので考えを改めたい。

なぜ両群を比較すると体重減少にあまり差がつかなかったのか仮説を考えてみると、

・今回の実験では被験者はそれほど低い体脂肪率ではないので、両群とも大幅な代謝低下が起こらず、そのためリフィードの代謝回復効果も大きくは出ず、代謝低下の抑制の面であまり差がつかなかった。

・リフィード日の摂取カロリーは維持カロリーなので、グリコーゲンとして貯蔵に回される分を考慮すると摂取カロリーが足りなく、リフィードの代謝低下の抑制効果が出るには不十分だった。

・そもそも2日程度のリフィードでは代謝低下の抑制効果があまり無い。

もし今回よりも低い体脂肪率の被験者を集めて、男性なら体脂肪率10%以下を目指すという研究デザインにして、リフィード日の摂取カロリーをグリコーゲン貯蔵分を考慮して維持カロリーよりも多めにすると、リフィードがレプチンレベルの低下抑制に寄与するといった経路で、リフィード群と一定カロリーカット群とで体重減少に大きな差が出てくるかもしれない。



★細かい話
・リフィード群はリフィード時に炭水化物だけ足しているため、週ベースでの炭水化物の摂取量がリフィード群のほうが多くなっているはず。レプチンレベルの維持や筋グリコーゲンの補充、トレーニングの質の維持の面ではリフィード群が有利だと思う。

・タンパク質摂取量が1.8g/kg/dayは減量時としては少し足りなく、特にリフィード群の35%カロリーカットだとかなり不足気味な感じがするので、この点ではリフィード群が不利に見える。(が、除脂肪量の維持ではリフィード群のほうが良い結果だった)

・減量終了後から一週間くらい空けてから、体組成を測定してほしかった。土日のリフィードで実験期間終了だと、リフィード群はグリコーゲンと水が補充されていて除脂肪量が多く出やすい。論文にはリフィードから最低2日空けて体組成を測定したと書かれていて、また水分量を考慮した乾燥除脂肪量も出しているので、ある程度はこの保水量の差をケアしているが。

・トレーニングボリュームの細かい記録や、1RM変化も記録するとより良い研究になると思う。

・極度に低い体脂肪率を目指す場合は、リフィード日はオーバーカロリー(その日の活動で消費するカロリーに加えて貯蔵グリコーゲンの分も摂取する)のほうが良いと思う。



関連記事:
リフィード(もしくはチートデイ)の効率的なやりかた
6年前の記事で、当時とあまり考えは変わっていないけど、カジュアルダイエットの人はリフィードというか、1、2週間の維持カロリーに戻すダイエット休憩を入れると良いと思う。(一つ下の関連記事参照)

維持カロリーを挟むダイエット方法

炭水化物の摂取をサイクルさせるダイエット

なぜダイエットをしてもリバウンドしやすいのか

レプチンについて

AMPkについて

タンパク質摂取量の目安

6/01/2020

運動時のマスク

ジムの営業が徐々に再開されていますが、マスク着用が義務付けられているところも多いと思います。どういうマスクを着用すれば運動しやすいか、いくつか試してみたのでレビューをば。

呼吸のしやすさを5段階で評価していきます。マスク無しが5点。

・普通の不織布マスク

呼吸のしやすさ ★★☆☆☆ 2点
軽い運動ならなんとか出来る。


・不織布マスクが汗で湿ったもの
呼吸のしやすさ ★☆☆☆☆ 1点
汗で湿ると空気が通りにくくなりかなり苦しい。


・D&M サポーターメーカーの洗える伸縮マスク
呼吸のしやすさ ★★★☆☆ 3点
スクワット8レップやって3分インターバルといった筋トレなら何とか出来る。呼吸がある程度制限されるため、おそらくインターバルでの回復が遅れる。いつもより長めにインターバルを取ったほうが良い。HIITといった心拍数が上がりっぱなしの高強度の運動はこのマスクだと難しいと思う。あとメガネが曇りやすいのでメガネ民は曇り止めをつけたほうがいいかも(曇り止めを注文したけどまだ届かない)。


・通気性の良いフェイスマスク
呼吸のしやすさ ★★★★☆ 4点
アマゾンで売ってたこれを試してみましたが、呼吸はとてもしやすい。たぶんほとんどの運動が問題なく出来る。これがOKならなるべく使いたい。注意点は、黒色だと見た目が上野クリニックっぽくなる。